有価証券評価損は損金にできる?50%の基準や申告調整を税理士が解説

「決算の数字を固める段階で、保有株の時価が帳簿価額を大きく割り込んでいた。会計では減損として処理できそうに見える。ただ、法人税の計算でも同じように損失として扱えるのか判断がつかない。」

決算期の前後には、こうしたご相談が増えます。

帳簿で評価損を落としても、法人税の損金として通るとは限りません。税務では、有価証券の区分、価額の下がり方、値が戻る見込み、資本のつながり、決算での経理処理を順に見ていきます。

この記事では、上場株式・非上場株式・債券それぞれの見方に加えて、申告調整の流れをまとめました。一読すれば、手元の銘柄を損金にできるかどうか、確認の順序がつかめるようになるでしょう。

法人税

有価証券評価損とは?

有価証券評価損とは、保有する株式や債券等の時価や実質価額が著しく下落した際に、帳簿価額を切り下げて計上する損失のことです。会計上は減損処理として費用計上される場合であっても、税務上は原則として評価損の損金算入が認められておらず、法令に定める特別な事由に該当する場合に限り例外的に損金算入が認められる仕組みとなっています。

法人税は会計と考え方が異なります。資産の値下がりを損金として認めないのが原則です。もっとも例外もあり、決められた事実が起きた場面では損金として扱えます。

会計の減損と税務の損金算入は、別々の基準で判定します。まずは2つを切り分けるところから始めます。

有価証券評価損が損金になる基本要件

売買目的以外の有価証券について、損金にできるかどうかは複数の角度から確認します。主な項目は次のとおりです。

確認項目見るポイント
評価損の事由税務で認められる値下がりの事実が起きているか
価額の低下区分ごとに定められた下落の程度に届いているか
回復可能性市場価格のある銘柄で、近い将来その価額の回復が見込まれないか
損金経理決算書で評価損を計上し、簿価を下げているか
損金算入の制限完全支配関係などによる制限に当てはまらないか

市場価格のある有価証券では、期末の価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、あわせて近い将来その価額の回復が見込まれないことが目安になります。非上場株式は別の見方をします。下落率が50%に達したという事実のみで、損金になるわけではありません。

資本のつながりも確認します。完全支配関係にある法人の株式は、清算中である、解散(合併による解散を除く)することが見込まれている、など一定の場合に損金算入が認められません。銘柄ごとに要件をたどる必要があります。

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上場株式における有価証券評価損の判定方法

上場株式では、期末の価額をどう出すか、そして値が戻る見込みをどう見るかが分かれ目になります。順に確認します。

  • 期末価額は市場価格から算定する
  • 回復可能性は株価推移から判断する

期末価額は市場価格から算定する

上場株式の期末価額は、事業年度の最終日の取引価格を基礎にします。その日に売買が成立していなければ、同じ日の気配値などを使います。

その他有価証券にあたる銘柄は、判定にあたって期末日より前の1か月間の平均価格を用いることも可能です。

比べる相手は税務上の帳簿価額です。過去に評価損を否認された銘柄では、会計の簿価と税務の簿価がずれます。ずれたまま会計の簿価と比べると、判定そのものを誤ります。証券会社の報告書に加えて、税務簿価の一覧を手元に置いておきましょう。

回復可能性は株価推移から判断する

期末時価が帳簿価額の50%相当額を下回っている場合であっても、近い将来において株価の回復が見込まれる場合には損金算入が認められません。回復可能性の有無については、過去の株価推移や市場環境の動向、発行法人の業績推移等を総合的に勘案して判断することとなります。

国税庁は、法人が筋の通った基準を示せば、その基準を尊重するとしています。2年続けて半値近い状態でなければ認められない、という決まりではありません。

判断するタイミングは、評価損を計上する事業年度の末です。期末を過ぎて株価が戻っても、期末の判断が後から書き換わるわけではありません。使った資料は日付とともに残します。

なお、企業支配株式に該当する上場株式については上記50%基準が適用されず、下記非上場株式と同様に判定する点にご注意ください。

非上場株式における有価証券評価損の判定方法

一方、値のつく市場がない株式は、発行会社の財政状態と株式の価額を順に確かめます。何をどの順で見るのかを整理します。

  • 資産状態は純資産価額から判定する
  • 期末価額は売買実例などから算定する
  • 回復可能性は事業計画から判断する

資産状態は純資産価額から判定する

非上場株式では、発行会社の財政状態が大きく傾いたかどうかを最初に見ます。目安になるのが1株当たりの純資産価額です。株式を買った時点と事業年度末の金額を並べ、半分ほどまで落ちていないか確かめます。

取得から相応の期間がたった後に、特別清算の開始が命じられた場合も該当します。破産、民事再生、会社更生の各手続きについて開始が決まった場合も同じです。

取得時点における発行法人の1株当たり純資産価額が不明な場合、下落率の客観的な算定・比較が困難となります。そのため、出資時や株式取得時の決算書・計算書類等のエビデンスは、長期にわたり確実に保管・管理しておくことが推奨されます。

なお、子会社の増資引受直後は債務超過の状態であっても実質価額が低下したとはいえないため、当該株式の評価損計上は認められない点にご注意ください。

期末価額は売買実例などから算定する

非上場株式の期末価額は、事業年度終了日前6か月間に適正な売買実例があれば、その価額を用います。売買実例がなく、事業の種類や規模、収益の状況が類似する他の法人の株価がある場合は、その価額に比準して算定します。どちらにも当てはまらなければ、1株当たり純資産価額等を参酌し、通常取引されると認められる価額を求めます。しかし、この原則は求めるべき価額の考え方を示したもので、計算手順までは定めていません。

そこで実務では、課税上弊害がない限り、財産評価基本通達の「取引相場のない株式の評価」を準用できます。

この方法は相続税の評価をそのまま当てはめるわけではなく、①常に小会社として評価すること(保有する法人が発行会社にとって中心的な同族株主に該当する場合)、②土地・上場有価証券は期末時点の価額を用いること、③純資産価額方式では評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないこと、が条件です。

取引相場のない株式の評価方法は、2026年現在、国税庁の有識者会議等で抜本的な見直しが検討されています。評価時には、最新の通達や見直し動向を確認しましょう。

回復可能性は事業計画から判断する

非上場株式にも、上場株式と同じように回復可能性の検討が必要です。上場株式の判定基準を定めた通達が、非上場株式の「価額が著しく低下したこと」の判定にも準用されているためです。手がかりは発行会社の売上や利益の見通し、資金繰り、直近の実績です。

たとえば、出資先の1株当たり純資産価額が半分以下まで落ちた一方、翌期の黒字化を織り込んだ計画が取締役会で承認されていたとします。この場合、計画の中身と実現の見込みまで踏み込んで判断します。計画があるという事実だけで結論が決まるものではありません。

計画の前提が直近の実績とかけ離れていないかも、あわせて確認します。

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債券における有価証券評価損の判定方法

債券は、市場価格の有無と、値下がりの原因を分けて見ます。

市場価格のある債券は、期末の価額を税務上の帳簿価額と比べ、下がり方と戻る見込みを確かめます。市場価格のない債券は、発行会社の財政状態が大きく傾いていないかを見ましょう。

金利の変動による値下がりは、発行会社に問題がなくても起こります。市場金利が上がれば、すでに発行された債券の価格は下がるためです。損金にできるかどうかは、期末の価額と戻る見込みから判断します。

発行会社の信用面に不安が出ている場合は、業績や財務の状況まで確認します。判断の時点は事業年度末です。下落率だけでなく、値が下がった理由と根拠資料を残しておきましょう。

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有価証券評価損の仕訳

帳簿価額1億円の株式を、期末に4,500万円まで切り下げる場合の仕訳例です。

借方科目金額貸方科目金額
投資有価証券評価損55,000,000円投資有価証券55,000,000円

勘定科目や損益計算書での表示区分は、保有の目的や評価損の中身によって変わります。

帳簿に落としたことと、税務で損金になることは別です。損金経理は要件の一つにすぎません。価額の下がり方や戻る見込みも、あわせて満たす必要があります。

有価証券評価損の申告調整の処理方法

会計で計上した評価損が税務の要件に届かないとき、法人税申告書でどう調整するのかを確認します。

  • 損金不算入額は別表四で加算する
  • 売却時は過年度の加算額を調整する

損金不算入額は別表四で加算する

前述の評価損5,500万円が税務の要件を満たさない場合を考えます。別表四で5,500万円を加算し、区分は留保として扱うのが原則です。あわせて別表五(一)に記載し、税務上の利益積立金額として引き継ぎます。

結果として、会計の簿価は4,500万円、税務の簿価は1億円のまま残るのです。生じた5,500万円の差は、売却などの場面まで持ち越して管理します。加算した金額は、後の事業年度で要件を満たせば損金に算入することが可能です。管理が途切れれば、その機会を逃します。

売却時は過年度の加算額を調整する

過去に否認された株式を売る場合、税務の売却損益は税務上の帳簿価額をもとに計算します。

戻し入れ時の調整を確認する

減損で切り下げた帳簿価額は、翌期首に元へ戻すのが原則ではありません。時価法の洗替とは扱いが分かれます。会計側で帳簿価額が動く処理をしたときは、過去の申告調整との関係を確かめます。

税務上の帳簿価額から計算する

売却価額が5,000万円だとします。会計では4,500万円との差で500万円の売却益です。税務では1億円との差で5,000万円の売却損です。

別表四で5,500万円を減算し、過去に積み上げた留保を取り崩します。これで、税務上も5,000万円の損失が所得に反映されます。

有価証券評価損の処理方法を比較する

含み損への向き合い方は評価損だけではありません。売却、保有継続と並べると違いが見えます。帳簿価額1億円、現在の価額4,500万円を共通の前提とします。

比較項目評価損売却保有継続
会計上の損失要件を満たせば計上売却した期に計上区分と要件を満たすかで異なる
税務上の損失損金算入の可否を判定売却時に計算評価損を計上するなら判定
現預金動かない売却代金が入る動かない
将来の価格変動引き続き受ける売却後は受けない引き続き受ける

評価損は現金支出なしで計上する

評価損を計上しても、その時点でお金が出ていくことも入ってくることもありません。法人税への影響は、損金として認められるかどうかで変わります。

税務上の損金要件を満たさない場合、申告調整(別表四加算)により課税所得は圧縮されません。その結果、決算書上の会計利益は減少しているにもかかわらず法人税等の税負担が軽減されない状態が生じるため、金融機関への財務説明や資金繰りへの影響を十分に考慮しておく必要があります。

売却損は取引完了時に確定する

第三者への売却が済めば、売却価額と税務上の帳簿価額から損益を計算します。値が戻るかどうかの判断は必要ありません。

ただし、売却では手数料や代金の使い道まで含めた検討が要ります。売るかどうかは、法人全体の資産配分と資金の必要度から決める話です。

保有継続は価格変動の影響を受ける

持ち続ける場合も、区分や下がり方によっては会計上の評価損を計上する場面があります。加えて、その後の価格変動を受け続けます。

判断の軸は、保有する理由が今もあるかどうかです。取引先との関係や子会社への出資など、値上がり以外の目的があるなら、税務だけで結論を出すべきではありません。

有価証券評価損の計上に必要な資料一覧

計算の道すじと、値が戻る見込みの判断を後から説明できるよう、資料をそろえます。

対象必要資料確認内容確認するタイミング
上場株式取引残高報告書、期末の市場価格の記録、株価の推移、※発行会社の決算短信、税務上の帳簿価額の一覧期末の価額と下落の程度、値が戻る見込み期末時点
非上場株式発行会社の決算書(取得時・期末)純資産価額の落ち込み取得時と期末
非上場株式1株当たり純資産価額の計算表、事業計画期末の価額と戻る見込み期末時点
共通検討書、取締役会議事録判断した日と内容判断時

※決算短信など期末後に公表される資料も、期末時点の判断を裏づける材料として保存します。判断の時点は事業年度終了の時であり、期末後の株価の動きによって判断が変わるものではありません。

社内検討書を作成する際は、判定日、参照した客観的資料の名称、および判断に至った結論を明確に記録しておくことが望まれます。将来の税務調査等において評価損計上の妥当性を客観的に立証できるよう、取締役会議事録や稟議書と併せて整理・保存しておくことが重要です。

決算対策の相談なら税理士法人ネイチャー

今期、有価証券の評価損を計上できないかと検討される経営者様は、今期の決算対策について課題を抱えておられる可能性があります。

税理士法人ネイチャーでは法人決算対策として活用可能な手法をご案内し、経営者の皆様をサポートさせていただいております。

当社は、原則として法人の顧問契約を承っておらず、法人経営者の税金対策や資産運用をスポットで支援するセカンドオピニオン専門の税理士法人です。現在の顧問税理士との契約を継続したままご相談いただけます。初回面談は無料ですので、ぜひお問い合わせください。

まとめ:有価証券評価損の損金算入は下落率だけで決まらない

帳簿に評価損を落としただけでは、法人税の損金になりません。有価証券の区分ごとに、価額の下がり方と戻る見込みを確かめる必要があります。

上場株式は、期末の価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、近い将来その価額の回復が見込まれないかを見ます。非上場株式は、発行会社の財政状態と株式の価額から判定しましょう。債券は、市場価格の有無と値下がりの理由を分けて考えます。

損金にならなかった場合は、別表四と別表五(一)で調整し、売却の時まで差額を管理しましょう。

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