事業承継に最適なタイミングとは?準備を開始するべき時期を解説

事業承継を始める時期に、すべての会社に共通する正解はありません。帝国データバンクの「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」 によると、2025年に社長が交代した企業では、交代前の社長の平均年齢は68.5歳でした。

一方、中小企業庁では、後継者の育成も含めると事業承継の準備には5~10年ほどかかるとしており、60歳頃には準備に着手することを一つの目安として示しています。 ただし、経営者の年齢だけでなく、業績、後継者の育成状況、自社株の評価額、納税資金などを総合的に判断する必要があります。

この記事では、事業承継の準備を始める時期、後継者へ株式を移す時期、適切なタイミングを逃した場合のリスクを解説します。自社が現在どの段階にあり、何から着手すべきかを判断する材料としてご活用ください。

相続税

事業承継の準備を開始する最適なタイミング

事業承継の準備は、すべての条件が整うまで待つのではなく、早めに現状分析から始めることが重要です。実行時期は次の3つの観点から判断します。

  • 経営者が元気なタイミング
  • 経営者引退の5年~10年前のタイミング
  • 後継者の準備ができたタイミング

経営者が元気なタイミング

事業承継の準備は、経営者が判断力と体力を保っているうちに始めましょう。株式の贈与や売買、遺言の作成には、内容と結果を理解して判断できる意思能力が必要です。

意思能力を欠いた状態で行ったことは無効となり、遺言にも遺言能力が求められます。成年後見人を選任しても、本人に代わって自社株を自由に贈与したり、遺言を作成したりすることはできません。

後継者や親族、取引先との調整にも時間がかかるため、健康上の不安が生じる前の着手が重要です。

経営者引退の5年~10年前のタイミング

事業承継の準備には、後継者の育成期間を含め、一般に5~10年程度を要するとされます。2025年に社長が交代した企業における交代前の社長の平均年齢は68.5歳でした。しかしこれは目安であり、望ましい引退年齢を示すものではありません。引退予定時期から逆算して早めに着手しましょう。

引退の予定年齢準備を始める目安準備期間
70歳60~65歳5~10年
68歳58~63歳5~10年
65歳55~60歳5~10年

準備期間中には、自社株評価、後継者の選定・育成、株式移転、納税資金の確保、取引先への説明などに取り組みます。
参照:帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」

後継者の準備ができたタイミング

後継者が決まった後は、経営経験を積ませながら、権限と株式を移す時期を具体化します。帝国データバンクの調査では、2025年に就任した後任代表者の83.9%が10年以上の業界経験を持つ一方、経営経験3年未満が69.6%を占めました。

業界経験が長くても、経営判断の訓練は別途必要です。法人版事業承継税制の特例措置では、2025年1月1日以後の贈与について、後継者の役員就任要件が「贈与直前に役員であること」へ緩和されました。ただし、会社・先代経営者・後継者などに関するほかの要件も確認が必要です。

参照:帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」

事業承継の実行(株式譲渡)に適したタイミング

株式を移す時期を決める際、自社株の評価額は重要な判断材料です。ただし、税負担や納税資金、後継者の準備状況、経営権を移す時期も併せて検討します。評価額が下がる可能性のある代表的な2つの局面を解説します。

  • 一時的に自社株の評価が下がった期を活用する
  • 経営者の退職金が株価に反映された時期に引き継ぐ

一時的に自社株の評価が下がった期を活用する

非上場株式の評価額は、会社の業績や資産内容、類似業種の株価などにより変動します。類似業種比準方式では、配当金額、利益金額、簿価純資産価額が比準要素となるため、業績悪化や損金算入できる退職金・資産売却損などにより、評価額が下がる場合があります。

ただし、大規模な設備投資は現預金が固定資産へ変わる取引であり、実行しただけで直ちに利益や純資産が減るものではありません。株価が下がった時期を把握するには、原則として毎期評価を試算し、推移を記録することが重要です。

経営者の退職金が株価に反映された時期に引き継ぐ

適正な役員退職金が損金に算入されると、利益金額と簿価純資産価額が減り、類似業種比準価額が下がる場合があります。ただし、同方式の比準要素として用いるのは、原則、直前期末の数値です。支給を反映した決算後でなければ効果が表れないことがあります。

一方、純資産価額方式では、原則として株式の贈与・相続時点の資産と負債を基に評価します。退職金の支給後にはどちらの方式においても評価額が引き下がる可能性があります。

ただし、不相当に高額な部分や、実質的な退職を伴わない支給は損金算入が否認されかねません。税務上適切な退職金の準備については、事前に税理士へ相談しましょう。

事業承継に向けた自社株の株価対策はこちらをご覧ください。

相続税

事業承継のタイミングを逃した際に発生するリスク

準備が間に合わないと、相続税の納税資金や会社の意思決定に影響する可能性があります。代表的な2つのリスクを解説します。

  • 高い自社株評価額を基に相続税が計算される
  • 経営者の体調不良などにより計画や意思決定が停滞する

高い自社株評価額を基に相続税が計算される

相続が発生すると、自社株は原則として相続開始時点の評価額で評価されます。自社株の評価額が高く高額な相続税が発生した場合でも原則、申告期限までに納税をしなければなりません。

生前から自社株を定期的に評価し、贈与・売買・事業承継税制などの税負担と納税資金を比較しておくことが重要です。

経営者の体調不良などにより計画や意思決定が停滞する

経営者が意思能力を失うと、株式の贈与・売買などの有効性が問題となります。株主構成や定款によっては、議決権の行使や役員選任など、会社の重要な意思決定が滞る可能性もあります。

法定後見制度を利用しても、後見人は本人の利益を守る立場にあるため、株価対策を目的とする自社株の贈与を自由に行えるわけではありません。任意後見契約や民事信託(家族信託)も選択肢ですが、財産管理や議決権行使の範囲は契約内容によって異なります。意思能力が十分なうちに、法務・税務の両面から制度設計を進めましょう。

参照:裁判所「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック

事業承継のタイミングを逃さないためのポイント

時期を逃さないための要点は、早めの行動、正確な現状把握、選択肢の確保の3点です。順に解説します。

  • 早期に行動を開始する
  • 現状の正確な自社株評価額を把握する
  • M&Aを含めた選択肢を検討する

早期に行動を開始する

先送りを防ぐには、引退予定時期を仮置きし、そこから準備を逆算する方法が有効です。2025年の社長交代率は3.84%で、前年の3.75%から0.09ポイント上昇したものの、依然として低い水準でした。

方針が長期間定まらないと、後継者候補のキャリア選択にも影響する可能性があります。引退時期や役割移行の目安を後継者候補や幹部と段階的に共有し、育成や権限移譲を進めましょう。

現状の正確な自社株評価額を把握する

株式を移す時期の判断には、自社株の相続税評価額を把握する必要があります。非上場株式は、まず株主の区分を確認し、原則的評価方式を用いる場合は、従業員数、総資産価額、取引金額などから会社規模と評価方式を判定します。

決算書の純資産額だけでは算定できません。決算ごとを目安に評価額を試算し、大型投資や組織再編などを行った際にも再評価すると、推移を踏まえて実行時期を検討しやすくなります。なお、M&Aにおける企業価値と相続税評価額は異なる概念です。

M&Aを含めた選択肢を検討する

親族に後継者候補がいない場合は、役員・従業員への承継やM&Aも選択肢になります。帝国データバンクの調査では、2025年に代表者が交代した企業のうち、買収や出向などを含む「M&Aほか」は20.6%(速報値)でした。

M&Aは、買い手候補の選定、企業価値の算定、条件交渉、調査などに時間を要します。早期に検討を始め、従業員の雇用、経営者保証、税引後の手取りなどを比較すれば、承継方法と実行時期を選べる余地が広がります。

事業承継における後継者不足の解決策についてはこちらで解説しています。

事業承継のタイミングを相談するなら税理士法人ネイチャー

承継時期の判断には、自社株の相続税評価額について、現在の水準と変動要因を把握することが重要です。

事業承継では、株式の移転に加え、役員退職金、経営者個人の資産構成、金融資産の運用方針、将来の相続まで検討します。法人と個人の資産を一体で考えることで、税引後の手取りや家族全体の資産承継を踏まえた設計が可能になります。

税理士法人ネイチャーでは、自社株評価を試算し、事業承継に係る税負担を軽減するためのコンサルティングをサポートしております。お気軽に当社の無料面談をご活用ください。

まとめ:事業承継のタイミングは経営者が健康なうちに決断を

事業承継の準備には一般に5年から10年程度を要します。引退時の平均年齢が68.5歳であることを踏まえると、60歳前後が着手時期の一つの目安です。

準備の開始時期と株式を移す時期は分けて考えます。移転時期は、自社株の評価額だけでなく、後継者の育成状況、経営権の移行、納税資金などを総合的に判断しましょう。適正な役員退職金の支給による影響が株価評価に反映される時期なども候補となります。

税理士法人ネイチャーでは、事業承継の時期や資産全体の設計に関するご相談を承っています。自社株評価の推移に加え、経営者個人の資産や運用状況も踏まえて検討します。まずはお気軽にお問い合わせください。

相続税
お客様の目的にあわせたネイチャーグループのサービス
無料相談

資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。

\Amazonギフトカード1万円分プレゼント!/

無料相談に申し込む
資産運用

お客様の保有資産をさらに増やすための最適な提案を数多くの選択肢からご提供します。

税金対策

豊富な経験と、投資や税務の様々な視点から、お客様にあった税金対策を提案します。

相続税対策

相続税の不安やお悩みに、専門チームが最適な対策をご提案します。

\Amazonギフトカード1万円分プレゼント!/
所得税の無料個別相談
\売り込み・営業は一切なし/
法人税対策の無料相談