「子どもに1,000万円を渡したいけれど、税金でいくら引かれるのだろうか」と不安に感じていませんか。
ご自身の努力で築き上げてきた大切な財産を次世代へ引き継ぐ際に、多額の贈与税によって大きく目減りしてしまう事態は、誰しも避けたいものです。1,000万円というまとまった資金は何の対策もせずに移転すると、高額な税金が発生するので注意が必要です。
この記事では、1,000万円を贈与した場合の具体的な税額の計算手順から、非課税で資金を移動できる特例、さらには税務署から名義預金とみなされないための注意点まで詳しく解説します。
この記事を読めば、ご自身の資産状況に合った贈与の方法がわかります。将来の相続を見据えた安全な資産移転を実現し、ご家族へ少しでも多くの財産を残すための選択肢を見つけていきましょう。
1,000万円にかかる贈与税はいくら?計算方法
同一年中にほかの贈与を受けていない場合、1,000万円の贈与にかかる贈与税は、贈与者と受贈者の関係や受贈者の年齢によって177万円または231万円となります。ここでは具体的な計算手順と早見表を解説します。
| 贈与する相手 | 適用される税率 | 1,000万円にかかる贈与税額 |
| 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子・孫(※受贈者の年齢基準に注意) | 特例税率 | 177万円 |
| 配偶者・兄弟・未成年の子・第三者など | 一般税率 | 231万円 |
親から18歳以上の子へ贈与する特例税率の計算式
親から贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子へ1,000万円を贈与する場合、贈与税は177万円です。このケースでは、18歳以上の子が父母などの直系尊属から贈与を受ける場合に適用される特例税率を使用します。
計算手順は、まず1,000万円から年間110万円の基礎控除を差し引きます。課税対象額は890万円です。次に、特例税率の速算表を用いて890万円に30%の税率を掛け、控除額である90万円を引いて計算します。
計算式は「(1,000万円 – 110万円)× 30% – 90万円 = 177万円」です。お子様は原則として177万円の贈与税を納めることになるため、納税資金も含めて計画を立てる必要があります。
配偶者へ贈与する一般税率の計算式
夫婦間で1,000万円を贈与する場合の贈与税は231万円になります。夫婦間の贈与には特例税率ではなく一般税率が適用されるため、親から子への贈与よりも税負担が重くなります。
計算手順は、特例税率と同様に1,000万円から基礎控除110万円を差し引いた890万円がベースです。算出した890万円に対して、一般税率の40%を掛け、控除額の125万円を差し引きます。
計算式は「(1,000万円 – 110万円) × 40% – 125万円 = 231万円」です。同じ1,000万円の資金移動であっても、配偶者への贈与は税額が54万円高くなる点をしっかり認識しておいてください。
兄弟間へ贈与する一般税率の計算式
ご兄弟へ1,000万円を贈与する場合も、配偶者間と同様に一般税率が適用され、贈与税額は231万円となります。直系尊属(親や祖父母)からの贈与ではないため、有利な特例税率は使えません。
高い収入を得てきた方が、ご自身の兄弟の事業資金や生活資金を援助するケースは珍しくありません。しかし、税額が231万円に上る点を見据え、本当に今一括で渡すべきか、資金移動のタイミングを慎重に検討する必要があります。
多額の現金が動く際は、事前におおよその税引き後の金額をシミュレーションしておくことが大切です。
1,000万円の生前贈与が有効な場合
上記で確認したように、子への1,000万円の贈与の税額は177万円です。これは1,000万円に対して、実効税率で17.7%の課税が行われたということになります。
例えば、将来の相続税の一番高い部分の税率が50%の方が、この1,000万円の贈与をしていなかったらどうなるでしょうか。1,000万円の現預金に対して50%である500万円が税負担となります。
| 1,000万円を贈与 | 1,000万円を相続 | |
| 発生する税金(相続税の一番高い部分の税率が50%の場合) | 贈与税 | 相続税 |
| 177万円 | 500万円 | |
| 手残り | 823万円 | 500万円 |
このように将来の相続税率が高い方は、177万円の贈与税を負担してでも生前贈与を進めるメリットがでてくる場合があります(ただし後述する相続財産への持ち戻しにはご留意ください)。
最適な生前贈与額は将来の相続税率によって異なるため、もし適切な贈与額をお知りになりたい場合は、税理士法人ネイチャーの無料相続試算をお申し込みください(お問い合わせフォームに相続税の資産を希望される旨をご記載ください)。
1,000万円の生前贈与で相続時精算課税を選ぶ基準
相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与で選択でき、年110万円の基礎控除に加えて、生涯累計2,500万円までの特別控除を利用できます。1,000万円の移転に際して、この制度を検討する際の判断ポイントを解説します。
- 資産が相続税の基礎控除以下なら精算課税が有利になる場合がある
- 年110万円の基礎控除後の金額は将来の相続財産に加算される
- 将来値上がりが見込まれる資産では精算課税が有利になる場合がある
資産が相続税の基礎控除以下なら精算課税が有利になる場合がある
現在の資産総額が将来の相続税の「基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)」の範囲内であれば、相続時精算課税を選ぶメリットが大きくなります。適用要件を満たし、2,500万円の特別控除に未使用枠があり、期限内に必要な届出と申告を行えば、今回の1,000万円に対する贈与税は0円となります。
将来相続が発生した際、相続時精算課税の基礎控除(年110万円)を差し引いた残り890万円の金額(※贈与時の評価額)が将来の相続財産に足し戻されます。そのため、まずはご自身とご家族の資産総額を把握し、正しい判断につなげることが大切です。
相続時精算課税による加算額を含めた相続財産の課税価格が相続税の基礎控除以下であれば、結果として贈与税・相続税のいずれも発生しない場合があります。
年110万円の基礎控除後の金額は将来の相続財産に加算される
相続時精算課税を使って1,000万円を贈与した場合、2024年1月1日以後の贈与では、原則として年110万円の基礎控除後の金額が将来の相続財産に加算される点に注意が必要です。贈与時に贈与税がかからなくても、将来の相続税の計算に影響する可能性があります。
もし資産総額が基礎控除を大きく超えている場合、目先の贈与税はかからなくても、将来ご家族が負担する相続税が増えてしまう可能性があるため、事前にシミュレーションが必要です。
将来値上がりが見込まれる資産では精算課税が有利になる場合がある
将来価値が上がる見込みのある株式や不動産などを贈与する場合、相続時精算課税が選択肢となることがあります。将来の相続時に持ち戻しされる際、財産の評価額は贈与した時の金額で固定されるルールがあるためです。
例えば、法人オーナーが、将来の業績拡大で株価上昇が見込まれる自社株1,000万円分を贈与するケースです。将来自社株の評価額が3,000万円に値上がりしても、相続税の計算では原則として贈与時の価額を基礎とします。
2024年1月1日以後の贈与で、その年に同じ贈与者から受けた贈与が1,000万円のみであれば、年110万円の基礎控除後の890万円が加算対象となります。
将来の資産価値上昇による相続税への影響を抑えられる場合があります。
1,000万円の生前贈与を非課税にする特例の条件
一定の要件を満たすと、1,000万円の贈与が非課税になる2つの特例制度とその手続きのルールを解説します。
- 住宅取得等資金の特例要件を満たすと税金がかからない
- 結婚・子育て資金の一括贈与で1,000万円まで非課税になる場合がある
住宅取得等資金の特例要件を満たすと税金がかからない
子や孫がマイホームを購入する際、住宅取得等資金の特例の条件を満たせば、省エネ等住宅で最大1,000万円までの贈与について、贈与税が非課税になります。
非課税限度額は、省エネ等住宅の場合は最大1,000万円、それ以外の住宅の場合は最大500万円です。親や祖父母から資金援助を受けて、自宅を新築・購入する場合に活用できる制度です。
特例を利用するには、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住を開始する必要があります。ただし、同日までに居住できない場合でも、その後遅滞なく居住することが確実と見込まれるときは、適用を受けられる場合があります。物件の床面積や住宅性能、受贈者の年齢・所得などにも要件があるため、贈与や住宅購入を行う前に確認しておくことが重要です。
結婚・子育て資金の一括贈与で1,000万円まで非課税になる場合がある
2027年3月31日までに父母や祖父母などの直系尊属から、18歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金を一括贈与する場合、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円以下であることなどの要件を満たせば、最大1,000万円まで非課税となります。
結婚や子育てに充てるまとまった資金の援助を検討している場合に、選択肢となる制度です。
対象となるのは、挙式費用や一定期間内に支払う新居の家賃・敷金、転居費用のほか、不妊治療、妊婦健診、出産、子どもの医療費、保育料などです。1,000万円の非課税枠のうち、結婚に関する費用は300万円が上限となります。
特例を利用するには、金融機関等との結婚・子育て資金管理契約に基づく口座等を設け、金融機関等を通じて非課税申告書を提出する必要があります。また、資金を使用した際には、支払いを証明する領収書等を所定の期限までに金融機関等へ提出しなければなりません。
お子様のライフイベントに合わせてまとまった資金を援助したい場合は、贈与者の死亡時や契約終了時の課税関係も確認したうえで検討してください。
1,000万円の生前贈与を毎年分割して渡すリスク
1,000万円を一括ではなく、税負担を抑える目的で分割して贈与する際の見落としがちなリスクと最新の法改正による影響を解説します。
- 最初に1,000万円の分割を約束すると定期贈与とみなされる
- 暦年贈与の加算対象期間延長により相続税の対象となる場合がある
- 現金の手渡しは贈与の記録が残りにくい
最初に1,000万円の分割を約束すると定期贈与とみなされる
毎年100万円ずつ10年間に分けて手渡しや振り込みをする場合は注意が必要です。最初から1,000万円を分割して渡す契約をする定期贈与と税務署からみなされるリスクがあります。
定期贈与と判定されてしまうと、初年度の時点で「1,000万円の給付を目的とする定期金給付受給権(定期受給権)を取得した」とみなされ、一括で多額の贈与税を支払わなければなりません。
定期贈与と判定されることを防ぐためには、毎年その都度新しく贈与の合意を行い、それぞれの年で独立した贈与契約書を作成し、証拠を残しておくことが有効です。
暦年贈与の加算対象期間(持ち戻し)延長により相続税の対象となる場合がある
税制改正により、暦年贈与の加算対象期間(持ち戻し)は、相続開始日によって段階的に延長されます。
2024年1月1日以後の暦年贈与については、生前贈与加算の対象期間が段階的に延長され、2031年1月1日以後に開始する相続では原則として相続開始前7年以内となります。ただし、加算の対象者は、原則として被相続人から相続や遺贈等により財産を取得した人です。
金融資産を多くお持ちの方ほど、時間をかけた長期の分割贈与が相続発生によって当初の計画通りに進まず、結果的に税負担が重くなるリスクが高まります。
現金の手渡しは贈与の記録が残りにくい
振込手数料や手続きの手間などを省く目的で、1,000万円を現金で手渡しする行為は、税務上不利になりかねません。現金の手渡しは、銀行振込に比べて資金移動の客観的な記録が残りにくいため、贈与契約書や受領書などを作成しておく必要があります。
客観的な証拠が乏しい場合、贈与の合意や資金移動の時期を説明しにくくなり、贈与の成立を巡って税務署と見解が分かれる可能性があります。銀行振込による送金記録に加え、贈与者と受贈者の合意を示す贈与契約書なども保管しておくことが望まれます。
1,000万円の生前贈与による名義預金判定の注意点
家族間の預金移動で最も指摘されやすい名義預金の判定基準と、申告をしなかった場合の注意点について解説します。
- 親が管理する子ども名義の口座は名義預金と判断される可能性がある
- 期限までに申告をしないと無申告加算税が課される
親が管理する子ども名義の口座は名義預金と判断される可能性がある
親が子ども名義の口座へ1,000万円を振り込んだだけでは、正当な贈与と認められない可能性があります。特に子どもが成人してからは、通帳や印鑑を親が保管し、子ども自身が資金を管理・使用していない場合は、実質的に親の財産である名義預金と判断される可能性があります。
親の財産とみなされると、贈与は最初から成立していなかったものとして扱われ、将来の相続時に親の相続財産として相続税の計算対象となる可能性があります(※その口座から生じた利息等についても、実質的な帰属者が誰であるかを確認する必要があります)。
名義預金と判断されないためには、贈与者と受贈者の合意があり、受贈者自身が口座や資金を管理・使用している実態を備えることが重要です。またその場合、どのように子どもが無駄づかいをしてしまうことを防ぐかという論点も出てきます。
期限までに申告をしないと無申告加算税が課される
1,000万円の贈与を受けながら申告を忘れたり、意図的に隠したりすると、税務署から指摘を受けかねません。本来納めるべき177万円や231万円といった本税に加え、無申告加算税や延滞税といった追加の税負担が発生します。
税務署は、必要に応じて法令に基づき金融機関への照会を行う場合があり、家族間の多額の資金移動は、相続税調査などを通じて確認される場合があります。余分な税負担を発生させないためにも、贈与を受けた翌年には、期限内に正しい手続きで申告と納税を行ってください。
1,000万円の贈与にかかる贈与税申告に必要な手続き
贈与税の申告手続きをスムーズに進めるために、手元に準備すべき必須書類と申告のスケジュールを解説します。
- 特例を利用するために必要な各種証明書を漏れなく準備する
- 原則として翌年の2月1日から3月15日までに申告手続きを完了させる
特例を利用するために必要な各種証明書を漏れなく準備する
1,000万円の贈与で非課税特例や相続時精算課税を利用して税額を抑える場合、税務署への申告時に添付する公的な証明書が複数必要になります。必要書類は利用する制度によって異なります。
相続時精算課税では戸籍謄本など、住宅取得等資金の非課税特例では売買契約書や登記事項証明書など、制度ごとに定められた書類を準備します。役所での書類収集には想定以上に時間がかかるため、年内に余裕を持って準備を始めれば、スムーズに申告できます。
原則として翌年の2月1日から3月15日までに申告手続きを完了させる
贈与税の申告と納税には、明確な申告期間が定められています。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄税務署へ申告書を提出し、納税を済ませる必要があります。なお、期限日が土日祝日に当たる場合は、原則として翌開庁日が期限となります。
税額が0円になる場合でも、相続時精算課税や住宅取得等資金の非課税特例など、期限内の届出・申告が適用要件となっている制度があります。必要な手続きと提出先は制度ごとに確認してください。期限後の申告や納付では、特例を適用できなくなったり、加算税や延滞税が生じたりする場合があるため、3月に入ってから慌てることのないよう早めの行動を心がけてください。
1,000万円の生前贈与に関するお悩みなら税理士法人ネイチャー
1,000万円というまとまった資金の移動は、選択する制度や手続きの進め方によってご家族の将来の資産状況に大きな影響を与えます。高い収入を維持し、これからさらに資産を確実なものへと育てていきたいとお考えの方にとって、目先の贈与税だけでなく、将来の相続税も見据えた総合的な判断が欠かせません。
税理士法人ネイチャーは、多くの高所得者の方々が抱える課題を解決し、資産承継をサポートしてきた実績があります。現在の資産状況やご家族の構成を詳細に分析し、最適なタイミングや制度を用いた資産の移転方法をシミュレーションいたしますのでぜひご相談ください。複雑な手続きを専門家に任せれば、安心してご家族へ資産を引き継ぐ準備を進められます。
まとめ:1,000万円の贈与にかかる税金を把握して最適な選択肢を選びましょう
この記事では、1,000万円を贈与した場合の具体的な税額や非課税になる各種特例、そして分割贈与や名義預金の注意点について解説しました。
同一年中にほかの贈与を受けていない場合、1,000万円の贈与税は、特例税率を使えば177万円、一般税率であれば231万円となります。しかし、相続時精算課税や住宅取得等資金、結婚・子育て資金の特例を利用すれば、贈与時の税負担を抑えられる場合があります。ただし、相続時精算課税では将来の相続税への影響も考慮する必要があります。
一方で、知識を持たずに安易な分割贈与や現金の手渡し、あるいは親が通帳を管理したままにするなどの不適切な手続きは、贈与の成立を認められなかったり、贈与税の申告漏れとして無申告加算税等が課されたりする原因となります。
ご自身の努力で得た資産を守り、どの特例を使えばご家族にとって一番メリットがあるのかを知りたい場合は、経験豊富な専門家へのご相談をおすすめします。
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