台湾に住む親の財産を受け継ぐ際に「台湾の税金はいくらか」「日本でも申告が必要なのか」と悩む方も少なくありません。
台湾では、相続財産に対して「遺産税」が課されます。相続人などの状況によっては、台湾の財産を日本の相続税申告に含める必要があるのです。
この記事では、台湾の税率や免税額を紹介し、国籍・居住状況によって税負担がどう変わるのかを計算例とともに解説します。
日本での課税や二重課税への対応、申告までにそろえる資料も確認し、日台の手続きを進める際にお役立てください。
台湾の相続税がかかる財産
台湾の遺産税を考える際は、まず被相続人(亡くなった方)の国籍と居住状況を確認します。というのも、台湾以外の財産まで申告に含めるかが変わるためです。
| 被相続人の区分 | 遺産税の対象範囲 |
| 台湾国籍があり、台湾に経常居住していた | 台湾内外の財産 |
| 台湾国籍があり、台湾外に経常居住していた | 台湾内の財産 |
| 日本国籍など、台湾国籍以外 | 台湾内の財産 |
※死亡前2年以内に自ら台湾国籍を離れた場合も、台湾国籍者に関する課税規定が適用されます。
台湾に居住していたとされるのは、次のいずれかを満たす場合です。
- 死亡前2年以内に台湾に住所を有していた
- 台湾に住所はなくても居所があり、死亡前2年間の滞在が通算365日を超えていた
後者には、台湾政府に招かれて働き、滞在期間が指定されている方を除く規定があります。
死亡時に残っていた財産だけでなく、直前の贈与にも注意が必要です。死亡前2年以内に配偶者、各順位の法定相続人やその配偶者へ贈与した財産は、原則として遺産に加算されます。ただし、受贈者が被相続人の死亡時点でも対象となる親族関係にあることが必要です。また、加算対象となる財産の範囲は、被相続人の国籍や居住状況によって異なります。
2026年9月11日に公布された法改正により、同年9月13日以降に亡くなった方については、加算対象となる贈与財産を受け取った人が、その財産に対応する遺産税の納税義務を負うことになりました。なお、2024年10月28日から2026年9月12日までに死亡した場合でも、被相続人の配偶者が相続放棄または相続権を喪失している場合には、この規定が適用されます。
負担額は、遺産税額に贈与財産が遺産総額に占める割合を乗じて計算します。相続放棄をした人や、相続人ではない人が贈与を受けていた場合も対象となります。
当該贈与に対して納付済みの贈与税や土地増値税と所定の利息は、贈与財産の加算によって増加した遺産税額を限度として控除できます。
台湾の相続税の計算方法
台湾の遺産税は、台湾の基準で評価した遺産総額から免税額と各種控除を差し引き、税率を適用して計算します。以下の3点を押さえておきましょう。
- 税率は10%・15%・20%
- 免税額は1,333万台湾ドル
- 追加控除は被相続人の区分で異なる
税率は10%・15%・20%
免税額や控除を適用した後の金額を「課税遺産純額」といいます。この額に応じて、10%から20%まで段階的に税率が上がる仕組みです。2026年は、2025年に引き上げられた次の区分を使用します。
※単位:台湾ドル
| 課税遺産純額 | 適用税率 | 計算時に差し引く累進差額 |
| 5,621万以下 | 10% | 0 |
| 5,621万超〜1億1,242万以下 | 15% | 281万500 |
| 1億1,242万超 | 20% | 843万1,500 |
速算式は「課税遺産純額 × 適用税率 − 累進差額」です。累進差額を引くことで、各段階の税率を個別に掛けた場合と同じ結果になります。
贈与税などの税額控除があれば、その後に反映します。最高税率が20%でも、遺産全体の20%を納める計算ではありません。
免税額は1,333万台湾ドル
2026年の免税額は、被相続人1人につき原則1,333万台湾ドルです。日本国籍の方にも同額が適用されますが、相続人が増えても免税額は変わりません。
この金額は将来も固定されるとは限りません。免税額や一定の控除額、税率区分の金額には物価に応じた調整があり、それぞれの前回改定時と比べて消費者物価指数が累計10%以上上昇すると、翌年の金額が見直されます。
翌年の適用額を公表するのは台湾の財政部です。公表期限は毎年12月末であり、申告時には死亡した年に対応する金額を使います。
追加控除は被相続人の区分で異なる
免税額に加え、配偶者や子に関する控除、債務などを差し引ける場合があります。ただし、被相続人の国籍・居住状況によって適用範囲が分かれます。
※単位:台湾ドル。金額は2026年のものです。
| 主な控除項目 | 控除額 | 台湾国籍・台湾に経常居住 | 台湾国籍・台湾外に経常居住/台湾国籍以外 |
| 配偶者 | 553万 | 適用あり | 適用なし |
| 相続する子・孫などの直系卑属 | 1人56万※ | 適用あり | 適用なし |
| 父母 | 1人138万 | 適用あり | 適用なし |
| 葬儀費用 | 138万 | 適用あり | 台湾内で発生した場合に限る |
| 借入金や未納税額など | 死亡時の未払額など | 適用あり | 台湾内で発生した分に限る |
※未成年の直系卑属には、「18歳までの残り年数 × 56万台湾ドル」を加算します。年数の端数は切り上げます。
債務については、残高や支払義務を裏付ける資料を用意します。
本記事では、配偶者・子・父母などに関する控除を「人的控除」と表記します。相続放棄をした人については、その人の分の人的控除を適用できません。
台湾の相続税の計算例
同額の財産を残した2人を例に、控除の違いが税額に与える影響を見てみましょう。共通の条件は次のとおりです。
- 死亡した年は2026年
- 台湾の評価基準による遺産総額は3,000万台湾ドル
- 遺産の所在地はすべて台湾
- 相続人は配偶者と成年の子2人
- 生前贈与や借入金はなく、下表以外の控除は考慮しない
Aさんは台湾国籍で台湾に居住し、葬儀も台湾で行われました。Bさんは日本国籍で日本に居住し、葬儀は日本で行われたものとします。
| 計算項目(台湾ドル) | Aさん | Bさん |
| 遺産総額 | 3,000万 | 3,000万 |
| 免税額 | −1,333万 | −1,333万 |
| 配偶者の控除 | −553万 | 0 |
| 子2人の控除 | −112万 | 0 |
| 葬儀費用の控除 | −138万 | 0 |
| 課税遺産純額 | 864万 | 1,667万 |
| 10%を掛けた遺産税額 | 86万4,000 | 166万7,000 |
Bさんの税額は、Aさんを80万3,000台湾ドル上回り、約1.9倍となります。
この差を生むのが、人的控除と葬儀費用控除です。Bさんの相続には人的控除が適用されず、日本で発生した葬儀費用も控除できません。財産額だけではなく、利用できる控除まで確認することが大切です。
台湾の相続で日本の相続税がかかる場合
台湾の遺産税とは別に、日本の制度に照らした確認も必要です。日本で申告に含める財産は、相続人と被相続人の住所・国籍などによって決まります。ここでは、次の2つのケースを取り上げます。
- 日本在住で台湾の親から相続する場合
- 日本の親が台湾に財産を残した場合
日本在住で台湾の親から相続する場合
台湾在住・台湾国籍の親から、日本に住む日本国籍の子が財産を受け継ぐケースでは、子が取得する台湾の預金や不動産も日本の課税対象です。
ただし、課税対象であることと、実際に納税が必要になることは別です。日本の方法で財産を評価し、債務などの控除や生前贈与の加算を反映した課税価格の合計額で判断します。
日本の基礎控除額は、次の式で求めます。
「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」
申告が必要となる特例を適用せず、課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、原則として日本での相続税の申告・納税は不要です。
日本の親が台湾に財産を残した場合
親も子も日本国籍で日本に住み、親が台湾の不動産や預金を保有していたケースを考えてみましょう。子が相続する台湾財産は、日本でも課税対象に含まれます。
一方、台湾では、台湾内の財産から1,333万台湾ドルの免税額と適用可能な控除額を引いて遺産税を計算します。免税額を下回る場合も、原則として申告手続きは必要です。
双方で税額が生じるときは、次に説明する二重課税の調整を検討します。なお、海外在住の相続人がいる場合は、その人の国籍や過去10年間の日本での居住歴なども確認してください。
台湾の相続税の二重課税を調整する方法
同じ財産について日本と台湾の双方で相続税が課される場合、それぞれの制度に基づき、一定額の外国税額控除を受けられることがあります。ただし、控除の対象や計算方法は日本と台湾で異なるため、個別に確認する必要があります。
| 控除を受ける側 | 想定されるケース | 用意する書類の例 |
| 日本 | 台湾財産について、日本の相続税と台湾の遺産税が生じた | 台湾での税額決定や納付を確認できる書類 |
| 台湾 | 台湾に経常居住していた台湾国籍者の日本財産について、両方で課税された | 日本の税務署が交付した納税証明書など |
台湾への申請では、日本の税務署による納税証明書を提出すると、在外機関などの認証書類を省略できます。別途、納付を裏付ける資料の提出を求められる場合もあります。
控除には限度があり、外国の税額全額を必ず差し引けるわけではありません。日本側では、各相続人の相続税額に、その人が取得した台湾所在財産の価額(その財産に係る債務を控除した後の金額)が、相続または遺贈により取得した財産のうち課税価格計算の基礎に算入された価額(債務控除後)に占める割合を乗じて計算した額が上限となります。台湾側は、日本財産を含めたことによる遺産税の増加額が上限となります。
台湾の税額確定を待って、日本の申告を遅らせることはできません。日本の期限に合わせて手続きを進め、台湾で税額が決まった後の控除への対応も確認しておきましょう。
台湾の相続税の申告期限はいつ?
台湾は死亡日の翌日から原則6か月、日本は死亡を知った日の翌日から原則10か月が申告期限です。一般的には、台湾の申告を先に済ませる必要があります。
日本と異なり、台湾では申告時に納付期限が到来するわけではありません。税務当局からの通知を受けて納付する流れです。
| 手続き | 原則の期限 | 延長・分割の扱い |
| 台湾の申告 | 死亡日の翌日から6か月以内 | 正当な理由がある場合、期限前の書面申請で原則3か月まで延長可能 |
| 台湾の納付 | 納税通知書の到達日の翌日から2か月以内 | 期限内の申請と承認により2か月延長可能。一括納付が困難な場合は、18回以内の分割も申請可能 |
| 日本の申告・納付 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 原則として申告・納付とも同一期限 |
台湾で分割納付を利用する場合、各回の間隔は2か月以内で、利息も発生します。
2026年9月公布の改正により、分割納付に必要だった「税額30万台湾ドル以上」の条件はなくなりました。
分割納付に関する新規定は、改正前に発生した手続き未了の案件にも原則として適用されます。ただし、旧規定の方が納税者に有利な場合は、旧規定を適用します。
台湾の相続税の申告前に行う準備
日台の申告を円滑に進めるには、書類を集めるだけでなく評価方法や資金の手当ても考える必要があります。
準備を次の3つに分けて進めましょう。
- 台湾の相続関係資料をそろえる
- 台湾財産を日本の基準で評価する
- 日台の納税資金を確保する
台湾の相続関係資料をそろえる
最初に家族関係を確認する書類と財産を調べる資料を整理します。台湾の手続きで受け取った書類が、後の日本の申告に役立つこともあります。
| 集めるもの | 確認する内容・用途 |
| 死亡を証する書類 | 相続の発生と日付 |
| 台湾の戸籍など | 被相続人と相続人の関係 |
| 預金残高や株式保有数の資料 | 死亡時に保有していた金融資産 |
| 不動産の権利・評価資料 | 所有関係、価額、名義変更 |
| 贈与の履歴 | 日台で遺産に加算する財産 |
| 台湾の税額決定・納付書類 | 日本で外国税額控除を受ける際の確認 |
翻訳や認証の要否は提出先に確認し、税額や納付状況が分かる書類はまとめて保管してください。
台湾財産を日本の基準で評価する
台湾で申告した評価額をそのまま日本の申告書に転記できるとは限りません。
台湾では、土地の評価に公告土地現値などを、建物の評価に評定標準価格を用います。一方、日本では海外資産も財産評価基本通達に基づいて評価するのが原則です。ただし、通達に定める方法で評価することが難しい財産は、売買事例や鑑定評価などを参考に価額を求めます。
不動産などは評価の根拠となる資料を早めに確保しておくと安心です。台湾ドル建ての評価額を日本円に換算する際は、原則として相続開始日のTTB(対顧客直物電信買相場)またはこれに準ずる相場を使用するため、該当日の為替相場も確認しましょう。
日台の納税資金を確保する
相続した財産があっても、すぐに納税へ回せるとは限りません。台湾では、原則として遺産税の完納前に遺産分割や名義変更を行えないためです。
名義変更には通常、完納証明書(稅款繳清證明書)や免税証明書(核定免稅證明書)などを使います。納付前でも、納税保証などの条件を満たし、「同意移転証明書」を取得すれば変更できる場合があります。
台湾の遺産税を被相続人の現地預金から支払う場合は、相続人の人数と法定相続分の合計の両方で過半数の同意、または法定相続分の合計で3分の2を超える同意があれば、申請できます。
ただし、死亡前2年以内の贈与財産を遺産に加算したことにより、受贈者が負担する遺産税については、この多数決方式は適用されません。遺産から納付する場合は、相続人全員の同意が必要です。
日本で納める税金についても、預金を引き出せる時期と納付期限を照らし合わせておきましょう。
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まとめ:台湾の相続税は日本での課税も確認しよう
台湾の遺産税を見積もるには、遺産額だけでなく、免税額と利用できる控除を確認する必要があります。控除後の金額に適用される税率は10〜20%で、被相続人の国籍や居住状況によって負担が変わります。
日本の相続税が及ぶかどうかも別途確認しなければなりません。日台それぞれの期限を押さえ、評価資料の収集と納税資金の準備を同時に進めてください。
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