内部留保の使い道は?実際に使える金額・5つの活用法を税理士が解説

毎年黒字が続き、決算書の利益剰余金が増えてくると、「この資金を設備投資や借入返済、配当に使ってよいのか」と考える経営者もいるでしょう。

ただし、内部留保は会社の預金残高そのものではありません。利益剰余金として蓄積された金額の一部は、設備や在庫、売掛金などに形を変えている場合があります。

そのため、内部留保の使い道を決める際は、利益剰余金の金額だけでなく、実際に使える現預金、今後の納税・借入返済、事業継続に必要な資金を確認することが重要です。

この記事では、内部留保と現預金の違い、実際に使える金額の求め方、5つの使い道も解説します。税金・融資・自社株評価への影響も確認しましょう。

内部留保を「どれだけあるか」ではなく、「どの資金を何に使えるか」という視点で整理していきましょう。

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内部留保の使い道は?

内部留保の使い道は、利益剰余金の額ではなく、実際に使える現預金を基準に考えます。

内部留保は、一般に貸借対照表の「利益剰余金」を指す言葉として使われています。利益剰余金とは、過去の利益を蓄積した金額であり、預金残高を示す数字ではありません。

利益を蓄積する過程で、資金が設備、在庫、売掛金などに変わっている場合があります。そのため、利益剰余金と同じ金額を自由に支出できるとは限りません。

また、内部留保をどのように使うかによって、決算書上の動きも変わります。

使い道現預金決算書上の主な動き
設備の購入減る原則として固定資産に計上し、減価償却を通じて費用になる
借入金の返済減る借入金が減る。元本の返済は費用にならない
配当減る原則として利益剰余金が減る。配当は法人の費用にはならない
人件費・研修費減る当期の費用となり、当期純利益の減少を通じて利益剰余金に反映される

たとえば、設備を購入すると現預金は減りますが、支払った金額がすぐに全額費用になるとは限りません。借入金を返済した場合も、元本の返済は費用ではなく、貸借対照表上の負債が減少します。

このように、内部留保の使い道を考える際は、現預金の動きだけでなく、損益計算書や貸借対照表への影響も確認することが重要です。

内部留保・現預金・分配可能額・使える資金の違い

内部留保の使い道を考える際は、まず「内部留保」「現預金」「分配可能額」「使える資金」を分けて理解することが重要です。いずれも会社の資金判断に関係しますが、意味は異なります。

区分意味確認する場面
内部留保過去の利益を社内に蓄積した金額。一般に貸借対照表の利益剰余金を指す会社に利益がどれだけ蓄積されているかを確認するとき
現預金預金や手元現金など、実際の支払いに使える資金納税、借入返済、投資、配当などの支払いを行うとき
分配可能額会社法上、配当に回せる上限額を判断するための金額株主へ配当できるかを確認するとき
使える資金現預金などから、支払予定額や必要運転資金を差し引いた後に残る資金設備投資、借入返済、配当、運用などの使い道を決めるとき

利益剰余金が多くても、現預金が少なければ、投資や配当に回せる資金は限られます。反対に、現預金が多くても、納税、借入返済、賞与、設備更新などの支払予定があれば、自由に使える金額は少なくなります。

内部留保の使い道を決める際は、利益剰余金の金額だけで判断せず、実際の現預金、今後の支払予定、事業継続に必要な資金を確認しましょう。

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内部留保の使い道と併せて理解しておきたいメリット

内部留保を適切に蓄積しておくと、会社の財務基盤が安定し、投資や株主還元の選択肢を持ちやすくなります。

主なメリットは次の3つです。

  • 財務基盤が安定しやすくなる
  • 投資のタイミングを選びやすくなる
  • 株主への還元余地を確保しやすくなる

財務基盤が安定しやすくなる

利益剰余金が積み上がると、自己資本の充実につながります。赤字が出た場合でも、純資産がマイナスとなる債務超過に陥りにくくなります。

また、金融機関から見ても、自己資本が一定程度ある会社は財務の安定性を説明しやすくなります。

ただし、実際の支払いに対応できるかは、現預金や資金繰りの状況によって変わります。利益剰余金の金額だけでなく、手元資金もあわせて確認しましょう。

投資のタイミングを選びやすくなる

社内に十分な資金を確保していれば、設備更新や人材採用、研究開発、新規事業などを検討しやすくなります。

たとえば、機械設備の更新、社内システムの導入、採用・研修、DX投資などは、まとまった資金が必要になることがあります。内部留保を活用できる状態にしておくと、融資の実行を待たずに投資判断を進められる場合があります。

もっとも、投資を実行する際は、投資後に残る現預金、追加で発生する固定費、資金を回収するまでの期間を確認することが重要です。

株主への還元余地を確保しやすくなる

利益剰余金は、配当の原資の一つになります。社内に利益が蓄積されていれば、将来の配当や自己株式取得など、株主還元の選択肢を検討しやすくなります。

ただし、利益剰余金の全額を自由に配当に回せるわけではありません。会社法では、配当できる金額について分配可能額が定められています。

配当を検討する場合は、分配可能額だけでなく、配当後の現預金残高、納税資金、借入金の返済予定も確認しましょう。

内部留保の使い道と併せて理解しておきたいデメリット

内部留保を蓄積しておくことにはメリットがありますが、必要以上に資金を社内に置き続けると、成長投資や株主対応、事業承継の面で課題が生じる場合があります。

主なデメリットは次の4つです。

  • 資金効率が低下する場合がある
  • 成長投資が遅れる場合がある
  • 株主の理解を得にくくなる場合がある
  • 自社株評価が高くなる場合がある

資金効率が低下する場合がある

必要額を超える現預金を長く保有していると、資金から収益が生まれにくくなります。

特に、使い道が決まっていない資金が多い場合は、設備投資、借入金返済、株主還元、資産運用などに回せる余地がないかを確認することが重要です。

ただし、手元資金を減らしすぎると、納税や仕入、人件費などの支払いに支障が出る可能性があります。資金効率だけでなく、事業継続に必要な資金とのバランスを見て判断しましょう。

成長投資が遅れる場合がある

現預金を残すことを優先しすぎると、設備更新、採用、研修、DX、新規事業などの投資が後回しになる場合があります。

成長投資を先送りすると、短期的には資金を守れても、中長期的には売上機会の損失や生産性の低下につながる可能性があります。

必要な運転資金や予備資金を確保したうえで、投資による収益増加や費用削減、回収期間を比較しましょう。

株主の理解を得にくくなる場合がある

利益剰余金が増えている一方で、配当や投資の方針が見えない場合、株主から説明を求められることがあります。

特に、親族や役員など経営者以外にも株主がいる会社では、内部留保をどの目的で残しているのかを説明できる状態にしておくことが重要です。

配当をしない場合でも、事業継続資金、将来の投資、借入返済、事業承継対策など、資金を残す理由を整理しておきましょう。

自社株評価が高くなる場合がある

利益剰余金の蓄積によって純資産が増えると、非上場株式の評価額が上がる要因になる場合があります。評価額が上がれば、相続や事業承継の際の税負担が増える可能性があります。

相続や事業承継を予定している会社は、社内資金を確保することと、自社株評価への影響をあわせて確認する必要があります。

たとえば、役員退職金、設備投資、配当、借入金返済などは、資金繰りだけでなく、利益や純資産にも影響します。内部留保をどの程度残すかは、法人税、資金繰り、自社株評価を総合して検討しましょう。

なお、取引相場のない株式の評価については、国税庁で評価制度の在り方を検討する有識者会議が開催されています。相続や事業承継を予定している場合は、実際に対策を行う時点で最新の評価方法や改正動向を確認しましょう。

内部留保が問題視される理由

内部留保は、会社の財務安定や将来の投資余力につながります。一方で、利益剰余金が増えているにもかかわらず、賃上げ、設備投資、研究開発、配当などの方針が見えない場合は、外部から「資金をため込みすぎている」と見られることがあります。

ただし、内部留保が多いこと自体が問題とは限りません。利益剰余金の一部は、設備、在庫、売掛金などに変わっている場合があり、すぐに使える現預金とは限らないためです。

重要なのは、会社が資金を残す理由と、今後の使い道を説明できる状態にしておくことです。

資金を残す目的主な内容
事業継続への備え売上減少、災害、主要取引先の倒産、設備故障などへの備え
将来の投資設備投資、DX、人材採用、研究開発、新規事業など
借入返済金融機関への返済や財務体質の改善
株主還元将来の配当や自己株式取得など
事業承継対策役員退職金、自社株承継、相続税対策など

内部留保が問題になるのは、資金を残していること自体ではなく、使い道や方針が不明確な場合です。経営者は、事業継続資金、投資計画、借入返済、株主還元の方針を整理し、必要に応じて株主や金融機関へ説明できる状態にしておきましょう。

内部留保のうち実際に使える金額の求め方

内部留保の使い道を考える際は、利益剰余金の金額ではなく、実際に使い道に回せる資金額を確認します。

経営判断のための目安は、次のとおりです。

「使い道に回せる資金額 = 現預金 + 事業に支障なく換金できる資産の時価 - 支払予定額 - 事業継続に必要な運転資金・予備資金」

これは税法や会計上の決まった計算式ではなく、資金配分を考えるための目安です。次の流れで確認しましょう。

  • 支払予定額を差し引く
  • 事業継続に必要な資金を確保する
  • 適正額を5つの指標で確認する
  • 数値例で使える金額を計算する

支払予定額を差し引く

まず、一定期間内に支払う予定の金額を洗い出します。法人税、消費税、社会保険料、買掛金、未払金、借入金の返済などが対象です。

設備更新や役員退職金など、数年以内に予定している大きな支出がある場合も確認します。支出の時期ごとに資金繰り表へ反映し、使い道に回せる資金から除きましょう。

事業継続に必要な運転資金を確保する

次に、日々の事業を続けるために必要な資金を確保します。売上代金を回収する前に、仕入代金、人件費、家賃などの支払いが発生する場合は、一定の運転資金が必要です。

必要額は、業種、入金サイト、固定費、売上の季節変動、借入余力によって変わります。「月商の何か月分」と一律に決めるのではなく、自社の入出金のタイミングに合わせて見積もりましょう。

適正額を5つの指標で確認する

内部留保や手元資金の適正額に、一律の正解はありません。必要な支払いと事業継続資金を確保したうえで、用途が決まっていない現預金がどれだけ残るかを確認します。

判断する際は、次の5つの指標を確認しましょう。

指標確認する内容
必要運転資金売上代金を回収するまでに、仕入代金、人件費、家賃などを支払えるか
納税・返済予定法人税、消費税、社会保険料、借入金返済、賞与などの支払予定を確保できているか
設備投資・退職金予定数年以内に設備更新、修繕、役員退職金などの大口支出が予定されていないか
融資余力・自己資本投資や配当、返済を行った後も、金融機関から見た財務安全性を維持できるか
自社株評価・事業承継純資産の増加により、非上場株式の評価額や相続税負担が過度に上がっていないか

たとえば、入金までの期間が長い会社では、売掛金の回収前に仕入や人件費の支払いが必要になるため、多めの運転資金を残す必要があります。借入金の返済が重い会社では、返済予定を考慮せずに配当や投資を行うと、資金繰りが悪化するおそれがあります。

一方で、支払予定額や事業継続資金を差し引いても十分な現預金が残る場合は、成長投資、借入金返済、株主還元、資産運用などへの活用を検討しやすくなります。

数値例で使える金額を計算する

現預金8,000万円の会社を例に計算します。

確認項目金額例
現預金8,000万円
事業に支障なく換金できる資産500万円
支払予定額△3,500万円
事業継続に必要な資金△3,000万円
使い道に回せる資金額2,000万円

仮に決算書の利益剰余金が2億円あっても、この例で使い道に回せる資金額は2,000万円です。

この会社が利益剰余金の金額だけを見て3,000万円の配当を検討した場合、使い道に回せる資金額を1,000万円上回ります。その結果、納税、仕入代金、借入金返済などに必要な資金が不足するおそれがあります。

不足分を借入で補えば、利息負担も生じます。配当を決める際は、会社法上の分配可能額だけでなく、配当後の資金繰りも確認しましょう。

資金の流れ全体の考え方はこちらをご覧ください。

内部留保の5つの使い道

内部留保の使い道は、会社の資金繰りや投資計画に応じて検討します。まず事業継続に必要な資金を確保し、そのうえで成長投資、借入金返済、配当、余剰資金の運用を比較すると、資金配分を決めやすくなります。

主な使い道は次の5つです。

使い道主な目的資金を使う時期確認項目
事業継続資金支払能力の確保常時固定費・売上変動・入金サイト
成長投資売上増加・生産性向上投資計画時回収期間・追加固定費・税務処理
借入金返済利息負担の軽減返済条件の見直し時手元資金・返済条件・繰上返済手数料
配当株主への還元決算後・株主還元を検討するとき分配可能額・資金繰り・株主課税
余剰資金の運用資金の有効活用当面使う予定のない資金があるとき安全性・換金性・運用期間

使い道1. 事業継続用の資金を残す

将来の事業継続に備えて、一定の現預金をあえて使わずに手元に残しておく(資金バッファを確保する)ことも、重要な資金配分のひとつです。

売上の減少、入金の遅れ、災害、主要設備の故障などが起きると、一時的に資金繰りが厳しくなる場合があります。必要額は、固定費、売上の変動幅、入金サイト、借入余力などをもとに見積もります。

保険で受け取れる保障額がある場合は、必要資金を考える際にあわせて確認しましょう。

保障額の考え方はこちらで解説しています。

使い道2. 本業の成長投資に充てる

事業継続に必要な資金を確保したうえで、将来の売上増加や生産性向上につながる投資を検討します。成長投資には、設備投資だけでなく、DX、人材投資、研究開発、M&Aなども含まれます。

成長投資の種類主な内容確認するポイント
設備投資機械、店舗設備、車両、社内システムの更新投資額、耐用年数、減価償却、修繕費の増加
DX投資会計、販売管理、在庫管理、AI、自動化ツールの導入業務削減効果、月額費用、定着までの期間
人材投資採用、研修、資格取得支援、賃上げ、福利厚生採用後の固定費、離職率、教育期間
研究開発新商品、新技術、試作品開発成果が出るまでの期間、追加投資の必要性
M&A事業買収、顧客基盤や人材の獲得買収価格、統合費用、回収期間、簿外債務
新市場進出新店舗、海外展開、新規販路の開拓初期投資、撤退コスト、販売開始までの期間
ESG・省エネ投資省エネ設備、再エネ、環境対応、脱炭素対応補助金、電気代削減額、取引先からの評価

成長投資では、投資額だけでなく、投資後に増える固定費も確認する必要があります。たとえば、新しい店舗を出す場合は、内装費や設備費だけでなく、家賃、人件費、広告費などが継続的に発生します。

また、投資した資金を何年で回収できるかも重要です。年間の利益増加額や経費削減額を見積もり、投資額の回収期間を確認しましょう。

内部留保を成長投資に使う場合は、投資後に残る現預金、追加融資の必要性、税務上の処理、資金回収までの期間をあわせて検討することが大切です。

使い道3. 借入金の返済に充てる

借入金を繰り上げて返済すると、将来の利息負担を減らせる一方で、返済に充てた資金は手元から減ります。繰上返済では、金融機関所定の手数料がかかる場合もあります。

繰上返済では、金融機関所定の手数料がかかる場合もあります。返済後の現預金残高、今後の設備投資の予定、追加融資の必要性を確認したうえで判断しましょう。

将来まとまった投資を予定している場合は、借入金を急いで返済せず、手元資金を確保しておく選択肢もあります。

使い道4. 株主へ配当する

内部留保の一部を配当として株主へ分配する方法です。利益剰余金を原資として配当すれば、その分だけ利益剰余金が減ります。

ただし、利益剰余金があっても、自由に配当できるわけではありません。配当を行う際は、会社法上の分配可能額を確認する必要があります。また、配当によって現預金が減るため、配当後の納税資金、借入返済、運転資金も確認しましょう。

剰余金の配当は、原則として法人の損金にはなりません。個人株主が受け取る配当は、所得税や住民税の課税対象となります。

非上場株式の配当は、支払時に原則として20.42%の所得税等が源泉徴収され、総合課税の対象になります。一定の少額配当については、所得税の確定申告不要制度を選択できる場合がありますが、住民税では別途申告が必要になる点に注意が必要です。

使い道5. 余剰資金を運用する

支払予定額や事業継続に必要な資金を確保しても残る資金は、運用を検討できます。

運用先を選ぶ際は、収益性だけでなく、安全性、換金性、運用期間を確認します。本業で近いうちに使う予定がある資金や、納税・返済に必要な資金は、価格変動の大きい商品に回さないよう注意しましょう。

法人で運用する場合は、運用益、売却損益、配当、解約返戻金などの税務上の取扱いも商品ごとに異なります。運用開始時だけでなく、売却・解約時にいくら手元に残るかまで確認することが重要です。

また初年度に全額が損金計上できる投資対象であれば、決算を対策しながら成長投資に資金を回すことができます。

具体的な運用先はこちらで解説しています。

内部留保の使い道を決める3つの基準

内部留保の使い道は、支出額の大きさだけで決めるものではありません。投資や返済、配当を実行した後に、どれだけ資金が残るか、将来の収益や融資にどう影響するかを確認する必要があります。

特に確認したい基準は、次の3つです。

  1. 投資資金の回収期間を確認する
  2. 融資への影響を確認する
  3. 留保金課税の対象を確認する

1. 投資資金の回収期間を確認する

設備投資、新規事業、DX、M&Aなどに資金を使う場合は、投資額だけでなく、資金を回収するまでの期間を確認します。

たとえば、3,000万円の設備を導入し、経費削減などによるキャッシュフローの改善が年600万円見込める場合、単純計算では投資額の回収に約5年かかります。

3,000万円 ÷ 600万円 = 約5年

この計算は、法人税等の影響や減価償却による節税効果を考慮しない簡易的な目安です。実際には、追加の修繕費、人件費、保守費用、売上が安定するまでの期間なども含めて資金計画を立てる必要があります。

投資回収前に追加支出が見込まれる場合は、手元資金をどの程度残すかもあわせて検討しましょう。

2. 融資への影響を確認する

多額の投資、借入金返済、配当によって現預金が減ると、今後の融資判断に影響する場合があります。金融機関は、返済能力、現預金残高、自己資本、借入状況、事業計画などを総合的に見て融資を判断するためです。

たとえば、借入金を繰り上げて返済すれば利息負担を減らせる可能性があります。一方で、手元資金が大きく減ると、設備投資や運転資金が必要になったときに追加融資を受けにくくなる場合があります。

内部留保を使う前に、実行後の現預金残高、自己資本、返済負担、今後の投資予定を試算しておきましょう。

金融機関が見るポイントはこちらをご覧ください。

3. 留保金課税の対象を確認する

内部留保そのものに、一律で税金がかかるわけではありません。一定の特定同族会社には、通常の法人税に加えて留保金課税が適用されます。

期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は、原則として留保金課税の対象外です。ただし、資本金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人など(中小企業特例の適用除外法人)は、資本金1億円以下であっても留保金課税の対象となる場合があります。資本金の額だけでなく、株主構成や親会社との資本関係も確認しましょう。

内部留保を使う前のチェックリスト

内部留保の使い道を決める前に、資金繰り、税務、融資、株主対応、事業承継への影響を確認しましょう。次の項目を確認しておくと、実行後の資金不足や税務上の見落としを防ぎやすくなります。

確認分野チェック項目確認する内容
資金繰り納税資金法人税、消費税、社会保険料などの支払いを確保しているか
資金繰り通常の支払予定買掛金、未払金、賞与、役員報酬などを資金繰り表に反映しているか
資金繰り大口支出設備更新、修繕、役員退職金などの予定を見込んでいるか
資金繰り返済予定返済予定、繰上返済手数料、返済後の手元資金を確認したか
投資回収期間投資額を何年で回収できるか、追加固定費が発生しないかを確認したか
配当分配可能額配当する場合、会社法上の分配可能額を確認したか
配当配当後の資金繰り配当後も運転資金や納税資金が不足しないか
融資融資への影響現預金や自己資本が減った後も、金融機関から見た財務安全性を保てるか
事業承継自社株評価純資産の増減が非上場株式の評価額にどう影響するか
税務留保金課税特定同族会社として留保金課税の対象にならないか

内部留保の使い道は、決算書だけで判断するものではありません。資金繰り表、投資計画、借入返済予定、株主構成、自社株評価をあわせて確認し、実行後に資金不足や税務上の見落としが生じないようにしましょう。

内部留保の使い道に関するよくある質問

内部留保は現金と同じですか?

内部留保と現金は同じではありません。内部留保は、一般に貸借対照表の利益剰余金を指します。過去の利益が蓄積された金額ですが、その全額が預金として残っているとは限りません。

利益剰余金は、設備、在庫、売掛金、投資有価証券などに形を変えている場合があります。そのため、内部留保の使い道を考える際は、利益剰余金ではなく、実際に使える現預金を確認することが重要です。

内部留保が多いと税金がかかりますか?

内部留保そのものに、一律で税金がかかるわけではありません。

ただし、一定の特定同族会社では、通常の法人税に加えて留保金課税が適用される場合があります。期末の資本金が1億円以下の会社は原則として対象外ですが、大法人との完全支配関係がある会社などは対象になることがあります。

内部留保が多い会社は、留保金課税の対象になるか、株主構成や資本金の額も含めて確認しましょう。

内部留保は配当に使えますか?

利益剰余金は、配当原資の一つになります。ただし、内部留保があるからといって、必ず自由に配当できるわけではありません。

配当を行う場合は、会社法上の分配可能額を確認する必要があります。また、配当によって現預金が減るため、配当後も納税資金、借入返済、運転資金が不足しないかを確認しましょう。

内部留保は従業員の給与や賞与に使えますか?

現預金として支払いに使える資金があれば、従業員の給与や賞与に充てることは可能です。賃上げや賞与支給は、人材確保や従業員の定着につながる場合があります。

ただし、継続的な賃上げは翌期以降の固定費にも影響します。一時的な賞与なのか、毎月の給与水準を引き上げるのかによって、必要な資金計画は変わります。実行前に、翌期以降の損益と資金繰りを確認しましょう。

内部留保が多いと融資に有利ですか?

利益剰余金の蓄積は自己資本の充実につながるため、財務安定性の面でプラスに働く場合があります。赤字が出ても債務超過に陥りにくい会社は、金融機関から見て一定の安心材料になります。

ただし、金融機関は内部留保だけを見て融資判断をするわけではありません。現預金残高、返済能力、借入金の状況、営業利益、キャッシュフロー、今後の投資計画なども総合的に確認されます。

内部留保が多いと自社株評価は上がりますか?

利益剰余金が蓄積され、純資産が増えると、非上場株式の評価額が上がる要因になる場合があります。評価額が上がれば、相続や事業承継の際の税負担が増える可能性があります。

そのため、相続や事業承継を予定している会社は、内部留保をどの程度残すか、役員退職金や配当、設備投資などをどう組み合わせるかを早めに検討することが重要です。

内部留保は、会社の安全性を高める一方で、自社株評価にも影響します。資金繰りと事業承継の両面から確認しましょう。

内部留保の使い道の相談なら税理士法人ネイチャー

内部留保の使い道は、決算書の利益剰余金だけでは決められません。資金繰りや投資計画に加え、法人税、自社株評価、事業承継、相続への影響まで含めて検討する必要があります。

内部留保を活用して、将来の事業承継に向けた対策を行ったり、今期の決算対策及び将来的な利益の安定化に向けた財務戦略を作り上げたりすることは、経営を安定させます。

税理士法人ネイチャーでは、現在の顧問税理士との関係を維持したまま、事業承継対策や今期の決算対策についてスポットでご相談いただけます。会社の利益や余剰資金の状況を踏まえ、法人税への影響だけでなく、資産運用や経営者個人の資産形成まで含めて検討可能です。

当期の税負担だけでなく、資金を使う時期や将来の売却・解約時の課税、資産運用による税引後の収益まで確認することが重要です。内部留保の使い道を検討したい方は、無料相談をご利用ください。

まとめ:内部留保の使い道は使える現預金から決めよう

内部留保は、現預金と同じではありません。使い道を決める前に、支払予定額や事業継続に必要な資金を差し引き、実際に使える金額を確認しましょう。

使える金額がわかったら、5つの使い道を税引後の資金残高や回収期間、融資、自社株評価への影響から比べます。同じ基準で比較すると、実行後の資金不足を防ぎやすくなります。

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