ミニマムタックスは、超富裕層に対して行われる追加の課税措置です。2025年より実施される予定ですが、まだ詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ミニマムタックスとは何か詳しく解説します。導入の背景や仕組み、対象者なども解説するため、本記事を読めばミニマムタックスのことが網羅的に理解できるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
ミニマムタックスとは?
ミニマムタックスは、2022年の「令和5年度税制改正大綱」で提案された超富裕層に対する追加の課税措置です。
税負担の公平性を確保する目的で導入を検討され、さらには家計にある資産を貯蓄から投資へ促すことも狙っています。ほかにも、資産所得の倍増につなげる、極めて高水準の所得に最低限の負担を求めるといったことも主な目的です。
簡単にいうと、年収30億円を超える超富裕層に対しての実質的な追加課税制度といえるでしょう。
ミニマムタックスの仕組み
そもそも、ミニマムタックスはどのような仕組みなのでしょうか。
一定の条件を満たすことで、追加の課税が実施されます。
追加の課税額は、以下の計算式で算出可能です。
(所得金額の合計-3.3億円)×22.5%-従来の所得税額
たとえば、年間所得合計が金融所得で10億円なら、以下の計算式のようになります。
- 従来の所得税額=10億円×15%=1.5億円
- 追加課税額=(10億円-3.3億円)×22.5%-1.5億円=75万円
また、年間所得合計が金融所得で50億円なら、以下の計算式のようになります。
- 従来の所得税額=50億円×15%=7.5億円
- 追加課税額=(50億円-3.3億円)×22.5%-7.5億円=3億75万円
計算方法自体はそれほど複雑ではなく、電卓一つあれば誰でもできるでしょう。制度をより理解するためにも、一度手を動かして算出してみるのもおすすめです。
ちなみに、年間所得とは株式や土地などの譲渡所得をはじめ、給与も該当します。ただし、NISAといった非課税所得は該当しません。
超富裕層に対する追加課税措置は2025年から実施予定
ミニマムタックスは、2025年から実施される予定です。2023年の通常国会で可決および成立しました。
なお、以下のような政策も同じタイミングで取り上げられています。
- NISAの抜本的な拡充および恒久化
- スタートアップへの再投資にかかる非課税措置の創設など
税制改正が行われるのは一つだけとは限りません。同時にいくつものルールが変更されることもあるため、注意しておきましょう。
超富裕層に対するミニマムタックスが導入される背景
超富裕層に対するミニマムタックスが導入される背景は、以下の通りです。
- 日本国内での「1億円の壁」による格差是正のため
- 米英独の世界での流れに合わせるため
それぞれの詳細を見ていきましょう。
日本国内での「1億円の壁」による格差是正のため
背景には、日本国内での1億円の壁による格差是正があります。
日本においては、所得が1億円を超えると金融所得の割合が増えて税負担率が下がるといった現象が起き、たびたび問題視されてきました。
給与所得の最高税率は45%ですが、金融所得は一律の15%です。つまり、富裕層の税負担が軽くなっているのではないかといった不公平さを是正するために、ミニマムタックスが導入されるに至りました。
全国民のことを考えれば是正は正しいことかもしれませんが、資産を多く持つ方にとってはメリットばかりではないのが現実です。
米英独の世界での流れに合わせるため
米英独といった欧米先進国も日本と同様の事態を招いています。
国 | 最大所得税率 | 金融所得税率 |
---|---|---|
日本 | 最大45% | 最大15% |
イギリス | 最大45% | 最大20% |
ドイツ | 最大45% | 最大26.375% |
金融所得の税率は、表にある3国いずれも所得税と比較して低く抑えられています。このように、問題に直面しているのは日本だけではなく、世界の流れに合わせるために制度の適用が決まりました。
世界の流れに逆らうのは難しく、ある程度はしかたないと言わざるを得ないかもしれません。
ミニマムタックスで金融所得税率の一律引き上げは回避?
今後、ミニマムタックスで金融所得税率の一律引き上げが実施される可能性は低いでしょう。
仮に、所得税の垂直的な公平性の課題に対処しなければならない局面が生じたとします。この場合、ミニマムタックスの対象者あるいは税率を調整すればよいので、中間層も巻き込んだ金融所得税率の一律引き上げを実施する必要性は低いといえます。
一律引き上げを回避できるのは、多くの投資家にとっては朗報といえるでしょう。
ミニマムタックスで株式譲渡を伴う事業承継やM&Aに影響する恐れがある
株式譲渡を伴う事業承継やM&Aに、ミニマムタックスが影響を与える恐れがあります。
年間所得合計が一定水準に達した場合に制度が適用されますが、これには株式譲渡を伴う事業承継やM&Aも含まれます。
たとえば、2025年以降に株式譲渡を伴うM&Aが生じたとき、納める税金額が大きく変わる可能性があるのです。想定外の追加課税が発生して慌てないように、事前に制度を把握しておく必要があるでしょう。
ミニマムタックスの対象者
ミニマムタックスの対象者は、以下の2つの条件を満たす方です。
- 純金融資産保有額が5億円以上ある
- 年間所得合計が30億円以上ある
給与所得および事業所得のみで収入を得ているケースは、該当しません。
また、金融所得が年間で10億円以上の方も対象者になります。
ミニマムタックスで除外される所得
ミニマムタックスで除外される所得には、以下のようなものがあります。
- NISA(1,800万円まで)
- エンジェル税制の非課税所得(20億円まで)
- 源泉分離課税の所得など
エンジェル税制は、個人投資家が株式譲渡益をスタートアップ企業へ再投資したときに、その再投資分については非課税にする優遇措置です。
超富裕層の方は除外される所得を把握し、専門家などと相談しながら最適な税務プランを立てるとよいでしょう。
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新たな制度が導入されることにより、公平性は確保できるかもしれませんが、富裕層の税負担は増加する可能性があります。そのまま放置しておいては、負担ばかりが大きくなってしまいかねません。
そこでおすすめなのが、税理士へ相談して最適な税務プランを立て直すことです。
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まとめ:ミニマムタックスなどの税制改正を理解しておこう
ミニマムタックスは、超富裕層に対しての追加課税措置です。年収30億円以上の方は追加課税の対象となり、税負担が増加する恐れがあります。
世界の流れをみると導入はしかたないといった考えもありますが、そのまま受け身でいることが最善策とはいえません。
まずは、数ある税制改正を正確に理解しましょう。「正確に理解できるか不安」「どのように対応すればいいのかわからない」といった場合は、専門家への相談がおすすめです。
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