日本人が移住しやすい国としても名前があがるマレーシアですが、移住先としてだけではなく不動産投資先としても非常に人気が高い国です。
そして、住むにしても不動産投資をするにしても、切っても切り離せないのが税金です。
しかし、マレーシアの税金について、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、マレーシアの税金について詳しく解説していきます。マレーシアへの移住を考えている方や、不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
マレーシアにおける税金の課税対象
マレーシアにおける税金の課税対象について、法人と個人についてそれぞれ解説します。
課税対象になる法人
マレーシアにおいては、マレーシア所得税法第8条1項により、マレーシア企業としての居住資格の有無で、法人税の対象になるかどうかが決定されます。
たとえば、マレーシア国内で事業の管理と統制をおこなっている企業は、マレーシアの居住者とみなされるため、法人税の対象となります。
取締役会といった企業の意思決定がマレーシアで1年に1回以上実施されている場合は、企業は税務上マレーシア居住者と判断されます。
また、課税対象となる所得は主に次のとおりです。
- マレーシア国内を源泉とするもの
- 国外から送金され、マレーシア国内で受け取ったもの
2021年12月31日までは、国外から受け取った国外源泉所得は免税されていました。しかし、2022年1月1日から課税対象となり、免税ではなくなりました。
課税対象になる個人
マレーシアにおいては、マレーシアの居住者であるかどうかで個人の課税対象になるか否かが決まります。
下記のような場合は、マレーシア居住者として判断されます。
- マレーシアで182日以上の滞在歴がある
- 当歴年の滞在日数は182日未満だが、前歴年あるいは翌暦年から連続して182日以上滞在する
- 当暦年の滞在日数が90日以上で、直近の4暦年のうち3暦年を通して居住者である、あるいは90日以上マレーシアに滞在している
上記の条件に当てはまる場合は、通常マレーシアの居住者とみなされ、個人の課税対象に該当します。
マレーシアでかかる税金一覧|法人
マレーシアで法人にかかる税金は、次のとおりです。
- 売上税&サービス税
- 印紙税
- 源泉税
それぞれの詳細を確認しましょう。
売上税&サービス税
売上税&サービス税は、特定のサービスや商品に課される税金のことで、SSTと呼ばれることもあります。
売上税&サービス税の税率は、通常は10%、マレーシアの関税コードでしているされているものは5%です。
また売上税については、下記の条件に該当すると登録の義務が発生します。
- 過去12ヶ月以内の売上高が50万RMを超える課税対象品を生産する業者
- 過去12ヶ月以内の下請け業務の総人件費が50万RMを超える下請け業者
RMは、マレーシアの通貨です。
また、サービス税については下記の項目に当てはまると通常の10%に加えて、一律で6%の税金が課されます。
- 宿泊
- 飲食
- 保険
- 通信
- 広告
- 専門サービス
- ゲームサービスなど
印紙税
マレーシアの印紙税は、土地、営業権、売掛金などの譲渡資産に関する文書に課税されるものです。
税率は、資産価額によって変わります。
資産価額 | 税率 |
---|---|
10万RMまで | 1% |
10万1RMから50万RMまで | 2% |
50万1RMから100万RMまで | 3% |
100万1RMから | 4% |
ただし、印紙税については文書を法定証拠として有効にするために課税されるものであり、文書を作成しなくても取引が有効となるときは印紙税の支払いは発生しません。
また、一部の例外を除き、サービス契約と借入契約については原則0.5%が課税されます。
源泉税
源泉税は、非居住者が国内で得た所得から税金を徴収するための制度です。
マレーシア居住者は、非居住者への特定の支払いの総額について、一定率で源泉税を控除してマレーシア財務省の一部局、内国歳入局に納付する必要があります。
源泉税の課税対象および税率は、次の表のとおりです。
対象 | 税率 |
---|---|
利子 | 15% |
ロイヤリティ | 10% |
マレーシア国内で提供されたサービス | 請負業者相当分:10% 被雇用者相当分:3% |
マレーシア国内におけるテクニカルサービス | 10% |
動産使用料 | 10% |
事業・雇用以外を源泉とするその他の所得 | 10% |
源泉税に限らず、売上税、サービス税や印紙税について詳細が知りたい場合は、税務の専門家であるに相談した方が良いでしょう。
マレーシアで個人にかかる税金は個人所得税
マレーシアで個人に対してかかる税金は、個人所得税です。
課税対象となる所得 | 税率 |
---|---|
0RMから5,000RMまで | 0% |
5,001RMから2万RMまで | 1% |
2万1RMから3万5,000RMまで | 3% |
3万5,001RMから5万RMまで | 8% |
5万1RMから7万RMまで | 13% |
7万1RMから10万RMまで | 21% |
10万1RMから25万RMまで | 24% |
25万1RMから40万RMまで | 24.5% |
40万1RMから60万RMまで | 25% |
60万1RMから100万RMまで | 26% |
100万1RMから200万RMまで | 28% |
200万1RMから | 30% |
表を見ると、マレーシアの所得税の最大税率は30%で、日本よりも15%も所得税率が低いことがわかります。
また、日本とマレーシアのどちらに所得税を支払うのかは、居住国や自宅住所、ビザの種類などの客観的事実と日本とマレーシアが結んでいる租税条約により決定されます。
しかし、専門的な知識になるため、失敗したくないのであれば自分で判断するよりも税理士に相談するほうが賢明です。
マレーシアの不動産や金融商品の保有でかかる税金
マレーシアの不動産や金融商品の保有でかかる主な税金は、次のとおりです。
- 固定資産税
- 不動産所得税
- キャピタルゲイン税
不動産投資を含め資産を保有することを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
固定資産税
マレーシアで不動産を所有すると、固定資産税がかかります。
たとえば、100平米ほどのコンドミニアムであれば、1,000RM程度、日本円で3万円程度の固定資産税が課せられます。
コンドミニアムとは分譲マンションのことで、所有者が利用しないときは旅行者や渡航者に賃貸されるケースが多く、移住した日本人が住むこともあります。
日本の固定資産税は、固定資産評価額に標準税率1.4%をかけて算出されるため、マレーシアの固定資産税は日本と比較すると安い傾向にあります。
不動産所得税
マレーシアで不動産を所有する際は、不動産の収入に対して税金がかかります。
マレーシア非居住者は、一律30%が課税されます。
たとえば、日本の居住者としてマレーシアで不動産投資するのであれば、30%の不動産取得税を支払わなければいけません。日本とマレーシアの両国で課税される場合、日本の確定申告で外国税額控除を行い、二重課税を回避します。
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キャピタルゲイン税
キャピタルゲインは、債券や株式、不動産などの資産の価値が上昇したときに生まれる収益のことですが、マレーシアではキャピタルゲイン税は不動産のみにしかかかりません。
そのため、RPGT、不動産譲渡益税と呼ばれることもあります。
不動産を売却して利益が出るとキャピタルゲイン税を支払う必要があり、所有者と所有期間によって税率が異なります。
所有期間 | マレーシア居住者・永住権保有者 | 非居住者 |
---|---|---|
3年以下 | 30% | 30% |
4年以下 | 20% | 30% |
5年以下 | 15% | 30% |
5年を超える | 0% | 10% |
不動産を売却した際に損失が出たときは、キャピタルゲイン税を支払う必要はありません。
マレーシアの相続について
マレーシアは日本とは異なり、相続する際に相続税が課されません。
ただし、日本では通常、相続税が課税されます。日本でマレーシアの不動産に対し、相続税が課税されないためには、少なくとも、次の3つの条件を満たす必要があります。
- 日本の非居住者であること
- 相続人および被相続人が10年以上海外に住んでいること
- 相続財産が日本にないこと
日本の居住者であったり、日本に相続財産が残っていたりすると、日本で課税されてしまうため注意しましょう。
さらに、相続が発生したときの分配手続きも日本とは異なります。
分配手続き | 特徴 | 期間 |
---|---|---|
日本 | 被相続人の財産と債務は、法律で定められた相続人に引き継がれる。 | 数か月ほどで手続きが完了することもある。 |
マレーシア | プロベートといわれる遺産分割手続きが必要で、相続人が財産を譲り受ける場合は裁判所の手続きが必要になる。 | 半年間から1年ほどかかる。 |
マレーシアの分配手続きは、日本よりも手間や費用がかかり、すぐには相続できないことに気をつける必要があります。
また、マレーシアの相続の流れは次のとおりです。
- 遺産管理人の任命
- 相続人の確定
- 財産、債務の整理
- 税金等の納付
- 残った財産の分配
マレーシアの相続は、日本の相続とはルールや流れが異なるため、自ら手続きを進めるのは容易ではありません。
マレーシアで相続が発生した場合は、海外の手続きのため、非常に時間がかかります。相続時の手続きをスムーズにするための事前の準備が必要です。準備には、専門的な知識が必要になってくるため、計画的に行動するだけではなく、国際相続に詳しい専門家に相談するようにしましょう。
マレーシアにおける税金の確定申告手続き|法人
法人のマレーシアにおける税金の確定申告手続きを確認しておきましょう。
申告期限
マレーシアの確定申告の申告期限は、事業年度終了日から7ヶ月以内です。
インターネットで申告する場合は申告期限が1ヶ月延長されるため、事業年度終了日から8ヶ月以内になります。
申告期限を長く取りたいのであれば、インターネットを利用して申告すると良いでしょう。
また、コロナが流行した際は、申告期限を3ヶ月延長するという処置が取られました。
状況によっては申告期限に変更があるため、国税庁が公表している情報は常に確認しておきましょう。
確定申告手続きの流れ
マレーシアの法人税の申告は、日本の手続きと大きく異なります。
たとえば、事業年度開始日から起算して30日前までに当該事業年度の年間法人税の見積額をマレーシア国税庁に提出しなければいけません。
見積額については、事業年度開始日から6ヶ月目および9ヶ月目に変更できます。
ただし、見積額をベースとした累積納付額が確定ベースで最終納税額を30%下回るとペナルティが科せられ、30%を超えた法人税不足額の10%が課税されるため注意しましょう。
また、次年度の法人税見積額は、今年度の見積額あるいは修正見積額の85%を下回ってはいけないといったルールもあります。
マレーシアにおける税金の確定申告手続き|個人
個人のマレーシアにおける税金の確定申告手続きを確認しておきましょう。
申告期限
個人の確定申告の期限は法人とは異なり、1月1日から12月31日までの所得と納税金額を翌年の4月30日までに提出します。
日本は居住する納税地を管轄する税務署に提出する必要がありますが、マレーシアではどこの税務署でも申告可能です。
また、オンライン確定申告システムである「e-Filing」を活用すれば、申告期限を5月15日までに延長できます。
確定申告手続きの流れ
マレーシアの確定申告までの手続きは、日本の手続きの流れと同じです。
基本的には給与の場合は、毎月雇用主が所得税を徴収して国税局に支払い、過不足がある場合は確定申告にて調整します。
日本でいう年末調整は、年収および納付税金が記載された書類「EA Form」を雇用主から受け取り、各個人が申告をします。
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税制度はそれぞれの国で異なる上、日本の税制度も絡んでくるため、マレーシアに限らず海外でかかる税金の扱いは専門的な知識が必要です。日本を含めたそれぞれの国の税制度を理解し、確定申告などを適切に処理することは容易ではありません。
さらに、申告内容が間違っていたり期限内に提出できなかったりすると、ペナルティを科せられる可能性もあります。
税制度に詳しくない方や、ペナルティを避けたい方は、税務のプロである税理士へ依頼しましょう。
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まとめ:マレーシアでかかる税金を理解して漏れなく申告しよう
マレーシアでかかる税金は、日本とは異なります。移住したり、不動産を所有したりする場合は気をつけておきましょう。
また、税金がかかるということは、確定申告も必要です。
マレーシアでかかる税金について正しく理解し、漏れなく申告しなければいけません。
「でも、理解できているかわからないし、ミスなく申告できるのか不安…。」
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(本記事掲載内容は2024年8月時点の内容です。最新の情報については、公式サイトや最新のニュースをご確認ください。)
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