海外視察では、航空券や宿泊費を会社で負担できるケースがあります。
ただし、渡航の目的や現地での行動によって、経費にできる範囲は変わります。
特に判断が複雑になるのが、視察日程に観光を組み込むケースや家族が同行するケースです。業務と私的な予定が混在すると、費用を分けて計算しなければならないこともあります。
この記事では、海外視察の費用を経費にする条件を順番に整理します。観光を含む場合の按分方法と、決算で経費に計上する時期もあわせて確認しましょう。
自社の海外視察費用をどこまで経費にできるか、判断する際の目安がわかります。
海外視察は経費にできる?
海外へ行った目的が会社の仕事にあり、旅費も妥当な水準であれば、会社の経費として扱えます。訪問先や滞在日数、移動経路などを確認し、事業とのつながりから判断します。業務性が認められにくいのは、たとえば次のような旅行です。
- 観光そのものを目的とした渡航
- 一般向けに募集された海外ツアーへの参加
- 業界団体などの企画でも、実際の日程が観光中心となっている旅行
こうした旅行でも、現地で事業に直接関係する活動を行っていれば、その活動に対応する費用まで一律に対象外になるわけではありません。
一方、滞在のほぼすべてを視察や商談などに充てている場合は、通常必要な範囲の旅費を損金に算入できます。観光など私的な予定にかかった費用や業務上必要な水準を超える会社負担分は、経費とは別の処理が必要になることがあります。
海外視察で経費にできる費用
海外視察で会社が負担できるのは、視察や商談など業務のために生じた支出です。代表的な費用について、会社負担にできる範囲を整理します。
| 費用 | 会社の経費として扱える範囲 |
| 航空券 | 視察先や商談先までの移動に必要な範囲。私用で追加した移動分は除く |
| 宿泊費 | 業務日程に必要な宿泊分。観光のために滞在を延ばした分は除く |
| 現地交通費 | 展示会場や取引先など、業務先への移動分 |
| 視察ツアー参加費 | 自社の事業に関係する視察部分。観光を含む場合は区分が必要 |
| 通訳費 | 商談や現地調査に必要な通訳への支払い |
| 会食費 | 取引先などとの業務上の飲食費 ※参加者や目的によって交際費等に該当する場合があります |
同じ海外渡航中の支払いでも、会社の業務に使った分と個人的に使った分では扱いが異なります。観光や自由行動を予定に入れる場合は、どの支出が業務に対応するのかわかるように分けておきましょう。
旅程や訪問先が確認できる資料も保存しておくと、各費用と業務との関係を説明しやすくなります。
海外視察を経費にするための業務従事割合の計算方法
同業者団体などの海外視察に観光が含まれる場合は、旅行中の行動を分けて、業務に使った割合を求めます。
まず、日程を「視察等」「観光」「旅行日」「その他」に分類します。工場見学や展示会、市場調査などは視察等、自由行動や私的な観光は観光です。日本との往復や都市間の移動、休養日などは、原則として割合の計算から外します。
次に、視察等と観光の日数だけを使って計算します。
業務従事割合 = 視察等の日数 ÷(視察等の日数 + 観光の日数)
たとえば7日間のうち、視察4日、観光1日、移動2日だった場合、計算に使うのは5日です。「4日 ÷ 5日 = 80%」となるため、業務従事割合は80%です。業務従事割合が80%であれば、損金等算入割合も80%となり、通常必要な旅費の80%を損金に算入します。
日数は、昼間のおおむね8時間を1日として、おおむね0.25日単位で区分します。夜間や休日に業務を行った時間も、内容に応じて視察等の日数へ加えます。
なお、休日でも、実際に観光を行った日は観光の日数に含めます。実際に損金へ算入する金額は、業務従事割合を10%単位に区分した「損金等算入割合」をもとに計算します。損金等算入割合が90%以上の場合は、通常必要な旅費の全額を損金に算入でき、10%以下の場合は、原則として全額を損金に算入できません。
海外視察の経費に家族分は認められる?
家族の渡航費を会社が負担できるかは、その人の同行が業務上必要かどうかで判断します。
配偶者が役員であっても、現地で業務を行わず観光だけをしていた場合、その旅費は原則として業務上必要な旅費には該当しません。会社が負担した場合は、役員給与として扱われる可能性があります。視察に必要のない家族を役員が連れて行き、その費用を会社が支払った場合は、役員への給与として扱われるのが原則です。
一方、業務を進めるうえで同行者が必要となることもあります。たとえば、次のようなケースです。
- 障害のある役員に、日常的な補助を行う人が同行する
- 国際会議などで、配偶者を伴うことが求められている
- 通訳や専門知識を持つ補助者が必要で、社内に対応できる人がいない
通訳や専門知識を理由に同行するケースでは、必要性が認められれば、親族や一時的に依頼した人でも対象になり得ます。
家族本人が日常的に会社の仕事を担当し、その業務を行うために海外へ行くのであれば、単なる同行者ではありません。本人の出張として、渡航の必要性を判断します。
海外視察の経費化に必要な書類
海外視察では「何のために渡航し、現地で何をしたか」がわかる記録をそろえておくことが重要です。領収書だけでは、支払額は確認できても、視察が自社の業務に必要だったかまでは分かりません。渡航前の予定と現地での活動を確認できる資料もあわせて保存しておきます。
| 確認したい内容 | 資料の例 |
| 渡航した目的 | 視察計画書、社内資料 |
| 現地での日程 | 旅程表、予約記録 |
| 訪問した事実 | 名刺、入場証、現地でもらった資料 |
| 訪問先とのやり取り | メール、面談予約の記録 |
| 帰国後に確認した内容 | 視察報告書 |
| 団体視察の内容 | 募集案内、主催者の日程表 |
| 支払った金額 | 領収書、請求書、利用明細 |
視察計画書や報告書は、海外視察のたびに必ず作成しなければならない法定書類ではありません。ただし、事業との関係を説明する材料になります。
予定と実際の行動が異なったときは、変更後の日程もわかるようにしておきましょう。観光を含む旅行では、業務に使った時間や費用を区別できる記録が特に重要です。
海外視察の経費を計上する時期
海外視察費は、代金を支払っただけでは損金にならず、原則として視察を実施した事業年度に計上します。
決算前にツアー代や航空券代を先払いしていても、視察が翌期なら当期の費用にはできません。反対に、決算日までに視察を終え、支払義務と金額が確定していれば、代金が未払いでも当期の費用となる場合があります。
| 決算日時点の状況 | 処理 |
| 視察がすでに終了している | 要件を満たせば当期の費用にする |
| 代金だけ支払い、視察は翌期 | 前払金などとして翌期へ繰り越す |
| 日程が2つの事業年度にまたがる | 提供を受けたサービスに応じて各期へ分ける |
一定の前払費用には、支払時に損金算入できる取扱いがあります。ただし、家賃など継続的に提供されるサービスが主な対象です。1回だけ参加する海外視察ツアーは性質が異なるため、原則として短期前払費用の取扱いは適用できません。
たとえば、3月決算の会社が、5月に参加する視察ツアーの代金100万円を3月中に支払ったとします。この100万円は、原則として3月期の損金ではなく、前払金などとして翌期へ引き継ぎます。
決算前に代金を支払ったかではなく、いつ視察が実施されたかが計上時期を判断するポイントです。
海外視察の経費に関する消費税の扱い
法人税で経費にできる費用でも、消費税の仕入税額控除ができるとは限りません。海外視察では、費用を支払った場所やサービスを受けた場所によって、消費税の扱いが変わります。
たとえば、国際線の航空運賃や海外のホテル代は、日本の消費税の仕入税額控除の対象外です。海外出張のために支給する旅費や日当も、原則として課税仕入れになりません。ただし、海外出張に伴う国内の電車代やタクシー代などを区分している場合は、その国内交通費について課税仕入れとして扱えることがあります。
国内の旅行会社へ支払う手配手数料も、航空運賃や宿泊費とは分けて消費税の区分を確認しましょう。
法人の決算対策なら税理士法人ネイチャー
海外視察費は、業務内容や日程によって損金にできる範囲が変わります。費用を整理したうえで利益が大きく残る場合は、ほかの決算対策も含めて検討するとよいでしょう。
税理士法人ネイチャーでは、事業会社の税務顧問は行っておらず、税金対策を中心としたスポット相談を専門的に行っています。現在の顧問税理士との関係を維持したまま、今期に検討できる決算対策について、必要な分野だけ相談できる点が特徴です。
法人税だけでなく、経営者個人の所得税や相続・事業承継まで含めて検討できます。初回相談は無料ですので、法人と個人の税務をあわせて整理したい方もご相談ください。
まとめ:海外視察は業務上必要な費用を適正な範囲で経費にできる
海外視察の費用で押さえたいポイントは、次のとおりです。
- 業務に必要で、金額が通常の範囲なら経費にできる
- 観光を含む場合は業務分と私的分を区分し、家族同行は業務上の必要性を確認する
- 同業者団体などの視察旅行では、業務従事割合と損金等算入割合をもとに計算する
- 決算では、支払日ではなくサービスを受けた時期で計上する
- 消費税の仕入税額控除は、法人税とは別に判断する
視察費用の整理がついたら、今期の利益と納税額を確認する段階です。今期の決算対策については、税理士法人ネイチャーへご相談ください。
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