国際結婚の相続はどうなる?外国人配偶者の相続権・相続税を解説

夫婦のどちらかが外国籍の場合、相続はどうなるのか。国際結婚をしたご夫婦から、よくいただくご相談です。日本と海外の両方に財産がある場合は、確認すべき点も増えます。

国際結婚の相続では、2つのことを分けて考える必要があります。1つは「どの国の法律が相続に適用されるか」です。もう1つは「日本の相続税がどこまでかかるか」です。

この記事では、夫婦のどちらが亡くなるかを出発点に解説します。外国人配偶者の相続権、相続税の課税範囲、配偶者の税額軽減まで順に整理します。

国際税務

国際結婚の相続はどうなる?

日本法が適用される相続では、外国籍の配偶者も法律上の夫婦であれば相続人になります。ただし、日本の国際私法では、相続に使う法律(準拠法)は原則として亡くなった人の本国法です。根拠は、日本の「法の適用に関する通則法」です。

一方、日本の相続税は、準拠法とは別のルールで判定します。亡くなった方の国籍と相続人となる配偶者の居住地によって、主に次の4つの場面に分けて確認します。

  1. 日本人が亡くなり、配偶者が日本に住む場合
  2. 日本人が亡くなり、配偶者が海外に住む場合
  3. 外国籍の配偶者が亡くなり、相続人が日本に住む場合
  4. 外国籍の配偶者が亡くなり、相続人が海外に住む場合

1. 日本人が亡くなり、配偶者が日本に住む場合

日本人が亡くなった場合は、日本の民法に基づいて相続人や法定相続分を確認します。外国籍の妻や夫も、法律上の配偶者であれば相続人になります。

子どもがいる場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。子どもが外国籍でも、法律上の親子関係があれば相続人になります。相続人が日本に住んでいる場合、日本の相続税は国内外の財産が対象になるのが原則です。

2. 日本人が亡くなり、配偶者が海外に住む場合

亡くなった人が日本人であれば、配偶者が海外に住んでいても、相続には原則として日本法が適用されます。ただし、日本の相続税がどの財産まで課税対象となるかは、配偶者の国籍や住所歴などによって異なるので注意が必要です。

亡くなった人が相続開始時に日本に住んでいた場合は、海外に住む外国籍の配偶者が取得する国外財産も対象になることがあります。原則として日本の相続税の課税対象となります。

3. 外国籍の配偶者が亡くなり、相続人が日本に住む場合

外国籍の配偶者が亡くなった場合は、亡くなった人の本国法が準拠法となるのが原則です。日本に長く住んでいても、日本の法定相続分がそのまま適用されるとは限りません。

国によっては、住所地や不動産の所在地によって適用する法律を定めています。本国法の規定によって日本法が適用される場合は、日本の民法が適用されることもあります。

相続人が日本に住んでいる場合は、原則として国内外の財産が日本の相続税の課税対象となります。

4. 外国籍の配偶者が亡くなり、相続人が海外に住む場合

外国籍の配偶者が亡くなり、相続人も海外に住んでいる場合も、準拠法は原則として亡くなった人の本国法です。米国のように、州によって相続に関するルールが異なる国もあります。

日本の相続税については、亡くなった人と相続人の国籍や住所歴、日本国内にある財産の有無などを確認して課税範囲を判定します。

国際結婚で相続税の対象となる財産の範囲は?

日本の相続税の課税範囲は、住所・国籍・在留資格・住所歴・財産の所在地などで異なります。相続する人ごとに、以下3つの場面で確認します。

  • 相続人が日本に住む場合
  • 相続人が海外に住む場合
  • 海外財産を相続する場合

同じ家族でも、相続人ごとに課税される財産の範囲が異なることがあります。

相続人が日本に住む場合

相続する人が日本に住んでいる場合は、原則として国内外の財産が日本の相続税の課税対象となります。外国籍の配偶者であっても、原則は変わりません。

例外となるのが、一定の在留資格で日本に住む外国籍の方です。「一時居住者」に該当するには、相続開始時に入管法別表第一の在留資格を有し、相続開始前15年以内に日本に住所があった期間が合計10年以下であることが必要です。

さらに、亡くなった人が「外国人被相続人」または「非居住被相続人」に該当する場合には、原則として国外財産は日本の相続税の課税対象となりません。

「日本人の配偶者等」や「永住者」は、入管法別表第一の在留資格には含まれません。国籍だけでなく、在留資格や住所歴、亡くなった人の状況もあわせて確認します。

相続人が海外に住む場合

相続する人が海外に住んでいても、日本国内の財産だけが課税対象になるとは限りません。
日本国籍があり、相続開始前10年以内に日本に住所があった方は、原則として国外財産も対象です。10年以内に日本に住所がなかった場合や、日本国籍がない場合でも、亡くなった人の住所・国籍などによって国外財産まで対象になることがあります。夫婦で確認しておきたいのは、次の3点です。

  • 相続する人の国籍と住所歴
  • 亡くなった人の国籍と住所歴
  • 日本に住んでいる場合の在留資格

海外財産を相続する場合

海外財産は、まず日本の相続税の対象に含まれるかを確認します。次に、財産がある国でも相続に伴う税金がかかるか確認しましょう。国や地域によっては、日本と海外の双方で課税される場合があります。

国外財産について外国で相続税に相当する税が課された場合は、日本の相続税で外国税額控除を受けられることがあります。外国税額控除とは、外国で課された税額を一定の限度まで日本の相続税額から差し引く制度です。

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国際結婚の相続で配偶者控除は使える?

外国籍であることだけを理由に、配偶者の税額軽減が使えなくなることはありません。
相続税の「配偶者の税額軽減」は、法律上の婚姻関係にある配偶者が対象となる制度です。配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、次のいずれか多い金額までであれば、原則として配偶者に相続税はかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

ここでいう法定相続分は、日本の相続税を計算する際に用いる、日本の民法上の法定相続分です。外国法に基づく実際の遺産の取り分とは、分けて確認する必要があります。

日本人の経営者が亡くなったケースで、税額軽減の目安を見てみます。

項目内容(仮定)
家族外国籍の妻(日本在住)、子ども2人
財産自社株・自宅・預金・海外不動産
課税価格の合計8億円
妻の法定相続分2分の1
税額軽減の目安4億円(1億6,000万円より多いため)

この前提では、妻が実際に取得した正味の遺産額が4億円以下であれば、配偶者の税額軽減により妻の相続税額は原則として0円になります。

ただし、この制度を適用して納付税額が0円になる場合でも、配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続税の申告が必要です。

また、配偶者の税額軽減は実際に取得した財産を基に計算します。そのため、相続税の申告期限までに未分割の財産は原則として配偶者の税額軽減の対象になりません。

国際結婚の相続に備える方法

夫婦のどちらが先に亡くなっても手続きを進めやすいよう、必要書類と遺言について確認しておきましょう。事前に準備しておくことで、相続手続きを進めやすくなる場合があります。

  • 外国人配偶者の必要書類を確認する
  • 夫婦それぞれの遺言を検討する

外国人配偶者の必要書類を確認する

相続手続きでは、家族関係・住所・署名などを証明する書類が必要になります。日本人は戸籍で家族関係を確認できますが、外国籍の方本人について日本の戸籍が作られることはありません。手続きによっては、本国の出生証明書や婚姻証明書などが必要です。

中長期在留者など、住民基本台帳の対象となる外国人には住民票が作成されます。印鑑登録をしている場合は、自治体から印鑑登録証明書を取得できる場合もあります。必要書類は国籍だけでなく、居住地や手続きの種類によって異なるので注意が必要です。

夫婦それぞれの遺言を検討する

国際結婚では、夫婦それぞれが遺言の作成を検討しておくと安心です。どちらが被相続人になるかによって、相続に適用される法律が異なることがあります。

遺言の方式は、作成地・国籍国・住所地・常居所地などの法律を確認します。一方、誰がどの財産を相続できるかなど、遺言の内容については相続の準拠法も確認する必要があります。

海外に財産がある場合は、現地で裁判所などの手続きが必要になることがあります。日本で作成した遺言だけで、海外の手続きがすべて完了するとは限りません。必要に応じて、財産のある国の専門家にも、遺言の効力や手続きを確認します。国ごとに遺言を作成する場合は、それぞれの内容に矛盾がないか確認することも必要です。

国際結婚の相続税で問題になりやすい3つのケース

国際結婚の相続では、国籍・財産の把握・申告期限の確認が重要です。事例をもとに、確認すべき点を見ていきましょう。

  • 子どもが二重国籍で海外在住の場合
  • 海外財産を把握できていない場合
  • 海外の相続手続きが長引く場合

子どもが二重国籍で海外在住の場合

外国籍以外に日本国籍もある子どもは、日本の相続税では「日本国籍あり」として判定します。日本人の親が日本に住んでいる場合は、原則として国外財産も日本の相続税の対象になります。

一方、親子とも相続開始前10年以内に日本に住所がない場合などは、取扱いが異なることがあります。日本国内の財産のみが課税対象となる場合もあります。二重国籍であることだけで、必ず国内外すべての財産が日本の相続税の課税対象となるわけではありません。

子ども本人と親の住所歴などを確認して、課税範囲を判定します。

海外財産を把握できていない場合

外国籍の夫が亡くなり、日本在住の妻と子どもが相続したケースを考えます。夫が本国の銀行口座と海外の賃貸マンションを所有しており、これらが日本の相続税の課税対象となる場合、家族がその存在を把握していなければ、日本の相続税申告から漏れる可能性があります。

CRS(共通報告基準)により、参加国・地域の税務当局間では、非居住者の一定の金融口座情報が自動的に交換されています。申告漏れが後から判明すると、加算税や延滞税がかかる場合があります。

海外財産については、国・金融機関名・名義・おおよその金額などを整理しておくと、申告の準備を進めやすくなります。評価に使用する書類の保管場所もあわせて確認しておくとよいでしょう。

海外の相続手続きが長引く場合

日本の相続税の申告・納税期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。海外の相続手続きや遺産分割が終わっていない場合でも、日本の申告期限が原則として延長されるわけではありません。

申告期限までに遺産分割がまとまらない場合も、期限内に申告と納税を行います。配偶者の税額軽減などを後から適用する場合は、当初の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。

原則として申告期限から3年以内に分割され、税額が減少する場合は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。訴訟など一定のやむを得ない事情がある場合は、税務署長の承認を受けることで、3年を超えて適用できることがあります。

日本の不動産は、2024年4月から相続登記が義務化されています。相続により不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。遺産分割によって取得した場合は、分割成立日から3年以内にも登記が必要になります。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。

国際結婚の相続相談なら税理士法人ネイチャー

税理士法人ネイチャーでは、国籍・在留資格・住所歴・財産の所在地を確認し、日本の相続税の課税範囲や必要となる手続きを整理するサポートを行います。国際相続に関するご相談にも対応しています。

配偶者の税額軽減などを踏まえ、財産の取得割合による相続税額への影響についても検討します。

外国の法律や現地での手続きが関係する場合は、国内外の専門家とも連携して対応します。
現在の顧問税理士との関係を維持したまま、セカンドオピニオンとしての相談も可能です。

まとめ:国際結婚の相続は亡くなった人から確認しよう

国際結婚の相続は、まず「誰が亡くなったか」を確認し、亡くなった人の国籍などをもとに、相続に適用される法律を確認します。

日本の相続税は、相続する人ごとに別のルールで課税範囲を判定します。日本法が相続に適用される場合、外国籍の配偶者も法律上の配偶者であれば相続人となり、要件を満たせば配偶者の税額軽減も利用可能です。

ただし、在留資格や住所歴、海外財産の有無によって確認事項は変わります。

国際結婚に伴う相続税申告にお困りのときは、税理士法人ネイチャーの無料相談をご利用ください。

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