毎年5月から6月頃に届く住民税決定通知書を見て「なぜ住民税の負担がこれほど大きいのか」と疑問を抱く方は少なくありません。住民税は前年の所得を基に計算されるため、現在の収入が減っていても高額な税負担が生じることがあります。また、所得や住民税額が高いと、保育料や自治体独自の公的支援などの判定に影響する場合があります。
この記事では、税理士法人ネイチャーの知見をもとに、住民税が高くなる原因から住民税 決定通知書の正しい見方、そして手取り減少を防ぐ5つの対策を解説しました。
この記事を読むことで、住民税決定通知書の確認ポイントと、利用できる控除・制度を検討する際の基本が分かります。なお、税額や控除額に関する記載は、主に2025年分の所得税と、2025年中の所得を基に計算する2026年度の個人住民税を前提としています。
住民税が高い3つの原因
住民税が高い原因は、前年所得基準、一律10%の税率、自治体の超過課税の3点です。それぞれの仕組みを知り、高い理由を理解しましょう。
- 前年の所得を基準に計算されるため
- 総合課税の標準税率が原則10%で、所得税より所得控除が小さい
- 自治体独自の超過課税がある場合がある
まずは住民税と所得税の違いを大まかに把握するため、以下の表で基本的な性質を比較します。
| 所得税 | 住民税 | |
| 税率 | 5%〜45%(累進課税) | 総合課税の標準税率は原則10% |
| 課税のタイミング | その年の所得を基に計算し、源泉徴収や確定申告等で精算 | 前年の所得を基に翌年度に課税 |
| 基礎控除額 | 合計所得金額に応じて0円~95万円(※) | 合計所得金額に応じて0円~43万円(※) |
※2025年度所得税の基礎控除は以下の通りです。
| 2025年度所得税の基礎控除 | |
| 合計所得金額 | 控除額 |
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超655万円以下 | 63万円~88万円 |
| 655万円~2,350万円 | 58万円 |
| 2,350万円~2,500万円 | 16万円~48万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
2026年度住民税の基礎控除は下記の通りです。
| 2026年度住民税の基礎控除 | |
| 合計所得金額 | 控除額 |
| 2,400万円以下 | 43万円 |
| 2,400万円~2,450万円 | 29万円 |
| 2,450万円~2,500万円 | 15万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
住民税は所得税よりも基礎控除や扶養控除などの金額が小さいため、所得税と同じ収入でも、住民税の課税標準額が相対的に大きくなることがあります。
前年の所得を基準に計算されるため
住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算される仕組みです。そのため、退職や事業縮小などで現在の収入が減っていても、前年の所得が高ければ、その年の住民税は高額になります。 たとえば、企業オーナーが自社株の売却等で一時的に数億円規模の利益を確定させた場合、翌年に請求される住民税の負担が急増する点に注意が必要です。
前年の所得ベースで税額が決まるため、突発的な収入があった年の翌年に多額の住民税の決定通知書が届区形になります。賞与の増加や臨時収入があった場合も、翌年の資金繰りを考えて納税資金を確保しておくことが重要です。
なお、自社株を含む株式等の譲渡益は、給与所得などとは別に計算する申告分離課税が原則で、住民税率は原則5%です。総合課税の標準税率10%がそのまま適用されるわけではありません。
総合課税の標準税率が原則10%で、所得税より所得控除が小さい
給与所得、事業所得、不動産所得など、総合課税される所得に対する住民税の所得割は、自治体独自の超過課税がある場合などを除き、原則として標準税率10%が適用されます。所得税は稼げば稼ぐほど税率が最大45%まで上がる累進課税ですが、住民税は一律の税率です。
ただし、所得が高い人は税率を掛ける課税標準額そのものが大きいため、税率が10%であっても納税額は高額になります。 また、住民税の基礎控除や扶養控除などは、所得税より控除額が小さく設定されています。所得税では税額がそれほど大きくない場合でも、住民税決定通知書を見ると負担が重く感じられることがあります。
なお、土地・建物や株式等の譲渡所得など、分離課税の対象となる所得には別の税率が適用されます。
自治体独自の超過課税があるため
自治体によっては、環境保全や防災などの財源を確保するため、住民税の均等割や所得割に独自の超過課税を行っています。
たとえば、横浜市では均等割に横浜みどり税が上乗せされ、神奈川県では水源環境保全税として県民税の均等割と所得割に超過課税が行われています。
住民税は原則として1月1日時点の住所地で課税されるため、前年と所得が同じでも、転居によって超過課税の内容が変われば税額が変動することがあります。
なお、2024年度から個人住民税と併せて徴収されている森林環境税は、自治体独自の税ではなく、年額1,000円の国税です。
住民税が高い人の経済的リスク
所得や住民税額が高い場合、住民税そのものの負担に加え、保育料や自治体独自の支援制度などに影響することがあります。
- 0~2歳児の認可保育所等の保育料が高くなる場合がある
- 自治体独自の公的支援や福祉制度の判定に影響する場合がある
0~2歳児の認可保育所等の保育料が高くなる場合がある
認可保育所等の0~2歳児クラスの保育料 は、世帯の住民税の所得割額をもとに決定されます。夫婦の所得割額を合算して階層を判定する自治体では、夫婦ともに所得が高い場合、保育料が上位の階層となることがあります。
一方、3~5歳児クラスの基本保育料は、国の幼児教育・保育の無償化の対象です。0~2歳児についても、住民税非課税世帯は国の無償化の対象となるほか、自治体が独自に対象を広げている場合があります。
ただし、3~5歳児クラスであっても、通園送迎費、食材料費、行事費などは原則として無償化の対象外です。制度の対象範囲や追加費用については、利用する施設や自治体に確認しましょう。
なお、保育料の算定では、住宅ローン控除、寄附金税額控除、配当控除など、一定の税額控除を反映しない所得割額が使われる自治体があります。ふるさと納税を行って住民税の納付額が減っても、保育料の階層が下がるとは限りません。
自治体独自の公的支援や福祉制度の判定に影響する場合がある
自治体独自の給付金、奨学金、医療費助成、福祉サービスなどでは、住民税が非課税かどうか、市町村民税所得割額が一定額以下かどうかといった基準が使われる場合があります。
ただし、判定に使う指標は制度によって異なります。
「合計所得金額」「課税標準額」「市町村民税所得割額」「税額控除前の所得割額」など、似た名称でも計算方法や控除の扱いが異なるため、利用を検討している制度の要綱を確認することが必要です。
なお、高等学校等就学支援金は2026年4月から所得制限が撤廃されています。都道府県や学校が独自に行う上乗せ支援、奨学給付金などには別の要件が設けられていることがあるため、個別に確認しましょう。
住民税が高いときの決定通知書の見方
住民税決定通知書は、住民税が正しく計算されているかを確認するための重要な書類です。
給与所得者には「給与所得等に係る市町村民税・道府県民税・森林環境税特別徴収税額の決定通知書」、普通徴収の人には「市民税・県民税・森林環境税納税通知書」などが交付されます。名称や様式は自治体によって異なります。
特に確認したいポイントは次の2つです。
- 所得金額と課税標準額を確認する
- 所得控除と税額控除の反映状況を確かめる
所得金額と課税標準額を確認する
通知書を受け取ったら、まず「総所得金額等」「所得控除」「課税標準額」「所得割額」の欄を確認しましょう。
住民税の課税標準額は、原則として所得金額から住民税上の所得控除を差し引いて計算します。
ただし、確定申告書と住民税決定通知書の金額が一致しない場合でも、直ちに誤りとは限りません。所得税と住民税では基礎控除や扶養控除などの金額が異なるほか、端数処理や所得区分の表示方法にも違いがあるためです。
確定申告書や源泉徴収票と照らし合わせ、次の項目を確認してください。
- 給与所得、事業所得、不動産所得などが正しく反映されているか
- 配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などが反映されているか
- 株式や不動産の譲渡所得が適切な区分で計算されているか
- 住宅ローン控除や寄附金税額控除が反映されているか
説明できない相違がある場合は、市区町村の住民税担当窓口に確認しましょう。
所得控除と税額控除の反映状況を確かめる
ふるさと納税については、通知書の「寄附金税額控除額」や摘要欄などを確認します。iDeCoについては、「小規模企業共済等掛金控除」を含む所得控除欄を確認してください。表示方法は自治体によって異なります。
ふるさと納税のワンストップ特例を申請した後に確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。その場合、ワンストップ特例を申請した寄附も含め、すべての寄附金額を確定申告書に記載しなければなりません。
控除漏れが判明した場合は、当初の申告状況によって、所得税の更正の請求、確定申告書の訂正、住民税申告などの手続きが必要になります。
所得税の申告内容に関する事項は税務署、住民税のみの事項や通知書の表示内容については市区町村に確認してください。
住民税が高い場合の改善策5選
住民税の負担を適正にするには、利用できる所得控除や税額控除を漏れなく申告することが基本です。検討できる主な対策は次の5つです。
- ふるさと納税で税額控除を上限まで受ける
- iDeCoへの掛金拠出で課税所得金額を減らす
- 医療費控除を漏れなく申告する
- 別居している親が扶養控除の対象になるか確認する
- 資産管理法人を設立して所得を分散する
ふるさと納税で税額控除を上限まで受ける
ふるさと納税を活用すれば、寄附した金額のうち2,000円を超える部分が原則として寄附した年の所得税(還付)と翌年度の住民税(税額控除)から差し引かれます。控除上限の範囲内で利用すれば、原則として自己負担2,000円で返礼品を受け取りながら、所得税と住民税の控除を受けられます。
ただし、限度額を超えて寄附した分は純粋な自己負担となるため、事前に年収や家族構成から正確な上限額をシミュレーションしておきましょう。
iDeCoへの掛金拠出で課税所得金額を減らす
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入して掛金を支払うと、支払った掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。結果として所得税・住民税の負担が軽減されるのが大きな魅力です。
運用益も制度内では非課税で再投資されます。一方で、iDeCoには次の注意点があります。
- 原則として60歳まで資金を引き出せない
- 受取開始年齢は加入期間などによって異なる
- 運用商品によっては元本割れの可能性がある
- 加入時や運用中に手数料がかかる
- 課税所得がない人は掛金控除による税負担軽減を受けられない
- 受取時には年金または一時金として課税関係が生じる
iDeCoは短期的な納税対策ではなく、老後資金を形成する制度です。生活資金や事業の運転資金を圧迫しない範囲で掛金を設定しましょう。
医療費控除を漏れなく申告する
本人または生計を一にする配偶者や親族のために医療費を支払った場合、一定額を超える部分について医療費控除を受けられます。
控除額は、原則として次の計算式で求めます。
実際に支払った医療費 – 保険金などで補てんされる金額 – 10万円
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。控除額の上限は200万円です。
インプラント治療、不妊治療などの自由診療でも、治療を目的とし、要件を満たすものは医療費控除の対象となる場合があります。美容目的の施術などは対象になりません。
家族分の医療費は、生計を一にしていれば合算できます。ただし、医療費控除を受けられるのは、原則として実際に医療費を支払った人です。
所得税率が高い人が支払って申告すると世帯全体の軽減額が大きくなる場合がありますが、名義だけを変更することはできません。誰が実際に負担したかを明確にしておきましょう。
対象となる市販薬の購入額が年間1万2,000円を超える場合は、セルフメディケーション税制を選択できることがあります。通常の医療費控除とは併用できないため、どちらが有利かを比較して申告します。
別居している親が扶養控除の対象になるか確認する
別居している親であっても、納税者と生計を一にし、所得要件などを満たしていれば、扶養控除の対象になる場合があります。
別居する親との「生計を一にする」関係を説明するためには、生活費や療養費を継続的に負担していることが重要です。銀行振込の記録など、仕送りの事実が分かる資料を保存しておきましょう。
2025年分所得税・2026年度住民税では、扶養親族となる親の合計所得金額が58万円以下であることが要件の一つです。
親の収入が公的年金のみで、公的年金等に係る雑所得以外の所得が多額でない一般的なケースでは、年金収入の目安は次のとおりです。
- 65歳未満: 年金収入118万円以下
- 65歳以上: 年金収入168万円以下
公的年金以外の所得がある場合や、公的年金等に係る雑所得以外の所得が高額な場合は、計算が異なることがあります。
70歳以上の親が老人扶養親族に該当する場合、住民税の扶養控除額は、同居老親等以外で38万円、同居老親等で45万円です。老人ホームなどに入所している場合は、原則として同居老親等には該当しません。
扶養控除の適用は、親の所得、年齢、生活費の負担状況、他の親族が扶養控除を受けていないかなどを含めて判定します。
資産管理法人を設立して所得を分散する
不動産や有価証券などの管理・運用を法人で行う合理的な事業実態がある場合、資産管理法人の活用を検討可能です。所得水準や役員報酬、法人の維持費、社会保険料などを含めて試算すると、法人化により税負担を平準化できる場合があります。ただし親族への役員報酬は、勤務実態や職務内容、報酬額の妥当性を説明できるようにする必要があります。
法人では役員報酬や退職金など、個人事業主や給与所得者の時と比較して、経費として認められる支払いの範囲が広がりやすいです。しかし事業に関係のない私的支出を経費にすることはできません。
具体的なメリット・デメリットについては、「資産管理会社のメリット・デメリットは?設立時のコストや費用を抑えるポイント」で詳しく解説しています。
住民税が高いのに払えない時の猶予・分割納付
事業不振、失業、災害、病気などにより住民税を一時に納付することが難しい場合は、放置せず、納期限前後の早い段階で市区町村の窓口に相談してください。
一定の法定要件を満たす場合には、徴収猶予や換価の猶予が認められる可能性があります。猶予期間は原則として1年以内で、状況に応じて分割納付となる場合があります。
法定の猶予制度に該当しない場合でも、自治体の判断により分割納付の相談ができることがあります。
また、災害や重い病気、急激な所得減少などについて、自治体の条例に基づく減免制度が設けられている場合があります。対象要件や申請期限は自治体によって異なるため、納期限前に確認することが重要です。
滞納を続けると延滞金が発生し、預貯金、給与、不動産などの財産が差し押さえられる可能性があります。納付が難しいと分かった時点で早めに相談しましょう。
高所得者の資産運用や税金対策なら税理士法人ネイチャー
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まとめ:住民税が高い理由を確認し、決定通知書の控除漏れを防ぐ
住民税が高いと感じる主な理由は、前年の所得を基に翌年度に課税されること、総合課税の標準税率が原則10%であること、所得税より所得控除が小さいことです。
住民税決定通知書が届いたら、次の項目を確認しましょう。
- 前年の所得が正しく反映されているか
- 配偶者控除や扶養控除に漏れがないか
- 社会保険料控除やiDeCoの掛金控除が反映されているか
- ふるさと納税の寄附金税額控除が反映されているか
- 住宅ローン控除などの税額控除が反映されているか
ふるさと納税、iDeCo、医療費控除、扶養控除にはそれぞれ適用要件があります。資産管理法人についても、住民税だけでなく法人税、社会保険、維持費、将来の相続まで含めた検討が必要です。
住民税決定通知書に説明できない相違がある場合や、高額な所得・資産に関する税金対策を検討する場合は、市区町村や税理士などの専門家に確認しましょう。
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