米国株への投資が一般的になった現代、相続発生時に海外資産特有の壁に直面する方が急増しています。日本国内の証券会社で米国株を保有していても、アメリカの税法や手続きが無関係とは言い切れません。英語の書類や、日米両国での二重課税といった問題は、放置すると大切な資産を大きく目減りさせる恐れがあります。
本記事では、国際税務のプロフェッショナルが米国株相続について、スムーズな承継を実現するための具体的な解決策を提示します。記事を読み終える頃には、将来への不安が確かな安心感へと変わっているはずです。
米国株相続で知っておくべき日米の課税ルール
米国株を相続する際、日本とアメリカの両国で税金が発生する可能性があります。日本の居住者は、世界中のどこにある資産を相続しても日本の相続税が課され、アメリカでは、米国所在資産(U.S. situs assets)として米国株はアメリカの遺産税(Estate Tax)の課税対象となるからです。
米国遺産税には、外国人(非居住外国人)に対して6万ドル(約900万円 ※1ドル150円換算)という非常に低い免税枠しか設定されていません。米国株の評価額が6万ドルを超えると、最大40%という高い税率でアメリカから課税される恐れが生じます。
しかし、日本とアメリカの間には「日米相続税条約」が締結されています。条約を適切に活用すれば、米国居住者の控除枠を日本の居住者に適用したり、日本で支払う相続税からアメリカで支払った遺産税を差し引く外国税額控除を適用することが可能です。特に2026年以降の相続等の場合は、この非課税枠の大きな減少が見込まれます。最新の税制を正しく理解し、二重課税を回避することが重要です。
国内証券会社と海外証券会社で異なる相続手続きの進め方
米国株をどこで管理しているかによって、相続発生後の手続き難易度は劇的に変化します。日本の証券会社(SBI証券や楽天証券など)を利用している場合、窓口はあくまで日本の会社です。戸籍謄本などの必要書類を提出すれば、日本円での評価や名義変更の手続きは比較的スムーズに進みます。
一方で、アメリカの証券会社(チャールズ・シュワブ、フィデリティなど)に直接口座を持っている場合は注意が必要です。基本的に、口座は裁判所の管理下で清算手続きを行う(プロベート)の対象となり、英文での宣誓供述書、死亡証明書等の提出が求められます。
特に困難を極めるのが「メダリオン署名保証(Medallion Signature Guarantee)」の取得です。これは、書類上の署名が本人のものであることを金融機関が保証するスタンプです。日本国内で個人が取得することは事実上不可能に近いため、米国現地の代行業者や米国弁護士への依頼が必要となります。事前の対策を含め、早期に専門家のサポートを仰ぐことが重要となります。
米国株相続における必要書類と手続きの比較表
米国株の相続手続きにおける主な違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 国内証券会社(日本) | 海外証券会社(アメリカ) |
| 主な窓口 | 国内証券会社のカスタマーサポート | アメリカ本社の国際部門 |
| 使用言語 | 日本語 | 英語 |
| 必要書類の例 | 戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明 | 死亡証明書(英訳)、宣誓供述書、W-8BEN |
| 特殊な認証 | 不要(実印と印鑑証明で対応) | メダリオン署名保証、公証が必要な場合あり |
| 米国遺産税申告 | 6万ドル超の場合、Form 706-NA、Form8833等が必要 | 6万ドル超の場合、Form 706-NA_Foem8833等が必要 |
| 手続き期間 | 数週間〜数ヶ月 | 半年〜数年 |
二重課税を回避するためのForm 706-NAと租税条約の活用
米国株の評価額が6万ドルを超える場合、アメリカの税務署であるIRSに対してForm 706-NA、Form8833など遺産税の申告及び書類の提出をしなければなりません。申告を怠ると、将来的に株を売却した際の資金送金が止められたり、多額のペナルティが課されるリスクがあります。
Form 706-NA等の作成において、日米相続税条約の適用は極めて有効な手段です。条約第4条を利用することで、アメリカの非居住者であっても、アメリカ人が享受できる高額な基礎控除(2026年以降は変更の可能性があります)を、全世界資産に対する米国資産の割合に応じて按分適用できます。
米国申告は非常に複雑であり、申告期限内に申告納税又は延長申請等も必要であり、専門的な知識なしに正確な計算を行うことは困難です。国際税務に精通した税理士に依頼することで、申告漏れを防ぎつつ、最大限の税務メリットを享受できます。
税理士法人ネイチャーが解決した米国株相続の実例
弊社のクライアントであるA様(60代・会社経営者)のケースを紹介します。亡くなったお父様がアメリカのネット証券に約5,000万円相当の米国株を保有していたことが判明しました。A様は自ら英語で問い合わせを試みましたが、専門用語の壁とメダリオン署名の要求に突き当たり、数ヶ月間手続きが停滞していたのです。
税理士法人ネイチャーが介入し、まずは米国遺産税の申告要否を精査しました。日米租税条約を適用し、アメリカでの納税額はゼロにて、米国申告を完了。さらに、難航していたメダリオン署名の代替案を提言し、米国の証券会社と直接交渉を行うことで、無事に日本の証券口座への資産移管を実現しました。
A様からは「自分一人では一生終わらなかった。税金だけでなく、手続きの出口まで示してくれて助かった」とのお声をいただきました。海外資産の相続は、税金の計算だけでは完結しません。実務上のハードルを一つひとつ取り除く包括的なサポートが、相続人の負担を劇的に軽減します。
富裕層が今すぐ取り組むべき米国株の生前対策
相続発生後の苦労を減らすためには、生前の対策が欠かせません。最も効果的な方法は、複雑な海外口座にある資産を、管理のしやすい日本の証券会社の特定口座へ移管しておくことです。日本の証券会社であれば、相続発生時の資産評価や税計算の報告書が自動で作成されるため、遺族の負担は大幅に軽くなり、何より米国の遺産手続き(プロべート)の対象外となります。
資産規模が大きい場合は、生前信託(リビングトラスト)や法人化を検討する選択肢もあります。保有形態を工夫することで、アメリカの遺産税の対象から外したり、プロベート(遺産検認手続き)を回避したりすることが可能です。
まとめ:米国株相続の不安は専門家への相談で解消できる
米国株の相続は、国内資産の相続とは比較にならないほど複雑なステップを要します。日米両国での課税ルール、英語による書類作成、そしてメダリオン署名といった特殊な手続きは、一般の方にとって大きなストレスとなるでしょう。しかし、日米租税条約の正しい適用と、早期の現状把握を行えば、大切な資産を確実に守り抜くことができます。
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