「先祖代々の土地を、できるだけ子どもに残したい」と考える地主の方は多いのではないでしょうか。
建築会社や金融機関から、アパート建築や法人化を勧められていても、どの土地にどの対策が適しているのか、迷う方も少なくありません。
地主の相続税対策は、土地の利用状況や相続する人によって効果が異なります。土地に合わない対策を選ぶと、期待した節税効果が得られない場合もあるので注意が必要です。
この記事では、所有する土地に合った相続税対策の選び方を税理士法人の視点から解説します。特例の適用先の比較方法や、相続人ごとの納税資金の準備についても取り上げます。
地主の相続税対策で最初に確認すべきこと
まずは、所有する土地を1か所ずつ一覧表にまとめましょう。土地ごとの利用状況や評価額を把握することで、適切な相続税対策を検討しやすくなります。具体的には、次の5つの項目を確認しましょう。
| 確認項目 | 内容 | 主な確認資料 |
| 利用状況 | 自宅、賃貸物件、駐車場、底地、更地など | 登記事項証明書、賃貸借契約書 |
| 評価見込額 | 相続税を計算する際の土地の評価額の目安 | 固定資産税の課税明細書、路線価図、評価倍率表 |
| 年間の手残り | 家賃・地代収入から税金、管理費、修繕費、借入金の返済額などを差し引いた金額 | 確定申告書、収支の記録、返済予定表 |
| 借入残高 | 建物の建築などに伴う借入金の残高 | 返済予定表 |
| 承継予定者 | 土地を引き継ぐ予定の相続人 | 家族の意向、遺言書の有無 |
相続税評価額は、実際の売却価格や固定資産税評価額と一致するとは限りません。また、借地権の目的となっている土地(底地)は、原則として自用地としての価額から借地権の価額を差し引いて評価します。
ただし、親族などに無償で貸している使用貸借の場合は、原則として自用地評価となるため、土地の貸付条件を確認することが重要です。
地主の相続税対策を土地別に選ぶ
地主の相続税対策は、土地の利用状況によって優先すべき方法が異なります。自宅や賃貸物件の敷地では、特例による評価額の軽減を検討します。一方、収益性の低い底地や未利用の土地は、売却による納税資金の確保も選択肢です。
| 土地の種類 | 優先して確認すること | 主な対策の候補 |
| 自宅の敷地 | 配偶者や同居親族など、誰が相続するか | 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等) |
| 賃貸物件の敷地 | 賃貸状況、借入金返済後の収支、貸付開始時期 | 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)、建物の贈与、法人化 |
| 月極駐車場 | 舗装などの構築物の有無、貸付状況、収益性 | 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等※)、賃貸建物の建築 |
| 底地 | 地代の水準、借地人との契約関係 | 借地人への売却、納税資金の確保 |
| 更地・収益性の低い土地 | 今後の利用予定、売却の可能性 | 賃貸建物の建築、売却による納税資金の確保 |
※月極駐車場であれば、必ず貸付事業用宅地等の特例を利用できるわけではありません。小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、原則として建物または構築物の敷地の用に供されている土地です。例えば、構築物に該当するアスファルト舗装等がある場合は適用を検討できますが、単なる青空駐車場では対象にならないことがあります。
相続税評価額の軽減を目指す土地と、売却して納税資金を確保する土地を分けて検討することが重要です。
地主の相続税対策で納税額を減らす方法
地主の相続税対策には、土地の評価額を下げる方法や、非課税制度・生前贈与を活用する方法があります。主な4つの方法について、適用条件と注意点を確認しましょう。
- 小規模宅地等の特例を活用する
- 本人名義で賃貸建物を建てる
- 生命保険の非課税枠を活用する
- 現預金を計画的に生前贈与する
1. 小規模宅地等の特例を活用する
一定の要件を満たす自宅や賃貸用の土地は、相続税評価額を減額できます。主な区分は次のとおりです。
- 自宅の敷地(特定居住用宅地等): 330㎡まで80%減額
- 賃貸用の土地(貸付事業用宅地等): 200㎡まで50%減額
自宅の敷地は、配偶者や一定の要件を満たす親族が取得する場合などが対象です。賃貸用の土地については、取得した相続人が原則として相続税の申告期限まで土地を保有し、貸付事業を継続する必要があります。
また、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された土地は、原則として対象外です。ただし、被相続人等が3年を超えて引き続き特定貸付事業を営んでいた場合などには、例外的に特例の対象となることがあります。自宅と賃貸用の土地に併用する場合は、面積の上限が調整されるため、適用先の選び方が重要です。
2. 本人名義で賃貸建物を建てる
地主本人が所有地に賃貸建物を建てると、土地と建物の相続税評価額が下がる場合があります。建物は固定資産税評価額をもとに評価し、賃貸部分は借家権割合などに応じて減額します。敷地も貸家建付地として、自用地より低く評価される場合がある点に注意が必要です。
賃貸建物の建築には、銀行からの借入れを利用するケースもあります。借入れをしただけでは、現預金と債務が同額増えるため、相続税の軽減にはつながりません。
節税効果が生じるのは、建築した建物や敷地の相続税評価額が、建築に投じた金額より低くなる場合などです。建築後の評価額の変化だけでなく、返済負担や収益性も踏まえて検討しましょう。
なお、2026年9月18日に公表された通達案では、2027年1月1日以後の相続・贈与などについて、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を、原則として通常の取引価額に相当する金額で評価する見直しが示されています。
ただし、一定の要件を満たせば、取得価額を基に調整した金額の80%で評価できるほか、以前から所有する土地に新築した建物についても経過措置が予定されています。現時点では通達案のため、最終的な取扱いを確認する必要があります。
適用時期や経過措置を含め、最終的な取扱いを確認する必要があります。
3. 生命保険の非課税枠を活用する
亡くなった人が保険料を負担し、相続人が受け取る死亡保険金には、原則として「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。相続放棄をした人も法定相続人の数には含まれますが、その人が受け取る保険金には非課税枠が適用されません。
土地を引き継ぐ相続人を受取人に指定すれば、納税資金の確保にもつながります。
ただし、保険料の負担者、被保険者、受取人の組み合わせによって、相続税・所得税・贈与税のいずれが課されるかが異なります。契約内容を事前に確認しましょう。
4. 現預金を計画的に生前贈与する
生活費や土地の維持管理費を確保したうえで、現預金を子や孫に贈与する方法です。暦年課税では、贈与を受ける人1人につき、年間110万円の基礎控除があります。
ただし、相続や遺贈などにより財産を取得する人が、被相続人から受けた暦年課税による生前贈与については、一定期間分が相続税の課税価格に加算されます。
2026年中の相続では原則として相続開始前3年以内、2031年以後の相続では7年以内の贈与が対象です。2027年から2030年までは段階的に延長されます。延長された期間にあたる相続開始前3年超の贈与については、合計100万円まで加算されません。
一方、相続時精算課税では、2024年以後の贈与について年間110万円の基礎控除が設けられており、その範囲内の贈与は相続財産に加算されません。
原則として、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、同日時点で18歳以上の子・孫への贈与が対象です。一度選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税には戻せません。どちらの制度が適しているかは、贈与する金額や期間、将来の相続財産を踏まえて判断しましょう。
地主の相続税対策で所得を相続人に移転する方法
今後の家賃収入を相続人が受け取る仕組みにすることで、地主本人の財産の増加を抑えられます。相続人が納税資金を準備できる点もメリットです。
- 地主の土地に相続人が賃貸建物を建てる
- 賃貸建物を相続人に生前贈与する
- 法人を活用して相続人へ報酬を支払う
地主の土地に相続人が賃貸建物を建てる
相続人が自分の資金で賃貸建物を建て、家賃収入を得る方法です。家賃は相続人の収入となるため、地主本人の財産の増加を抑えられます。
ただし、地代を受け取らずに土地を貸す使用貸借では、土地は原則として自用地として評価され、貸家建付地による評価額の減額は受けられません。地主と生計を一にする親族が賃貸事業を営む場合は、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)が適用されることがあります。
一方、生計を別にする親族が土地を使用貸借して賃貸事業を行う場合は、原則として適用できません。土地の相続税評価額と将来の家賃収入への影響をあわせて比較しましょう。
賃貸建物を相続人に生前贈与する
既存の賃貸建物を相続人に贈与し、以後の家賃収入を移す方法です。通常の贈与では、建物は固定資産税評価額を基礎として評価するため、建築費より低い価額で贈与できる場合があります(※賃貸物件の場合は上述の5年ルールの影響を受けることも考慮する必要があります)。
ただし、贈与税のほか、不動産取得税や登録免許税も発生します。また、敷金返還債務を引き継ぐ場合は、負担付贈与に該当し、建物を通常の取引価額で評価する必要が生じるほか、贈与者に譲渡所得税が課されることもあります。敷金相当額の現金を同時に移転する場合なども含め、課税関係を確認しましょう。
また、建物の贈与後に土地を使用貸借とした場合でも、贈与前からの入居者が継続している部分については、貸家建付地評価が認められることがあります。一方、贈与後に入居者が入れ替わった部分などは、自用地評価となる場合があるため注意が必要です。小規模宅地等の特例への影響も含め、贈与時の税負担と敷地の相続税評価をあわせて検討しましょう。
法人を活用して相続人へ報酬を支払う
賃貸物件の保有や管理業務を行う法人を設立し、相続人を役員に迎える方法です。法人が賃貸収入や適正な管理報酬を得る仕組みを整え、実際に業務を担う相続人へ役員報酬を支払うことで、相続人の資産形成につなげられます。
ただし、役員報酬は職務内容に見合う適正な金額とし、原則として定期同額給与などの要件を満たす必要があります。過大な部分は法人の損金に算入できません。
また、法人化には設立費用や維持費、法人税・所得税などの負担も伴います。名義や振込先を変えるだけでは所得を移転できないため、法人の事業実態と税負担を踏まえて判断しましょう。
地主の相続税対策を具体例で比較する
複数の土地が小規模宅地等の特例の対象になる場合、適用先によって減額額が異なります。
貸付事業用宅地等の特例は、原則として合計200㎡まで50%減額できます。ここでは、土地A・Bのいずれも特例の対象となり、土地を相続する子が適用要件を満たしている場合に、どちらか一方の200㎡に特例を適用するケースを比較します。なお、ほかの宅地には特例を適用しない前提です。
| 比較項目 | 土地A | 土地B |
| 面積 | 200㎡ | 200㎡ |
| 特例適用前の評価額 | 6,000万円 | 9,000万円 |
| 50%減額を適用した場合の減額額 | 3,000万円 | 4,500万円 |
同じ200㎡でも、土地Bに適用すると減額額は1,500万円多くなります。限度面積が同じなら、1㎡あたりの評価額が高い土地ほど減額額は大きくなります。
ただし、減額額は相続税評価額の減少分であり、相続税そのものの軽減額とは異なる点に注意が必要です。実際の税額は、遺産総額や相続人の数などによって変わります。
また、貸付事業用宅地等の特例では、原則として申告期限まで土地の保有と貸付事業の継続が必要です。売却予定も踏まえて、特例を適用する土地を選びましょう。
地主の相続税対策で納税資金を準備する
家族全体では納税に必要な現預金が足りていても、土地を取得する相続人の資金が不足する場合があります。相続人ごとに確認しましょう。
- 相続人ごとの不足額を求める
- 不足額に応じて資金の準備方法を選ぶ
相続人ごとの不足額を求める
以下の例では、長男と次男の2人を相続人として、取得予定の財産、納税見込額、使える現預金を整理します。
| 項目 | 長男 | 次男 |
| 取得する財産 | 賃貸物件と土地3億円、現預金2,000万円 | 現預金1億円 |
| 納税見込額 | 約8,930万円 | 約2,790万円 |
| 使える現預金 | 2,000万円 | 1億円 |
| 過不足 | 約6,930万円の不足 | 約7,210万円の余り |
※配偶者はいない前提です。小規模宅地等の特例・債務・税額控除などを考慮しない概算です。
家族全体では現預金が1億2,000万円あり、相続税の合計約1億1,720万円を上回っています。しかし、長男は約6,930万円の納税資金が不足しています。次男が長男の相続税を無償で肩代わりした場合、贈与税が課される可能性があるため、遺産分割の段階から納税資金の配分を検討することが重要です。
また、代償分割(財産を多く取得した人が、ほかの相続人に金銭などを渡す方法)を予定する場合は、その支払資金も確認しましょう。
不足額に応じて資金の準備方法を選ぶ
不足額が分かったら、誰が・いつまでに・いくら準備するかを決めます。相続税は、原則として申告期限までに金銭で一括納付します。生前であれば、生命保険の受取人指定や家賃収入の移転などが選択肢です。土地を売却する場合は、譲渡所得税などを差し引いた手取り額で判断しましょう。
相続税が課税された人が、相続で取得した土地を相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合、一定の要件を満たせば、相続税額の一部を譲渡所得の計算上、取得費に加算できる特例があります。相続後の資金調達には、借入れや延納、物納があります。
延納は、金銭での一括納付が困難な場合に分割納付する制度で、原則として担保や利子税が必要です。物納は、延納によっても金銭で納付することが困難な場合に認められる制度です。
延納・物納は、原則として相続税の申告期限までに申請し、税務署長の許可を受ける必要があります。希望しても必ず認められるわけではないため、生前から納税資金を準備しておくことが重要です。
地主の相続税対策を実行する際の注意点
相続税対策を実行する前に、次の4点を確認しましょう。
- 実行時の税金と費用: 贈与税、不動産取得税、登録免許税、法人へ賃貸建物を売却する場合の譲渡所得税や消費税など
- 実行後の財産の保有状況: 地主本人が所有する法人の株式や法人への貸付金も、相続財産に含まれる
- 法人の設立・維持費用: 設立時の登記費用や毎年の税務申告費用など
- 貸付用不動産の評価見直し案: 取得・新築の時期、適用予定時期、経過措置の内容
相続税の軽減が見込めても、対策の実行や維持にかかる費用によっては、期待した効果が得られない場合があります。実行後の財産構成や将来の税負担も含めて比較することが重要です。
地主の相続税対策なら税理士法人ネイチャー
複数の土地を所有する地主の相続税対策では、土地ごとの評価額や特例の適用条件に加え、収益性や相続人ごとの納税資金まで考慮することが重要です。不動産の相続税評価額の算出は、税理士でも誤りの多い専門性の高い分野です。
不動産を多くお持ちの場合は、税理士事務所との近さを優先するのではなく、相続税を専門的に扱っている事務所かどうかで、依頼先を決めることがオススメです。
税理士法人ネイチャーは、相続税申告と相続税対策を専門的に扱っている税理士法人です。顧問契約は必要ございませんので、現在の顧問税理士との関係を維持しながら、小規模宅地等の特例の適用や不動産の組み換えによる相続税対策、建物の贈与や法人活用など、複数の対策を比較・検討できます。
税務と資産運用の両面から、相続税の軽減だけでなく、土地の収益性や納税資金、次世代への資産承継まで一体的に検討できる点が強みです。初回のご面談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
まとめ:地主の相続税対策は土地の状況に応じて選ぶ
地主の相続税対策では、所有する土地の利用状況や収益性、承継予定者に応じて対策を選ぶことが重要です。
土地ごとの評価額や特例の適用条件を確認し、保有を続ける土地と売却して納税資金を確保する土地を整理しましょう。また、土地を取得する相続人が納税に困らないよう、生前から資金を準備しておくことも大切です。
相続税の軽減だけでなく、土地の収益性や相続後の資産管理まで見据えて、対策を検討しましょう。現在のご資産状況に合わせた相続税対策を検討したい方は、税理士法人ネイチャーの無料相談をご利用ください。
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