「年収は同世代より高いのに、純金融資産が思うように増えていない」と感じる方は少なくありません。年収が高くても、所得税や社会保険料、生活費、教育費などを差し引くと、資産形成に回せる資金は限られます。
本記事では、「富裕層」と区分される純金融資産1億円以上を一つの目安に、資産形成の考え方を税理士の実務視点から解説します。
要点は、年間投資額、長期運用、税引後の手取りで比較する視点の3つです。収支と運用のどこを優先して見直すべきか、判断する際の参考にしてください。
富裕層になるには?まずは目安を知ろう
富裕層の目安を先に押さえると、現在地との差が見えます。野村総合研究所(NRI)は、世帯の純金融資産保有額で階層を区分しています。
NRIの区分では、1億円以上5億円未満が富裕層です。純金融資産とは、世帯が保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた金額です。年収や不動産を含む総資産とは考え方が異なります。
| 階層 | 純金融資産保有額 | 世帯数(2023年) |
| 超富裕層 | 5億円以上 | 11.8万世帯 |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 | 153.5万世帯 |
| 準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 | 403.9万世帯 |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 | 576.5万世帯 |
| マス層 | 3,000万円未満 | 4,424.7万世帯 |
参照:「日本の富裕層は153.5万世帯、その純金融資産総額は469兆円と推計」
富裕層になるには資産を増やす基本方式を押さえる
純金融資産を増やす基本は、収入、支出、運用の3点に分けて考えます。単純化すると、「税引後収入 – 支出 + 運用損益」が年間の資産増加額の目安です。どこに改善余地があるのかを先に整理してください。
- 収入を増やす
- 支出を最適化する
- 資産運用をする
収入を増やす
給与収入や役員報酬、事業による所得の増加は、資産形成の原資を大きくします。
ただし、額面ではなく手取りで判断してください。所得税は、課税所得が増えると適用税率も段階的に高くなります。
社会保険料の負担もあるため、額面の増加分がそのまま手元に残るわけではありません。手取りを基準に年間投資額を設定すると、無理のない計画を立てやすくなります。
支出を最適化する
年収の上昇に伴って無意識に生活水準が引き上がってしまうライフスタイルのインフレは、高所得層が純資産を築けない最大の要因の一つです。日々の食費や消耗品費などの変動費を過度に切り詰めるのではなく、住宅ローンや家賃、自家用車の維持費など、一度見直せば継続的に効果を発揮する固定費の適正化から着手することが効率的な資産形成の要点となります。
資産運用をする
急な支出に備える現預金を残したうえで、当面使わない資金を運用に回します。資産運用には、資産の成長を目指し、物価上昇による購買力の低下に備える役割があります。
ただし、投資商品には元本割れのリスクがあるという点に注意が必要です。長期運用では、運用益を再投資することで複利効果も期待できます。具体的な運用先は、後の見出しで解説します。
富裕層になるには資産が増えない原因を確認する
高年収でも純金融資産が増えにくい場合、原因は3つに分けて考えます。原因を確認せず投資額だけを増やすと、家計に無理が生じる場合があります。まずは自分の状態を確認してください。
- 額面年収だけで投資額を決めていないか
- 支出が年収に合わせて増えているか
- 年間余剰資金の投資方針を決めていないか
額面年収だけで投資額を決めていないか
年収が高くても、額面の全額を資産形成に使えるわけではありません。給与からは所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれます。
手取り額は、所得控除や家族構成などによっても異なります。額面を基準に年間投資額を決めると、生活費とのバランスが崩れる場合があります。手取りから投資可能額を考えることが重要です。
支出が年収に合わせて増えているか
昇給や賞与に合わせて、住居費、教育費、保険料などが増える場合があります。その結果、年間の投資可能額が増えないケースもあります。
収入が増えたときほど、支出の増加額も確認することが重要です。生活に必要な資金を確保したうえで、増えた手取りの一部を資産形成に回す方法もあります。
年間余剰資金の投資方針を決めていないか
預金金利を上回る物価上昇が続けば、預金の実質的な購買力が低下する可能性があります。一方、投資には元本割れのリスクがあります。当面使う資金を確保したうえで、余剰資金のうち投資へ回す割合や時期を決めておくと、判断しやすくなるでしょう。
富裕層になるには年間投資額を先に決める
投資商品を選ぶ前に、1年間で投資へ回せる金額を決めます。年間投資額は、資産形成の進み方を左右する主要な要素の一つです。生活に必要な資金を確保したうえで金額を決めると、無理なく投資を続けやすくなります。
- 手取りから年間投資額を算出する
- 緊急支出分を除いて投資資金を確保する
- 収入が増えたら年間投資額を見直す
手取りから年間投資額を算出する
手取り収入から、生活費、納税資金、臨時支出などを差し引きます。そのうえで、当面使う予定のない資金から年間投資額を決めます。生活に必要な資金まで投資に回さなければ、相場変動時にも継続しやすくなるでしょう。
年収1,000万円台の資産形成はこちらで解説しています。
緊急支出分を除いて投資資金を確保する
病気や住宅修繕など、近い将来に必要となる可能性がある資金は、現預金で確保します。経営者の場合は、事業の運転資金も投資資金とは分けて考える必要があります。
必要な資金を確保したうえで、当面使う予定のない資金を長期運用に回すことが基本です。
収入が増えたら年間投資額を見直す
昇給や賞与、役員報酬の改定は、年間投資額を見直す機会になります。手取りが増えた場合は、その一部を積立投資に回す方法もあります。生活費の増加も確認しながら、継続できる投資額を設定することが重要です。
富裕層になるには長期で資産運用する
短期間で高い収益を追うのではなく、運用期間と資産配分を先に決めます。長期・分散投資では、特定の時期や資産の値動きによる影響を抑える効果が期待できます。無理なく続けられる運用方針を決めておくことが重要です。
- 運用期間を先に決める
- 値動きの異なる資産に分散する
- 資産配分を定期的に見直す
運用期間を先に決める
資金を使う予定時期から、運用できる期間を判断します。数年以内に使う予定がある資金は、価格変動の大きい資産への投資を慎重に判断する必要があります。使用時期に応じて資金を分けて管理すると、長期運用を続けやすくなるでしょう。
値動きの異なる資産に分散する
国内外の株式や債券などは、値動きの特徴が異なります。1つの資産や地域に集中すると、価格下落時の影響が大きくなる可能性があります。不動産や保険など、様々な投資対象を検討し、自分に合ったものでポートフォリオを作りましょう。
資産配分を定期的に見直す
相場変動によって、当初決めた資産配分から比率がずれる場合があります。年1回程度を目安に配分を確認し、必要に応じて調整します。課税口座で売却を伴う場合は、譲渡益に対する税負担も考慮しましょう。収入や家族構成などが変わった場合も見直しの機会です。
富裕層になるには到達年数を試算する
現在の資産、年間投資額、税引後利回りの3項目で、1億円までの目安を試算できます。利回りだけでなく、年間投資額の違いも到達年数に大きく影響します。以下は一定の条件によるモデルケースであり、運用成果を保証するものではありません。
年間投資額別に到達年数を比べる
現在の純金融資産5,000万円、税引後年4%で運用し、毎年末に追加投資すると仮定します。年間300万円なら約9年、500万円なら約7年、800万円なら約5年で1億円に到達する計算です。この条件では、年間投資額の違いが到達年数に大きく影響します。
税引後想定利回り別に到達年数を比べる
現在の純金融資産5,000万円、年間投資額500万円を毎年末に追加すると仮定します。税引後利回り2%なら約8年、4%なら約7年、6%なら約6年です。実際の手取り利回りは、商品ごとの手数料や課税関係によって異なります。試算では、こうしたコストを反映した利回りで比較することが重要です。
富裕層になるには税引後で資産形成を考える
同じ利回りでも、税金や手数料を差し引いた後に残る金額は異なります。運用商品を比較する際は、表示利回りだけでなく、税引後・手数料控除後の収益を確認します。利用できる制度も含めて検討してください。
- 利用できる税制優遇制度を確認する
- 運用収益を税引後で比較する
- 法人経営者は役員報酬の税引後額を試算する
利用できる税制優遇制度を確認する
NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて最大360万円です。非課税保有限度額は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円が上限です。
NISAでは対象となる運用益が非課税になりますが、損失は他口座と損益通算できません。iDeCoも、60歳まで引き出せないというデメリットがあるため、資金を使う時期や拠出限度額を踏まえて検討します。
運用収益を税引後で比較する
上場株式等の譲渡益や一定の配当等には、原則として20.315%の税率が適用されます。同じ表示利回りでも、課税方法や手数料によって手取り収益は変わります。
法人経営者は役員報酬の税引後額を試算する
会社経営者や資産管理会社のオーナーが個人の投資原資を確保するために役員報酬を引き上げる場合、個人の手残り額(キャッシュフロー)を精緻に試算する必要があります。
最高税率55%に達する所得税・住民税や社会保険料の負担を考慮すると、個人へ無理に移転させるよりも、法人税率(実効税率約34%程度)が適用される法人内に資金を内部留保し、法人名義で資産運用を行う方が手残りキャッシュを多く残せるケースも少なくありません。個人への役員報酬支給と法人での資産運用・内部留保のどちらが中長期的に資産形成を加速させるか、トータルの税引後効果を比較検証することが重要です。
富裕層になるには投資判断の注意点を知る
1億円への到達を急いで高い利回りや借入額を優先すると、リスクを見落とす場合があります。表面的な数字だけでなく、費用や換金性、損失の可能性も含めて判断します。次の2点は特に確認が必要です。
- 高利回りだけで投資先を選ぶ
- 借入可能額だけで投資額を決める
高利回りだけで投資先を選ぶ
想定利回りの高さだけで選ぶと、他のリスクを見落とす場合があります。価格変動、換金のしやすさ、手数料などの確認が必要です。想定した収益が得られず、元本割れが生じる可能性も踏まえて判断してください。
借入可能額だけで投資額を決める
金融機関が示す借入可能額と、無理なく返済できる金額は必ずしも一致しません。返済期間や毎月の資金収支を確認することが重要です。変動金利などを利用する場合は、金利上昇時の返済負担も試算しておきます。
富裕層になるには?よくある質問
富裕層になるためのよくある質問をまとめました。
- 富裕層になるには年収いくら必要ですか?
- 会社員でも富裕層になれますか?
- 富裕層になるまで何年かかりますか?
- 預貯金だけで富裕層を目指せますか?
富裕層になるには年収いくら必要ですか?
NRIの富裕層区分は年収ではなく、世帯の純金融資産保有額を基準としているため、年収の基準はありません。資産形成では、手取りや支出を踏まえ、年間投資額を継続して確保できるかが重要です。
会社員でも富裕層になれますか?
会社員でも、継続的な貯蓄や投資、長期運用によって富裕層を目指すことは可能です。必要な期間は、現在の資産額や収支、運用結果によって異なります。
富裕層になるまで何年かかりますか?
現在の純金融資産、年間投資額、税引後想定利回りによって異なります。詳しい試算は、本記事の到達年数の見出しを参照してください。
預貯金だけで富裕層を目指せますか
年間貯蓄額が大きければ、預貯金だけで到達する場合もあります。ただし、物価上昇率が預金金利を上回ると、預貯金の実質的な購買力は低下します。資金を使う時期やリスク許容度も踏まえて検討してください。
富裕層の資産運用なら税理士法人ネイチャー
資産形成では、運用方針だけでなく、税引後の手取りや将来の相続まで含めて資産全体を見直すことが重要です。
税理士法人ネイチャーでは、資産運用と税金対策を一体で検討し、所得税や相続税などを踏まえた資産形成をサポートしています。近年では所得税対策や相続税対策と資産運用を組み合わせたような、ユニークな対策方法も開発されております。
高年収を資産形成につなげるには、年間投資額や資産配分を税務面も含めて検討する必要があります。資産形成の進め方を見直したい方は、無料相談をご利用ください。
まとめ:富裕層になるには年間投資額の継続確保が重要
NRIの区分では、純金融資産1億円以上5億円未満が富裕層です。額面年収だけで判断せず、手取りから年間投資額を確保します。税引後の収益を確認しながら、長期運用を続けることが重要です。
運用商品を選ぶ前に収支や税金を確認すると、年間投資額や税引後の収益を把握しやすくなります。高所得な会社員の方々が、どのような対象に投資をしているのかをお知りになりたい場合は、無料個別相談にて情報提供のお時間を頂ければ幸いです。
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