「会社の設立が節税になると聞いたけれど、いまいちよくわからない」
「サラリーマンで副業だけど会社の設立ってした方が良いの?」
サラリーマンの副業、個人事業主の両方とも会社の設立が節税につながるケースがあります。特に、売上が1,000万円近い場合は、得られる節税効果も大きくなるでしょう。
本記事では、会社設立での節税メリットを9つ紹介します。会社設立後に節税する裏ワザやサラリーマンの方が会社設立をする際の流れについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
会社設立による節税メリット9つ
では早速、会社設立による節税メリットを9つ紹介します。
- 法人税で15%か23.20%の税率におさえられる
- 経費として扱えるものの幅が広がる
- 役員報酬に給与所得控除を適用できる
- 所得を妻などの家族と分配できる
- 退職金の支給で節税できる
- 赤字繰り越しが最大10年間活用できる
- 設立から最大2年間は消費税を免除される
- 相続税や贈与税をおさえられる
- 保険の活用で節税できる
1.法人税で15%か23.20%の税率におさえられる
法人税は所得税と異なり、2つの税率になります。
具体的には以下の通り。(中小法人のみ)
800万円未満の部分 | 15% |
---|---|
800万円以上の部分 | 23.20% |
所得税は課税所得が695万円を超えた段階で税率が23%となり、最大45%になります。
つまり、課税所得が増えるほど負担が増える仕組みで、一定の割合である法人税の方が税負担が少なくなるケースがあるということです。
2.経費として扱えるものの幅が広がる
会社の設立によって、個人事業主では適用されなかったものも経費として計上できます。
例えば、会社設立時に発生した創立費や開業費、給与や社会保険料、健康診断の費用なども経費になります。
経費として計上できる項目が増えれば、個人事業主よりも高い節税効果が期待できるでしょう。
ただし、社会保険料などは会社側が半額負担することになるため、従業員数によっては割高になる点は把握しておいてください。
3.役員報酬に給与所得控除を適用できる
会社を設立すると、代表である自分に対して役員報酬を支払うことになります。
個人事業と異なり、会社からの給与という扱いになるため、給与所得控除という所得税に関する控除の一種が使用可能になることもメリットの一つです。
4.所得を妻などの家族と分配できる
家族を従業員として雇っている場合、法人であれば給与として支払うことで実質的に所得を分配できます。
課税所得が少なくなれば、所得税の税率も低くなりますので、節税に直接つながります。
ただし、従業員として雇う場合社会保険料の支払いが新たに発生する可能性がある点には注意しましょう。
5.退職金の支給で節税できる
法人であれば、退職金の設定ができ、勤続年数×40万円までは無税で受け取れるようになります。これは、退職所得控除が適用されるためです。
さらに、勤続年数20年を越えた部分は年70万円の所得控除が適用されます。
その上、退職所得控除を差し引いた退職金は半分の税率になる、社会保険料は計算に含めなくて良いなど、退職金の制度を上手く活用すれば節税の効果が見込めます。
6.赤字繰り越しが最大10年間活用できる
赤字繰り越しが最大10年間活用できるのもメリットの一つです。
個人事業主だと、最大でも3年の繰り越ししかできません。しかし、会社を設立して法人化すれば、3倍以上の年数を繰り越しできます。
赤字を繰り越すことで、利益が出た場合でも過去の赤字と相殺して節税できるケースがあるため、今後の伸び代が大きい業界こそ活用できる制度です。
7.設立から最大2年間は消費税を免除される
会社を設立すると、最大2年間消費税を免除されます。ただし、以下の要件のうち1は必ず満たしている必要があり、かつ2~4のいずれかに該当することが条件です。
- 資本金が1,000万円未満である
- 特定期間の課税売上高が1,000万円以下である
- 特定期間の給与等支払額の合計が1,000万円以下である
- 設立1期目が7ヶ月以下である
つまり、時期や売上によっては1期目しか免除されないケースもゼロではありません。
特に資本金については設立時に決めるものであるため、消費税の免税事業者になりたい方は専門家と相談して会社を設立しましょう。
8.相続税や贈与税をおさえられる
会社を設立し、会社を通してお金を動かすことで相続税や贈与税をおさえることも可能です。
一般的に、相続税は税率が高く、最大55%もの税率になります。生前贈与の形で渡しても贈与税がかかり、こちらも最大55%の税率が課せられます。
法人化していれば役員報酬として贈与・相続させたい相手に資産を移転させることができるため、かかる税を所得税に変えられます。つまり、税率を低くできるのです。
ただし、役員給与を支払うには法人としての適正な業務実態が必要ですので注意してください。
9.保険の活用で節税できる
会社にかけた生命保険は、要件を満たしていれば経費計上できます。そのため、目先の法人税に関しては節税効果が望めることが特徴です。
しかし、保険金を受け取る際に法人税が課税されるため、トータルで支払う税金が変わらないケースもあります。
これはケースバイケースですので、専門家にご相談したうえで活用してください。
会社設立後の節税対策の裏ワザ5つ
実は、会社設立後に節税をする裏ワザもあります。
主な裏ワザを5つ紹介していきます。
- 役員や社員の家を社宅にする
- 未払費用を計上する
- 出張手当を支給する
- 中古車の社用車を購入する
- 売却損・除却損・評価損を計上する
1.役員や社員の家を社宅にする
役員や社員の家を社宅にすることで、節税に繋がるケースがあります。
ただし、社宅にするには賃貸料相当の50%以上の家賃を従業員が負担していることが条件です。賃貸料相当額の計算方法は法定耐用年数や床面積により異なるため、ケースバイケースになります。
役員や社員の家を社宅にする場合は、必ず専門家に相談し賃貸料相当額を出した上で行うようにしましょう。
2.未払費用を計上する
未払費用を計上することも節税につながります。
未払費用は、保険料や家賃など、決算日に支払いが完了していないサービスで発生しやすいです。「未払利息」「未払手数料」「未払家賃」などがあります。
この未払費用は、債務が確定している費用と認められれば損金として計上できるため、直接的に節税効果が得られる項目です。
ただし、債務が確定している費用と認められるには、以下の要件を満たさなければいけません。
- 債務の確定:決算日までに支払義務が発生している
- 原因事実の発生:決算日までに費用が発生している
- 金額の合理性:金額を明確に算出できる
上記のポイントを踏まえて、未払費用を計上しましょう。
3.出張手当を支給する
出張手当は、損金として算入できます。通常必要であるという条件つきですが、上限無く定められる点も重要です。
さらに、出張手当は消費税の課税仕入れに該当するため、消費税を計算する時に出張手当にかかる消費税分節税できることになります。
4.中古車の社用車を購入する
中古車の社用車を購入すると、減価償却を活用して税額をおさえられるケースもあります。
中古車は、法定耐用年数が経過した状態であり、「法定耐用年数 – 経過した年数 + 経過耐用年数の20%」で計算し、2年であれば1年で費用処理が可能です。
上記を満たす中古車は、通常4年落ちの中古車が多いです。もし新車で購入してしまうと、通常の減価償却の適用となり、6年かけて少しずつの費用処理となるため注意が必要です。
5.売却損・除却損・評価損を計上する
固定資産に関する売却損・除却損・評価損の計上も節税につながる場合があります。
不動産の評価が購入時より下がり、手放した時(売却時や除去時)に損になる場合(譲渡により損失が発生した場合)は、法人の他の利益と通算できます。
つまり、事業の売上が5,000万円、不動産の売却損が1,000万円だった場合、合計の売上は4,000万円になります。
なお、個人事業主とは異なり、法人の会計には所得という概念がありません。よって、利益の内容によって区分する必要はなく、全ての利益を損益通算します。
サラリーマンが会社設立する方法
ここでは、サラリーマンが会社を設立する方法について解説します。
サラリーマンが会社設立する手順
サラリーマンの会社設立は、以下の流れで行います。
- 会社の基本事項を決定する
- 法人の実印をつくる
- 定款を作成する
- 定款の認証を受ける
- 資本金を支払う
- 法人登記の申請をする
- 銀行口座を開設する
- 税務署関連の届出をする
- 社会保険などの手続きをする
法人化すると自分一人だけの会社であっても社会保険加入の義務が生じます。また、法人としての銀行口座や法人の実印など即座に使用するものが多いため、あらかじめ必要な要項をまとめて準備しておきましょう。
定款作成については、本来4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款であれば収入印紙無しで提出できるためコストを減らしたい方におすすめです。
資本金については1円から可能ですが、会社の信用に関わる重要な部分であることと、1,000万円を超える場合消費税の課税事業者になる点に注意してください。
サラリーマンが会社設立するときの必要書類
サラリーマンが会社を設立する際には、いくつかの書類が必要です。
必要書類については、下記の表にまとめました。
必要書類 | 書類の内容 |
---|---|
登記申請書 | 登記を申請するための書類 |
登録免許税納付用台紙 | 収入印紙を貼り付けた用紙 |
定款 | 作成した定款 |
発起人の決定書 | 本店の住所が決定された証明書 |
取締役の就任承諾書 | 取締役に就任した証明書 |
代表取締役の就任承諾書 | 代表取締役に就任した証明書 |
設立時取締役の印鑑証明書 | 取締役全員の印鑑の証明書 |
資本金の払込みがあったことを証する書面 | 資本金の支払い証明(振込証明書など) |
印鑑届出書 | 会社で使用する印鑑の証明書 |
「登記すべき事項」を記載した書面もしくは保存したCD-R | 登記簿に登録するための情報を記載した書類またはPDFなどを保存したCD-R |
手続きを進める前に、書類に漏れがないかを確認してください。
節税対策で会社設立するときの注意点
節税対策で会社を設立する時には、3つの注意点があります。
- 会社設立に20万円以上のコストがかかる
- 法人住民税は赤字でもかかる
- 副業の会社設立は損になる可能性がある
会社設立に20万円以上のコストがかかる
会社の設立時には各種登録を行う必要があり、合計20万円以上のコストが発生するケースが多々あります。
これは自分で全て行った場合の金額で、専門家に依頼する場合はここに税理士報酬や司法書士報酬で10万円程度かかり、合計30万円を超えることも珍しくありません。
会社設立時には、ある程度まとまったお金がかかることを把握しておきましょう。
法人住民税は赤字でもかかる
会社を設立すると、赤字でもランニングコストが発生します。特に大きな部分として、法人住民税は赤字だったとしても、年間7万円程の法人住民税の均等割りがかかる点が挙げられます。
個人事業主であれば、赤字の際に所得税がかかることはありません。よって、法人化のタイミングが重要になります。
副業の会社設立は損になる可能性がある
副業での会社設立には、メリットがある反面、損になる可能性もあります。
まず、売上が少ない時点での会社設立は、法人税の方が税率が高くなるため多くの税金を支払うことになります。
次に、本業の会社で副業が歓迎されていない場合、住民税・社会保険の届出・公開法人など多くの場面で副業が伝わってしまうケースなど。
上記のように会社設立が損になる可能性もあるため、収入や本業とのバランスを考慮して設立を検討する必要があります。
会社設立をしても節税にならないケース2つ
ここでは、会社を設立しても節税にならないケースを2つ紹介します。
- 売上が年間500万円未満
- 外注費用のコストが大きい
ケース1.売上が年間500万円未満
売上が年間500万円未満の場合、個人事業主として所得税を納めた方が税額が少なくなるケースが多いです。
副業として行っているのであれば、本業の給与に給与所得控除が適用でき、副業の方は一部のものを経費計上できるため、会社設立以外の節税方法が効果的です。
ケース2.外注費用のコストが大きい
法人化すると、個人事業主よりも経理作業の負担が大きくなります。
というのも、「事業主貸」や「事業主借」といった事業主勘定は使用できず、決算書は資産と負債も1円単位ズレなく作成しなければならないからです。
また、法人税申告書には別表と呼ばれる書類や決算内訳書、事業概況書も作成しなければなりません。
個人事業主時代は1人でできていた経理業務も、法人化によってより複雑化し、自身では手に負えなくなるでしょう。
そこで、経理処理や申告書作成は税理士のような専門家に委託することが一般的です。
税理士へ依頼すると、報酬の支払いコストが余分にかかるため、節税以上に負担が大きいと感じる場合は、あまりおすすめしません。
会社設立と節税に関するよくある質問
会社設立の前に、節税に関するよくある質問をおさえておきましょう。
会社設立で節税対策ができるのはなぜですか?
会社設立で節税対策できるのは、主に以下の理由が挙げられます。
- 会社を設立すると法人税に切り替わること
- 経費計上できる幅が広がること
- 社宅が設定できること
- 退職金の制度が利用可能になること
上記のように、さまざまな面で個人事業主よりも節税できる項目が増え、節税につながります。
サラリーマンの会社設立はばれますか?
ばれる可能性は十分にあります。
会社設立をすれば、「登記されて会社情報の公開」「年金事務所からの通知書の郵便」もばれる要因になります。
また、自分で「つい役員報酬や資本金の話をしてしまう」「SNSを通じて発覚するなどもきっかけになる」でしょう。
とはいえ、社会保険料の発生を防ぐために役員報酬を受け取らないようにすれば、社会保険料の通知は本業の会社に届きません。ばれる可能性を低くできます。
なお、会社に留保された利益に対しては、法人税のみが発生します。
節税対策として会社を2つ設立するのは有効ですか?
会社を2つ設立すると利益分散ができ、課税所得を法人税を15%の部分でおさえることで節税につながります。
また、多くの都道府県で資本金1,000万円未満などの法人には、事業税の軽減税率が適用になるといった節税に有利なケースも多くあります。
しかし、「設立の金額が2倍になる」「維持管理の手間が増える」「税務調査のリスクが増加する」「租税回避とみなされて税務署が否認する」「それぞれに法人住民税の均等割りがかかる」などのデメリットもあります。
会社を2つ設立することを考えている場合も、専門家に相談しながら現実的に可能かを見定めましょう。
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会社設立による節税対策を検討される方は、ネイチャーグループへご相談ください。
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まとめ:会社設立で効果的な節税対策をしよう
会社を設立することで、節税できる項目が増えるため税負担を減らすことができます。
ただし、それぞれの項目には控除や特例の制度などが絡み合うため、基本的には専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
また、サラリーマンで副業として会社を設立しようと考えている方は、「就業規則により禁止されていないか」「金額のコストに見合うだけの収益が見込めるか」など確認した上で会社を設立するか検討しましょう。
本業の場合でも、売上が年間500万円未満や、外注費が確保できないなどの場合は個人事業主の方が節税効果が見込めるケースも多々あります。
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