「創業のころから同じ税理士に依頼し、決算も申告も問題なく進んでいる。ただ、税金対策や資産運用は契約の範囲外。手元の資産が思うように増えていかない。」このような悩みを抱える経営者は少なくありません。
長く付き合ってきた税理士との顧問契約を解約し、全面的に変更する決断は簡単ではありません。不満の内容によっては、顧問税理士を変更する以外の方法が適している場合もあります。
この記事では、税理士の変更を検討する際の注意点を整理し、契約内容の見直しやセカンドオピニオン、全面変更の3つの方法を比較します。自社に合った方法を判断するためのポイントがわかるでしょう。
税理士変更の理由になる5つの状況
税理士変更とは、現在契約している顧問税理士との委任関係を見直し、新たな税理士へ変更したり専門分野の相談先を追加したりする手続きのことです。変更を検討するきっかけとなる主な要因を5つに整理して解説します。
- 申告内容について詳しい説明を受けたい
- 相談への回答時期が経営判断に合わない
- 税金対策が相談できない
- 法人・個人をまとめて相談したい
- 顧問税理士の方が廃業を予定している
申告内容について詳しい説明を受けたい
税額の根拠や申告内容が説明されない状態は、変更を考える理由になります。確認したいのは3点です。
- 今期の着地見込みが共有される時期
- 納税額の概算が示される時期
- 前期から税額が変動した理由
決算着地や納税見込み額が申告直前まで共有されない状態が続くと、納税資金の手当てや次期の投資計画などの重要な経営判断に支障をきたすおそれがあります。
相談への回答時期が経営判断に合わない
回答の遅れが経営判断に影響しているなら、変更を検討する理由になります。役員報酬の改定や決算前の設備投資は、判断する時期も重要です。
役員報酬の通常改定は、定期同額給与の要件上、原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行います。時期を過ぎると、例外に該当しない限り、損金に算入できない部分が生じる場合があります。
税金対策が相談できない
申告や記帳は問題なくしていただけていたとしても、税金対策の相談については、顧問税理士の方が乗ってくれないことがあります。顧問税理士との契約には税金対策の提案は含まれていないことも多いです。
税金対策については、顧問税理士の方自身がどうしても日常的にお忙しくされているので、最新の情報収集、リスク事項の分析、お客様へのご提案といったことに割く時間がないという状況が多く見られます。
法人・個人をまとめて相談したい
会社の税務だけを個別に検討すると、経営者個人の相続を見据えた対策とのバランスを取りにくい場合があります。役員報酬を上げると、所得税や社会保険料の負担が増える場合があり、会社に利益を蓄積すると、相続・贈与時の自社株評価が上がる場合もあります。
法人と個人を一体として検討し、税引き後の手取りや相続への影響を確認する相談についても、専門性が高く、ご対応をされない税理士の方も多いです。
法人税と相続税はかなり異なった考え方で成立している税金です。税理士は本来専門分野ごとに相談できる内容が分かれており、両方に精通している方は稀です。
そのため、法人顧問と個人の相続の両方を顧問税理士の方に相談できないことに不満を持たれる方は非常に多いのですが、税理士サイドとしても対応することはかなり難しいです(実際、相続関連業務について別の税理士の方と連携して対応する税理士の方も多くいらっしゃいます)。
顧問税理士の方が廃業を予定している
顧問税理士の方がご高齢となり引退を考えられている場合、その方が事業承継を行わず廃業されるようなケースも税理士変更のきっかけとなります。
基本的に、法人税の申告を自力で行うことは非常に難しいため、現在の顧問税理士の契約解除までに、次の税理士の方について見つけておき、余裕をもって引継ぎを行うことが重要です。
税理士変更前は不満の原因を確認する
不満の原因は「担当者」「契約内容」「専門分野」の3つに分けられます。原因を分けて考えると、全面的な変更が必要か判断しやすくなります。
- 担当者の対応状況
事務所ではなく担当者に原因があるなら、担当変更の相談で解決する場合もあります。 - 契約範囲外
顧問契約書や見積書などで、業務の範囲や面談回数を確認します。税金対策の提案が契約範囲に含まれていなければ、追加で依頼できるかを相談します。 - 必要な専門分野との違い
事業承継、自社株の評価、相続、国際税務は、専門知識や実務経験が求められる分野です。特定の専門分野だけに支援が必要なら、全面的な変更以外に、その分野を専門的に扱っている税理士事務所に相談する方法も選べます。
税理士変更は3つの対応方法から選ぶ
原因がわかったら、「顧問契約の見直し」「セカンドオピニオン」「全面変更」の3つから選びます。担当者や契約内容への不満なら見直し、特定分野の支援が必要ならセカンドオピニオンが選択肢です。全面変更は引き継ぎの負担が大きいため、不満の範囲に合わせて判断します。
- 現在の顧問契約を見直す
- セカンドオピニオンを利用する
- 顧問税理士を全面的に変更する
現在の顧問契約を見直す
担当者や面談回数に不満があるなら、契約の見直しが先です。業務の範囲、回答時期の目安、追加報酬などを確認します。変更した内容は、書面やメールで確認しておきます。
現在の税理士との関係を維持できるため、引き継ぎの負担を抑えやすい方法です。
セカンドオピニオンを利用する
セカンドオピニオンは、日々の記帳や申告を現在の顧問税理士へ依頼しながら、税金対策、事業承継、相続、国際税務などについて別の専門家の意見を得る方法です。
顧問契約を解約する必要がないため、これまでの申告体制を維持しながら、専門分野に関する判断材料を増やせます。
提案の妥当性を確認したい場合や、法人と経営者個人を合わせた税負担・資産形成を検討したい場合にも適しています。複数の選択肢を比較したうえで、現在の契約を見直すか、顧問税理士を全面的に変更するかを判断できる点もメリットです。
実際、相続や税金対策を専門的に行っている税理士事務所は、法人の顧問契約を業務として行っていない場合も多く、一つの事務所にすべての対応を依頼することは現実的には難しいとも考えられます。
提案を実行する際は、申告への反映や資料共有を誰が担うのか、顧問税理士とセカンドオピニオン先の役割を事前に整理しておきましょう。
顧問税理士を全面的に変更する
説明不足や対応の遅れが、複数の業務で長く続く場合に検討します。契約終了や資料の引き継ぎが必要になるため、新しい依頼先と業務開始日を決めてから進めるとスムーズです。
日常的な顧問業務について支障を感じられる場合には、顧問替えを選択される方もいらっしゃいます。
新しい税理士の選び方はこちらの記事で解説しています。
税理士変更のメリット
税理士変更のメリットは、依頼する業務や専門分野を会社の状況に合わせて見直せる点です。会社の成長や経営者の資産形成が進むと、事業承継、自社株の評価、相続、法人と個人の資産管理など、必要な支援も変わります。
現在の顧問契約では対応範囲外となる分野の支援を受けられるほか、相談や報告の方法も見直せます。会社や経営者の状況に合った支援体制へ切り替えられることが、税理士変更の大きなメリットです。
ただ、すべての分野を網羅的に対応できる税理士を見つけることは、相当にハードルが高いことも念頭に置いておきましょう。
税理士変更のデメリット
税理士変更のデメリットは、新しい税理士への引き継ぎに時間と手間がかかる点です。役員報酬の決め方や関係会社との取引、過去の税務判断などは、申告書や会計データだけでは背景を把握しにくい場合があります。
過去の資料整理や経緯の説明が不十分な場合、確認作業が煩雑化し、月次決算や本決算のスケジュールに遅延が生じるリスクがあります。そのため、変更前に引き継ぐべきデータや資料の所在を整理し、余裕を持った移行期間を確保しておくことが重要です。
税理士変更のタイミング
一般に進めやすいのは、決算と申告が終わった後です。時期ごとの注意点を確認すると、引き継ぎを進めやすくなります。
| 時期 | 進めやすさ | 主な注意点 |
| 申告完了後 | 進めやすい | 次回の月次処理に向けて体制を整える |
| 期中 | 検討できる | 月次資料と会計データを引き継ぐ |
| 決算直前 | 慎重に判断 | 申告期限と引き継ぎ期間を確認する |
引き継ぎ資料や契約手続きを考え、切り替え予定日の2〜3か月前を目安に準備すると進めやすくなります。元の顧問税理士が申告を終えた後に切り替える方法もあります。
税務調査の対応中に変更する場合は、過去の経緯を十分に引き継ぐことが大切です。どの期間の業務を誰が担当するかを決めておきます。新しい税理士が税務代理を行う場合は、税務代理権限証書を税務官公署へ提出します。
決算期そのものを変える方法は、別の記事で解説しているので参考にしてください。
税理士変更の手順を6ステップで解説
進め方を時系列で確認すると、税務対応を担当する税理士がいない期間を防ぎやすくなります。契約の確認から業務開始まで、6段階で説明します。
ステップ1. 顧問契約の解約条項を確認する
解約予告の期間、報酬の精算方法、資料の返却方法を確認します。条件を確認せずに解約を伝えると、想定外の費用が生じる場合があります。
ステップ2. 必要な支援範囲を整理する
記帳、決算、申告、税金対策、事業承継のうち、不足している支援を書き出します。
ステップ3. 新しい依頼先を先に決める
新しい依頼先と業務開始日を決めてから、現在の税理士へ解約を伝えると引き継ぎが進めやすくなります。後任が決まる前に解約手続きを進めてしまうと、税務相談や月次処理、申告準備の空白期間(無税理士期間)が生じてしまうリスクがあります。
ステップ4. 解約の伝え方を文面で整える
理由は簡潔に伝え、これまでの対応への感謝と契約終了の希望日を添えます。
ステップ5. 引き継ぎ資料を受け取る
申告書や届出書の控え、総勘定元帳、会計データなどを確認します。不足があれば、現在の税理士へ返却や提供を依頼します。
ステップ6. 業務開始日を確認する
新しい税理士の業務開始日と担当する事業年度や業務範囲を書面やメールで確認します。
税理士変更で準備すべき引き継ぎ資料
個人資産や事業承継の資料までそろえると相談の精度が上がります。法人の帳簿書類は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存します。
青色申告書を提出した事業年度で欠損金が生じた場合などは10年間です。2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間です。
| 区分 | そろえる資料 | 確認するポイント |
| 法人税務 | 申告書、決算書、総勘定元帳、届出書の控え | 必要な期間分がそろうか |
| 会計データ | 会計ソフトのデータ、電子申告の控え | 移行できる形式か |
| 個人資産 | 確定申告書、金融資産の一覧、不動産の資料 | 法人と合わせて確認できるか |
| 事業承継 | 株主名簿、自社株の評価資料、後継者の予定 | 役員退職金の準備状況 |
| 相続 | 家族構成、保有資産の一覧、遺言書の有無 | 納税資金の見通し |
| 海外資産 | 海外口座、海外法人、国外財産に関する資料 | 該当する場合のみ用意 |
税理士変更の引き継ぎトラブルを防ぐ方法
引き継ぎでは、資料の不足、データ形式の不一致、電子申告に必要な情報の確認漏れなどに注意が必要です。
【仮想事例】3月決算の会社で、旧税理士から受け取った会計データが閲覧用の形式のみだったため、新しい税理士が過年度データの確認や再入力に時間を要しました。
受け渡しの一覧表を作り、資料名と受領日を記録します。預けた原本は、返却状況も確認します。旧税理士側で作成・保管されている自社固有のデータや書類については、顧問契約書の条項や取り決めにより開示・返還の範囲が異なるケースがあるため、事前に引き継ぎ可能な範囲を明確にしておくことが重要です。
税理士変更のよくある質問
税理士変更にあたってよくある質問をまとめました。
- 顧問税理士は契約途中でも変更できますか?
- 税理士変更で税務調査が増えますか?
- セカンドオピニオンは現顧問へ伝える必要がありますか?
- 税理士変更で税務署への手続きは必要ですか?
顧問税理士は契約途中でも変更できますか?
契約途中でも、契約内容に従って変更できます。解約予告の期間や報酬の精算方法は契約書によって異なるため、解約前に確認します。
税理士変更で税務調査が増えますか?
税理士を変更した事実だけで税務調査が増えるとする明確な根拠は確認できません。税理士変更そのものを過度に心配する必要はありません。
セカンドオピニオンは現顧問へ伝える必要がありますか?
相談だけであれば、現顧問へ伝える法令上の手続きはありません。ただ相互に協力し合う形が望ましいと考えられますので、随時お伝えをされる方は多いです。申告への反映や資料共有が必要な場合は、税理士間の担当範囲を整理しておきます。
税理士変更で税務署への手続きは必要ですか?
税理士を変更したこと自体について、税務署へ「税理士変更届」のような届出をする必要はありません。
ただし、新しい税理士に税務代理を依頼する場合は、新しい税理士が「税務代理権限証書」を税務署等へ提出します。また、旧税理士との税務代理の委任が終了した場合には、旧税理士が委任終了の通知を行う手続きがあります。
税理士変更を迷うなら税理士法人ネイチャーへ
現在の税理士による記帳や申告には問題がなく、税金対策や事業承継など特定分野の支援だけが不足している場合、まずは別の税理士法人からセカンドオピニオンとして提案を受ける方法があります。
税理士法人ネイチャーでは、原則として法人の顧問契約を承っておらず、今期・来期の決算対策や自社株評価、事業承継、相続、経営者個人の所得税対策・資産運用などの相談にスポットで対応しています。ご提案は原則無料でさせていただいております。現在の顧問税理士との関係を維持したまま相談できますので、税理士変更を決める前の判断材料を増やしたい方は、無料の初回面談をご利用ください。
まとめ:税理士変更は不満の原因に応じて3つの方法から選ぼう
税理士への不満は、必ずしも全面的な変更で解決するとは限りません。担当者や契約内容に原因があるなら、まずは見直しを検討します。特定の専門分野の支援が不足しているなら、セカンドオピニオンも選択肢になります。複数の業務で希望する対応とのずれが続くなら、全面的な変更を計画的に進めましょう。
会社と経営者個人の状況を別の専門家にも確認してもらうと、選択肢を比較しやすくなります。税理士法人ネイチャーでは、税金対策や事業承継に加え、資産運用まで含めた相談に対応しています。ぜひ一度お問い合わせください。
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