「海外に財産があるけれど、顧問税理士は国内の税務が中心で頼みにくい」「国際相続に強いとうたう事務所が多く、どこを選べばよいかわからない」
海外財産がある場合や、亡くなった方・相続人が海外に住む場合は注意が必要です。日本で相続税の申告が必要な場合には、海外財産の評価や外国側の手続きが必要になることがあります。担当範囲があいまいなまま依頼すると、必要な手続きが残り、申告準備が遅れかねません。
この記事では、国際相続で税理士を選ぶ7つのポイントを解説します。依頼できる業務、税理士以外の相談先、相談の時期、準備する資料もまとめました。
国際相続の税理士は、関係国の実績、海外財産ごとの経験、担当範囲、現地専門家との連携体制、追加費用の条件など7項目で選びましょう。
読み終えると、初回相談で何を質問すればよいかがわかり、自分の案件に合う税理士を比べやすくなります。
国際相続を税理士に相談するメリット
国際相続に詳しい税理士へ相談すると、課税関係や手続きの順序を整理でき、相続人の負担も軽くなります。主なメリットは次の4つです。
- 日本の相続税がかかる範囲を整理できる
- 海外財産を含む申告方法を確認できる
- 必要な手続きの順序を整理できる
- 相続人の手続き負担を軽減できる
1. 日本の相続税がかかる範囲を整理できる
国際相続では、亡くなった方や財産を取得した方の住所、国籍などによって、日本の相続税がかかる財産の範囲が変わります。海外財産があるというだけでは、課税される範囲を判断できません。
国際相続に詳しい税理士へ相談すれば、日本の相続税の対象となる財産を整理しやすくなります。申告が必要か、どの財産を申告するかを早い段階で確認できる点は大きなメリットです。
2. 海外財産を含む申告方法を確認できる
海外預金、不動産、外国株式などは、日本の相続税申告で評価が必要になる場合があります。また、国外財産について外国で相続税に相当する税が課された場合は、外国税額控除を適用できることがあります。税理士へ相談すれば、海外財産の評価や外国税額控除を含め、日本の相続税申告で必要な対応を確認することが可能です。
3. 必要な手続きの順序を整理できる
税理士へ相談すると、日本と外国の手続きを何から進めるべきか整理できます。日本で相続税の申告が必要な場合は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税が必要です。
外国側の税務申告や名義変更にも、期限が設けられている場合があります。日本の相続税より先に期限が来る手続きもあるため、早めの確認が必要です。申告準備の遅れを防ぐには、期限から逆算して手続きの順序を決めることが大切です。
4. 相続人の手続き負担を軽減できる
相続人が自分で海外の制度を調べたり、専門家へ連絡したりする負担を減らせる点もメリットです。海外の金融機関から届く書類は、外国語で作成されている場合があります。書類の確認や専門家同士の情報共有を税理士に依頼できれば、相続人の手間を抑えられます。
ただし、外国側の申告や法的な手続きは、現地の資格者でなければ対応できない場合があるので注意が必要です。税理士の担当範囲は、次の章の「3. 税理士の担当範囲が明確か」で解説しています。
国際相続で税理士を選ぶ7つのポイント
国際相続に強い税理士は、外国語に対応できるかだけで判断しないことが大切です。自分の関係国や財産に対応できるかを基準に選びましょう。確認したい7項目は次のとおりです。
- 関係国の対応実績があるか
- 海外財産別の対応経験があるか
- 税理士の担当範囲が明確か
- 現地専門家の連携体制があるか
- 外国語書類に対応できるか
- 追加費用の条件を確認できるか
- 日本への資産還流までサポートしてもらえるか
1. 関係国の対応実績があるか
実績を確かめる際は、国際相続の総件数よりも、自分の案件に近い経験があるかを重視しましょう。同じ国でも、地域や財産の種類によって手続きが変わる場合があります。初回相談では、国名だけでなく、日本と外国の両方で申告が必要な案件を扱った経験など、案件の内容まで質問しましょう。
2. 海外財産別の対応経験があるか
海外財産は、種類によって集める資料や評価方法が異なります。主な財産と、必要になる資料の例は次のとおりです。
- 海外預金: 金融機関の残高証明書
- 海外不動産: 現地の評価資料(鑑定が必要になる場合もある)
- 外国株式・海外法人の持分: 証券会社の残高報告書や、非上場の場合は決算書
自分が持つ財産と同じ種類の対応経験があるか、具体的に聞いてみましょう。
3. 税理士の担当範囲が明確か
日本の相続税申告やその申告に必要な海外財産の評価は、日本の税理士へ依頼できます。一方、海外口座の解約や外国側の申告まで含まれるとは限りません。「ワンストップ対応」とうたう事務所でも、対応範囲の確認が必要です。契約前に、担当する業務と担当しない業務を書面で確認しましょう。
4. 現地専門家の連携体制があるか
外国側の税務申告やプロベートでは、現地の専門家が必要になる場合があります。プロベートとは、米国などで裁判所が関わる遺産の管理手続きです。提携先があるかだけでなく、連携の中身まで確認しましょう。
- 現地専門家との連絡窓口は誰か
- 進み具合を相続人へどのように共有するか
- 現地専門家の報酬は別契約になるか
5. 外国語書類に対応できるか
国際相続では、海外の遺言書、死亡証明書、残高証明書などを確認する場合があります。
外国語の書類を確認できる体制があるか、事前に確かめましょう。翻訳が必要な書類や依頼先、翻訳・認証にかかる費用の負担者も確認しておきましょう。
6. 追加費用の条件を確認できるか
見積書では、基本報酬に含まれない海外対応の費用を確認しましょう。
| 費用の項目 | 見積書で確認すること |
| 海外財産の加算 | 国や財産の数で金額が増えるか |
| 財産評価 | 現地の鑑定費用が別になるか |
| 翻訳・認証 | 依頼先と費用の負担者 |
| 現地専門家の報酬 | 別契約か、おおよその金額 |
| 申告後の手続き | 口座解約や名義変更を含むか |
複数の事務所を比べるときは、基本報酬だけでなく、想定される費用の総額を比較しましょう。
7. 日本への資産還流までサポートしてもらえるか
日本の相続手続きと並行して行わないといけないのが、日本への資産還流です。相続人が現地にいれば問題はないですが、多くの場合日本にいるため、海外財産をどうやって日本に持ってくるかが課題になります。
たとえば当社の事例では、ドイツの地元の銀行口座(Sparkasse)について、残高を確認するだけでも1年以上の期間を要しました。その後の解約手続きも含めると長い期間と労力がかかります。それらのサポートも受けられるのかは重要です。
国際相続で税理士へ依頼できる業務
国際相続で日本の税理士へ依頼できる主な業務は、次の5つです。
| 業務 | 主な内容 |
| 課税範囲の判定 | 日本の相続税がかかる財産を整理する |
| 海外財産の評価 | 不動産や預金などを日本の申告用に評価する |
| 相続税申告 | 海外財産を含めた日本の申告書を作成する |
| 外国税額控除の検討 | 外国で課された税額を控除できるか確認する |
| 現地専門家との連携 | 外国側の担当者と必要な情報を共有する |
外国税額控除は、相続や遺贈で取得した海外の財産について、外国で相続税に相当する税が課された場合に適用を検討する制度です。外国で課された税額を一定の限度額の範囲で日本の相続税額から差し引けます。日本の相続税がかかる範囲は、亡くなった方と財産を取得した方の住所や国籍などで変わります。
国際相続で税理士以外へ相談すること
遺言の有効性や遺産分割の争いなど、法律上の判断は弁護士へ相談しましょう。主な相談先は次のとおりです。
| 専門家 | 主な相談内容 |
| 税理士 | 日本の相続税申告、海外財産の評価、外国税額控除 |
| 弁護士 | 遺言、遺産分割、相続争い |
| 司法書士 | 日本国内にある不動産の相続登記 |
| 外国の税務専門家 | 外国の遺産税申告や税務手続き |
| 外国の法律専門家 | プロベートなど外国法に基づく相続手続き |
日本の不動産は、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。原則として、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。義務化前に発生した相続で、相続登記をしていない不動産も対象です。2024年4月1日より前に取得を知っていた場合は、原則として2027年3月31日が期限です。
国際相続を税理士へ相談する時期
相続が起きたあとは、海外財産や海外に住む相続人がいるとわかった段階で相談しましょう。すべての資料がそろうまで待つ必要はありません。手元の資料で相談を始めれば、書類の請求と並行して、日本の相続税の課税範囲や評価方法の確認を進められます。相続が起きる前でも、海外財産の把握や承継時の手続きを確認する目的で相談することが可能です。
日本に住む父(会社オーナー)が亡くなったケースを想定します。相続人は、日本に住む長男と、海外に住む長女です。
- 海外の銀行預金:約2億円
- 海外の賃貸用マンション:約1億円
| 時期 | 起きたこと |
| 死亡から1か月 | 海外の銀行へ残高証明書を請求 |
| 死亡から5か月 | 証明書が届き、税理士へ初めて相談 |
| 死亡から5〜10か月 | 不動産の評価資料と長女の書類を急いで集める |
| 死亡から10か月 | 日本の相続税の申告・納付期限 |
長男は残高証明書が届くまで相談を待ったため、残り約5か月で海外財産の評価や遺産分割協議、相続税申告の準備を進めることになりました。死亡後の早い段階で相談していれば、書類を待つ間に、日本の相続税の課税範囲や海外財産の評価方法の確認に着手できました。
また、現地でプロベートなど複雑な遺産相続の手続きが発生すると、日本への送金には1年以上の期間を要する場合もあります。日本の相続税の申告期限は相続発生から10か月のため、納税資金をどうするかといった相談も早い段階で専門家と行うことができます。
国際相続を税理士へ相談する準備
初回相談の前に情報を整理しておくと、対応の可否や依頼範囲、費用を確認しやすくなります。準備したい内容は次の3つです。
- 関係者の居住情報を整理する
- 海外財産の一覧を作成する
- 関係書類をそろえる
1. 関係者の居住情報を整理する
亡くなった方と相続人について、次の情報をまとめます。
- 国籍と現在の住所
- 過去の住所や居住期間、出国・帰国の時期
国籍や住所・居住歴は、日本の相続税がかかる財産の範囲を判定するために重要です。
2. 海外財産の一覧を作成する
海外財産は、所在国、種類、名義、おおよその金額で一覧にします。種類は、海外預金、海外不動産、外国株式、海外保険、海外法人の持分などに分けます。現地の借入金や未払いの費用がある場合も書き出し、相続税の計算上控除できるか確認しましょう。
3. 関係書類をそろえる
相談の際は、手元にある次のような書類を用意します。
- 遺言書、信託の関係書類
- 死亡証明書
- 金融機関の残高証明書
- 不動産の資料
- 外国の税務当局からの通知
資料がそろっていなくても、今ある書類を示して相談を始められます。外国語の書類は原文のまま共有し、翻訳の要否は相談先に確認しましょう。
なお、国際相続の税理士報酬には一律の相場はありません。遺産総額や海外財産の内容、現地専門家との連携の有無などによって100万円を超える場合もあります。事務所によって金額が大きく異なるため、相談時には、基本報酬だけでなく、海外財産の評価や翻訳、現地専門家への報酬を含めた見積額を確認しましょう。
国際相続の相談なら税理士法人ネイチャー
国際相続では、関係者の国籍や住所・居住歴、財産がある国を整理したうえで、日本と外国で必要な手続きを確認することが欠かせません。
税理士法人ネイチャーでは、日本の相続税申告や海外財産の評価、外国税額控除の検討など、国際相続に関する相談に対応しています。また税理士法人ネイチャーはTIAG®に加盟しており、TAG Alliancesの105か国以上・2万5,000人以上の専門家ネットワークを活用し、必要に応じて各国・地域の専門家と連携できます。外国側で申告や法的な手続きが必要な場合は、必要に応じて現地の専門家と連携するので安心です。
海外財産の相続や海外在住者が関係する相続など、国際相続のさまざまな案件に対応しています。英語でのやり取りが必要な場合も、バイリンガルスタッフが海外の相続人や現地専門家との連携を支援します。相続発生後の申告だけでなく、海外財産の承継に向けた事前相談にも対応可能です。
顧問税理士との関係を維持したまま、国際相続に関する部分のみご相談いただくことも可能です。資料がそろう前でも、まずはお問い合わせください。
まとめ:国際相続の税理士は対応実績や依頼範囲で選ぼう
国際相続の税理士は、関係国の実績、海外財産の経験、担当範囲、現地専門家との連携、費用の総額などを確認して選ぶことが大切です。
相談の前に、関係者の住所・居住歴と海外財産を整理しておきましょう。
税理士法人ネイチャーでは、日本の相続税申告を中心に、国際相続で必要な手続きの整理をお手伝いしています。海外財産の相続でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
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