利益が伸びるほど、決算のたびに法人税等の負担を重く感じる経営者は多いでしょう。「損金算入で税金が減る」と聞いたことはあっても、実際にどの程度の効果があるのか、どのような支出にメリットがあるのかはわかりにくいものです。
損金算入の基本的なメリットは、課税所得が減り、法人税等(法人税・住民税・事業税など)の負担が軽くなる点です。支出の内容や契約条件によっては、保障や将来の資金需要に備えながら、一定額を損金に算入できる場合もあります。
この記事では、100万円を損金に算入した場合の税額への効果を試算しながら、法人保険や役員退職金などの活用例も紹介します。法人の利益を、会社の備えや将来の資金計画にどう生かすかを検討する際の参考にしてください。
損金算入で得られる4つのメリット
損金算入のメリットは、法人税等の負担軽減だけではありません。施策によっては、納税時期の調整、事業保障、将来資金の準備にもつながります。
主なメリットは次の4つです。
| メリット | 主な内容 | 確認するポイント |
| 法人税等の負担を軽減できる | 損金が増えることで課税所得が減り、法人税等の負担が軽くなる | 損金算入額、適用税率、課税所得の見込み |
| 納税時期を将来へ移せる場合がある | 一定の制度では、費用計上を前倒しできる場合がある | 当期に損金算入できる金額、翌期以降の影響 |
| 必要な保障を確保できる場合がある | 法人保険などにより、経営者の万一や事業継続に備えられる | 保障額、保険料の経理処理、受取時の税務 |
| 将来資金の準備につなげられる | 退職金や設備投資など、将来の資金需要に備えられる | 受取時期、使い道、出口時の税務 |
1. 法人税等の負担を軽減できる
課税所得がある法人では、損金算入額が増えると法人税等の負担が軽くなります。法人の所得は、原則として「益金 – 損金」で計算されるためです。
益金は税務上の収益、損金は税務上の費用や損失などを指します。損金が増えると、法人税等の計算の基礎となる課税所得が減ります。課税所得が減ると、次の税目の負担が軽くなる場合があります。
- 法人税・地方法人税
- 法人住民税の法人税割
- 法人事業税・特別法人事業税
- 防衛特別法人税(2026年4月1日以後に開始する事業年度から)
なお、法人住民税の均等割など、損金算入額に連動しない税負担もあります。そのため、軽くなるのは損金算入額そのものではなく、原則として損金算入額に税率を掛けた分の税額です。
たとえば、100万円を損金に算入し、想定実効税率が30%であれば、税額への効果は概算で約30万円です。具体的な試算は、後ほど数字を使って確認します。
2. 納税時期を将来へ移せる場合がある
制度によっては、本来は複数年で費用化する支出を、一定の要件のもとで早めに損金算入できる場合があります。代表例が、中小企業者等の少額減価償却資産の特例です。対象となる資産を事業に使い始めた期に、取得価額を損金に算入できる場合があります。
ただし、これは税負担の総額を必ず減らす制度ではありません。当期に損金算入した分、翌期以降に計上する減価償却費は少なくなります。利益が多い期に損金算入を前倒しし、納税時期を後ろへ移せる場合がある点がメリットです。
3. 必要な保障を確保できる場合がある
法人保険は、経営者の万一などに備えて事業資金を確保する方法の一つです。契約内容によっては、保険料の全部または一部を損金に算入できます。経営者に万一のことがあると借入金の返済や事業運営に影響する場合があります。会社が死亡保険金を受け取れば、事業継続に必要な資金へ充てることが可能です。
ただし、保険料の税務上の取扱いは、保険の種類、最高解約返戻率、契約内容などによって異なります。法人保険を検討する際は、保障内容だけでなく、保険料の損金算入割合や解約時の税務も確認しましょう。
4. 将来資金の準備につなげられる
損金算入を伴う施策の中には、将来の資金需要に備えられるものもあります。法人保険の解約返戻金は、たとえば次の用途に充てられます。
- 役員退職金
- 設備投資
- 事業承継に必要な資金
解約返戻金を受け取った場合、原則として受取額と保険積立金などの資産計上額との差額が、税務上の益金または損金となります。そのため、解約返戻金を受け取る時期と、役員退職金や設備投資などの支出時期をあわせて考えることが重要です。
たとえば、同じ事業年度に適正な役員退職金を支給し、損金算入の要件を満たせば、解約返戻金による利益と退職金による損金が同じ期に計上される場合があります。
損金算入を活用する際は、当期の税額軽減だけでなく、将来いつ資金を受け取り、何に使うのかまで確認しておきましょう。
損金算入のメリットを数字で確認する
損金算入による税額への効果は、概算では次の式で考えます。
「税額への効果 = 損金算入額 × 想定実効税率」
実効税率とは、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などを考慮した税率の目安です。実際の税負担は、所得金額、資本金、本店所在地、適用される税制などによって異なります。
ここでは、100万円を損金に算入し、想定実効税率を30%とした場合の効果を確認します。
100万円の損金で約30万円の税額軽減効果がある
100万円を全額損金に算入した場合でも、税金が100万円減るわけではありません。軽くなるのは、原則として損金算入額に税率を掛けた分です。
たとえば、課税所得1,000万円のA社が、100万円を損金に算入した場合を考えます。想定実効税率を30%とすると、税額への効果は概算で約30万円です。
| 比較項目 | 損金算入前 | 損金算入後 |
| 課税所得 | 1,000万円 | 900万円 |
| 損金算入額 | 0円 | 100万円 |
| 想定実効税率 | 30% | 30% |
| 税額の概算 | 300万円 | 270万円 |
| 税額への効果 | ― | 約30万円 |
この場合、100万円の支出に対して、税額への効果は約30万円です。税引後で見た実質的な資金負担は、概算で約70万円となります。
| 項目 | 金額 |
| 支出額 | 100万円 |
| 税額への効果 | 約30万円 |
| 税引後の実質負担 | 約70万円 |
損金算入には法人税等の負担を軽くする効果がありますが、支出額以上に税金が減るわけではありません。そのため、税額への効果だけでなく、その支出が事業に必要か、将来の売上や資金準備につながるかも確認することが重要です。
なお、上記は想定実効税率を30%とした単純な試算です。実際の税額は、法人住民税の均等割など損金算入額に連動しない税負担や、法人ごとの適用税率によって異なります。中小法人等の軽減税率、防衛特別法人税、地方税率の違いなども踏まえて試算しましょう。
2026年以後の損金算入で確認したい改正ポイント
損金算入の効果を試算する際は、税制改正の影響も確認が必要です。特に、2026年以後は防衛特別法人税と少額減価償却資産の特例の見直しに注意しましょう。
| 改正項目 | 主な内容 | 損金算入を検討するときの影響 |
| 防衛特別法人税 | 2026年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税・地方法人税に加えて申告・納付が必要になる | 該当する法人では、損金算入による税額軽減効果を試算する際の実効税率に影響する場合がある |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 2026年4月1日以後に取得等する資産について、取得価額基準が40万円未満に見直される。年間300万円の上限は継続される | 一定の中小企業者等では、30万円以上40万円未満の資産も、要件を満たせば取得時に損金算入できる場合がある |
防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除した金額に4%を掛けて計算します。所得規模が大きい法人では、損金算入による税額への効果を試算する際に影響する可能性があります。
少額減価償却資産の特例は、本来であれば減価償却を通じて複数年で費用化する資産について、一定の要件を満たす場合に、取得等をした事業年度で損金算入できる制度です。
ただし、当期に損金算入した分、翌期以降に計上する減価償却費は少なくなります。そのため、税負担の総額が必ず減る制度ではなく、費用計上の時期を前倒しできる点が主なメリットです。
取得価額、事業供用日、年間上限、対象法人の要件を確認したうえで、当期に損金算入するか、通常の減価償却で費用化するかを検討しましょう。
損金算入のメリットを生かせる活用例
損金算入を伴う施策では、税額への効果に加えて、保障や将来資金の準備といった効果も期待できます。
代表的な4つの活用例を、主な効果とあわせて整理しました。
| 活用例 | 得られる主な効果 | 主な確認項目 |
| 法人保険 | 経営者の万一に備え、借入返済や事業継続に必要な資金を確保できる | 保障額、保険料の損金算入割合、解約返戻金、受取時の税務 |
| 役員退職金 | 経営者へ退職後の資金を支給し、適正額であれば法人側で損金算入できる場合がある | 退職の事実、支給時期、支給額の妥当性、社内手続き |
| 福利厚生 | 従業員の定着や採用力の向上、働きやすい環境づくりにつながる場合がある | 対象者の範囲、利用条件、社内規程、給与課税の有無 |
| 設備投資 | 生産性向上や売上増加に必要な設備を取得し、減価償却費などを通じて損金算入できる | 事業供用日、取得価額、償却方法、適用できる税制 |
どの施策も、支払額の全額が自動的に損金になるわけではありません。また、損金算入を目的に不要な支出を行うと、税額は軽くなっても手元資金は減少します。
施策を選ぶ際は、当期の税額軽減だけでなく、支出の目的、将来の受取額、資金繰りへの影響をあわせて確認しましょう。
会社の状況別に見る損金算入施策の選び方
損金算入のメリットを生かすには、会社の状況に合った施策を選ぶことが重要です。同じ支出でも、会社の利益、資金繰り、将来の資金需要、経営者個人の資産形成への影響は異なります。
ここでは、詳しい要件ではなく、どの方向性から検討すべきかを整理します。
| 会社の状況 | まず確認すること | 検討しやすい方向性 |
| 当期利益が大きい | 本当に必要な支出か、当期に損金算入できるか | 設備更新、修繕、福利厚生、必要な備品購入など |
| 将来の役員退職金を準備したい | 退職時期、退職金の原資、法人と個人の税負担 | 役員退職金の設計、退職金原資の準備、法人保険の活用など |
| 経営者の万一に備えたい | 借入金、固定費、事業継続に必要な保障額 | 法人保険などによる事業保障 |
| 人材確保や定着を強化したい | 対象者の範囲、継続的な負担、給与課税の有無 | 福利厚生、研修、資格取得支援、職場環境整備など |
| 設備更新や省力化を進めたい | 投資回収期間、事業供用時期、税制の適用可否 | 設備投資、システム導入、DX投資など |
| 資金繰りに余裕が少ない | 支出後の現預金、納税資金、借入返済予定 | 無理な支出を避け、手元資金の確保を優先 |
| 事業承継を予定している | 自社株評価、退職金、法人・個人の税引後資産 | 役員退職金、設備投資、法人と個人の資産比較など |
損金算入を検討するときは、当期の税額軽減だけでなく、支出後に残る資金や将来の使途も確認することが重要です。
個別の要件や税務処理は、法人保険、役員退職金、設備投資、福利厚生などの内容によって異なります。具体的な施策を決める前に、現在の利益見込み、資金繰り、将来の資金需要を整理しておきましょう。
損金算入のメリットを高める3つの確認項目
税額への効果だけで判断すると、支出後の資金繰りや将来の受取時期を見落とす場合があります。
損金算入を検討するときは、次の3点を確認しましょう。
| 確認項目 | 確認する内容 |
| 課税所得の見込み | 当期にどの程度の所得が生じるか、損金算入による税額への効果がどの程度あるか |
| 将来受け取る金額 | 解約返戻金などの受取額、受取時期、資金の使い道 |
| 法人・個人の資産比較 | 法人に資金を残す場合と、役員報酬・役員退職金などで個人に移す場合の税引後資産 |
1. 課税所得の見込みを確認する
当期の課税所得がどれくらいになるかを、決算前に確認しましょう。
課税所得の額によって、適用される税率や損金算入による税額への効果が変わるためです。
決算前の早い段階で着地見込み(決算時の利益の予測)を出すと、選べる施策の選択肢を確保しやすくなります。
2. 将来受け取る金額を確認する
将来お金を受け取る施策では、支払額に加えて受取額と時期を確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 解約返戻金の額と、返戻率が高くなる時期
- 受取時の税務上の取扱い
- 役員退職金や設備投資など、資金の使い道
受取時期と使い道をあらかじめ確認すると、将来の税負担や資金計画を見通しやすくなります。
受取時の税金についてはこちらが参考になります。
3. 法人・個人の資産を比較する
オーナー経営者の場合、損金算入のメリットは法人側の税額だけで判断できません。会社に資金を残すのか、役員報酬や役員退職金として個人に移すのかによって、法人側と個人側の税負担が変わります。
役員報酬で受け取る場合は、所得税・住民税に加え、社会保険料の負担も考慮が必要です。役員退職金として受け取る場合は、退職所得としての税務上の取扱いや、支給額の妥当性を確認する必要があります。
資金を法人に残す場合は、事業資金を確保しやすい一方で、将来の自社株評価や相続への影響も検討が必要です。
損金算入を検討するときは、当期の法人税等だけでなく、法人に残る資金、個人が受け取った後の手取り、将来の資産承継まで含めて比較しましょう。
損金算入のメリットとあわせて把握したい注意点
損金算入には法人税等の負担を軽くする効果がありますが、支払額の全額を損金にできるとは限りません。支出の種類ごとに、税務上の取扱いが定められているためです。
主な注意点は次のとおりです。
- 法人保険料:契約内容によって一部を資産に計上する
- 交際費・寄附金:一定額が損金不算入となる場合がある
- 固定資産:原則として資産に計上し、耐用年数に応じて減価償却する
たとえば、B社が決算直前に法人保険へ加入したとします。全額を損金に算入できると見込んでいましたが、契約内容を確認すると、保険料の一部は資産計上の対象でした。その結果、想定より損金算入額が少なくなり、税額への効果も小さくなりました。
このような事態を避けるには、支出前に損金算入できる金額や税務上の取扱いを確認しておくことが重要です。帳簿、請求書、契約書などの必要書類を保存し、事業上の必要性や社内手続きも含めて確認しましょう。
なお、中小企業経営強化税制を活用し、固定資産の全額を当期の損金に計上する方法もあります。詳しくは次の記事をご参考ください。
損金算入のメリットに関するよくある質問
損金算入のメリットについて、よくある質問に回答します。全額損金、一部損金、赤字の期に分けて確認しましょう。
- 全額損金なら税額はいくら減る?
- 一部損金でもメリットはある?
- 赤字でも損金算入する意味はある?
全額損金なら税額はいくら減る?
概算では「損金算入額 × 想定実効税率」で税額への効果を試算できます。100万円を全額損金に算入し、想定実効税率が30%なら約30万円です。実際の効果は、所得金額や法人の区分、適用税率などによって変わります。
一部損金でもメリットはある?
あります。損金に算入した金額だけ課税所得が減るためです。
たとえば、法人保険では、契約内容によって保険料の一部を損金に算入し、一部を資産として計上する場合があります。この場合も、損金に算入した部分については税額への効果が生じます。
ただし、保障内容、解約返戻金、受取時の税務まで含めて比較することが重要です。
赤字でも損金算入する意味はある?
赤字の期は、当期の法人税を軽くする効果は基本的に生じません。ただし、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、一定の要件を満たせば原則10年間繰り越せます。繰り越した欠損金を翌期以降の所得から控除できれば、将来の法人税負担が軽くなる場合があります。
欠損金の繰越控除には申告要件や控除限度額があるため、赤字の期も申告状況を確認しておきましょう。
損金算入を生かした法人税対策なら税理士法人ネイチャー
法人保険や役員退職金を検討するとき、迷いやすいのが組み合わせ方です。法人の税負担、保障、経営者個人の手取りは、施策によって異なります。
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まとめ:損金算入のメリットを法人税対策に生かそう
損金算入の基本的なメリットは、課税所得が減り、法人税等の負担が軽くなる点です。施策によっては、事業保障や将来資金の準備にもつなげられます。役員退職金を通じて、経営者個人の退職後の資金形成に活用することも可能です。
検討するときは、次の4点を比較しましょう。
- 課税所得の見込み
- 損金算入割合
- 将来の受取額
- 法人・個人それぞれの税引後の資産
法人と個人をあわせて検討すると、損金算入による税額への効果や将来の資産状況を把握しやすくなります。自社に合う組み合わせを検討したい方は、税理士法人ネイチャーの無料オンライン相談をご利用ください。
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