米国401kの相続税はかかる?非課税枠の可否・評価方法・申告手続き

米国で働いていた家族が亡くなり、401(k)の案内が英語で届いた。何から手を付けてよいか、迷われている方も多いのではないでしょうか。

401(k)は日本の相続税の対象になり得るうえ、受け取る際には所得税も関係します。米国側の税金や、受取人ごとの期限にも注意が必要です。

この記事では、日米双方で関係する税金、死亡退職金の非課税枠の可否、評価方法、受取人別のルール、必要な手続きを整理します。受取方法を決める前に確認すべき点が、一通りわかる内容です。受取方法は、日米の税金を確認してから決めましょう。

国際税務

米国401kの相続税はかかる?

米国401(k)の受給権は、日本の相続税の対象になり得ます。受給権とは、口座のお金を受け取る権利のことです。

課税の範囲は、亡くなった方と受取人の住所や国籍で決まります。双方が日本に住んでいれば、国外の財産も原則として対象です。米国の口座でも、日本の相続税と無関係とは限りません。受取人の状況によって、個別の判定が必要です。

米国401kの相続で確認する4つの税金

401(k)の相続では、日米それぞれで死亡時と受取時の税金を確認する必要があります。4つの税金の全体像をまず表で確認しましょう。

課税時点課税国税目主な納税者
死亡時日本相続税受取人(相続人等)
受取時日本所得税受取人
死亡時米国遺産税遺産(遺言執行者等)
受取時米国所得税(源泉徴収)受取人

日本の相続税

401(k)の受給権は、日本の相続税の対象になる可能性があります。判定の材料は、住所、日本国籍の有無、過去の国内居住歴などです。外国籍の方や一時的に日本に住む方は、課税範囲が変わる場合があります。

対象になる場合、死亡日時点の受給権の価額をもとに相続税を計算します。

日本の所得税

相続後に401(k)から分配を受けると、日本の所得税が関係する場合があります。分配とは、401(k)から資金を受け取ることです。

日本での所得区分や課税対象額は、401(k)の内容や受取方法などによって個別に確認する必要があります。相続時の課税関係と分配を受けた際の所得税の課税関係を分けて整理することが重要です。

拠出の種類によっても、扱いが変わる可能性があります。Traditionalは主に税引前、Rothは税引後の資金を拠出する仕組みです。

401(k)の基本や帰国後の扱いは、以下の記事で解説しています。

米国の遺産税

米国の遺産税は、被相続人が米国市民または米国にドミサイル(恒久的な生活の本拠)を有していたかによって、課税範囲が異なります。2026年に死亡した米国市民等の連邦遺産税の基礎控除額は、1,500万ドルです。

米国の非居住・非市民の場合、原則として米国内に所在する財産が課税対象です。日米相続税条約によって、米国市民等に認められる税額控除を財産の割合に応じて適用できる場合もあります。

米国で遺産税を納めた場合は、日本の相続税における外国税額控除の適用を確認します。外国税額控除とは、外国で課された一定の税額を日本の税額から控除する制度です。

米国の相続についてはこちらをご参照ください。

米国の源泉税

日本居住者が401(k)から分配を受ける場合、米国で源泉徴収されることがあります。源泉徴収とは、支払時に税金があらかじめ差し引かれる仕組みです。外国人への米国源泉の退職年金等は、条約上の軽減・免除を受けられない場合、原則30%の源泉徴収の対象です。

日米租税条約第17条(退職年金等条項)に基づき、私的年金等の給付については、原則として受取人の居住地国(日本)にのみ課税権が認められています。したがって、事前に受取人が非居住者であることを証明する「Form W-8BEN」をプラン管理者へ適切に提出していれば、米国での30%の源泉徴収は免除される可能性があります。

書類の不備等で米国側で不当に30%の源泉徴収が執行されてしまった場合、その税額は「租税条約上、本来米国が課税権を持たない税金」となるため、日本側で確定申告をしても日本の外国税額控除の対象として認められないリスクがあります。

二重課税を回避するためには、米国IRSに対してForm 1040-NRを用いた還付申告を現地で行わなければならず、回収に多大なコストと時間を要する点に注意が必要です。相続税と所得税の外国税額控除は、それぞれ適用要件が異なる制度です。

国際税務

米国401kの相続税で死亡退職金の非課税枠は使える?

米国401(k)で、死亡退職金の非課税枠が使えるとは限りません。非課税枠は、相続人が受け取った場合に限り、「500万円 × 法定相続人の数」まで使える制度です。

日本の確定拠出年金法に基づく死亡一時金は、相続税法第12条第1項第5号および同法第3条により「みなし相続財産(退職手当金等)」として扱われ、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。

一方で、米国の401(k)プランから受給する死亡一時金については、日本の確定拠出年金法に基づく給付ではないため、この退職手当金等の非課税枠の適用が認められない可能性が高く、本来の相続財産(その他の受給権・債権等)として満額が課税対象となる可能性が高い点に注意が必要です。

プラン規約上の受取事由や退職給与規程等との整合性について、申告前に国際資産税に精通した税理士へ個別相談することが不可欠です。

米国401kの相続税評価額の計算方法

401(k)の相続税評価額は、口座残高をそのまま使えるとは限りません。受給権の内容を確認し、適用する評価方法を判断したうえで円換算します。

  • プラン規約で受給権の内容を確認する
  • 一時金で受け取れる金額を確認する
  • 定期金に関する権利に当たるか確認する
  • 死亡日のTTBで円換算する

プラン規約で受給権の内容を確認する

Plan Administrator(プランの管理者)に、次の資料を請求します。

  • プラン規約
  • 死亡日時点の残高証明書
  • Beneficiary Designation(受取人指定書)
  • 受取方法の案内

評価は、死亡日時点で受取人がどのような権利を取得したか、資料で確認することから始まります。

一時金として受け取れる価額を求める

死亡日時点で一時金として受け取れる場合は、その金額や口座残高などを確認します。根拠資料として、残高証明書や支払見込額の通知を用意しましょう。

401(k)の権利内容はプランによって異なるため、口座残高だけで評価額を確定せず、死亡日時点で取得した受給権の内容を踏まえて評価します。

定期金受給権の評価方法を確認する

継続して給付を受ける権利については、日本の相続税法上の「定期金に関する権利」に該当するかを確認します。該当し、すでに給付事由が発生している場合は、権利の種類に応じて次の金額などを基に評価します。

  • 解約返戻金の金額
  • 定期金に代えて受け取れる一時金の金額
  • 年間の給付額や予定利率などから計算した金額

原則として、該当する金額のうち最も多い金額で評価します。401(k)にこの評価方法を適用できるかは、プラン規約や受給条件を踏まえた個別判断が必要です。

死亡日のTTBで円換算する

ドル建ての評価額は、原則として、取引金融機関が公表する死亡日の最終のTTBで円換算します。TTBとは、金融機関が外貨を買い取る際の為替相場です。死亡日に相場がない場合は、死亡日前の最も近い日の相場を使います。

評価額100万ドル、死亡日のTTBが1ドル = 145円の場合

項目金額
ドル建ての評価額100万ドル
死亡日のTTB145円
円換算後の評価額1億4,500万円

その後に為替相場が変動しても、死亡日時点の相続税評価額を後日の為替相場で計算し直すものではありません。

米国401kの相続で受取人別に異なるルール

米国の分配期限や受取方法は、受取人の区分で変わります。まず自分の区分を確かめ、プラン規約とあわせて選べる方法を把握しましょう。

  • 配偶者が単独受取人の場合
  • 配偶者以外の適格指定受益者の場合
  • その他の個人が受取人の場合
  • 遺産等が受取人の場合

配偶者が単独受取人の場合

配偶者が単独の受取人なら、選べる方法が多くなります。相続した口座として受け取る方法、配偶者自身のIRAへの移管、分配での受取などです。

ただし、日本居住者は、移管先のIRA口座を米国で開設できない場合もあります。選べる方法がプラン規約で制限される点にも注意が必要です。

配偶者以外の適格指定受益者の場合

適格指定受益者とは、一定の要件を満たし、10年ルールの例外が認められる受取人です。該当すれば、余命年数を基に分配を受けられる場合があります。

配偶者を除くと、主な対象は障害や慢性疾患のある方、被相続人より10歳を超えて若くない方です。被相続人の未成年の子も該当し、原則として21歳に達した後は10年ルールに移行します。

その他の個人が受取人の場合

適格指定受益者以外の個人は、原則として10年ルールの対象です。2020年以降に亡くなった場合、死亡した年の翌年を1年目として、10年目の年末までに口座から全額を分配する必要があります。

被相続人がRMD(毎年の最低引出額)の開始期限以後に亡くなった場合は、10年以内の全額分配に加え、原則として途中の年にもRMDが必要です。この取扱いを含む最終規則は2024年に公表され、2025年以降のRMDに適用されています。

遺産等が受取人の場合

遺産、信託、法人などが受取人の場合は、個人とは異なる分配ルールが適用されることがあります。受取人指定がない場合の扱いは、プラン規約の確認が必要です。信託は一定の要件を満たせば、受益者を基準に分配ルールを判定できる場合があります。

受取人の区分によって分配期限が変わるため、受取人指定書とプラン規約を手続きの初めに確認しましょう。

米国401kを相続した後の受取方法

401(k)の主な受取方法は3つです。選べる方法は受取人の区分とプラン規約で異なるため、日米の税負担とあわせて確認します。

  • 一括で受け取る
  • 分割で受け取る
  • Inherited IRAへ移管して受け取る

一括で受け取る

残高を一度に受け取る方法です。まとまった金額を一度に受け取るため、日本の所得税に与える影響を事前に確認する必要があります。所得区分や課税対象額は、401(k)の内容などに応じた個別判断が必要です。

【注意事例】

日本居住者がW-8BENなど必要な書類を提出せずに一括請求すると、米国で30%の源泉徴収を受ける場合があります。

租税条約により米国で免税となる部分は、日本の外国税額控除の対象にならない可能性があります。過大に源泉徴収された場合は、Form 1040-NRによる還付手続きが必要になることも。

一括受取は、日米双方の課税関係を確認してから判断しましょう。

分割で受け取る

口座に資産を残し、期限内に分けて受け取る方法です。受取額を年ごとに分けることで、日本の所得税への影響が一括受取とは異なる場合があります。

ただし、受取人の区分に応じたRMDや10年ルールなどの分配期限を守る必要があります。プラン規約で分割受取が認められているかも確認しましょう。

Inherited IRAへ移管して受け取る

Inherited IRAとは、相続した退職口座の資産を受取人のために管理するIRAです。一定の要件を満たせば、401(k)からInherited IRAへ直接移管し、その後に分配を受けられます。

移管後も、受取人の区分に応じた分配ルールを確認しなくてはなりません。

また、日本居住者の口座開設や移管を受け付けるかは、金融機関によって異なります。

IRAの基本は、以下の記事をご覧ください。

米国401kの相続手続きの進め方

最初にプラン管理者へ死亡を連絡し、受取人指定と必要書類を確認します。米国の受取手続きと日米の税務手続きは、並行して進めることが大切です。

  • 受取手続きの必要書類を提出する
  • 米国源泉税の必要書類を提出する
  • 日本の相続税を10か月以内に申告する
  • Form 706-NAの申告要否を確認する

受取手続きの必要書類を提出する

受取には、主に次の書類が求められます。

  • 死亡証明書(日本の書類は英訳を求められることがあります)
  • 受取人の本人確認書類
  • 死亡日時点の残高証明書
  • プラン所定の請求書

必要書類は、401(k)のプランや金融機関によって異なります。

米国源泉税の必要書類を提出する

米国の源泉徴収では、次の書類や番号が関係します。

  • W-8BEN:外国人であることを証明し、租税条約の適用などを申告する書類
  • 納税者番号:条約の適用などで必要になる場合がある番号
  • Form 1042-S:支払額や源泉税額などが記載される書類

W-8BENはIRSではなく、401(k)の支払者などへ提出します。Form 1042-Sは、日本で外国税額控除を検討する際の資料となるため保管しましょう。

日本の相続税を10か月以内に申告する

日本の相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。米国側の手続きが終わっていなくても、日本の申告期限は原則として変わりません。

401(k)の資料がそろっていない場合も、申告期限を基準に準備を進める必要があります。申告後に評価額などの誤りが判明した場合は、税額が不足していれば修正申告、税額が過大であれば要件に応じて更正の請求を検討します。

Form 706-NAの申告要否を確認する

被相続人が米国の非居住・非米国市民(Non-Resident Alien)であった場合、米国内に所在する財産の合計額が「6万ドル」の免税枠を超えると、米国の遺産税申告書「Form 706-NA」の提出義務が発生します。

一般に非居住者の「米国の銀行預金」は米国内所在資産から除外される特例がありますが、401(k)口座内で運用されている有価証券やファンド持分が「米国内所在資産(U.S.-situs assets)」と判定されるかどうかはプランの信託構造や運用商品によって税務解釈が分かれるところです。申告期限は「死亡日から9か月以内」と日本の相続税(10か月)よりも短いため、死亡後速やかに日米の専門家を通じて申告要否を精査する必要があります。

申告の詳細や必要書類は、以下の記事をご覧ください。

米国401kの相続税なら税理士法人ネイチャーへ

税理士法人ネイチャーでは、401(k)の相続について、国籍や居住歴、受取人指定、プラン規約、受取方法を踏まえ、日米の課税関係を確認します。

相続税評価や米国遺産税、受取後の所得税などを一体で検討できるため、金融機関へ受取方法を伝える前に、日米の税負担を確認することも可能です。

他の税理士に依頼中の方も、401(k)に関する部分だけご相談いただけます。初回面談は無料です。

まとめ:米国401kは日本の相続税対象になり得る

米国401(k)の受給権は、日本の相続税の対象になり得ます。死亡退職金の非課税枠は、一律に使えるとは限りません。プラン規約と受給権の内容を踏まえ、個別の判定が必要です。

受取時には、日本の所得税や米国の源泉税が関係する可能性があります。受取人の区分によって、分配の期限や選べる方法も変わります。

受取方法を決める前に、日米の税金とプラン規約を確認しましょう。

米国の書類が届いたものの判断に迷う場合は、税理士法人ネイチャーの無料面談をご利用ください。日米の申告期限や受取方法を踏まえ、確認すべき点を一緒に整理します。

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