「今年は利益が出そうだが、ふるさと納税はいくらまで使えるのか」と悩む個人事業主の方もいるでしょう。
個人事業主は、会社員と異なり、年の途中では所得が確定しにくいため、ふるさと納税の控除上限額を判断しにくい場合があります。
ふるさと納税は個人事業主も利用できますが、寄附額は事業の必要経費にはなりません(あくまで所得税・住民税からの控除です)。控除上限額も売上ではなく、当年の所得や所得控除、住民税額などによって変わります。
この記事では、個人事業主がふるさと納税をする際の上限額の考え方と概算の手順、年末に再確認する方法を解説します。
年内に寄附する金額の目安を確認し、自己負担額を抑えながら計画的にふるさと納税を利用しましょう。
個人事業主のふるさと納税は上限内なら活用できる
個人事業主でも、ふるさと納税を利用できます。ふるさと納税とは、自治体へ寄附を行うことで、一定の上限額の範囲内で、所得税と住民税の控除を受けられる制度です。
ただし、個人事業主が行うふるさと納税は、事業の仕入れや外注費のような必要経費ではありません。あくまで個人として行う寄附であり、所得控除や住民税控除の対象として扱われます。
まずは、控除の基本的な仕組みと返礼品の位置づけを確認しましょう。
- 上限内なら自己負担は原則2,000円
- 対象の寄附先では返礼品を受け取れる
上限内なら自己負担は原則2,000円
ふるさと納税は、控除上限額の範囲内で寄附を行えば、自己負担額が原則2,000円に抑えられます。寄附額のうち2,000円を超える部分が、一定の範囲で所得税と住民税から控除されるためです。
所得税は確定申告により所得控除が適用され、還付または納税額の減少という形で反映されます。住民税は翌年度の税額から控除されます。
ただし、控除上限額を超えて寄附した部分については、自己負担が増えることがあります。そのため、個人事業主がふるさと納税を行う場合は、当年の所得見込みをもとに上限額を概算しておくことが重要です。
対象の寄附先では返礼品を受け取れる
ふるさと納税では、寄附先の自治体によって返礼品を受け取れる場合があります。返礼品は、制度を利用する経済的なメリットの一つです。
返礼品の調達費用は、寄附額の3割以下とされています。そのため、控除上限額の範囲内で寄附すれば、原則1年あたり2,000円の自己負担で返礼品を受け取れます。
なお、受け取った返礼品の経済的利益(調達価額相当額)は、税務上「一時所得」に区分されます。一時所得には年間最高50万円の特別控除額が設けられているため、生命保険の一時金や満期金など他の一時所得が存在する場合や極めて多額の寄附を行う場合には課税関係に注意が必要です。
詳しくは、以下の記事もあわせてご確認ください。
個人事業主がふるさと納税をするメリット
個人事業主がふるさと納税をする主なメリットは、返礼品を受け取れることや所得税・住民税の控除を受けられることです。所得が大きい場合は、控除上限額も大きくなる傾向があります。
- 返礼品を受け取れる
- 所得税・住民税の控除を受けられる
- 所得が大きいほど控除上限額も大きくなりやすい
返礼品を受け取れる
多くの自治体では、ふるさと納税の寄附者向けに地域の特産品などを返礼品として用意しています。控除上限額の範囲内であれば、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税の控除対象となり、返礼品も受け取ることが可能です。
ただし、返礼品による経済的利益は一時所得に該当します。他の一時所得がある場合は、課税関係も確認しましょう。
所得税・住民税の控除を受けられる
ふるさと納税では、一定の上限まで、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と個人住民税から控除されます。確定申告をする個人事業主は、寄附金控除を申告することで適用を受けられます。
繰り返しにはなりますが、寄附額が上限を超えた部分は全額控除の対象にならないため、事前に上限額を確認することが重要です。
所得が大きいほど控除上限額も大きくなりやすい
控除上限額は、所得金額、家族構成、所得控除、住民税所得割額などによって変わります。一般に、課税所得や住民税所得割額が大きいほど、上限額も高くなる傾向があります。そのため、利益が大きい年は、ふるさと納税を活用できる金額も増えやすいといえます。
ただし、個人事業主は年によって売上や経費が変動しやすく、最終的な所得が年末まで確定しないことも少なくありません。前年の寄附額をそのまま使うのではなく、当年の売上、経費、所得控除、予定納税、住民税の状況などをもとに、毎年上限額を確認しましょう。
個人事業主のふるさと納税上限額は当年所得で決まる
ふるさと納税の上限額は売上では決まりません。そのため、売上が同じでも、必要経費や所得控除の金額が変われば、ふるさと納税の上限額も変わります。
主に確認すべきポイントは、次の3つです。
当年の事業所得、事業以外の所得、各種控除から決まる流れを説明します。
- 売上だけでは上限額を計算できない
- 事業所得以外の所得も影響する
- 控除による上限額の変化を確認する
売上だけでは上限額を計算できない
計算に使うのは売上ではなく所得です。売上から必要経費などを差し引いた金額を使います。例えば売上3,000万円、必要経費1,200万円のケースを考えます。青色申告特別控除65万円を適用すると、事業所得は1,735万円です。
必要経費が500万円増えれば、事業所得は1,235万円まで下がります。売上が同じでも、所得が変われば上限額も変わります。
事業所得以外の所得も影響する
上限額を計算する際は、事業所得以外の所得も影響します。所得の種類ごとの影響を整理します。
| 所得の種類 | 主な例 | 上限額への影響 |
| 事業所得 | 本業の利益 | 増えると上限額も増える傾向 |
| 給与所得 | 役員報酬、勤務先の給与 | 増えると上限額も増える傾向 |
| 不動産所得 | 賃貸物件の所得 | 赤字なら損益通算で下がる場合がある |
| 雑所得 | 原稿料、講演料など | 増えると上限額も増える傾向 |
| 配当所得・譲渡所得 | 上場株式の配当や売却益 | 申告方法によって影響が異なる |
上場株式の配当や売却益は、申告方法によってふるさと納税の上限額への影響が変わる場合があります。確定申告をすると所得や住民税に反映されることがあるため、国民健康保険料や配偶者控除など、ほかの制度への影響にも注意が必要です。
控除による上限額の変化を確認する
同じ事業所得であっても、所得控除や税額控除の状況によって、ふるさと納税の控除上限額や実際に控除される金額は変わります。
所得控除の見込みを反映する
小規模企業共済やiDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象です。医療費控除や扶養控除も課税所得に影響します。一般に、所得控除が増えると課税所得や住民税所得割額が下がるため、ふるさと納税の控除上限額も下がる傾向があります。
年内に小規模企業共済やiDeCoの掛金を増やす予定がある場合、医療費控除が大きくなりそうな場合、扶養家族が増えた場合などは、変更後の見込み額で上限額を確認しましょう。
税額控除の影響を確認する
住宅ローン控除などの税額控除がある場合は注意が必要です。所得税や住民税から直接差し引かれるためです。適用状況によっては、一般的なシミュレーションの結果と実際の控除額に差が生じる場合があります。
個人事業主のふるさと納税上限額の概算方法
ふるさと納税の上限額を概算する方法には、前年の住民税通知書を使う方法と、当年の所得見込みから計算する方法があります。
個人事業主は年によって所得が変動しやすいため、前年の通知書だけで判断せず、当年の売上・経費・所得控除の見込みも反映して確認することが重要です。
ここでは、次の流れで概算方法を確認します。
- 住民税通知書を確認する
- 所得見込みから住民税所得割額を見積もる
- 概算式から寄附上限額を求める
- 事業所得別の概算額を比較する
住民税通知書を確認する
手軽に目安を把握したい場合は、前年の住民税通知書を確認する方法があります。毎年6月ごろに届く「納税通知書(税額決定通知書)」を用意します。「市町村民税」と「道府県民税」の「所得割額」を確認し、合計してください。
東京都の特別区では「特別区民税」「都民税」と記載されています。ただし、前年の所得に基づく数字です。当年の所得が変わる見込みの場合は、参考値として扱ってください。
所得見込みから住民税所得割額を見積もる
当年の数字で計算する場合は順番があります。売上から必要経費と青色申告特別控除を引き、事業所得を求めます。そこから社会保険料控除や基礎控除などを引くと課税所得です。課税所得に住民税の標準税率10%をかけると、所得割額の目安が出ます。
ただし、実際の住民税では、調整控除や税額控除なども反映されます。そのため、この方法で出した金額はあくまで概算です。
また、所得税と住民税では、所得控除の金額が異なるものがあります。たとえば、基礎控除の金額は所得税と住民税で異なります。税制改正により控除額が変わる場合もあるため、計算する年分に応じた最新の控除額で確認しましょう。
概算式から寄附上限額を求める
住民税所得割額が分かれば、次の式で目安を計算できます。
寄附上限額の目安 = 住民税所得割額 × 20% ÷ (90% – 所得税率 × 1.021) + 2,000円
| 項目 | 意味 |
| 住民税所得割額 | 所得に応じて課される住民税の部分 |
| 20% | 住民税の特例控除に設けられた上限の割合 |
| 所得税率 | 課税所得に対応する税率(5〜45%) |
| 1.021 | 復興特別所得税を反映する数値 |
| 2,000円 | 自己負担となる部分 |
この式は、ふるさと納税の特例控除額をもとにした概算です。住民税所得割額の20%は、住民税の特例控除額の上限であり、寄附額そのものではありません。
また、所得税率は課税所得に応じて異なります。所得税率を誤ると上限額の目安も変わるため、課税所得に対応する税率を確認して計算しましょう。
なお、2027年中の寄附分からは、特例控除額に193万円の上限が加わる予定です。高額な寄附を行う可能性がある方は、改正後の上限にも注意が必要です。
事業所得別の概算額を比較する
条件をそろえて、事業所得別にふるさと納税の上限額の目安を比較します。
ここでは、次の前提で試算します。
- 2026年分の税制を前提
- 青色申告特別控除65万円の適用後の事業所得
- 社会保険料控除100万円
- 基礎控除のみ
- 扶養親族なし
- 税額控除なし
| 事業所得 | 上限額の目安 |
| 500万円 | 9万円 |
| 1,000万円 | 約34万円 |
| 1,500万円 | 約48万円 |
| 2,000万円 | 約76万円 |
事業所得が増えると、上限額も大きくなる傾向があります。ただし、事業所得だけで決まるわけではありません。所得控除や家族構成などが異なれば結果も変わるため、表の数字は目安としてご覧ください。
個人事業主のふるさと納税上限額は年末に再確認
年の途中で計算したふるさと納税の上限額は、あくまで見込み額です。個人事業主は、売上や必要経費、所得控除の金額が年末まで変動しやすいため、年末に最新の数字で再計算することが重要です。
特に、次の3つを確認しましょう。
- 必要経費の最新見込みを反映する
- 所得控除の最新見込みを反映する
- 追加できる寄附額を確認する
必要経費の最新見込みを反映する
必要経費は年末まで変動します。設備の購入や外注費の増加があれば、事業所得が下がる場合があり、事業所得が下がれば、上限額も下がる傾向があります。10月ごろの月次の数字をもとに、12月までの見込みを立ててください。
所得控除の最新見込みを反映する
たとえば、見込みで50万円を寄附した後、年内に小規模企業共済の掛金を増額したケースを考えてみましょう。年内に支払った掛金が増えると所得控除も増え、上限額が下がる場合があります。上限を超えた寄附分は自己負担が増えます。年内に所得控除が増える予定がある場合は、最新の見込み額で計算し直してください。
追加できる寄附額を確認する
再計算した上限額から、すでに寄附した金額を引きます。残りが年内に追加できる金額の目安です。上限額まで寄附する必要はありません。所得が下振れする可能性がある場合は、余裕を持った金額にとどめる方法もあります。
個人事業主のふるさと納税は期限順に進める
ふるさと納税は、寄附をして終わりではありません。年内の寄附、翌年の確定申告、翌年度の住民税通知書での確認まで、期限に沿って進めることが重要です。
主な流れは、次のとおりです。
| 時期 | 行うこと |
| 12月31日まで | 寄附の決済を完了する |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告で寄附金控除を申請する |
| 翌年6月ごろ | 住民税の通知書で控除額を確認する |
12月31日までに寄附を完了する
その年の対象にするには、12月31日までに寄附を完了する必要があります。申込日だけでなく、寄附日として扱われる日を確認してください。決済方法によっては、手続きに日数がかかる場合があります。12月後半の寄附は、決済方法と自治体の締切を必ず確認してください。
確定申告で寄附金控除を申請する
個人事業主は、原則として確定申告でふるさと納税の寄附金控除を申請します。
確定申告書では、寄附金控除の欄に寄附金額を記載し、住民税に関する事項も確認します。所得税では寄附金控除として反映され、住民税では翌年度の住民税から控除されます。
申告にあたっては、自治体が発行する寄附金受領証明書を添付する方法も可能ですが、ふるさと納税ポータルサイトなどの特定事業者が発行する年間の「寄附金控除に関する証明書」を利用できる場合が近年では一般的になってきました。
またe-Taxで申告する場合は、対応する証明書データを利用できることがあります。
住民税通知書で控除額を確認する
所得税分は申告後に還付や納税額へ反映されます。住民税分は翌年度の住民税から控除されます。翌年6月ごろに届く通知書の税額控除に関する欄を確認してください。想定より少ない場合は、申告内容や上限額を確認しましょう。
個人事業主がふるさと納税をする際の注意点
個人事業主は、年によって所得が変動しやすく、ふるさと納税の上限額を事前に確定しにくい傾向があります。
また、ふるさと納税は事業の必要経費にはならず、先に寄附金を支払うため、一時的に手元資金も減少します。利用する際は、次の点に注意しましょう。
- 経費にならない
- 上限額を把握しにくい
- 手元資金が減る
- 確定申告でワンストップ特例が無効になる
- 本人の名義で寄附をする
経費にならない
ふるさと納税は地方公共団体に対する寄附金であり、事業所得を計算するうえでの「必要経費」には算入できません。確定申告においては、個人の「寄附金控除(所得控除)」として取り扱われます。そのため、事業用口座や法人・事業用カードから支払った場合は、帳簿上「事業主貸」として経理処理を行い、事業資金と個人支出を明確に区分する必要があります。
上限額を把握しにくい
個人事業主は年末まで売上と必要経費が動きます。年の途中では当年の所得が確定しません。前年の住民税の通知書は参考値として使ってください。年末に見込みを更新し、上限額を計算し直すことが重要です。
手元資金が減る
ふるさと納税では、先に寄附金を支払います。所得税の還付や住民税の控除は、その後に反映されます。寄附額が大きい場合は、一時的な資金負担も大きくなります。翌年の納税資金と事業の運転資金を確保したうえで、寄附額を決めてください。
確定申告でワンストップ特例が無効になる
ワンストップ特例を申請しても、その後に確定申告をすると無効になります。確定申告を行う際は、ワンストップ特例の申請を行った自治体分も含め、当年に寄附したすべての金額を寄附金控除として申告書に記載する必要があります。申告書への記載が漏れた場合、ワンストップ特例による控除も無効となり、税額控除が適用されなくなるおそれがあるため注意が必要です。
本人の名義で寄附をする
控除を受けられるのは、実際に寄附をした本人です。家族名義で申し込むなど、寄附者と控除を受ける方が異なる場合は注意が必要です。本人の寄附として扱われなければ、本人の控除の対象にはなりません。寄附者の名義を確認してから手続きを進めてください。
個人事業主のふるさと納税でよくある質問
個人事業主がふるさと納税をする際によくある質問に簡潔にお答えします。
ふるさと納税は事業が赤字でも利用できますか?
寄附そのものは可能です。ただし、ふるさと納税による控除を受けられるかどうかは、所得税や住民税が発生しているかによって変わります。事業が赤字でも、給与所得、不動産所得、雑所得など、ほかの所得がある場合は、控除を受けられる可能性があります。 一方、所得や住民税所得割額が少なければ、自己負担2,000円で済む寄附額も小さくなります。事業が赤字の年は、ほかの所得や住民税の見込みを確認してから寄附額を決めましょう。
ふるさと納税は上限額を超えたらどうなりますか?
上限額を超えて寄附することはできます。ただし、超えた分だけ自己負担額が増えます。ふるさと納税による控除には限度があるため、自己負担を2,000円に抑えたい場合は上限額の確認が必要です。
ふるさと納税の返礼品に税金はかかりますか?
ふるさと納税で受け取った返礼品による経済的利益は、税務上、一時所得に該当します。課税関係を判定するのは、返礼品を受け取った年です。
一時所得には年間最高50万円の特別控除があります。そのため、返礼品だけで直ちに税金がかかるケースは多くありません。
ただし、生命保険の満期保険金、解約返戻金、懸賞金など、ほかの一時所得がある場合は、返礼品による経済的利益も含めて一時所得を計算する必要があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
個人事業主の利益対策なら税理士法人ネイチャー
ふるさと納税は必要経費にならず、事業所得を下げる方法でもありません。利益が大きい年は、所得税、住民税、個人事業税などの負担を確認することが重要です。消費税の納税義務がある方は、消費税も含めた資金繰りを確認しましょう。
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まとめ:個人事業主のふるさと納税は上限額を確認して判断しよう
ふるさと納税は、上限額を確認したうえで利用を検討できます。上限額内でのふるさと納税では、返礼品を受け取り、自己負担額を2,000円に抑えることで、一定のメリットを受けて頂くことが可能です。大きく利益が出る年は、ふるさと納税の上限額も大きくなります。
ただ、ふるさと納税だけでの対策には限界があり、事業の利益に応じた税金対策は、ふるさと納税とは分けて様々な方法を検討する必要があります。ふるさと納税以外の今期の所得税対策を検討したい方は、税理士法人ネイチャーの無料相談をご利用ください。
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