「子どもが海外で暮らし、外国籍になった」「外国籍の配偶者に、日本の財産をきちんと残せるのか」外国籍の家族がいると、相続について不安を感じる方も少なくありません。
相続人が外国籍でも、日本の財産を相続することは可能です。ただし、日本の相続税がかかる財産の範囲は、亡くなった方と相続人の住所や国籍、過去の居住歴などによって異なります。在留資格が判断に関係する場合もあるので注意が必要です。
この記事では、外国籍の相続人について、居住地別に相続税の課税範囲や必要書類を解説します。ご家族の状況に近いケースを確認し、相続手続きや申告の準備にお役立てください。
相続人が外国籍でも相続できる?
外国籍であることだけを理由に、相続する権利がなくなることはありません。日本の国際私法では、相続に適用する法律は「法の適用に関する通則法」によって定められており、原則として亡くなった方の本国法(国籍のある国の法律)が適用されます。
日本人の親が亡くなった場合は、原則として日本の民法に基づいて相続人が決まります。子どもが外国籍を取得していても、日本国籍の子どもと同じく相続人になります。また、外国籍の配偶者も、法律上有効な婚姻関係があれば相続人です。
ただし、海外の不動産などは、所在国の法律や手続きも確認が必要です。また「相続できるか」と「相続税がかかるか」は別の問題になります。
相続人が外国籍で日本在住の場合の相続税
日本に住む外国籍の相続人は、在留資格と過去の居住歴によって、相続税がかかる財産の範囲が異なります。
亡くなった方の住所や国籍も確認し、海外の財産が課税対象になるかを判断しましょう。
| 相続人の在留資格 | 日本に住んだ期間※ | 亡くなった方 | 課税される財産(原則) |
| 永住者・日本人の配偶者等 | 問わない | 問わない | 国内外の財産 |
| 就労資格・留学など | 合計10年以下 | 日本に住む日本人など | 国内外の財産 |
| 就労資格・留学など | 合計10年以下 | 外国人被相続人・非居住被相続人 | 国内の財産のみ |
| 就労資格・留学など | 合計10年超 | 問わない | 国内外の財産 |
※相続開始前15年間に、日本国内に住所があった期間の合計です。
※本表は一般的な取扱いを示したものです。個別の事情や租税条約によって異なる場合があります。
永住者などの在留資格で暮らす場合
「永住者」などの在留資格で日本に住む方は、居住期間にかかわらず、原則として国内外の財産が課税対象です。
主に、次の在留資格が該当します。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらは身分や地位に基づく在留資格のため、相続税法上の「一時居住者」には該当しません。特別永住者も同様です。
なお、日本人と結婚していても就労資格で在留している場合があるため、在留カードなどで資格を確認しましょう。
就労資格などで国内居住が10年以下の場合
相続開始時に就労資格などの入管法別表第一の在留資格を持ち、相続開始前15年間に日本国内に住所があった期間の合計が10年以下の方は、相続税法上の「一時居住者」に該当します。
対象となるのは、入管法の「別表第一」に定められた在留資格です。「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「留学」「家族滞在」などが含まれます。
一時居住者が相続する財産の課税範囲は、亡くなった方の状況によって異なります。例えば、亡くなった方が相続開始時に入管法別表第一の在留資格を有し、日本国内に住所があった場合(外国人被相続人)や、海外在住で相続開始前10年間の日本での住所・国籍などについて一定の要件を満たす場合(非居住被相続人)は、原則として日本国内の財産のみが課税対象です。
一方、日本に住む日本人の親から相続する場合等では、原則として国内外の財産が課税対象となります(全世界課税)。
就労資格などで国内居住が10年超の場合
相続開始前15年間の日本居住が合計10年を超えると、一時居住者には該当しません。居住期間は、日本国内に住所があった期間を合計して判定します。日本の住所を引き払い、海外に生活の拠点を移していた期間は含まれません。一方、一時的な海外出張などで日本に生活の拠点が残っている場合は、原則日本に住所があるものとして扱われます。
相続人が外国籍で海外在住の場合の相続税
海外に住む外国籍の相続人は、亡くなった方の住所や国籍、過去の居住歴によって相続税の課税範囲が異なります。相続人本人の海外居住年数だけでは判断できません。
| 亡くなった方の状況 | 課税される財産(原則) |
| 日本に住む日本人 | 国内外の財産 |
| 日本に住む外国人のうち永住者など | 国内外の財産 |
| 日本に住む外国人のうち入管法別表第一の在留資格を有する方 | 国内の財産のみ |
| 海外在住で、過去10年以内に日本国籍で日本に住んでいた | 国内外の財産 |
| 海外在住で、過去10年以内に日本の住所がない | 国内の財産のみ |
| 海外在住で、過去10年以内に日本に住んでいたが、その間は外国籍だった | 国内の財産のみ |
※留学や海外出張などで一時的に日本を離れている場合は、日本に住所があるものとして扱われることがあります。住所は生活の本拠を基準に判断します。
※上記は、相続人が外国籍で海外在住の場合の原則的な取扱いです。亡くなった方が国外転出時課税の納税猶予の特例を受けていた場合などは、課税範囲の判定が異なることがあります。また、国内外の財産の課税範囲は、相続人ごとに判定します。
亡くなった方が日本に住んでいた場合
日本に住む日本人の親から相続する場合、国内外の財産が原則として課税対象です。子どもが外国籍で、長年海外に住んでいても同様です。
例えば、日本在住の日本人の父が亡くなり、海外に20年間住む外国籍の長男が財産を相続するケースを想定します。
| 財産 | 評価額 | 取得した人 |
| 都内の賃貸マンション | 2億円 | 長女(日本在住) |
| 国内の預金・上場株式 | 1億円 | 長女と長男で半分ずつ |
| 海外の別荘 | 1億5,000万円 | 長男(外国籍・海外在住) |
この場合、長男が相続する海外の別荘1億5,000万円も、日本の相続税の課税対象です。国内の預金・上場株式5,000万円と合わせ、長男が取得した財産は合計2億円となります。
海外の財産を申告から漏らすと、加算税や延滞税がかかるおそれがあります。
亡くなった方が日本に住む外国人の場合、相続開始時の在留資格によって、日本の相続税の課税範囲が異なります。
就労資格などの入管法別表第一の在留資格を有する「外国人被相続人」であれば、海外在住の外国籍相続人が取得する財産は、原則として日本国内のものに限られます。一方、在留資格が「永住者」の場合は、国内外の財産が課税対象となります。
亡くなった方が海外に住んでいた場合
外国籍で海外在住の相続人が財産を引き継ぐ場合、亡くなった方の住所や国籍、過去の居住歴によって日本の相続税の課税範囲が異なります。
例えば、日本人の父が6年前に海外へ移住し、外国籍で海外在住の子どもが財産を相続するケースを考えます。父は相続開始前10年以内に日本に住所があり、その期間中に日本国籍を有していたため、子どもが取得した国内外の財産が日本の相続税の課税対象になります。
一方、父が海外へ移住してから10年を超え、その間に日本に住所がなければ、原則として日本国内の財産のみが課税対象です。
亡くなった方が外国籍の場合も、相続開始時の住所や在留資格、過去の住所歴などによって取扱いが異なります。ただしどの場合においても、日本に残した不動産や預金は、原則として日本の相続税の対象です。
相続人が外国籍の場合によくある問題
外国籍の相続人がいる場合、必要書類の取得や海外との連絡に時間がかかることがあります。よくある問題を把握し、相続税の申告期限に向けて早めに準備を進めましょう。
- 必要書類の準備が困難になる
- 海外在住で手続きの進行が困難になる
必要書類の準備が困難になる
外国籍の相続人は、日本の戸籍だけでは相続関係を証明できない場合があります。外国籍の方は原則として日本の戸籍を持っていません。そのため、本国の出生証明書や婚姻証明書などが必要になることがあります。
国によっては、本人が事実関係を宣誓し、公証人などの認証を受けた宣誓供述書を使用する場合もあります。
| 確認する内容 | 日本在住の場合 | 海外在住の場合 |
| 家族関係 | 出生証明書・婚姻証明書など | 出生証明書・婚姻証明書、宣誓供述書など |
| 住所 | 住民票など | 現地の住所証明書、宣誓供述書など |
| 署名・印鑑 | 印鑑証明書(印鑑登録がある場合) | 居住国の公証人等による署名証明書・宣誓供述書など |
必要書類や翻訳・認証の要否は手続きによって異なるため、法務局や金融機関、税務署などの提出先に事前に確認しましょう。
海外在住で手続きの進行が困難になる
遺産分割協議は、相続人全員が一か所に集まらなくても進められます。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いです。電話やメールなどで話し合い、合意内容を遺産分割協議書にまとめる方法もあります。
ただし、不動産の相続登記などでは、署名証明書等の提出が必要になる場合があります。
遺産分割協議が長引いても、相続税の申告期限は原則として延長されません。分割がまとまらない場合でも、原則として法定相続分などに基づいて期限内に申告・納税する必要があります。連絡方法や手続きの窓口となる方を早めに決めておきましょう。
相続人が外国籍の場合の相続税申告
外国籍の相続人がいる場合は、相続人ごとに課税対象となる財産を確認し、相続税の申告が必要かを判断します。
申告にあたっては、次の3点を確認しましょう。
- 相続税の課税対象と基礎控除額
- 相続税の申告期限と海外在住者に必要な手続き
- 国外転出(相続)時課税の適用の有無
1. 相続税の課税対象と基礎控除額を確認する
相続人ごとに国内外のどの財産が課税対象となるかを判定し、各人の課税価格を合計します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、原則として相続税はかかりません。
ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、原則として相続税の申告が必要です。
2. 相続税の申告期限と海外在住者の手続きを確認する
相続税の申告期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。海外在住で日本に住所がない相続人が、日本の相続税を申告する必要がある場合は、納税管理人(日本で税務手続きを行う人)を定め、所轄税務署に届け出る必要があります。
また、海外で相続税に相当する税金を納めた場合は、外国税額控除の適用も確認しましょう。
3. 国外転出(相続)時課税の対象になるか確認する
亡くなった方が相続開始時に1億円以上の対象資産(有価証券等)を保有し、原則として相続開始前10年間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年を超える場合は注意が必要です。
日本の所得税法上の非居住者に該当する相続人が対象資産の全部または一部を取得すると、亡くなった方がその資産を時価で譲渡したものとみなされ、含み益に対して被相続人の所得税が課されることがあります。これを「国外転出(相続)時課税」といいます。
対象となる場合は、原則として相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の準確定申告と納税を行う必要があります。なお、一定の要件を満たせば納税猶予を受けられる場合があります。
外国籍の方の相続税の相談なら税理士法人ネイチャー
外国籍のご家族がいる相続では、国内外の財産の評価や課税範囲の判定、申告手続きなど、専門的な確認が必要です。
税理士法人ネイチャーでは、富裕層の相続税対策や国際相続に関するご相談をお受けしています。また当法人はTIAG®に加盟しており、TAG Alliancesの105か国以上・2万5,000人以上の専門家ネットワークを活用し、必要に応じて各国・地域の専門家と連携できます。外国側で申告や法的な手続きが必要な場合は、必要に応じて現地の専門家と連携するので安心です。
相続税の申告だけでなく、外国籍のご家族への資産承継や納税資金の確保、相続後の資産管理・運用まで一体的に検討できる点が強みです。
まとめ:相続人が外国籍でも相続できる!相続税は居住状況から確認しよう
外国籍であることだけを理由に、相続する権利がなくなることはありません。日本の相続税がかかる財産の範囲は、相続人と亡くなった方の住所や国籍、過去の居住歴などによって異なります。
日本在住の外国籍相続人は、相続開始時の在留資格と、相続開始前15年間の日本での住所歴を確認しましょう。海外在住の外国籍相続人については、亡くなった方の住所や国籍、相続開始前10年間の日本での住所歴などが重要です。
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