事業承継の相談先4選を比較!プロに相談するメリットや選び方を解説

事業承継の必要性は理解していても、最初にどこへ相談すべきか悩まれる方も多いです。相談先は税理士法人からM&A仲介会社、公的機関まで幅広く、得意分野も費用も異なります。

選び方を誤れば、自社の実情に合わない方法を提案されることもあるので注意が必要です。後継者の有無や自社株の評価額等で事業承継の方向性は大きく変わります。

本記事では、代表的な4つの相談先の特徴と選び方、専門家に依頼する利点、初回相談で準備しておきたい書類までを税理士の視点で整理しました。一読すれば、自社が最初に連絡すべき窓口と、相談前に用意しておく資料が明確になるでしょう。

相続税

事業承継の相談先4選

事業承継の相談先は、大きく4種類に整理できます。得意分野と費用の目安を一覧で示したうえで、それぞれの役割を解説します。

相談先得意分野費用の目安
税理士法人自社株の評価・対策
税負担の試算
申告
有料(報酬体系は依頼先により異なる)
M&A仲介会社買い手企業の選定
条件交渉・マッチング
有料(着手金・中間金・成功報酬等)
金融機関後継者への融資
取引先の紹介
相談は無料の場合が多い
法律事務所契約書の作成
株主間の紛争対応
有料(時間単位または案件単位)

税理士法人

税理士法人は、事業承継の実務で中心的な役割を担う相談先です。承継の判断は自社株の評価額から始まりますが、非上場株式の評価は税理士の専門業務です。

評価では、会社規模の判定、類似業種比準方式と純資産価額方式の選択、特定の評価会社に該当するかの確認が必要になります。

類似業種比準方式は業種の近い上場会社の配当・利益・純資産と比較する方法、純資産価額方式は会社の資産と負債を相続税評価額に置き換えて計算する方法です。いずれも決算書の数字だけでは判定できず、財産評価基本通達に沿った検討が求められます。

評価額が確定しなければ、贈与税や相続税の試算も、納税資金の準備も具体化できません。

贈与や相続の申告、法人版事業承継税制の適用判断、役員退職金の設計も税理士法人が担当し、自社株評価が引き下がるタイミングを想定します。承継の実行後も申告や届出が続くため、長期にわたって関わる相談先といえます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、親族や社内に後継者がいない場合の買い手探しを担う相談先です。自社のネットワークに加え、売り手と買い手をオンラインで引き合わせるM&Aプラットフォームも活用し、条件に合う相手先を探します。

依頼前には、中小企業庁のM&A支援機関登録制度への登録の有無を確認してください。中小企業庁の公表によれば、令和7年(2025年)7月時点で登録されているFA・仲介業者は3,017件(法人2,305件、個人事業主712件)に達しており、その後も新規登録が続いています。登録には、中小M&Aガイドラインの遵守宣言が必要です。

2024年8月に改訂された第3版では、契約締結前に手数料の算定基準、提供する業務の内容、担当者の資格や成約実績まで説明することが仲介者・FAに求められています。M&A支援機関登録制度のデータベースでは、各支援機関の手数料体系が公表されています。

着手金、中間金、成功報酬の有無に加え、譲渡価額にかかわらず発生する最低手数料の水準も、依頼前に確認しておきたい項目です。

なお、仲介会社は売り手と買い手の双方と契約するため、利益が相反する場面も想定されます。第3版では禁止される利益相反行為が具体化されているため、契約前の説明内容を確認したうえで依頼先を選定してください。

参照:M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和7年度公募5・6月分)について

金融機関

メインバンクは、資金面での支援を受けられる相談先です。後継者が株式を買い取る際の融資や持株会社を設立する際の借入れなど、資金調達の相談に応じます。

取引先の情報を保有しているため、M&Aの相手先を紹介する場合もあります。経営者保証を後継者へ引き継ぐかどうかも、早期に確認しておきたいポイントの一つです。

事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則では、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことが原則とされています。ただし、特則は金融機関の自主的な準則であり、法的な強制力を持つものではありません。

金融機関の提案は、自行の商品や取引関係を前提とする場合があります。融資条件や返済計画は、税務・資産全体への影響も含めて並行して確認することが望まれます。

参照:事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則

法律事務所

法律事務所が担当するのは、契約の作成とトラブルの予防です。株式譲渡契約書の作成、定款の変更、議決権を制限した種類株式の設計、遺言の作成などが主な業務にあたります。

株主が分散している会社では、少数株主との交渉や所在不明株主への対応も欠かせません。遺留分とは、配偶者や子などに保障された最低限の取り分です。後継者へ株式を集中させると遺留分を侵害しやすく、経営承継円滑化法の民法特例(除外合意・固定合意)が対策の一つになります。

適用には、推定相続人全員の合意に加え、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要です。合意書の作成や相続人との交渉では、弁護士の支援が有用な場面が多くなります。親族間で意見が対立している場合、税理士だけでは対応が難しくなります。トラブルに発展しそうな要素があるなら、早い段階で弁護士へ相談しましょう。

事業承継の相談先の正しい選び方

適切な相談先は、自社が抱える課題によって変わります。窓口を絞り込む判断基準は3つです。

  • 自社が現在抱えている最大の経営課題を洗い出して決める
  • 会社の引き継ぎから個人の資産防衛まで担う窓口を探す
  • 複数の専門家を束ねて案内できるワンストップの体制を選ぶ

自社が現在抱えている最大の経営課題を洗い出して決める

相談先を決める前に、自社の課題がどこにあるかを整理してください。課題と相談先が合っていなければ、時間も費用も無駄になりかねません。

  • 後継者は決まっているけれど税負担が心配 → 税理士法人
  • 後継者が見つからず買い手を探したい → M&A仲介会社
  • 株主が分散し、権利関係が複雑 → 法律事務所

課題が複数ある場合は、金額のインパクトが大きい課題から着手するのが実務的です。自社株の評価額が数億円規模となる会社では、税負担が最も大きな論点になりやすい傾向があります。

会社の引き継ぎから個人の資産防衛まで担う窓口を探す

会社の承継と経営者個人の資産は、切り離して考えられません。自社株は個人の相続財産の一部であり、後継者以外の相続人への配分にも影響するためです。

【シミュレーション:創業30年以上、経常利益が安定している法人のオーナー】

  • 自社株の相続税評価額:4億円
  • 個人名義の不動産と金融資産:1億5,000万円
  • 相続人:長男(後継者)と長女

自社株が財産の大半を占める構成では、後継者へ株式を集中させると長女の取り分が大きく減少します。会社側の手続きだけを進めても、相続の段階で問題が表面化する可能性があります。

※金額は説明のための仮定です。実際の評価額や税額は個別の状況によって異なります。

会社と個人の両方を俯瞰できる相談先であれば、承継の設計を一度でまとめられます。加えて、自社株や個人資産の運用面まで含めて総合的に検討できる専門家であれば、税引後の手取りや将来のキャッシュフローまで見通した設計が可能です。

専門家の選び方は、以下の記事をご覧ください。

複数の専門家を束ねて案内できるワンストップの体制を選ぶ

事業承継では、税理士、弁護士、司法書士、金融機関との調整が必要になります。経営者が個別にやり取りすれば、同じ説明を何度も繰り返す手間が生じます。

相談窓口が一元化されていれば、資料共有や全体の進行管理がスムーズになり、専門家ごとのアドバイスの食い違いを防ぐことが可能です。

個別に複数の専門家へ相談した結果、株式配分などで異なる意見が出されて方針が定まらないといった事態を回避し、一貫した方針のもとで手続きを進められる点が大きなメリットです。

ただし、対応できる範囲は事務所ごとに異なります。依頼前に、税務・法務・資産運用のどこまでを一括で担当できるのかを確認してください。

相続税

事業承継の相談をプロにするメリット

専門家へ相談する主なメリットは3つです。株価の算定、計画の策定、親族間の調整の順に解説します。

  • 正確に株価算定できる
  • 最新の法律に基づいて引き継ぎ計画を策定できる
  • 親族間の話し合いのきっかけになる

正確に株価算定できる

専門家へ相談する利点として大きいのは、自社株の評価額を財産評価基本通達に沿って算定できる点です。評価額が判明しなければ、承継方法の比較も納税資金の準備も進みません。

非上場株式の評価では、従業員数、総資産価額、取引金額によって会社規模を判定し、適用する方式を決めます。特定の評価会社に該当する場合にも、それぞれの区分に応じた評価方法で株価を計算します。

決算書の純資産額と相続税評価額は一致しません。判断を誤ると、税負担の見込みも大きくずれる可能性があります。

評価額を抑える方法は、以下の記事で解説しています。

最新の法律に基づいて引き継ぎ計画を策定できる

事業承継に関わる制度は頻繁に見直されます。法人版事業承継税制(特例措置)の特例承継計画は、令和8年度税制改正で提出期限が1年6か月延長され、2027年(令和9年)9月30日までとなりました。ただし、贈与や相続を実行する適用期限は2027年12月31日のままで変更されていません。

純資産価額方式で使用する法人税額等相当額の割合も、防衛特別法人税の創設に伴い37%から38%へ改正されました(※2026年4月1日以降の相続・贈与等により取得した非上場株式の評価から適用)。

古い情報をもとに計画を立てると、期限に間に合わない事態も起こり得ます。制度改正の動向を継続的に追っている専門家であれば、最新の取扱いを前提とした設計が可能です。

参照:取引相場のない株式等の評価(純資産価額方式における法人税額等相当額)

親族間の話し合いのきっかけになる

株価評価等で現状を把握することで、親族間の話し合いを進めるきっかけになります。後継者へ株式を集中させる理由を経営者本人が説明しておくことは、非常に重要です。

専門家が数字と制度をもとに現状を可視化すれば、感情面の対立から議論を切り離し、他の相続人への財産の配分も評価額を土台に整理できます。

株式の配分は、相続開始後では家族の合意を得にくくなる場合があります。後継者が経営に集中できる状態を整えるには、生前の話し合いが有効です。

事業承継の相談に必要なもの・書類

初回の相談では、次の資料があると具体的な話を進められます。

  • 直近3期分の決算書(貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書)

会社の財産状況と業績の推移を把握し、類似業種比準方式・純資産価額方式による自社株評価の基礎資料となります。

  • 法人税の申告書一式

別表等から所得金額、繰越欠損金、同族関係者の状況などを確認でき、会社規模判定や税額試算に用います。

  • 株主名簿

現在の株主構成と議決権の分散状況を確認し、後継者へ集中させるべき株式数や名義株の有無を検討する出発点となります。

  • 定款

発行可能株式総数、株式の譲渡制限、種類株式の定めなど、承継スキームに影響する会社のルールを確認するための資料です。

  • 固定資産台帳

土地・建物・設備などの保有資産と含み損益を把握し、純資産価額方式による評価や組織再編の検討に活用します。

  • 借入金の一覧と返済予定表

返済負担や経営者保証の有無を確認し、後継者への引継ぎや資金繰り、金融機関との調整方針を検討する材料となります。

  • 経営者個人の資産の一覧

自社株を含めた相続財産の全体像を把握し、他の相続人への配分や納税資金、遺留分への影響を検討するために用います。

すべてがそろっていなくても相談は始められます。決算書と株主名簿の2つがあれば、自社株の概算評価と課題の整理は可能です。

事業承継を相談する流れ

先に挙げた資料のうち優先度の高いものと、書類以外に整理しておきたい情報を順に解説します。

  • 会社の財務状況がわかる直近の決算書を用意する
  • 現在の株主名簿を揃えて権利の分散状況を把握する
  • 経営者自身の引退時期や後継者候補の希望を整理する
  • 法人とは別にある個人資産の所有状況をリスト化する

会社の財務状況がわかる直近の決算書を用意する

自社株の評価は複数期の数字をもとに算定するため、直近3期分の決算書が出発点です。

類似業種比準方式では1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額の3つを使用し、純資産価額方式では資産と負債を相続税評価額に置き換えて計算します。

勘定科目内訳明細書もそろえておくと、資産の内訳まで確認できます。土地や有価証券の含み損益は、評価額に直接影響するためです。

現在の株主名簿を揃えて権利の分散状況を把握する

株主名簿は、経営権の現状を確認する資料です。誰が何株保有しているかがわからなければ、後継者へ集中させる株式数も決められません。

創業から年数が経過した会社では、名義だけを借りた株式(名義株)や相続によって株主が想定以上に増えていることがあります。連絡の取れない株主がいる場合は、承継の前に整理を進めなくてはなりません。

株主総会で会社経営の重要事項を決定する特別決議は、原則として議決権の過半数を有する株主が出席し、そのうち3分の2以上の賛成で成立します(定款で別段の定めをおくことも可能です)。後継者が単独で安定した経営権(特別決議を可決できる株数)を確保できるか判断するためにも、株主名簿による事前確認が欠かせません。

経営者自身の引退時期や後継者候補の希望を整理する

いつまでに、誰へ譲りたいかという方針も整理が必要です。時期と相手が決まれば、選択できる承継方法も絞り込めます。

後継者候補が決まっていない場合も、親族内で探すのか、社内から選ぶのか、第三者への売却を検討するのかという方向性はお伝えください。

引退後の生活資金をどの程度確保したいかも、重要な条件になります。目標金額によって、役員退職金の設計も譲渡の条件も変わります。

法人とは別にある個人資産の所有状況をリスト化する

経営者個人の資産も一覧にまとめます。自社株は相続財産の一部であり、他の財産と合わせて課税されるためです。

不動産、預貯金、有価証券、生命保険、海外資産まで含めてリストアップする必要があります。相続人が複数いる場合、どの財産を誰に渡すかの設計にも活用します。

個人資産を把握していなければ、相続税の全体像は見えません。会社の対策だけを進めても、家族の税負担や資産配分の課題は残ります。

事業承継の相談先なら税理士法人ネイチャー

会社の承継と経営者個人の資産・運用を一体で相談したい方は、税理士法人ネイチャーへご相談ください。自社株の評価額、後継者の納税資金、他の相続人への配分、引退後の生活資金や資産運用の設計は、いずれも相互に関係します。

税理士法人ネイチャーは法人税務と資産税を中心的な専門領域とし、資産運用の観点も踏まえて、税引後に手元へ残る資金を意識したご提案をします。必要に応じて弁護士や司法書士、M&A会社とも連携し、窓口を一本化してお引き受けします。

初回のご相談は無料です。「自社株が今いくらか知りたい」「運用と税務を分けずに全体で見直したい」といった段階からでも、お気軽にお問い合わせください。

まとめ:事業承継の相談先は自社の資産状況に合わせて選ぶ

事業承継の相談先は、税理士法人、M&A仲介会社、金融機関、法律事務所の4つに整理できます。後継者がおらず買い手を探す場合はM&A仲介会社、後継者が決まっていて税負担と個人資産・資産運用まで含めて設計する場合は税理士法人が適しています。

判断の出発点は、自社株の評価額と株主構成の確認です。金額が把握できれば、どの課題が最も大きいか、どの相談先が適しているかも見えてきます。

税理士法人ネイチャーでは、事業承継のご相談を承っています。決算書と株主名簿をお手元にご用意いただければ、現状の整理からお手伝いが可能です。初回面談は無料でございますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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