非上場会社や同族会社において、株式の分散は避けて通れない経営課題の一つです。かつての名義株主の存在や、数代にわたる相続の反復、あるいは節税・株価対策を目的とした親族間での譲渡。これらが積み重なった結果、経営陣が把握しきれていない少数株主が誕生し、後継者の代になって深刻なリスクとして顕在化するケースは少なくありません。
本記事では、非上場会社が抱える少数株主リスクの実態と、専門的な視点から求められる平時・有事の対応について解説します。
少数株主の顕在化がもたらす経営リスク
少数株主がひとたび敵対的な立場に転じると、会社側は多大な実務的・精神的負担を強いられます。具体的には、以下のような事態が想定されます。
【経営判断の停滞】
株主総会における議決権行使や、帳簿閲覧請求権の行使による経営情報の開示を求める行為。
【株式買取請求を背景とする価格交渉】
会社側に対し、裁判実務上想定される評価額を大きく上回る水準での買取請求。
【法的紛争の長期化】
取締役に対する特別背任罪の刑事告訴や、株主代表訴訟の提起。
近年では、これらの権利行使を前提とした対応を業として行う株式買取業者や専門法律事務所の存在も目立つようになっています。経営の安定性を守るためには、こうしたリスクを単なる親族間の問題と片付けず、法的なガバナンスの問題として捉え直す必要があります。
税法上の株価と会社法上の株価の乖離
少数株主対策において、最も実務者を悩ませるのが株価の評価です。重要となるのは、財産評価基本通達に基づく税法上の株価と、裁判実務等で用いられる会社法上の株価(公正な価格)は必ずしも一致しないという事実です。
通常、親族間での贈与や相続では配当還元方式等が用いられますが、株式買取請求等の有事においては、以下の手法が複雑に組み合わされます。
- インカム・アプローチ: DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)、収益還元法
- ネットアセット・アプローチ: 時価純資産法、簿価純資産法
- マーケット・アプローチ: 類似会社比準法
特に裁判実務においては、会社の収益性や将来性を反映した評価が重視される傾向にあり、税務上の評価額との乖離が紛争の火種となります。法務・税務・会計が交錯するこの領域では、多角的なシミュレーションが欠かせません。
求められる平時の備えと有事の決断
少数株主問題は、問題が表面化してからでは選択肢が極めて限定されます。実務上重要となるのは、平時からの出口戦略です。
- 譲渡制限株式の適切な運用
定款の見直しや、譲渡承認請求プロセスをあらかじめ精査しておくこと。 - 自己株式取得の検討
資金調達や課税関係(みなし配当等)を考慮した、計画的な株式集約。 - コミュニケーションの維持
紛争化する前に、適切な情報開示や配当政策を通じて信頼関係を構築、あるいは早期の買取交渉を行うこと。
万が一、株式譲渡承認請求などの有事が発生した場合には、供託の手続きや株式売買価格決定申立裁判を視野に入れた、迅速かつ緻密な法的手続きが求められます。
こうした非上場会社特有の複雑な論点を体系的に整理し、実務の流れを把握するための一助として、以下の書籍は非常に有用です。
非上場会社における少数株主対策の手法と実務――譲渡制限株式は譲渡自由!
弁護士法人M&A総合法律事務所 : https://www.squeezeout.jp/
まとめ:非上場会社の少数株主対策
非上場会社における株式分散は、放置すれば経営権を脅かす重大なリスクへと発展します。少数株主対策の本質は、単なる株式の買い戻しではなく、法務的な手続きの厳格さと税務的な適正評価の高度な融合です。
経営者や後継者、そして財務担当者には、有事の際の防衛策を理解すると同時に、平時から株式の所在を明確にし、潜在的なリスクを可視化しておく姿勢が求められます。事業承継や組織再編を円滑に進めるためにも、法務・税務の壁を越えた横断的な知見に基づき、早期に対策を講じることが、会社の永続性を守る鍵となります。
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