上場株式の相続税評価額はいくら?計算方法や株価の調べ方を税理士が解説

親が亡くなり、証券会社から届いた残高証明書を見て、相続する株式の多さに戸惑うこともあるでしょう。銘柄や株数はわかっても、相続税の申告に使う金額をどのように決めるのか、判断に迷うところです。

上場株式の相続税評価には、一定の計算ルールがあります。そのため、残高証明書に記載された金額が、そのまま相続税の申告に使う評価額になるとは限りません。

この記事では、具体的な計算例をもとに、上場株式の相続税評価方法や株価の調べ方、必要資料を解説します。また、取引所の休業日や株式分割がある場合の注意点、納税資金の考え方も紹介します。

相続税

上場株式の相続税評価の計算方法

上場株式の相続税評価では、亡くなった日の終値と、死亡月・前月・前々月の各月の終値平均額を比較します。原則として、これら4つの株価のうち最も低い金額を採用します。

終値とは、取引所でその日の最後に成立した売買価格のことです。

比較する株価内容
死亡日の終値亡くなった日に最後についた株価
死亡月の月平均額死亡月の各取引日の終値を平均した金額
前月の月平均額死亡月より1か月前の終値の平均
前々月の月平均額死亡月より2か月前の終値の平均

相続税評価額 = 上記のうち最も低い価格×保有株数

たとえば、月の初めに亡くなった場合でも、その月の後半に形成された株価が月平均額に反映されます。死亡日までの値動きだけを集計するわけではありません。計算は保有する銘柄ごとに行います。

また、NISA口座で管理されている株式についても、評価に使う株価の選び方は変わりません。ただし、取引のない日や権利落ちが関係する場合には、通常の比較方法とは異なる取扱いが必要です。

上場株式の相続税評価の計算例

たとえば、父親が亡くなった時点で、A社とB社の株式を所有していたとします。以下は架空の事例で、株式分割や権利落ちの影響はないものとします。

銘柄死亡日の終値死亡月平均前月平均前々月平均採用単価株数評価額
A社株5,000円4,800円4,200円4,500円4,200円10,000株4,200万円
B社株2,000円2,100円2,300円2,200円2,000円5,000株1,000万円
合計6,000万円5,850万円5,350万円5,600万円—15,000株5,200万円

※合計欄の各金額は、それぞれの株価に保有株数を掛けて算出しています。

今回の例では、A社株は前月の月平均額4,200円、B社株は死亡日の終値2,000円を採用します。死亡日の終値だけで計算すると合計6,000万円ですが、相続税評価のルールに従って計算すると5,200万円となり、評価額は800万円低くなります。

ただし、この差額がそのまま相続税の減少額になるわけではありません。実際の税額は、ほかの相続財産や法定相続人の数などによって異なります。

相続税

上場株式の相続税評価額の調べ方

計算を始める前に、亡くなった方が所有していた株式の数量と、評価に使う価格をそろえます。証券会社の残高証明書と、取引所が公表する相場情報を組み合わせて確認しましょう。

  • 証券会社の残高証明書で確認する
  • JPXの月間相場表で確認する

証券会社の残高証明書で確認する

最初に、亡くなった日を指定して証券会社へ残高証明書の発行を依頼します。届いた書類では、次の情報を確認します。

  • 証明の対象となっている日付
  • 所有銘柄の名称、証券コード、株数
  • 特定口座・一般口座・NISA口座の区分
  • 記載金額がどの株価をもとに算出されているか

残高証明書は、保有状況を把握するための重要な資料です。ただし、そこに記された金額が相続税の申告に使用する評価額とは限りません。証券会社によっては、評価に必要な月平均額をまとめた書類も取得できます。

残高証明書を依頼する際に、あわせて発行できるか聞いておくとよいでしょう。複数の証券会社を利用していた場合は、それぞれの口座について資料を集めます。

また、証券会社の残高証明書に載らない株式がないかも確認しましょう。たとえば、株券の電子化の際に証券会社へ預けていなかった株式などが、信託銀行等の特別口座に残っている場合があります。過去に届いた配当金計算書も、保有状況を調べる手掛かりになります。

JPXの月間相場表で確認する

証券会社の書類だけで必要な価格がそろわないときは、東京証券取引所に上場する銘柄について、JPX(日本取引所グループ)の「月間相場表(株式)」を利用できます。この資料には、各銘柄の月ごとの終値平均が掲載されています。

亡くなった月と、その前の2か月について該当銘柄の数値を調べれば、比較に必要な月平均額をそろえることが可能です。

なお、月間相場表は対象月が終わった後、原則として翌月の第7営業日に公開されます。死亡日当日の終値については、証券会社や取引所が提供する情報を参照してください。

同じ銘柄が国内の複数の金融商品取引所に上場されている場合は、納税義務者が選択した取引所の株価をもとに評価できます。選択した取引所の公表資料を確認しましょう。

価格を調べ終えたら、国税庁の「上場株式の評価明細書」に銘柄別の金額を整理します。どの資料から数値を取得したのかも記録しておくと、申告内容を見直す際に役立つでしょう。

証券会社の名前がわからない場合は、ほふり(証券保管振替機構)の「登録済加入者情報の開示請求」を利用する方法もあります。この制度では、国内上場株式などの振替株式等について、開示時点の口座開設先を有料で確認できます。

ただし、保有銘柄や株数、外国株式の口座開設先は確認できないため、判明した金融機関への照会が必要です。

上場株式の相続税評価の注意点

基本の評価方法とは異なる扱いが必要なケースと、財産の計上で誤りやすい点を4つ紹介します。該当する取引や銘柄がないか確認しましょう。

  1. 休日は直前営業日の株価を使うとは限らない
  2. 権利落ちや株式分割がある場合は価格を調整する
  3. 未受領の配当も相続財産として確認する
  4. 死亡前に売却した株式は二重計上しない

1. 休日は直前営業日の株価を使うとは限らない

死亡日が土日や祝日で終値がない場合、原則として死亡日の前後で最も近い、終値のある日の株価を使います。該当する日が前後に2日ある場合は、両日の終値の平均額を用います。権利落ちの日をはさむ場合は、別の扱いになる点に注意が必要です。

たとえば、日曜日に亡くなった場合、金曜日は死亡日の2日前、月曜日は1日後にあたります。月曜日に終値があれば、死亡日に最も近い月曜日の終値を採用し、死亡月・前月・前々月の月平均額と比較します。

2. 権利落ちや株式分割がある場合は価格を調整する

権利落ちとは、株式分割などの権利を取得できない状態で株式が取引されることです。国内上場株式の通常取引では、権利確定日の1営業日前から権利落ちとなります。株式分割が行われると株数が増え、1株当たりの株価も変わります。たとえば、1株を2株に分割すると、株価は理論上半分になるため、分割前後の株価をそのまま比較することはできません。

相続税評価では、比較期間中に権利落ちがある場合、終値や月平均額に特別な取扱いが必要になることがあります。また、配当を受ける権利がなくなる「配当落ち」についても、死亡日との関係によって評価方法が異なります。

死亡日・権利落ち日・配当落ち日・基準日などを確認し、適切な株価を用いることが重要です。

3.未受領の配当も相続財産として確認する

株式とは別に、まだ受け取っていない配当も相続財産になる場合があります。配当金交付の基準日の翌日から、配当金交付の効力が発生する日までの間に亡くなった場合は、「配当期待権」として評価します。配当期待権とは、将来配当を受け取ることができる権利です。

配当の効力が生じ、支払請求権が確定した後、まだ入金されていない場合は「未収配当金」として確認します。配当期待権と未収配当金は、株式の評価額とは別に計上します。配当期待権は、予想配当額から所得税・住民税の源泉徴収等に相当する額を差し引いて評価します。配当金の通知書などで、基準日・効力発生日・入金日を確認しましょう。

4. 死亡前に売却した株式は二重計上しない

亡くなる直前に株式の売却が成立し、代金の受け渡しが済んでいない場合があります。国内上場株式の通常取引では、受渡日は約定日から2営業日後です。売却が成立していても、受渡日前のため、残高証明書に株式が記載されていることがあります。


死亡前に売却が成立した株式は、原則として未収の売却代金を相続財産として計上します。
取引報告書で約定日・受渡日・売却金額を確認しましょう。売却済みの株式と未収の売却代金を二重に計上しないよう注意が必要です。

上場株式の相続税評価後の納税資金

相続税評価額は、株式を売却して手元に入る金額とは異なります。売却時の取得費や税金を踏まえて、納税に使える資金を確認する方法を説明します。

  • 売却時の取得費を口座別に確認する
  • 売却後の手取りで納税資金を考える

売却時の取得費を口座別に確認する

相続した株式を課税口座で売却すると、売却益に所得税・復興特別所得税と住民税がかかります。取得費(購入代金や手数料など)は、亡くなった方が保有していた口座の種類によって取扱いが異なります。

確認する金額課税口座(特定口座・一般口座)NISA口座
相続税評価額4つの株価のうち最も低い価格 × 株数課税口座と同じ
売却時の取得費亡くなった方の取得費を引き継ぐ相続開始時の時価(通常は死亡日の終値に相当する価額)

相続税評価で使った月平均額を、そのまま取得費にするわけではありません。NISA口座の株式は、相続人の特定口座または一般口座で受け入れます。相続人のNISA口座には移せない点に注意しましょう。なお、亡くなった方が課税口座で保有していた株式について、取得費がわからない場合は、売却代金の5%相当額を取得費として計算することも認められています。

売却後の手取りで納税資金を考える

相続後に株価が下がっても、その後の売却価格を使って相続税評価額を計算し直すことはできません。相続税評価額は、亡くなった日を基準とする所定の評価方法によって決まるためです。計算例のA社株を課税口座で相続し、全株を売却した場合で確認します。

項目金額
死亡日の時価5,000万円
相続税評価額4,200万円
売却代金4,500万円
引き継いだ取得費2,000万円
売却益(手数料・特例を考慮する前)2,500万円
譲渡益に対する税金(20.315%)約508万円
税引後の売却代金(概算)約3,992万円

※売却手数料、取得費加算の特例、他の株式等の譲渡損益との通算などは考慮していません。

通常の課税口座で保有していた株式は、原則として亡くなった方の取得費を引き継ぎます。そのため、死亡日の時価が5,000万円でも、取得費が2,000万円であれば、4,500万円で売却した際に2,500万円の売却益が生じます。


一方、亡くなった方がNISA口座で保有していた株式は、原則として死亡日の時価が相続人の取得費になります。この例では取得費が5,000万円となるため、4,500万円で売却すると500万円の譲渡損失が生じ、売却益に対する税金は発生しません。


同じ金額で売却しても、亡くなった方が保有していた口座によって税負担が異なります。相続税の納税資金を考える際は、売却時の税金や手数料を差し引いた手取り額を確認しましょう。

相続により株式を取得し、その株式について相続税が課税された方は、一定期間内に売却して譲渡益が生じた場合、相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。売却期限は、原則として相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。特例の適用には確定申告が必要なため、売却前に確認しましょう。

上場株式の相続税評価の相談なら税理士法人ネイチャー

税理士法人ネイチャーでは、上場株式を含む相続税申告のご相談をお受けしています。

証券会社の資料をもとに、銘柄ごとの評価額や配当の計上漏れを確認します。亡くなった日が休日の場合や、株式分割が行われている場合なども、適切な株価に基づく評価が可能です。相続税の申告だけでなく、相続後の二次相続対策についてもご提案が可能です。

また、株式の売却に伴う税負担や手取り額を踏まえ、どの資産を売却し、どの資産を保有するかについてもご相談いただけます。初回のご面談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

まとめ:上場株式の相続税評価は原則4つの株価を比較する

上場株式の相続税評価は、原則として4つの株価を銘柄ごとに比較します。最も低い価格に保有株数を掛けた金額が、評価額です。株数は証券会社の残高証明書、株価はJPXの資料などで確認しましょう。休日や株式分割、未受領の配当がある場合は、個別の確認が必要です。評価後は、売却時の取得費や税金を踏まえて納税資金を準備しましょう。

税理士法人ネイチャーでは、上場株式の評価から納税資金の確保、相続後の二次相続対策まで一体的にご相談いただけます。基礎控除を超えて申告が必要かどうかの判定も無料で行います。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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