「アパートの棟数が増えて税金が高くなった」「そろそろ法人化すべきか悩んでいる」と頭を抱えていませんか。アパート経営の規模が拡大すると、個人のままでは手元に残る現金がどんどん減ってしまいます。
税理士法人ネイチャーは、数多くの富裕層や不動産オーナーの税務を支えた実績があります。この記事では、法人化する最適なタイミングや費用、具体的な税金の違いをプロの視点でわかりやすく解説しました。
記事を読むと、ご自身の状況に合わせて法人化すべきかどうかが明確に判断できるようになります。法人化の目安は「所得900万円」です。最適なタイミングを見極め、大切な資産を守りましょう。
アパート経営で法人化する目安は?
個人から法人へ名義を切り替える最適なタイミングを解説します。判断基準となる「所得額」と「物件規模」の2つの視点から目安を確認します。
所得が900万円を超える
累進課税とは、課税所得が増えるほど税率が高くなる仕組みです。個人の税率は、課税所得が4,000万円を超えると住民税と合わせて最大55%まで上がります。一方、資本金1億円以下の中小法人では、実効税率が概ね30%前後に収まるケースが多いため、所得が大きくなるほど法人化による税率差のメリットを得やすくなります。
ここでの「所得」とは、家賃収入から経費や青色申告特別控除などを差し引いた後の金額を指します。表面的な家賃収入ではなく、実際の利益ベースで計算することが重要です。
課税所得が900万円を超えると個人の所得税率が23%から33%に上がるため、法人税の実効税率を下回るこのタイミングで法人化を検討される方が多いです。ただし、社会保険料や法人維持コスト、物件移転コストも含めたシミュレーションが必要です。
規模が5棟10室を超える
アパート経営の規模が「10室」以上(あるいは戸建てなどの独立家屋で5棟以上)になると、税務署から事業的規模と認められます。事業的規模になると、家族への給与を経費にできたり、青色申告の特別控除額が大きくなったりします。個人ではこのラインを保っていると一定のメリットがあります。
事業的規模まで拡大したタイミングは、法人化を検討する最適な時期です。個人においては5棟10室基準を維持して個人事業主としてのメリットを生じさせるか、あるいはすべて法人化するか。規模拡大に伴い個人の税負担は重くなる可能性があるため、この段階での税額シミュレーションが不可欠となります。
【個人と法人の税金比較表(所得1,500万円の概算シミュレーション)】
法人化による節税効果をざっくりと理解していただくために、所得1,500万円の場合の概算シミュレーション表を作成しました。個人と法人で手残りが変化する様子を、具体的な数値で比較してみましょう。
法人の場合、役員報酬を活用して所得を分散させることで、この表の数値以上に一族全体の手残りを増やせる可能性があります。法人化の効果を実感するための基準としてご覧ください。
| 個人(青色申告) | 法人(役員報酬なし・全額法人利益) | |
| 所得額 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 適用税率の目安 | 約43%(所得税 + 住民税) | 約30%(法人実効税率) |
| 税額の概算 | 約490万円(所得税・住民税の累進課税ベース) | 約450万円(法人実効税率約30%ベース) |
| 役員報酬の活用(所得分散効果) | 5棟10室基準を満たす場合の青色申告専従者給与を除き家族へ自由に分散できない | 事業に従事する家族へ給与を払い出し全体の税率が結果的に下がる |
| トータル手残り | 少なくなりやすい | 家族全体で手残りを最大化しやすい |
※厳密な税額は各種控除により変動します。表の数値はざっくりとしたイメージをつかむための概算です。
アパート経営の法人化で変わる税金
個人から法人へ切り替えることで変化する税金の種類を解説します。移行に伴い新しく発生する税目や、免除される税目の仕組みを確認しましょう。
所得税から法人税へ
個人でアパート経営をしている間は、家賃収入に対して「所得税」と「個人の住民税」がかかります。法人化すると、家賃収入に対しては個人の税金はかかりません。
代わりに、法人の利益に対して「法人税」や「法人住民税」がかかる仕組みに変わります。法人の実効税率には、法人税だけでなく法人住民税や法人事業税なども含まれています。
これらをすべて合算しても、個人の最高税率である55%より大幅に低く抑えられる点が最大の強みです。また不動産経営をするオーナーへの役員報酬の払い出しは、個人側で所得税や住民税といった税金がかかる状況になりますが、法人側では経費(損金)となるため、結果的に法人・個人に所得が分散され全体の税率が引き下がる可能性があります。
個人の高い税率負担を緩和し、法人の一定税率を適用させることが法人化の効果の一つです。
物件移転に伴う税金が発生する
個人が所有しているアパートを法人へ売却して移す場合、法人は新しく不動産を取得した扱いになります。新しく不動産を取得すると「不動産取得税」や、登記を変更するための「登録免許税」という税金が発生します。
移転の際にかかる一度きりの税金ですが、物件の価値によっては数百万円単位の金額になる場合があるため、事前の資金計画が欠かせません。数年間の節税効果でこの初期費用を回収できるかを計算することが大切です。
また土地の移転は「不動産取得税」や「登録免許税」が高額になりやすいため、すでに保有しているアパートは家屋部分のみを法人に移転することが一般的ですが、その場合「土地の無償返還に関する届出」を忘れてしまうと権利金の認定課税のリスクが生じますのでご留意ください。
アパート経営を法人化する費用相場
会社を設立・維持するために必要な費用を解説します。立ち上げ時の初期費用に加え、毎年発生するランニングコストの目安を確認します。
設立時に数十万円がかかる
株式会社や合同会社を作るためには、法務局での手続きが必要です。株式会社を設立する場合は、公証役場での定款認証代や登録免許税を合わせて約25万円の初期費用がかかります。合同会社を選択すると約10万円で設立可能です。
手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合は、さらに数万円の手数料が上乗せされます。しかし、専門家に任せることで手続きの不備を防ぎ、確実なスタートを切れます。将来の相続を見据えた出資比率を決めるため、設立費用の安さだけで会社の種類を判断しないように注意してください。
税理士報酬が毎年発生する
法人の決算申告は複雑で、個人で行うのは困難です。申告作業を税理士へ依頼するため、月々の顧問料や決算ごとの申告費用が毎年発生します。
目安として、年間で数十万円程度の税理士報酬がランニングコストとして必要です。顧問料を払ってもお釣りがくるほどの節税効果を得られるかどうかが、法人化を決断する分かれ目になります。
不動産に強い税理士であれば、単なる書類作成だけでなく、金融機関からの融資を引き出しやすい決算書の作成や、優良物件への組み換えのアドバイスなど、費用以上の価値を生み出してくれます。
アパート経営で法人化するメリット
法人設立によって得られる具体的なメリットを解説します。手元資金の最大化から、将来の一族の相続対策まで網羅します。
- 所得税の負担を軽減できる
- 家族へ役員報酬を支払える
- 赤字を最長10年繰り越せる
- 生命保険料を経費に落とせる
- 相続税対策になる
所得税の負担を軽減できる
すでにお伝えしたとおり、個人の所得税は最大55%まで上がりますが、法人の実効税率は約30%でストップします。利益が大きくなれば、税率の差によって手元に残る現金の額に大きな差が生まれるでしょう。
手元に残った現金を次の物件購入のための頭金に回すなど、さらなる事業拡大のスピードを加速させる原動力になります。
高所得者ほど、この税率差による恩恵をダイレクトに受けとれます。法人化によって税率の上がり幅を抑えることで、アパート経営のキャッシュフローを改善可能です。
家族へ役員報酬を支払える
法人化すると、配偶者や子どもを法人の役員にして「役員報酬」を支払えます。アパートの利益を一つの法人に集中させず、家族へ給与として分散させると、家族一人ひとりの所得税率を低く抑えられます。
家族へ合法的に資金を分散できるため、将来の相続税支払いにおける納税資金を各自の口座で効率よく準備可能です。
ただし、報酬を支払うためには、物件の清掃管理や入居者対応、帳簿の記帳など、支払う金額に見合った実質的な業務を家族が担っている事実が必要となるため、職務内容の明確化が大切です。
赤字を最長10年繰り越せる
アパート経営では、大規模修繕などで一時的に大きな赤字が出る年があります。個人の青色申告では、赤字を翌年以降に繰り越せる期間は「3年」だけです。
例えば、屋根や外壁の全面改修工事で多額の費用が発生した年の赤字を、その後の10年間にわたる家賃収入の黒字とぶつけられるため、無駄な税金を長期間にわたって抑えこめます。
法人であれば、発生した赤字を最長「10年」まで繰り越して、将来の黒字と相殺できます。長期的な視点で税金の負担を軽くしやすいルールです。
生命保険料を経費に落とせる
法人が契約者となり役員に生命保険をかけると、支払った保険料の一部を会社の経費として計上できる場合があります。経費として利益を圧縮しながら、将来の退職金として保険金を積み立てる仕組みです。
まとまった退職金を受け取る際も、退職所得という税金の優遇枠を使えるため、生涯の手残りを多くする効果が期待できます。
現在の税制では保険料の全額を経費にすることは難しくなりましたが、法人税の軽減と役員の保障、そして退職金準備という3つの効果を同時に得られる手法として、依然として有効な選択肢です。
相続税対策になる
個人でアパートを所有し続けると、亡くなった際に不動産そのものが相続財産となり、多額の相続税が発生しかねません。法人化してアパートを会社のものにしておけば、相続の対象は「会社の株式」に変わります。
不動産は物理的に分割することが難しく、相続トラブルになりがちですが、株式であれば出資割合に応じて柔軟に分けられるため、親族間の無用な争いを未然に防ぐ効果も持ち合わせています。
生前に少しずつ家族へ株式を贈与することで、相続を見据えた円滑な一族の資産承継が実現するでしょう。
アパート経営で法人化するデメリット
法人化に伴う具体的なリスクや負担を解説します。設立後に後悔しないために、事前に把握すべき注意点を実例を交えて確認します。
- 赤字でも均等割の支払いがある
- 社会保険の加入義務が生じる
- 個人へ自由にお金を戻せない
赤字でも均等割の支払いがある
個人事業主の場合、赤字であれば所得税や住民税はかかりません。しかし法人の場合は、赤字であっても毎年必ず支払わなければならない税金があります。法人住民税の「均等割」と呼ばれるもので、最低でも年間約7万円の支払い義務が生じます。
この均等割の金額は、法人の資本金の額や従業員の数によって段階的に高くなる仕組みです。資本金を1,000万円未満に設定しておくことで、この負担を最低限の金額に抑えるのが一般的なセオリーです。利益が出ていない赤字の年であっても、一律で最低限の維持費が発生する点を考慮しておきましょう。
社会保険の加入義務が生じる
法人から役員報酬を受け取ると、健康保険や厚生年金などの社会保険に加入する義務が発生します。社会保険料は会社と個人で半分ずつ負担する仕組みですが、トータルの支払い額は国民健康保険や国民年金よりも高くなるケースがほとんどです。
【想定失敗事例】法人の税金を安くしようと、社長の役員報酬を月額100万円と高額に設定したケースがあります。しかし、役員報酬には所得税・住民税に加えて社会保険料もかかるため、会社負担分と本人負担分を合わせると年間で数百万円規模の負担になることがあります。結果として、法人税の減少額よりも社会保険料等の増加額が大きくなり、トータルの手残りが減ってしまう場合があります。
法人化の恩恵と社会保険料の負担増を天秤にかけ、総合的に得をする金額設定が不可欠です。社会保険料の料率は定期的に改定されるため、専門家と連携した毎年の報酬見直しが重要です。
個人へ自由にお金を戻せない
個人でアパートを経営している際は、家賃収入から所得税等を支払った後のお金は生活費や個人の楽しみに自由に使えます。法人の場合、会社のお金と個人のお金は明確に区別されます。
会社に貯まった利益を社長個人が自由勝手に引き出して使うことは許されません。社長がお金を受け取る手段は、原則として毎月定額の役員報酬か、退職金の形に限られます。
もし生活費が足りないからと会社の口座からお金を引き出してしまうと、「役員貸付金」として処理され、金融機関からの信用が失墜し、新たな融資を受けることが困難になるため厳重な注意が必要です。また役員貸付金に対しては、一定の利息を設定することも税務署に求められます。
アパート経営を法人化する手続き
会社を設立するための具体的な手順を解説します。基本事項の決定からの明確なステップを確認します。
会社の基本事項を決定する
まずは会社のルールブックとなる「定款」を作ります。会社名、本店の所在地、事業の目的、そして資本金の額を決めます。
誰がどれだけお金を出して株主になるのかという出資比率は、将来の経営権や相続に直結する極めて重要な項目です。目先の設立手続きだけでなく、数十年後の承継まで考えたルール作りが求められます。
また、法人は個人のように12月末決算に縛られず、自由に決算期を決められます。繁忙期を避けたり、消費税の免税期間を最大限に活用したりできるよう、慎重に事業年度を設定することが初期の重要課題です。
法務局で設立登記を終える
定款が完成し、出資金を銀行口座に振り込んだ後、管轄の法務局へ設立登記の申請を行います。申請に必要な書類を作成し、法務局へ提出してから登記が完了するまでに、およそ1週間から2週間程度の期間が必要です。登記が完了すると、正式に法人として経営をスタートできます。
登記が完了して安心するのではなく、その後速やかに税務署や都道府県税事務所へ「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」などの各種書類を提出しなければ、税制上の優遇を受けられなくなるため注意が必要です。
税務署・自治体へ必要書類を提出する
法人設立後は、税務署へ「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」などを提出します。役員報酬を支払う場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も必要になります。
また、都道府県税事務所や市区町村にも法人設立届を提出します。これらの届出を期限内に行わないと、青色申告の特典を受けられないなどの不利益が生じる可能性があるため注意が必要です。
物件を法人へ移す方法を検討する
個人で所有しているアパートを法人化する場合、物件を法人へ売却する方法、建物だけを法人へ移す方法、法人を管理会社として活用する方法など、複数の選択肢があります。
物件を法人へ移転する場合には、不動産取得税や登録免許税が発生します。また、個人側に譲渡所得税がかかる可能性もあるため、移転前に税額シミュレーションを行うことが重要です。
さらに、物件に金融機関の借入金や抵当権がある場合、金融機関の承諾なしに名義変更を進めることはできません。法人化による節税効果だけでなく、移転コストや融資条件も含めて判断する必要があります。また不動産の家屋のみを法人に移転する場合は、上述した「土地の無償返還に関する届出」の提出は必須です。
賃貸借契約・管理契約・保険などを見直す
法人化後は、家賃の振込先口座、管理会社との契約、入居者との賃貸借契約、火災保険、保証会社との契約なども確認します。
所有者や貸主が変わる場合には、入居者や管理会社への通知、契約名義の変更、家賃入金口座の変更などが必要になります。手続きを漏らすと、家賃の入金トラブルや契約関係の混乱につながるおそれがあります。
このように、アパート経営の法人化は「会社を作る手続き」と「不動産経営を法人へ移す手続き」の両方を進める必要があります。設立登記だけで判断せず、税務・法務・金融機関対応を含めて、事前に専門家へ相談することが大切です。
アパート経営の法人化のご相談なら税理士法人ネイチャー
アパート経営の規模が拡大し、税金の負担を感じ始めたら、専門家を頼るベストなタイミングです。税理士法人ネイチャーは、これまで数多くの資産家や法人オーナーの皆様へ、最適な資産防衛プランを提供してまいりました。
目先の税金を減らすだけでなく、相続を見据えた家族全員が納得できる承継プランの作成を得意としています。複雑な不動産税務や最新の税制改正にも迅速に対応し、一族の資産を安全に守り抜くサポートを行いますので、まずは法人化のシミュレーションからお気軽にご相談ください。
まとめ:アパート経営の法人化は専門家へ相談しよう
アパート経営の法人化は、所得が900万円を超えるタイミングが一つの目安となります。所得税の負担軽減や赤字の10年繰越、将来の相続税対策といった恩恵を受けられるでしょう。
一方で、設立費用や均等割、社会保険料の負担増といった考慮すべき点も存在します。手元に一番多く現金が残る選択をするためには、事前の緻密なシミュレーションが欠かせません。
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