「在庫が多いと税金は増えるの?」
「決算前に仕入れを増やせば節税になるのだろうか……?」
商品を扱う会社では、決算時の在庫が税金にどう影響するか気になる方もいるでしょう。通常の商品在庫は、保有しているだけで直接課税されるものではありません。
しかし、売れ残った商品の仕入原価は、原則として当期の売上原価から除かれます。決算前に代金を支払っても、売れ残った分は当期の経費にならないのです。
この記事では、在庫と税金の関係を追加仕入れの計算例で解説します。販売や廃棄による損失の扱い、在庫処理の注意点も紹介します。
決算前に自社の在庫を確認し、どのような対応が必要か検討する際にお役立てください。
在庫に税金はかかる?
通常の商品在庫は、持っているだけで在庫額に直接課税されるものではありません。ただし、期末に残った在庫の金額は、売上原価を通じて利益に影響します。
売上原価とは、売れた商品に対応する仕入原価です。売れ残った商品は、会社の資産として翌期に繰り越します。代金を支払っていても、原則として当期の売上原価には含めません。
法人税等は、利益に税務上の調整を加えた「課税所得」を基に計算します。翌期も同じ商品を保有している場合も、在庫そのものに毎年別途課税されるわけではありません。
在庫の追加仕入れが節税にならない理由
追加で仕入れた商品がすべて売れ残ると、原則として当期の売上原価は増えません。仕入高と期末在庫が同額増えるため、利益も変わりません。商品の売上原価は、次の式で計算します。
「売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入高 – 期末在庫」
期首在庫は、前期から繰り越した商品の金額です。期末在庫は、決算日に残った商品の金額を指します。年商5,000万円の卸売会社を例に比べましょう。決算前に1,000万円分を追加で仕入れ、すべて売れ残ったと仮定します。
| 項目 | 追加仕入れなし | 追加仕入れあり |
| 売上高 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 期首在庫 | 500万円 | 500万円 |
| 当期仕入高 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 期末在庫 | 500万円 | 1,500万円 |
| 売上原価 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 売上総利益 | 2,000万円 | 2,000万円 |
※説明用の仮定例です。金額は税抜きで、評価単価などの条件は同じとします。評価損・廃棄損はなく、その他の経費も同額とします。
追加仕入れ後の売上原価は、次のとおりです。
「500万円 + 4,000万円 – 1,500万円 = 3,000万円」
仕入高が1,000万円増えても、期末在庫で同額を差し引きます。売上総利益も2,000万円のままです。仕入代金を支払っても、全額が当期の経費になるとは限りません。追加分が在庫として残る場合は、原則として当期の法人税等を減らす効果はありません。
決算時に在庫を減らす税金面でのメリット
在庫の販売や廃棄による損失を適切に計上すれば、課税所得を減らせる場合があります。
帳簿価額が100万円の商品を70万円で販売した場合、販売にかかる費用を考慮しなければ、その取引では30万円の売却損が生じます。
ただし、販売せずに在庫として保有していた場合と比べると、当期の課税所得への影響は、売上高や売上原価の計上状況などによって異なり、売却損30万円が生じたからといって会社全体の課税所得や納税額が必ず30万円減るわけではありません。
販売できない商品を実際に廃棄した場合も、原則として廃棄した商品の帳簿価額を損失として計上できます。
ただし、すでに評価損を計上している場合などは、損失を二重に計上しないよう注意が必要です。廃棄日・品名・数量を記録し、写真や処分業者の書類を残しましょう。廃棄の予定だけで、在庫から外すことはできません。
一方、販売で利益が出れば課税所得は増えます。在庫を減らしただけで、必ず節税になるわけではありません。
在庫の税金を計算する際の注意点
在庫の税務処理では、数量と評価額を正しく把握する必要があります。消費税は法人税等と扱いが異なるため、自社の課税方式も確認しましょう。
- 在庫の計上漏れを防ぐ
- 売れ残っただけで評価額を下げない
- 消費税は自社の課税方式を確認する
在庫の計上漏れを防ぐ
外部倉庫や委託先に預けた自社商品も棚卸しの対象です。棚卸しとは、在庫の数量や状態を調べる作業のことです。
店舗の在庫だけを集計すると、発送代行会社に預けた商品が漏れるおそれがあります。期末在庫の計上が漏れると、売上原価が過大になります。利益や課税所得を、本来より少なく計算してしまうため注意が必要です。
保管場所ごとに在庫一覧を作り、帳簿と照合しましょう。委託先には、決算日時点の残数を確認します。決算日前後の入出荷も、納品書などで確かめます。
一方、自社で預かっている他社の商品は区別します。保管場所だけで、自社の在庫かどうかを判断しないようにしましょう。
売れ残っただけで評価額を下げない
在庫の評価額は、自社が採用する評価方法に従って計算します。「半年売れていないから半額」といった判断で、税務上の評価額を下げることはできません。
低価法は、原価と期末の時価を比べ、低い方を評価額とする方法です。時価は通常、販売できる見込額から、販売に直接かかる見積費用などを引いて求めます。
低価法とは別に、著しい陳腐化や破損などによって、棚卸資産の価額が帳簿価額を下回った場合は、一定の要件のもとで評価損を損金にできることがあります。ここでいう著しい陳腐化とは、流行や性能の変化などによって商品の価値が著しく低下し、今後その価値が回復しないと認められる状態です。損金は、税金の計算で差し引ける費用や損失を指します。
長期保管という理由だけでは、評価損を損金にできません。通常の販売が難しくなった事情や、評価額の根拠を資料で示す必要があります。
消費税は自社の課税方式を確認する
一般課税では、売れ残った商品の仕入れも、要件を満たせば仕入税額控除の対象です。法人税等の売上原価とは、扱いが異なります。
仕入税額控除は、売上にかかる消費税額から、仕入れなどにかかる消費税額を差し引く仕組みです。原則として、帳簿と適格請求書などの保存が必要です。控除できる範囲は、課税売上割合などでも変わります。
一方、簡易課税では、売上にかかる消費税額に業種ごとの割合を掛けて控除額を求めます。実際の仕入額を増やしても、その増加分に応じて控除額が増える仕組みではありません。決算前に仕入れの税効果を試算する際は、自社の課税方式を確認しましょう。
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まとめ:在庫の追加仕入れだけでは当期の法人税等は減らせない
決算前に仕入れた商品が売れ残れば、原則として当期の売上原価にはなりません。仕入代金を支払っても、当期の法人税等が減るとは限らない点に注意しましょう。
在庫の販売・廃棄・評価額の見直しは、それぞれ税務上の扱いが異なります。商品の数量や状態を確認し、処理の根拠となる資料をそろえましょう。
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