親が持っていた米ドル預金を円でいくらと考えればよいのか。外貨のまま受け取れるのか、円に換えるべきかも迷うところです。外貨預金は、金融機関や商品によっては外貨のまま受け取れます。
ただし、相続税の評価額や税額は日本円で計算します。評価額を確かめずに受け取り方法を決めると、納税用の円が不足するおそれがあります。
この記事では、外貨預金の相続税評価額の求め方を、国税庁が定める評価のルール(財産評価基本通達)に沿って解説します。受け取り方法の違いや相続後にかかる税金もまとめました。
読み終えるころには、相続税評価額と実際に円へ換えた場合の受取額の違いがわかります。納税に必要な円を用意したうえで、残りの外貨をどう持つかを考えやすくなるでしょう。
外貨預金を相続したら相続税はかかる?
外貨預金も、相続税の対象となる財産です。国内銀行の米ドル預金などは、預貯金として遺産に含まれます。海外銀行の預金が日本の相続税の対象になるかは、亡くなった方や相続人の住所・国籍などによって異なります。
ただし、相続税がかかるかどうかは、外貨預金だけでは決まりません。不動産や株式なども含めた遺産全体で判断します。
遺産総額から非課税財産や借入金、葬式費用などを差し引き、一定の生前贈与などを加えた正味の遺産額が基礎控除を超えると、原則として相続税の申告が必要です。
基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。たとえば法定相続人が子ども2人なら、4,200万円になります。
| 預金の種類 | 例 | 相続税の扱い |
| 国内銀行の外貨預金 | 日本の銀行の米ドル預金 | 遺産に含め、円に換算して評価 |
| 海外銀行の預金 | 米国の銀行にある口座 | 亡くなった方や相続人の住所・国籍などにより、日本の相続税の対象範囲が異なる |
外貨預金の相続税評価額の計算方法
外貨預金の評価額は、外貨の残高に必要に応じて利子を加え、死亡日の相場で円に換算して求めます。使う相場と利子の扱いを順に確認しましょう。
- 死亡日の最終TTBで円換算する
- 預金の種類に応じて利子を加える
計算式は次のとおりです。
相続税評価額 = 外貨での評価額 (預入残高 + 税引後の既経過利子) × 死亡日の最終TTB
死亡日の最終TTBで円換算する
円への換算には、原則として死亡日の最終TTBを使います。TTBとは、金融機関が顧客から外貨を買い取り、円を支払うときの相場です。正式名称は「対顧客直物電信買相場」です。外貨預金は、預金口座のある金融機関が公表するTTBで換算するのが原則となります。
たとえば、10万ドルの外貨普通預金で、死亡日のTTBが150円だったとしましょう。
評価額は、「10万ドル × 150円 = 1,500万円」です。死亡日が休日などで相場がない場合は、死亡日前の相場のうち、死亡日に最も近い日の相場を使います。
預金の種類に応じて利子を加える
預金の評価では、元本に加えて「既経過利子」の確認が必要です。既経過利子とは、死亡日に解約したと仮定した場合に受け取れる利子を指します。
| 預金の種類 | 既経過利子の扱い | 評価の考え方 |
| 普通預金など | 少額なら加えなくてよい | 死亡日の残高で評価 |
| 定期預金 | 加える | 残高 + 死亡日に解約した場合の利子 – 源泉徴収されるべき税額相当額 |
外貨定期預金は、元本だけでは評価が終わらない点に注意が必要です。既経過利子からは、源泉徴収されるべき税額に相当する額を差し引きます。海外銀行の預金は日本国内の預金と課税関係が異なる場合があるため、預金ごとに確認が必要です。
外貨預金の相続で選べる受け取り方法
受け取り方法は、主に「外貨のまま受け取る」か「円に換えて受け取る」かの2つです。対応できる方法は金融機関や商品で異なるため、手続きの前に確認しましょう。
- 外貨のまま受け取る
- 円に換えて受け取る
最初の手続きは、金融機関への死亡の連絡です。金融機関が死亡を確認すると、原則として口座の取引が制限されます。
次に、死亡日時点の残高証明書を依頼しましょう。相続税評価に必要な既経過利子やTTBについても、確認できる資料を金融機関に依頼しておくと評価の根拠になります。そのうえで、遺言書や遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書など、金融機関が指定する書類を提出します。
| 受け取り方法 | 主な条件 | 向いている方 |
| 外貨のまま受け取る | 金融機関が外貨での引き継ぎに対応していること。相続人名義の外貨口座が必要な場合がある | 外貨で使う予定がある方、外貨で持ち続けたい方 |
| 円に換えて受け取る | 金融機関が円での払い戻しに対応していること | 納税や生活費などに円が必要な方 |
外貨のまま受け取る
金融機関が対応していれば、外貨のまま相続人の口座へ移せる場合があります。相続人名義の外貨預金口座が必要な場合は、金融機関の案内に従って用意します。外貨のまま受け取る場合、その時点では円への交換に伴う為替手数料は発生しません。
ただし、振替や送金などの手数料がかかる場合があります。受け取った外貨は、そのまま保有したり、時期を分けて円に換えたりできます。
外貨を別の通貨や外貨建ての有価証券に換える場合は、所得税の確認が必要です。最高裁第三小法廷の2026年6月16日判決では、外国通貨で別の外国通貨や同一通貨建ての有価証券を取得した場合、その取引時に為替差益に係る所得(雑所得)が生じ得るとの判断が示されました。
相続で取得した外貨の取得価額などは個別の検討が必要となるため、取引前に税務上の扱いを確認しましょう。
円に換えて受け取る
円で受け取る場合、外貨は払い戻し時の相場で円に換算されます。円の口座に振り込まれるため、納税などに使いやすい点が利点です。
円に換える日の相場は、相続税の評価に使う死亡日の相場とは異なる場合があります。そのため、実際に受け取る円の額が相続税評価額と一致するとは限りません。
金融機関によっては、一部を円に換え、残りを外貨で受け取れる場合もあります。納税に必要な分だけを円にしたい場合は、取り扱いの有無を金融機関に確認しましょう。
外貨預金の相続後にかかる税金
相続後に外貨を円に換える「円転」や利息の受け取りでは、相続税とは別に所得税の確認が必要です。為替差益と利息の扱いを順に見ていきましょう。
- 為替差益への課税
- 利息への課税
為替差益への課税
相続した外貨を円に換えて為替差益が出ると、所得税の雑所得として課税される場合があります。為替差益とは、為替相場の変動で生じた利益です。
死亡日の相続税評価額と円転した額との差が、そのまま為替差益になるとは限りません。所得税の計算では、外貨の取得価額を確認する必要があるためです。相続した外貨の取得価額は、取得の経緯に応じて個別に検討する必要があります。円転の前に、次の資料がそろっているか確認しましょう。
- 亡くなった方が外貨を取得したときの取引明細
- 外貨定期預金の満期や継続の記録
- 海外からの入金記録
確定申告が必要かどうかは、給与など相続人のほかの所得も含めて判断します。
利息への課税
相続した外貨預金から受け取る利息には、所得税がかかります。日本の居住者の場合、預金が国内か海外かによって課税方法が異なります。
| 受け取る利息 | 課税の方法 | 確定申告 |
| 国内銀行の外貨預金の利息 | 20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉分離課税 | 原則不要 |
| 海外銀行から直接受け取る利息 | 利子所得として、ほかの所得と合わせて総合課税 | 原則必要 |
海外銀行から直接受け取る利息は、日本国内で源泉徴収されないため、原則として確定申告が必要です。海外で税金が差し引かれていれば、外国税額控除により日本の所得税額から一定額を差し引ける場合があります。
なお、死亡日までの既経過利子は、相続税評価額に含まれる場合があります。一方、その利息が後日支払われた際には所得税の対象となることがあるため、相続税と所得税はそれぞれのルールで確認しましょう。
外貨預金を相続する際の注意点
外貨預金の相続で注意したい点は、評価資料の保存、納税資金の準備、為替変動、海外預金の確認の4つです。申告前に確認しておけば、納税や円転の判断で迷いにくくなります。
- 評価に使うTTBの根拠資料を残す
- 納税に必要な円資金を用意する
- 円転時の受取額は為替相場で変わる
- 海外の金融機関にある預金を確認する
1. 評価に使うTTBの根拠資料を残す
相続税の申告に使ったTTBは、根拠資料を保存しておきましょう。税務署から問い合わせがあった際に、評価額の算出方法を示せます。保存しておきたい資料は、次のとおりです。
- 死亡日時点の残高証明書
- 金融機関が公表した死亡日の為替相場表
- 既経過利子が確認できる資料
過去の為替相場表は、金融機関のサイトで確認できる期間が限られる場合があります。相続の手続きを始めたら、早めに入手しておきましょう。
2. 納税に必要な円資金を用意する
相続税は、申告期限までに金銭で一括して納めるのが原則です。外貨のまま引き継ぐ場合は、納税に使う円資金を確保しておく必要があります。申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。納税資金は、手元の円預金を使うか、外貨の一部を円に換えて用意します。
事例:円転を先送りし、納税直前に円高になったケース
会社経営者のAさんは、父から30万ドルの外貨定期預金を相続しました。死亡日のTTBは150円で、元本部分の評価額は4,500万円です。Aさんは円安を待ち、円転を先送りしました。ところが、納付期限の直前に1ドル140円まで円高が進みました。全額を円に換えると、受取額は4,200万円です(手数料などを除く)。死亡日の元本部分の評価額より、円転による受取額が300万円少なくなりました。必要な円の額と円転の時期は、相続税額の見込みが出た段階で検討しましょう。
3. 円転時の受取額は為替相場で変わる
相続税の計算に使うのは、死亡日の評価額です。一方、実際に受け取る円は円転した日の相場で決まります。10万ドルを相続したケースで比べてみましょう。
| 項目 | 円転時140円 | 円転時150円 | 円転時160円 |
| 相続税評価額(死亡日TTB150円) | 1,500万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 円転時の受取額 | 1,400万円 | 1,500万円 | 1,600万円 |
| 評価額との差 | −100万円 | 0円 | +100万円 |
※利子・手数料は考慮していません。
評価額との差を、そのまま所得税の為替差益として扱わないよう注意しましょう。所得税の扱いは、前述の「為替差益への課税」のとおり、取得価額の確認が前提です。
4. 海外の金融機関にある預金を確認する
亡くなった方に海外での居住や勤務の経験があれば、海外口座の有無を確認しましょう。手がかりになるのは、次のような資料です。
- 国内口座から海外への送金や、海外からの入金の記録
- 海外の金融機関からの郵便物やメール
- 被相続人が残した口座一覧や金融機関の取引資料
海外の預金が日本の相続税の対象になるかは、亡くなった方や相続人の住所・国籍などによって異なります。
外貨預金の相続相談なら税理士法人ネイチャー
評価額がわかると、次は「いくら円に換え、残りをどう持つか」で迷う方も少なくありません。
税理士法人ネイチャーでは、国内外の資産に関する相続税や国際税務のご相談を受け付けています。外貨預金についても、相続税の評価や相続後の税務を踏まえて検討することが重要です。
ネイチャーグループの強みは、英語対応も含め国際相続のサポートが可能な点です。国内外の相続や申告、海外資産に関する相談にも対応しているため、外貨預金のように相続税・所得税・為替の判断が関わる資産も、複数の観点から整理できます。
また、経営者や資産を多く保有する個人からの相談を多く扱っており、相続後の資金需要や保有資産の構成も踏まえてオーダーメイドで状況把握と申告をサポートしております。円に換える時期や、残りの外貨をどう持つかも、資産運用まで含めて検討できます。
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まとめ:外貨預金の相続は評価額を確認して受け取り方法を決めよう
外貨預金は、原則として死亡日の最終TTBで円に換算し、相続税の評価額を求めます。定期預金などは、既経過利子から源泉徴収されるべき税額相当額を差し引いた金額も加えて評価します。評価額がわかったら、納税に必要な円資金と相続後の税金を確認し、受け取り方法を決めましょう。
税理士法人ネイチャーでは、外貨預金の相続について、相続税の申告をサポートし、現地専門家との連携を通じて資金還流なども支援を行っております。もしお困りの方はぜひ一度、無料面談をお申し込みくださいませ。
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