「イギリスに住む子どもに、マイホームの頭金を援助してあげたい」
「日本の親から生活費のサポートを受けたいけれど、税金が心配…」
大切なご家族のために、国境を越えて資産を渡したいとお考えのあなたへ。このような不安や疑問を抱えていらっしゃいませんか?
インターネットで検索しても、断片的な情報ばかりで、結局「自分の場合はどうなるの?」という疑問は解決しないまま…。特にイギリスの税制は日本のものとは大きく異なり、専門家でなければ理解が難しいのが現実です。
ご安心ください。この記事では、国際税務を専門とする私たち税理士法人ネイチャーが、長年の実務経験に基づき、イギリスの贈与に関する税金の仕組みを、どこよりも分かりやすく、そして詳しく解説します。
この記事を読み終える頃には、次のことができるようになります。
- イギリスの贈与に関する税金の基本ルールが明確にわかる
- 「7年ルール」など、節税の鍵となるポイントをしっかり理解できる
- 日本とイギリス、どちらの税金に注意すべきか判断できる
- 税金で損をしないために、今すぐ何をすべきかがわかり、安心して次の行動に移せる
複雑な国際贈与の悩みを、私たちと一緒に解決していきましょう。
イギリスに「贈与税」はない!ただし「相続税」に要注意
イギリスには、日本のような独立した贈与税という税金は存在しません。
「え、じゃあ税金を気にせずいくらでも贈与できるの?」と思われるかもしれませんが、残念ながらそう単純ではありません。イギリスでは、生前贈与は相続税(Inheritance Tax, 通称IHT)の枠組みの中で扱われるのです。
イギリスの生前贈与は「相続税(Inheritance Tax)」の枠組みで考える
あなたが誰かに贈与をした後、もし7年以内に亡くなってしまった場合、贈与した財産は相続財産に持ち戻されて、相続税の課税対象になる可能性がある、ということです。
専門用語で「Potentially Exempt Transfer(PETs)」と呼びます。「潜在的に非課税となる移転」という意味で、なんだか難しそうですよね。
簡単に言えば、「7年間、何事もなければ非課税になるけれど、もしものことがあれば課税対象になりますよ」という意味になります。
知らないと損をする「7年ルール」の仕組みを世界一やさしく解説
鍵となるのが、先ほどから出てきている「7年ルール」です。
- 贈与をしてから7年以上生存した場合
→ その贈与は完全に非課税となります(相続税の計算から除外される)。 - 贈与をしてから7年以内に亡くなった場合
→ その贈与は相続財産とみなされ、相続税(IHT)の課税対象になります。
イギリスで生前贈与による節税を考えるなら、「元気なうちに、なるべく早く贈与を始めること」が非常に重要になるのです。
贈与からの年数で税率が変わる「テーパー救済」とは
少し複雑ですが重要なルールがあります。
もし贈与から3年以上7年未満で亡くなってしまった場合、税金の負担が少しだけ軽くなる仕組み「テーパー救済(Taper Relief)」が適用されます。
亡くなったのが贈与から何年後かによって、本来の相続税率(標準40%)が以下のように軽減されるのです。
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適用される税率(本来の税率に対する割合) |
| 3年未満 | 100%(減額なし) |
| 3年以上4年未満 | 80% |
| 4年以上5年未満 | 60% |
| 5年以上6年未満 | 40% |
| 6年以上7年未満 | 20% |
| 7年以上 | 0%(非課税) |
【税理士からのワンポイントアドバイス】
このテーパー救済は、あくまで贈与した財産にかかる税金を減額するものです。相続税の基礎控除額(Nil-Rate Band)を回復させるものではない点に注意が必要です。計算が複雑になるため、必ず専門家にご相談ください。
毎年使える!贈与税がかからない非課税制度
7年ルールは大きな金額の贈与に関するものですが、毎年非課税で贈与できる便利な制度もいくつか存在します。これらを賢く利用することで、着実に資産を移転させることが可能です。
1. 誰でも使える年間非課税枠(Annual Exemption)
- 内容: 1年間(4月6日~翌年4月5日)に合計3,000ポンドまで、誰にでも非課税で贈与できます。
- ポイント: もしその年に使い切らなかった場合、未使用分は翌年1年だけ繰り越せます(最大6,000ポンドまで贈与可能)。
2. 結婚祝いの贈与(Wedding Gifts)
- 内容: 結婚する相手に応じて、以下の金額まで非課税で贈与できます。
- 自分の子どもへ : 5,000ポンド
- 自分の孫・ひ孫へ : 2,500ポンド
- その他の人へ : 1,000ポンド
3. 少額の贈与(Small Gifts)
- 内容: 1年間に250ポンドまでであれば、何人にでも非課税で贈与できます。
- ポイント: 年間非課税枠(3,000ポンド)を同じ人に使った場合、少額贈与の枠は使えません。
4.生活費の援助など(Normal expenditure out of income)
- 内容: 非常に強力な非課税制度です。贈与者の通常の生活水準を落とすことなく、余剰の収入(income)から行われる定期的な贈与は、金額の制限なく非課税となります。
- 具体例: イギリスに住む子どもの家賃を、親が日本での給与収入の中から毎月支払ってあげる、など。
- 実務上の注意点:
余剰収入からの贈与であることを証明するために、収入や支出の記録をきちんと残しておくことが重要です。税務当局(HMRC)から質問があった際に、客観的な証拠を示せるようにしておく必要があります。私たちのような税理士は、このような記録の整理や証明方法についてもアドバイスしています。
【ケース別】日本とイギリス、どちらの税金がかかる?国際贈与の重要ポイント
贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)がそれぞれ日本とイギリスにいる場合、税金関係はさらに複雑になります。
Case1:日本在住の親から、イギリス在住の子へ贈与する場合
- 日本の税金(贈与税):
贈与者である親が日本に住んでいるため、原則として日本の贈与税の対象となります。暦年贈与(年間110万円非課税)などを利用することになります。 - イギリスの税金(相続税):
受贈者である子がイギリスに住んでいても、贈与者がイギリスの居住者(またはドミサイル保持者)でない限り、通常はイギリスの相続税(IHT)はかかりません。
結論:このケースでは、主に日本の贈与税の検討が必要です。
Case2:イギリス在住の親から、日本在住の子へ贈与する場合
- 日本の税金(贈与税):
受贈者である子が日本に住んでいるため、原則として日本の贈与税の対象となります。 - イギリスの税金(相続税):
贈与者である親がイギリスに住んでいる(正確にはドミサイルを保持している)場合、イギリスの相続税(7年ルール)の対象となります。
結論:このケースでは、日英両国の税金が関係してくる可能性があり、最も注意が必要です。
二重課税は大丈夫?「日英租税条約」の役割
「じゃあ、Case2だと両方の国で税金を取られちゃうの?」と心配になりますよね。
ご安心ください。そういった二重課税を調整するために「日英租税条約」が存在します。
この条約により、一定のルールに基づいて、どちらかの国で支払った税額をもう一方の国の税金から控除できる仕組み(外国税額控除)があります。
【お客様が陥りやすい失敗事例】
「租税条約があるから大丈夫」と安易に考え、片方の国でしか申告をしなかった結果、もう一方の国で無申告加算税や延滞税といった重いペナルティを課せられてしまうケースが後を絶ちません。どちらの国で、どのタイミングで、どのように申告・納税し、控除を適用するかは非常に専門的な判断を要します。自己判断は絶対に避けてください。
【超重要】2025年4月からの税制改正!非ドミサイル(Non-Dom)制度の変更点
【最新情報】ここからの情報は、今後のあなたの資産計画に極めて大きな影響を与える可能性があります。
イギリスの国際税務において非常に重要な概念に「ドミサイル(Domicile)」があります。これは単なる「住所」とは異なり、「終の棲家」と見なす場所を指す概念で、これがどこにあるかによってイギリスでの課税範囲が大きく変わります。
これまで、イギリスに住んでいてもドミサイルが日本にある人(非ドミサイル、Non-Dom)は、イギリス国外の資産に対する相続税が免除されるなど、税制上の優遇措置がありました。
しかし、非ドミサイル制度が2025年4月6日から大幅に変更され、廃止されることになりました。
これまでの制度と何が変わるのか?居住ベースの新制度へ
- 【旧制度】: 「ドミサイル」がどこにあるかで判断。
- 【新制度】: 「イギリスに何年住んでいるか」という居住期間で判断。
具体的には、イギリス滞在が10年を超えた場合、全世界の資産がイギリスの相続税(IHT)の対象となる新しいルールが導入される予定です。また、イギリスから出国しても、その後10年間は課税対象となる可能性があります。
これから贈与・相続を考える人が今すぐ準備すべきこと
この改正は、イギリスに長くお住まいの日本人や、将来移住を考えている方にとって、まさに待ったなしの状況です。
- イギリス在住10年が近い方: 新制度が始まる前に、国外資産の贈与などを実行した方が有利になる可能性があります。
- 将来イギリス移住を検討中の方: 移住のタイミングや資産の整理について、計画を根本から見直す必要があります。
この税制改正は非常にインパクトが大きく、個々の状況によって最適な対策は全く異なります。一日も早く、私たちのような国際税務の専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。
まとめ:複雑な国際贈与こそ、専門家への相談が成功の鍵
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- イギリスに「贈与税」はないが、贈与後7年以内に亡くなると「相続税」の対象になる。
- 年間3,000ポンドの非課税枠や、余剰収入からの生活費援助など、賢く使える非課税制度がある。
- 贈与者と受贈者の居住地によって、日英どちらの国の税金が適用されるかが変わるため注意が必要。
- 2025年4月からの税制改正により、特にイギリスに長く住む方は早急な対策が必須。
イギリスが絡む国際贈与は、まさに専門知識の有無が、納税額に数百万円、数千万円単位の違いを生む世界です。税理士法人ネイチャーでは、国際贈与や相続に関する初回無料相談を承っております。
「私たちの場合はどうなるの?」
「今から何を準備すればいい?」
どんな些細なことでも構いません。あなたのそのお悩み、まずは私たちに聞かせていただけませんか?あなたの、そしてあなたの大切なご家族の未来を、私たちが全力でサポートします。
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