個人事業主の税金が高すぎる理由は?利益が出た年にできる利益対策

「利益が伸びた年でも、預金残高は思ったほど増えていない。」そう感じる個人事業主の方は少なくありません。所得税や消費税の申告・納付に加え、翌年には住民税や対象者には個人事業税の負担も生じます。

個人事業主が「税金が高い」と感じる背景には、所得税の税率だけでなく、住民税や個人事業税の納付時期、消費税、社会保険料、利益と手元資金のずれなど、複数の要因があります。まずは、それぞれの負担がいつ、何を基準に発生するのかを整理することが重要です。

この記事では、個人事業主が税金が高いと感じる理由と、利益が出た年に確認したい対策を期限別に税理士が整理します。判断の基準は、減った税額ではなく、支出後に手元資金と資産がいくら残るかです。

所得税

個人事業主の税金が高いと感じる5つの理由

個人事業主の手取りを考える際は、所得税だけでなく、住民税、個人事業税、消費税などの税金に加え、国民健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料も確認する必要があります。社会保険料は税金ではありませんが、いずれも手元資金を減らすため、実際の負担感を考えるうえでは無視できません。

  1. 所得税は課税所得が増えるほど税率が上がる
  2. 住民税は前年所得を基準に計算される
  3. 個人事業税は対象業種で発生する
  4. 消費税は課税売上等を基に計算される
  5. 社会保険料が手取りを少なくする

1. 所得税は課税所得が増えるほど税率が上がる

所得税は、課税所得が大きいほど税率が上がる仕組みです。課税所得900万円超1,800万円以下には33%の税率区分が適用されます。

ただし、課税所得の全体に33%がかかるわけではありません。900万円を超え1800万円までの部分にのみ33%が課税され、それ以外の段階の所得には別の税率が課せられています。実際の税額は、速算表の控除額を使って計算します。

高所得の方は基礎控除にも注意が必要です。令和8年分以後、所得税法上の基礎控除額は62万円に引き上げられました。なお、一定の所得層については租税特別措置法による加算があるため、実際に適用される基礎控除額が62万円を上回る場合もあります。

一方、合計所得金額が2,350万円を超えると基礎控除額は段階的に縮小し、2,500万円を超えると基礎控除は適用されません。「利益が増えるほど税率が上がる」ことに加え、所得が高い場合は所得控除が縮小することも、税負担が増える要因になります。

2. 住民税は前年所得を基準に計算される

住民税は、前年の所得をもとに翌年度に課税されます。所得割の税率は原則10%です。ただし、自治体によって超過課税などが行われている場合があります。利益が大きかった年の負担は、翌年6月以降に発生します。個人で納める普通徴収の場合、通常は年4回に分けて納付します。

利益が落ち着いた年に、前年の所得に対する住民税が重なる点に注意が必要です。所得税と住民税では、同じ年の所得に対する納付時期が異なります。資金の準備は、年をまたいで考える必要があります。

3. 個人事業税は対象業種で発生する

個人事業税は、地方税法等で定められた法定業種に該当する事業を営む場合に課税対象となります。例えば、東京都では、請負業・製造業などが第1種事業、コンサルタント業・税理士業・デザイン業・諸芸師匠業などが第3種事業として定められています。 一部非課税となる業種も存在するため、自身の事業がどの区分に属するかを確認しておかなくてはなりません。

個人事業税の計算では、原則として年290万円の事業主控除があります。事業期間が1年未満の場合は月割りで計算します。税率は法定業種によって3%、4%または5%です。

また、所得税の計算で青色申告特別控除を適用している場合でも、個人事業税では青色申告特別控除は適用されません。所得税の確定申告書に記載された事業所得と、そのまま同じ金額を基礎に計算するとは限らない点に注意しましょう。

東京都では、原則として8月と11月に納付します。所得税や住民税とは別に納税通知書が届くため、納付時期をあらかじめ確認しておくことが重要です。

4. 消費税は課税売上等を基に計算される

消費税は、課税事業者に該当する場合に申告・納付が必要です。

個人事業主では、原則として前々年に当たる基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合が代表例ですが、前年の特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合や、自ら課税事業者を選択している場合、インボイス発行事業者として登録している場合などは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となることがあります。

一般課税では、原則として売上げ等に係る消費税額から、課税仕入れ等について仕入税額控除の対象となる消費税額を差し引いて納付税額を計算します。仕入税額控除にはインボイスの保存など一定の要件があるため、経費として支払った金額に含まれる消費税をすべて無条件に差し引けるわけではありません。

利益そのものを基準に計算する税ではないため、利益が小さい年でも納税額が生じる場合があるので注意が必要です。個人事業者の申告・納付期限は、原則として翌年3月31日です。

5. 社会保険料が手取りを少なくする

国民健康保険や国民年金に加入している場合、その保険料は税金ではありません。ただし、手取りを減らす要因になります。国民健康保険料の所得割は、一般的に前年の所得をもとに計算され、料率や賦課限度額は自治体などによって異なります。

一方、国民年金保険料は原則として所得にかかわらず定額です。国民健康保険料には賦課限度額があるため、所得が一定水準を超えると保険料が上限に達します。税金と社会保険料を分けて把握すると、手取りの見通しを立てやすくなります。

個人事業主の税金が高いかを法人・会社員と比較

個人事業主、法人化した経営者、会社員では、税金や社会保険料の種類・計算方法・負担する主体が異なります。単純に所得税率や法人税率だけを比べるのではなく、事業と個人を合わせた税負担、社会保険料、手元に残る資金まで含めて比較することが重要です。

  • 法人と比較
  • 会社員と比較
  • 個人事業主の所得税・住民税を課税所得別に比較

法人と比較

法人化すると、個人事業の所得税に代わって、会社の所得には法人税、法人住民税、法人事業税などが課されます。法人税の実効税率の方が低くなる場合などでは法人化が検討されます。

ただし、経営者が会社から役員報酬を受け取れば、個人側では所得税・住民税がかかります。法人事業所は原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となるため、一定の要件を満たす役員については社会保険料の負担も生じます。

そのため、「所得税率より法人税率の方が低い」という理由だけで法人化が有利とは判断できません。法人と経営者個人の税金・社会保険料や法人のランニングコスト等を合計し、法人に残す利益や個人の手取りまで含めて比較することが重要です。

専門家への相談の目安として、一般には安定的に所得が900万円を超える場合から、法人化を検討し始めるとされています。

会社員と比較

会社員は給与から所得税が源泉徴収され、健康保険料と厚生年金保険料は原則として会社と本人が半分ずつ負担します。

一方、個人事業主は所得税の確定申告・納付を自ら行い、住民税や個人事業税、国民健康保険料なども、それぞれ異なる時期に納付することになります。

そのため、税金・社会保険料の年間負担額が同程度であっても、給与から毎月控除される会社員と、まとまった金額を自ら納める個人事業主では、負担感が異なることがあります。税額だけでなく、いつ現金が出ていくのかまで比較することが大切です。

個人事業主のの所得税・住民税を課税所得別に比較

課税所得所得税 + 復興特別所得税住民税(所得割10%)合計
1,000万円約180万円約100万円約280万円
1,500万円約349万円約150万円約499万円
2,000万円約531万円約200万円約731万円

※所得税・復興特別所得税は2026年(令和8年)分の税率を基にした概算です。住民税は比較のため、所得税の課税所得と同額を住民税の課税所得と仮定して10%を乗じた単純な目安です。実際には、所得税と住民税で所得控除額などが異なるため、課税所得や住民税額は一致しない場合があります。均等割、森林環境税、個人事業税、消費税、国民健康保険料・国民年金保険料などは含めていません。

この表だけを見ると、課税所得が増えるほど所得税・住民税の負担が大きくなることが分かります。ただし、実際の個人事業主の手取りを確認するには、個人事業税、消費税、国民健康保険料なども加えて試算する必要があります。

また、「課税所得1,500万円」と「売上1,500万円」や「利益1,500万円」は同じ意味ではありません。税金が高いかどうかを比較するときは、売上ではなく、必要経費や所得控除を反映した後の課税所得まで確認することが重要です。

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所得税

個人事業主は税金が高い年ほど資金が残らない

事業上の利益と手元に残る現金は、必ずしも同じように増減するわけではありません。例えば、商品を販売した代金やサービスの報酬は、原則として実際に入金された時点ではなく、売上げとして収入に計上すべき時期に所得へ反映されます。そのため、年末時点で売掛金が残っていても、その売上げが当年の所得に含まれることがあります。

一方、借入金の元本返済は必要経費にならず、減価償却資産も購入額の全額を当年の必要経費にできるとは限りません。このように、帳簿上は大きな利益が出ていても、売掛金がまだ入金されていない、設備投資で多額の現金を支出した、借入金の元本を返済したといった理由から、手元資金が十分に増えていないことがあります。

さらに、前年の所得を基に計算される住民税や、対象となる場合の個人事業税は翌年に納付するため、「利益が出た年の決算時点では現金があるように見えても、その後の納税で資金が減る」ことを見越しておく必要があります。

また、所得税・復興特別所得税の予定納税の対象となる場合は、その年の所得税等の一部を7月と11月に前払いします。原則として、前年分の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が15万円以上の場合が対象です。

時期主な申告・納付
3月所得税等・消費税等の申告、納付
6月以降住民税
7月所得税等の予定納税(第1期)
8月・11月個人事業税
11月所得税等の予定納税(第2期)

※納期は自治体や年によって異なる場合があります。予定納税は、予定納税基準額が15万円以上の場合に原則として必要です。

なお、前年に大きな利益が出たものの当年は業績が悪化している場合などは、一定の要件の下で予定納税額の減額申請を検討できることがあります。

個人事業主の税金が高い年は期限別に利益対策を選ぶ

利益対策は、年内に手続きや支払いが必要なものから確認します。9月から10月を目安に年間利益を見積もり、納税見込みと使える制度を確認することが重要です。

必要経費は支払い日だけで決まりません。未払費用は債務が確定しているか、前払費用は当年分に対応しているかを確認します。自宅兼事務所の費用は、業務に使った部分を合理的に区分します。

固定資産は、購入日ではなく事業の用に供した日から減価償却を始めましょう。少額減価償却資産の特例は、一定の青色申告者が対象です。令和8年4月1日以後に取得等した資産は、取得価額40万円未満まで対象が広がりました。年間300万円の上限は変わりません。

小規模企業共済は月額7万円までで、支払った掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象です。当年分の控除を受ける場合は、原則として年内に納付します。受取時には受取方法などに応じて課税されます。

経営セーフティ共済は月額20万円、累計800万円が上限です。個人事業主が必要経費に算入した掛金に対応する解約手当金は、原則として事業所得の収入金額になります。令和6年10月1日以後に解約して再加入した場合、解約日から2年間に支払う掛金は必要経費に算入できません。

また裏技的な方法として、中小企業経営強化税制を活用し、事業投資の額を一括で経費算入する方法もあります。

制度ごとに期限と将来の課税関係が異なるため、早い段階で検討を開始することが推奨されます。

個人事業主の税金が高い年は消費税の期限を確認する

消費税のインボイス制度に関する特例には適用期間があります。インボイス発行事業者の登録を受けたことをきっかけに、免税事業者から課税事業者となった事業者が利用できる「2割特例」は、個人事業者の場合、2026年(令和8年)分が最後の適用年です。

令和9年分と令和10年分には、一定の個人事業者を対象とする3割特例があります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは適用できないため、要件を確認します。

簡易課税制度を選択する場合は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。暦年課税の個人事業者であれば、通常は適用する年の前年12月31日までです。

ただし、2割特例または3割特例を適用した翌年から簡易課税制度へ移行する場合には、届出期限の特例があります。一定の場合には、簡易課税を適用しようとする年分の消費税の申告期限までに届出書を提出することで、その年から簡易課税制度を適用できます。

3割特例や簡易課税制度は計算や事務負担を軽減できる一方、実際の仕入税額を基に計算する一般課税の方が有利になる場合もあります。特に、設備投資などで課税仕入れが大きくなる年は、3割特例・簡易課税・一般課税のそれぞれで納付税額を試算してから判断することが重要です。

個人事業主の税金が高いなら法人化後の総負担で比較する

法人化は、所得額や税率だけで判断できません。年の途中でも法人化できますが、法人化前に個人として生じた所得を法人の所得に振り替えることはできません。

そのため、「今年はすでに大きな利益が出たので、年末に法人化して今年の所得税を法人税へ切り替える」といった考え方はできません。法人化による税負担の変化は、原則として法人化後の事業について検討する必要があります。

判断する際は、法人税等に加え、役員報酬にかかる所得税・住民税、社会保険料、法人の維持費用まで含めて比較します。役員報酬は、損金算入の要件を踏まえて設定しなくてはなりません。

単年度の一時的な利益増加のみを理由に法人化を進めると、翌期以降に業績が低迷した際に、均等割等の法人維持コストや社会保険料の負担が重荷となるおそれがあります。そのため、中長期的な利益の継続性を見極め、法人と個人の双方に残るトータルの手取り資産額を基に判断することが重要です。

個人事業主の税金が高い場合によくある質問

特に質問の多い個人事業主の税金について整理します。

  • 個人事業主は年収いくらから税率が高くなりますか?
  • 個人事業主の納税資金はいくら確保すべきですか?

個人事業主は年収いくらから税率が高くなりますか?

個人事業主の所得税率は、売上やいわゆる「年収」ではなく、必要経費や所得控除などを差し引いた後の課税所得によって決まります。そのため、「年収○万円を超えたら税率が高くなる」と一律にはいえません。

所得税率は5%から45%までの7段階です。例えば、課税所得が330万円を超えると20%、695万円を超えると23%、900万円を超えると33%の税率区分に入ります。ただし、税率が上がっても、その税率が課税所得の全額にかかるわけではなく、超えた部分に高い税率が適用される超過累進税率となっています。

個人事業主の納税資金はいくら確保すべきですか?

納税資金として確保すべき金額に、「売上の○%」「利益の○%」といった一律の基準はありません。当年の利益見込みや所得控除、消費税の課税方式などによって必要額が大きく変わるためです。

まず、当年の所得見込みを基に所得税・復興特別所得税を試算し、翌年度にかかる住民税や、対象となる場合の個人事業税も見積もります。消費税の課税事業者であれば、所得税とは別に消費税・地方消費税の納税見込みも確認しましょう。

また、予定納税の対象者は、確定申告時だけでなく7月と11月にも所得税等の支払いが発生します。原則として、前年の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が15万円以上の場合に予定納税が必要です。予定納税額は、その年分の確定申告で精算されます。

必要額を納付時期ごとに分けて準備すると、資金繰りを管理しやすくなります。個別の事実関係や届出状況によって取扱いが異なるため、最終的な判断は担当の税理士等にご確認ください。

個人事業主の利益対策なら税理士法人ネイチャー

税理士法人ネイチャーでは、原則個人事業主の方の顧問契約を受け付けておらず、個人事業主の税負担の最適化をコンサルティングさせていただくセカンドオピニオンの税理士法人としてご活用をいただいております。

もし個人事業主の方が今年のご対策をご希望される場合は、なるべく10月前半までに当社の無料面談を通じて情報提供の機会をいただければと考えております

また、資産形成と税務を別々に判断すると、税引後に残る資産まで含めた判断が難しくなる場合があるので注意が必要です。税務面を踏まえて資産形成もトータルで検討できる点が、ネイチャーグループの特徴です。

ぜひお気軽に無料相談をご活用ください。

まとめ:個人事業主の税金が高い理由を確認し、利益が出た年は税引後資産で判断しよう

税金が高いと感じる理由は、税率だけではありません。前年の所得をもとに翌年課税される住民税や対象業種にかかる個人事業税、利益を直接の計算基礎としない消費税、税金ではない社会保険料などが重なります。さらに、利益と手元資金にはズレが生じる場合があります。

利益が出た年は、まず年間利益を早めに見積もり、次に、年内に間に合う対策と翌年以降の選択肢を分けましょう。最後に、減る税額だけでなく、支出後に残る資金と資産で判断することが重要です。

税理士法人ネイチャーでは、個人事業主の方のための利益対策のご相談が可能です。対策方法を整理したい方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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