事業承継がうまくいかない原因は?成功させるための回避策

「後継者は決めたのに、事業承継の話が前に進まない」と悩む経営者は少なくありません。事業承継がうまくいかない原因は、会社ごとに様々です。

利益が出ている会社でも、自社株の承継に伴う税負担や株式の分散、後継者の資金負担などが原因となり、事業承継が進まなくなることがあります。また、準備を始める時期が遅くなるほど、利用できる制度や選択できる承継方法が限られる可能性があります。

この記事では、事業承継がうまくいかないと会社にどのような問題が生じるのか、失敗につながる主な原因とその回避策を税理士が解説しました。事業承継で起こりやすい失敗をあらかじめ知っておくことで、自社が抱えるリスクを整理し、早めに対策を検討しやすくなります。

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事業承継がうまくいかないと起こりうる事態

事業承継がうまくいかない状態とは、後継者の育成不足や自社株の承継に伴う納税・株式取得資金の不足、親族や関係者との合意形成不足などにより、経営権や自社株の承継が円滑に進んでいない状態です。事業承継が停滞すると、会社の経営や資金繰りにも影響が及ぶ可能性があります。

ここでは、事業承継の失敗によって起こりうる主な事態を4つ解説します。

起こりうる事態主な引き金
廃業後継者が決まらないまま経営者の引退時期を迎える
業績の悪化経営権の移行が進まず、意思決定や経営方針が不安定になる
従業員の退職後継者への不信や経営方針・人事の急な変更が生じる
資金繰りの悪化納税や株式取得など、事業承継に伴う資金負担が大きくなる

廃業を余儀なくされる

事業承継がうまくいかず、後継者が見つからないまま経営者が引退時期を迎えると、業績に大きな問題がなくても廃業を選択せざるを得ない場合があります。

帝国データバンクの調査では、2025年の休廃業・解散は6万7,949件でした。うち、直前期が黒字だった企業は49.1%です。休廃業・解散した企業の約半数は、直前期まで黒字でした。

廃業時には、資産を売却して債務を返済します。ただし、設備や在庫は帳簿上の金額どおりに売却できるとは限りません。さらに、取引先や従業員が離れると、事業価値が低下する可能性もあります。

清算手続きには登記や税務申告なども必要です。対応を先送りすると、事業承継やM&Aなどの選択肢が狭まる可能性があるため、早めの検討が重要です。

参照:帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)

業績が大きく悪化する

経営権の移行が滞ると、意思決定の主体が曖昧になり、業績に悪影響が及ぶおそれがあります。取引先との窓口や責任者が不明確になれば、取引の継続や新規受注に影響しかねません。金融機関も、後継者の経営方針や実績が見えにくい場合には、融資判断を慎重にする可能性があります。

意思決定の遅れは、収益の損失につながりかねません。設備投資や採用が停滞すれば、競合他社との差が広がる可能性もあります。

業績悪化が続くと、会社の信用力にも影響します。融資条件の見直しによって金利負担が増えたり、取引先から支払条件や与信枠を見直されたりすることも考えられます。一度悪化した取引条件は、業績が回復してもすぐに元へ戻るとは限りません。

経営権の移行が長引くほど、事業の立て直しに時間やコストを要する可能性があります。

従業員の退職が増加する

事業承継を機に、幹部社員や従業員が退職することがあります。後継者の経験不足への不安や、経営方針の急な変更などが原因です。長く勤めた社員ほど前経営者との信頼関係が強く、引き継ぎの説明が不十分だと不安や不信につながる可能性があります。

現場を支える人材が抜ければ、品質や納期に影響が及ぶこともあります。特に技術やノウハウが特定の社員に集中している会社では、影響が大きくなりやすいでしょう。

人材流出が連鎖するおそれもあります。熟練社員が辞めれば残った社員の負担が増え、さらなる退職につながることもあります。人手不足が続くなか、失った人材を短期間で補うのは容易ではありません。

事業承継では、代表交代の前から従業員への説明や面談を段階的に行うことが重要です。

資金繰りが悪化する

後継者が自社株を引き継ぐ際には、相続税・贈与税や株式取得資金の負担が生じることがあります。自社株は上場株式のように市場で容易に換金できないため、納税資金の確保が課題になりやすい点に注意が必要です。

役員報酬を増やす、会社から後継者へ貸し付ける、会社が自己株式として買い取るなどの方法も考えられますが、税務上・会社法上の検討が必要です。会社から多額の資金が流出すれば、本業に必要な運転資金や投資資金を圧迫するおそれがあります。

また、納税や株式取得のために借入れを行った場合は、その後も返済や利払いが続きます。財務内容が悪化すれば、金融機関の融資審査や今後の借入条件に影響する可能性もあります。

事業承継では、承継時の納税額だけでなく、その後の返済や事業資金まで含めた資金計画を立てておくことが重要です。

事業承継がうまくいかない主な原因

事業承継がうまくいかない主な原因として、準備開始の遅れや後継者への権限移譲不足が挙げられます。ここでは、事業承継が停滞しやすい2つの原因を解説します。

  • 準備開始が遅れて選択肢が狭まる
  • 後継者への権限移譲が進まず、成長が阻害されている

準備開始が遅れて選択肢が狭まる

事業承継の着手が遅れるほど、取れる手段が限られる可能性があります。後継者の育成を含めると、事業承継の準備には5~10年程度かかることもあるためです。自社株の承継対策にも、実行する時期によって効果や取扱いが変わるものがあります。

たとえば、役員退職金は退任の時期と関係します。また、非上場株式を純資産価額方式で評価する場合、会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地・家屋等は、原則として通常の取引価額に相当する金額で評価するため、自社株式の評価額が高く出やすくなります。

後継者の育成や自社株の対策には十分な時間が必要です。

着手すべき時期の判断は以下の記事で解説しています。

後継者への権限移譲が進まず、成長が阻害されている

代表を交代しても、実際の権限が後継者へ移っていない会社があります。前経営者が会長などの立場で残り、重要な判断に関わり続けるためです。社員から見れば誰の指示に従うべきか迷いが生じ、取引先も従来どおり前経営者へ連絡することがあります。

その結果、後継者が形式的には代表者でも、実質的な意思決定を行えず、経営者としての経験を積みにくくなる場合があります。

また、株式が前経営者に集中したままであれば、原則として議決権も前経営者側に残ります。円滑な事業承継には、株式や議決権だけでなく、日常の決裁権や経営判断の権限も段階的に後継者へ移していくことが重要です。

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事業承継が財務や税務面でうまくいかないケース

事業承継では、財務・税務面の問題が原因で手続きが進まないこともあります。特に、納税資金の確保や遺産分割をめぐる親族間の調整は重要な論点です。ここでは、代表的な2つのケースを解説します。

  • 納税が会社の運転資金を圧迫する
  • 遺産分割に対する不満が出る

納税が会社の運転資金を圧迫する

自社株の評価額が高いと、後継者が相続や贈与で株式を取得した際に、多額の相続税・贈与税が生じる可能性があります。非上場株式は現金化しにくいため、十分な現預金を持たない後継者にとって納税資金の確保が課題になります。

納税資金が不足する場合は、資金調達の方法を検討する必要があります。会社から借り入れれば後継者に返済負担が残り、役員報酬を増やせば所得税や社会保険料の負担も増えます。なお、会社から役員への貸付けは、利率などの条件によって税務上の取扱いにも注意が必要です。

会社の資金を納税資金の調達に充てれば、運転資金や設備投資、採用などに影響する可能性があります。事業承継では、承継前から納税資金の確保まで含めて計画しておくことが重要です。

遺産分割に対する不満が出る

後継者へ自社株を集中させると、他の相続人が取得できる財産が少なくなることがあります。相続財産の大半を自社株が占める場合は、相続人間の公平をめぐって不満が生じやすくなります。

配偶者や子、直系尊属などの一定の相続人には、最低限の遺産を確保するための「遺留分」が認められています。遺留分とは、相続人が最低限もらえる相続財産の割合について民法に定められたものです。

遺言書を残したとしても遺留分を侵害している場合、財産を多くもらった相続人に対して、もらった財産が少ない相続人は遺留分の侵害額を請求することができます。2019年7月1日施行の民法改正により、遺留分を侵害された場合は、原則として金銭の支払いを請求する仕組みとなりました。

遺留分侵害額請求を受けると、後継者が金銭を用意しなければならず、資金が不足すれば株式や他の資産の売却などが必要になる可能性があります。経営承継円滑化法には、一定の要件のもと、自社株を遺留分算定の対象から除外したり、評価額を固定したりできる民法の特例もあります。

一方、遺言書がない場合は、後継者が当然に自社株を取得できるわけではありません。相続人全員による遺産分割協議を行い、自社株を誰が取得するかを決める必要があります。協議がまとまらなければ、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に進むこともあります。

遺産分割では法定相続分が一つの基準となるため、相続財産の大半を自社株が占めている場合、後継者に自社株を集中させるためには、他の相続人に現預金や不動産などの財産を取得してもらう、あるいは後継者が代償金を支払うといった調整が必要になることがあります。

そのため、事業承継では自社株を誰に承継させるかだけでなく、他の相続人への財産の配分や、遺留分侵害額・代償金の支払いに必要な資金まで含めて、相続発生前から検討しておくことが重要です。

事業承継がうまくいかない3つの失敗事例

事業承継の失敗には、いくつかの典型的なパターンがあります。ここでは、事業承継がうまくいかない代表的な3つの事例を解説します。

  1. 突然の相続で多額の税負担が生じた事例
  2. 自社株の配分をめぐって親族間で争いが起きた事例
  3. M&A成立後に社風が合わず、優秀な人材が離職した事例

1. 突然の相続を迎えて多額の税金負担が生じた事例

自社株の承継対策に着手する前に経営者が急逝し、後継者が高い評価額の自社株を相続することがあります。納税資金が不足すれば、不動産などを売却して相続税を支払うケースもあります。

相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要です。相続後は生前贈与などの選択肢を取れないため、早めの準備が重要です。

2. 自社株の配分をめぐって親族間で激しい争いが起きる事例

遺言がないまま相続が発生し、遺産分割の結果、自社株が3人の子に分散しました。経営に関わるのは長男だけでした。

株主総会の特別決議は原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

長男の持分が3分の1では、単独で定款変更などの特別決議を成立させられません。重要な経営判断で他の株主との調整が必要となり、意思決定が滞るおそれがあります。

自社株の分散を防ぐには、遺言書の作成や生前贈与などを活用し、承継する株式の配分を早めに検討しておくことが重要です。

3. M&Aの成立後に社風が合わず優秀な人材が離職する事例

事業承継の選択肢の一つに外部への承継、いわゆるM&Aがあります。M&A後に評価制度を大きく変更した結果、従業員の不満が高まり、中堅社員の退職が相次ぐケースも考えられます。

譲渡後も、制度や企業文化をすり合わせる統合作業が重要です。評価制度の変更時期や従業員への説明方法まで、事前に検討しておく必要があります。

事業承継がうまくいかない事態を回避するための3つの対策

事業承継の失敗を防ぐには、会社と経営者個人の資産状況を整理し、税理士を交えて計画的に進めることが重要です。ここでは、3つの対策を解説します。

  1. 会社と個人の資産を分けて可視化する
  2. 税理士に相談しながら進める
  3. 早い段階で対策方法を整理する

会社と個人の資産を分けて可視化する

対策の出発点は、会社と経営者個人の資産を整理することです。誰が何を所有しているかを把握しなければ、承継方法や税負担を適切に検討できません。

中小企業では、経営者個人名義の不動産を会社が使用しているなど、会社と個人の資産関係が複雑になっていることがあります。まずは資産の名義と利用実態を洗い出し、一覧化しましょう。

そのうえで、自社株の評価額と個人資産を整理すれば、後継者への資産配分や納税資金について具体的に検討しやすくなります。

整理すべき項目は以下の記事で解説しています。

税理士に相談しながら進める

親族間の話し合いは、過去の経緯や感情が影響し、当事者だけでは進みにくいことがあります。制度や数字を示すことで、客観的に話し合いやすくなるでしょう。

なぜ後継者に株式を集中させるのか、他の相続人にどの財産を渡せるのかを数字で示せば、理解を得やすくなります。

税理士を選ぶ際は、非上場株式の評価や事業承継の実務経験を確認しましょう。必要に応じて、弁護士や司法書士などと連携できる体制があるかも判断材料になります。

早い段階で対策方法を整理する

非上場株の相続税や贈与税の計算上の評価は、社歴が長くなり利益を積み重ねるほど高くなりやすい傾向にあります。会社が大きく成長する前から事業承継に向けた対策を行っておけば、将来的に大きな相続税・贈与税などの支払いが起こってしまうことを回避できる可能性があります。

また株価対策なども、通常数年単位で行うことが多く、前もって取り組みをしておくことが非常に重要になります。そのため、事業承継に向けた対策方法の整理は、事業承継が10年以上先にあるような状況であっても、早い段階から進めておくことが重要です。

事業承継がうまくいかないとお悩みなら税理士法人ネイチャー

事業承継が進まない原因は、税負担や株式の配分、後継者への権限移譲など、複数の問題が絡み合っていることがあります。

税理士法人ネイチャーは、事業承継のサポートを多角的に行っているセカンドオピニオン専門の税理士法人で、とりわけ相続税・贈与税などの事業承継のコストの引き下げに向けた各種対策や特例の活用をご提案しています。自社株や個人資産の状況を整理し、事業承継を進めるうえでの課題や対策を検討します。

なお、法人の顧問契約を承っておりません。顧問税理士の方との関係はそのままに、事業承継や相続税等に関することだけご相談をしていただけます。

事業承継がうまく進まずお悩みの方は、税理士法人ネイチャーの無料相談にお申し込みください。

まとめ:事業承継がうまくいかない場合は専門家による介入を

事業承継がうまくいかないと、廃業や業績悪化、従業員の退職、資金繰りの悪化につながる可能性があります。原因は、準備の遅れや後継者への権限移譲不足などさまざまです。

まずは会社と個人の資産、自社株の評価額を整理し、納税資金や資産配分を検討できる状態にしましょう。

親族間の調整や税務上の判断が難しい場合は、早めに専門家へ相談することが重要です。

税理士法人ネイチャーでは、事業承継に関するご相談に対応しています。何から始めればよいか分からない段階でも、お気軽にお問い合わせください。

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