留学や駐在、ワーホリを終えて日本に帰国された後、イギリスで開設した銀行口座はそのままになっていませんか?「また使うかもしれないし」「解約手続きが面倒くさそう」と感じて放置している方もいるかもしれません。
しかし、そのままでいると、実は想像以上のリスクが潜んでいるのです。特に、日本の税務上の観点から見ると、将来的に大きなトラブルにつながる可能性も否定できません。
この記事では、長年にわたり国際税務に携わってきた税理士の視点から、イギリスの銀行口座を安全かつスムーズに解約する方法を徹底解説します。単なる手続きの方法だけでなく、「なぜ今すぐ解約すべきなのか」、そして「放置するとどんな税金トラブルに発展するのか」まで、専門的な知見を交えてお伝えします。
なぜ今すぐ?イギリスの銀行口座を解約すべき3つの理由
「口座を解約しなくても、誰にも迷惑はかからないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、口座を放置することは、あなたの資産や将来に思わぬリスクをもたらします。ここでは、今すぐ口座解約を検討すべき3つの理由を解説します。
口座維持費や手数料の発生
イギリスの銀行では、一定の残高を維持しないと口座維持手数料が発生する可能性が高くなります。また、長期間利用がないと口座が凍結され、解除手続きに手間や費用がかかることもあります。帰国後、気づかないうちに手数料が引かれ続け、残高がゼロになったどころか、マイナスになっていたというケースも珍しくありません。
不正利用・セキュリティリスクの増大
長期間利用しない口座は、パスワードやセキュリティ情報の更新がおろそかになりがちです。オンラインバンキングのログイン情報が流出して不正利用された場合でも、すぐに気づくことが難しくなります。また、住所変更を行わないと、重要な書類が旧住所に郵送され、情報漏洩のリスクが高まります。
【税理士が警鐘】国際税務上のリスクと日本の税務申告義務
ここが最も重要なポイントです。日本の税法では、海外に5,000万円を超える資産を持つ場合、毎年「国外財産調書」を提出する義務があります。 銀行口座の残高も、もちろんこの海外資産に含まれます。提出を怠ったり、虚偽の記載をした場合、罰則が科される可能性があります。
また、イギリスの銀行利息は、日本では総合課税の対象となります。日本のように預金利息に対して源泉徴収は行われないため、外国税額控除を考慮する必要はありません。
「たかが数万円だから大丈夫だろう」と考える方もいますが、重要なのは金額だけではありません。近年、国際的な租税回避を防ぐためのルールが強化されており、CRS(共通報告基準)という制度が世界中で導入されています。これにより、イギリスの銀行は口座情報を日本の税務当局に自動的に共有するようになりました。
つまり、日本の税務署は、あなたがイギリスに口座を持っていることを把握できるようになっているのです。口座を放置し、申告義務があるにもかかわらず申告を怠ると、将来的に税務調査の対象となり、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。
帰国後でも大丈夫!日本から口座解約する2つの方法
イギリスにいる間に解約手続きができなかった方もご安心ください。ほとんどの銀行は、日本からでも解約手続きが可能です。
郵送での手続き
最も一般的な方法です。銀行のウェブサイトから解約フォームをダウンロードするか、国際電話でカスタマーサービスに連絡してフォームを郵送してもらいましょう。
【手順の例】
- 解約フォームの入手
銀行の公式サイトからダウンロードするか、電話で依頼。 - 必要書類の準備
パスポートのコピー、サイン証明書、住所変更を証明する書類など。 - 書類の送付
国際郵便で銀行の指定住所へ送付。
国際電話・オンラインでの手続き
一部の銀行では、国際電話での本人確認や、オンラインバンキング上での手続きが可能な場合もあります。
【ポイント】
- 国際電話
日本の携帯電話から国際電話をかけるには、事前に設定が必要です。時差に注意して、銀行の営業時間内にかけましょう。 - オンライン
ログイン情報が有効で、セキュリティ上の問題がなければ利用できる可能性があります。ただし、不正利用のリスクを避けるため、解約後はすぐにアカウントを削除するようにしましょう。 - 各銀行の手続きの違い
各銀行によって口座解約の手続き方法や必要書類は異なります。HSBC UK、Lloyds Bank、Barclays、NatWest、Monzoなど主要銀行の場合もそれぞれ対応が異なるため、事前に個別の確認を行うようにしましょう。
口座解約時に押さえておくべき重要ポイント
口座に残ったお金の送金方法
口座解約前に、残っているお金を日本に送金しておく必要があります。最も簡単なのは、オンラインバンキングを利用して日本の銀行へ国際送金することです。
必要書類の準備と注意点
パスポートのコピーやサイン証明書など、銀行によって必要書類は異なります。サイン証明書は、日本国内の公証役場や在外公館で取得できますが、手数料や時間がかかる場合があります。
解約完了の確認方法
解約手続きが完了すると、銀行からメールや郵送で通知が届きます。万が一に備え、通知が届くまで、手続きに関する書類は全て保管しておきましょう。
【よくある失敗談】口座解約を放置した人の末路
ケース1:知らない間に口座が凍結されてしまったAさん
Aさんは帰国後、銀行口座を放置していました。すると、数年後に口座が凍結されてしまい、残高も引き出せなくなってしまいました。凍結解除には現地に行くか、複雑な書類手続きが必要となり、結局口座の少額の残高を諦めることになりました。
ケース2:海外資産として日本の税務署からお尋ねがきたBさん
Bさんは海外資産5,000万円の申告義務に該当する海外口座を放置していました。数年後、日本の税務署から「国外財産調書」に関するお尋ねが来てしまい、慌てて税理士に相談。無申告加算税や延滞税を支払うことになり、本来払う必要のない多額の出費を強いられました。
面倒な手続きや税金トラブルは専門家に相談を
「自分でやるのはやっぱり不安」「税金面がよくわからない」と感じた方もいらっしゃるでしょう。そんな時は、専門家に頼るのが最も確実で安心できる選択肢です。
税理士に依頼するメリットとは?
口座解約手続きのサポートはもちろんのこと、国際税務の専門家である税理士に依頼することで、口座解約に伴う税務上の不安をまとめて解消できます。
- 煩雑な手続きを代行
書類の準備や銀行とのやり取りを代行し、あなたの手間を大幅に削減します。 - 税務上のリスクを回避
国際税務の観点から、口座解約後の税務申告の有無や、将来的な税務調査のリスクについて、事前にアドバイスを受けることができます。 - 専門家に任せる安心感
口座解約をプロに任せることで、手続き漏れや税務トラブルの心配から解放され、安心して日本での生活を送ることができます。
イギリスの銀行口座解約と国際税務サポート
ネイチャーグループでは、イギリスでの銀行口座解約手続きに関するサポートはもちろん、海外資産の税務申告や、非居住者の確定申告といった国際税務全般のご相談も承っております。
まとめ:イギリスの銀行口座解約は「安心」を買う行動
イギリスの銀行口座解約は、単なる手続きではありません。将来のリスクを回避し、貴重な資産と安心を守るための重要な行動です。
手続きは確かに面倒に感じるかもしれません。しかし、放置することで生じる可能性のあるセキュリティリスクや、税務上のトラブルを考えれば、今すぐに行動する価値は十分にあります。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の行動へと踏み出すきっかけとなれば幸いです。手続きが複雑で困った際は、お気軽にネイチャーグループにご相談ください。
資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。
お客様の保有資産をさらに増やすための最適な提案を数多くの選択肢からご提供します。
豊富な経験と、投資や税務の様々な視点から、お客様にあった税金対策を提案します。

「富裕層であればあるほど税負担が高くて困る。」「所得税・法人税の対策をしたいが難しい。」などとお困りではありませんか?
ネイチャーグループでは、参加無料のオンラインセミナーを開催しています。メディアに多く出演している弊社ネイチャーグループ代表 芦田ジェームズ 敏之が登壇し、2023年度の税制改正に対応した節税術を無料公開いたします。ご自身の資産を残すために役立つ内容のため、是非ご参加ください。