長く保有している米ドル預金を円換算すると、預け入れた当時より大きく増えている。しかし、増えた分にいつ税金がかかるのか分からないという方もいるでしょう。
外貨預金では、利息と為替差益を分けて考える必要があります。国内で受け取る利息は原則20.315%で源泉徴収されますが、一般的な為替差益は雑所得として扱われます。
さらに、為替差益は円へ交換したときだけ生じるとは限りません。2026年6月16日の最高裁判決では、外国通貨で別の外国通貨や同一通貨建ての有価証券を取得した取引についても判断が示されました。
この記事では、外貨預金にかかる税金を、取引の場面ごとに整理します。為替差益の計算方法や確定申告が必要となる条件も確認していきます。
外貨預金にかかる税金の種類
外貨預金から得る収益は、利息と為替差益で課税方法が変わります。まずは違いを確認しておきましょう。
| 確認項目 | 国内金融機関の 外貨預金利息 | 為替差益 |
| 所得の区分 | 利子所得 | 原則として雑所得 |
| 課税方法 | 源泉分離課税 | 総合課税 |
| 税率 | 20.315% | 課税所得に応じて変動 |
| 所得税の確定申告 | 国内で源泉徴収される預貯金利息は不要 | 所得状況などにより必要 |
利息にかかる税金
たとえば、国内の金融機関から外貨預金の利息を10万円受け取る場合、税引前の利息に20.315%が課税されます。税額は2万315円です。
20.315%の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。金融機関が支払時に差し引くため、国内で源泉徴収される預貯金利息については確定申告で精算しません。
国内で受け取る預貯金利息は、所得金額の大小にかかわらず原則20.315%です。
国外の金融機関から直接支払われ、国内で源泉徴収されない利息は扱いが異なります。日本の居住者であれば、原則として利子所得として申告の対象になります。現地でも税金を納めている場合は、外国税額控除を適用できるか確認します。
為替差益にかかる税金
為替差益は、利息のように一律の税率で課税されるわけではありません。個人の一般的な外貨預金から生じる為替差益は、原則として雑所得です。
たとえば、給与所得などがある方は、為替差益を他の総合課税の所得と合わせて所得税を計算します。所得税率は課税所得に応じて5~45%となり、これとは別に復興特別所得税と住民税も考慮します。
外貨預金では、利息の税率と為替差益に対する税率を分けて確認する必要があります。
なお、1ドル140円で取得した米ドルが1ドル160円になっていても、保有を続けているだけなら、通常はその20円分を所得として計上しません。実際にどのような取引をしたかによって、為替差損益を認識する時期が決まります。
外貨預金の税金を計算するタイミング
為替差損益の計算が必要かどうかは、「円を受け取ったか」だけでは判断できません。取引後に何を保有しているかまで確認します。
| 取引例 | 税務上の確認 |
| 米ドル預金をそのまま保有 | 通常、為替差損益は未認識 |
| 国内銀行から外貨で利息を受領 | 利息部分に源泉徴収 |
| 米ドルを日本円へ交換 | 為替差損益を計算 |
| 米ドルからユーロへ交換 | 米ドル部分の為替差損益を計算 |
| 米ドルで米ドル建て株式を購入 | 支払いに使った米ドル部分の為替差損益を計算 |
| 米ドルを別銀行の米ドル口座へ移動 | 一定の場合、為替差損益を認識しない |
同じ米ドルを別の銀行口座へ移しただけで、米ドルという資産の保有状態が変わらない場合があります。国税庁は、同一の外国通貨で行われる預け入れと払い出しについては、元本部分に増減がないため、為替差損益を認識しない取扱いを示しています。
外貨預金の利息を受け取ったとき
たとえば100ドルの利息が発生しても、国内の金融機関では税金を差し引いた後の外貨が口座へ入金されます。
ここで注意したいのは、入金された外貨には新たな取得時点が生じることです。後日、その外貨を円へ交換すれば、利息を受け取った時点から交換時までの為替変動を確認します。
利息に対する課税と、その後の外貨の値動きは別々に計算します。
外貨預金を円へ交換したとき
たとえば1万ドルを1ドル130円で取得し、後日1ドル150円で円へ交換したとします。
取得額は130万円、交換時の円換算額は150万円です。この例では、差額20万円が為替差益になります。
為替差益を出すには、交換日のレートだけでは足りません。その外貨を取得するために円でいくら支払ったかを確認できる資料が必要です。
外貨預金を他通貨へ交換したとき
2026年6月16日の最高裁判決(令和5年(行ヒ)第366号)において、外国通貨を用いて別の外国通貨や同一通貨建ての有価証券を取得した場合であっても、支払いに充てた外国通貨の為替差損益が実現したものとして課税所得を構成する旨の判断が示されました。
たとえば、過去に1ドル=120円で取得した米ドルを「1ドル=150円」の時点でユーロへ交換した場合、日本円への換金(円転)を行っていなくとも、交換に充当した米ドルについて1ドルあたり30円の為替差益(雑所得)が実現したものとして所得計算に含める必要があります。
「円に戻していないから税金はかからない」と判断すると、為替差益の申告漏れにつながる可能性があります。外貨同士の交換についても、取得時と交換時の為替レートを確認できるよう取引記録を保存しておくことが重要です。
外貨預金で資産を購入したとき
外貨預金から直接、同一通貨建ての米国株式や米国債などを購入するケースも同様に注意が必要です。
米ドル預金を用いて米ドル建て株式を取得した場合、「支払いに充てた米ドルの為替差損益(雑所得)」がその購入時点で認識されると同時に、「購入した株式自体の取得価額(約定日の為替レートで円換算した金額)」が別途確定するという二段階の税務処理が生じます。
これにより、後日その株式を売却した際は、購入時のレートで円換算した取得価額と、売却時のレートで円換算した売却代金との差額から、譲渡所得(申告分離課税)を計算することになります。外貨預金の取得時期・為替レートと証券の約定日・購入レートを厳密に区分して記録・保存しておくことが不可欠です。
外貨預金の為替差益にかかる税金の計算方法
為替差益の計算では、外貨を使った時点の円換算額と、その外貨の取得額を比べます。複数回購入している場合は、取得額の計算が複雑になります。
- 取引日の為替レートで円換算する
- 複数回取得した外貨の平均レートを求める
- 総合課税の税率で税額を見積もる
取引日の為替レートで円換算する
為替差損益は、次の2つの金額の差で考えます。
- 外貨を使用した時点の円換算額
- 使用した外貨に対応する取得額
たとえば5万ドルの取得額が700万円で、その5万ドルを取引時に800万円相当で使用した場合、差額100万円が為替差益となります。
外貨を取得した日と使用した日の双方について、金額を確認できる資料を用意します。銀行の明細だけで不足する場合は、過去の入出金記録なども確認してください。
複数回取得した外貨の平均レートを求める
同じ通貨を何度も購入している場合、最後に買ったレートだけを使って計算することはできません。
たとえば、次のように20万ドルを取得したとします。
| 取得時期 | 取得額 | レート | 円換算額 |
| 1回目 | 10万ドル | 140円 | 1,400万円 |
| 2回目 | 10万ドル | 150円 | 1,500万円 |
| 合計 | 20万ドル | - | 2,900万円 |
この例では、1ドル当たりの取得額は145円です。
ここから8万ドルを1ドル160円で円へ交換した場合、交換額は1,280万円、対応する取得額は1,160万円です。差額の120万円が為替差益となります。
外貨の取得費の算定方法について、所得税法令には直接の明文規定がありません。裁判例では、複数回にわたって取得した外貨について、2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券の取得費の計算方法に準じ、「総平均法に準ずる方法」で計算するのが相当と判断されています。先に挙げた最高裁判決の第一審でも、同じ考え方が示されました。
頻繁に外貨を買い増している場合は、過去の取引履歴から取得単価を確認する必要があるため、取引記録を継続して保存しておきましょう。
総合課税の税率で税額を見積もる
為替差益120万円が生じても、120万円に一律の税率がかかるわけではありません。
たとえば、すでに課税所得が1,000万円ある方と4,500万円ある方では、追加所得に適用される所得税率が異なります。
| もとの課税所得の例 | 所得税率の区分 | 住民税等を含めた追加負担の概算 |
| 1,000万円 | 33% | 約43.7% |
| 2,000万円 | 40% | 約50.8% |
| 4,500万円 | 45% | 約55.9% |
※復興特別所得税と住民税所得割10%を加えた概算です。実際には所得控除、税額控除、税率区分をまたぐ金額などによって税額が変わります。
為替差益の金額だけで税額を判断せず、その年の課税所得と合わせて確認します。
外貨預金の税金で確定申告が必要なケース
為替差益が出ても、確定申告が必要かどうかはその金額だけでは決まりません。給与収入や他の所得、別の目的で確定申告するかによって判断します。
| 年間の状況例 | 所得税の申告 |
| 年末調整済みの給与 + 為替差益15万円のみ | 一定の場合は不要 |
| 年末調整済みの給与 + 為替差益15万円 + 副業所得10万円 | 原則必要 |
| 給与収入2,100万円 + 為替差益5万円 | 必要 |
| 為替差益10万円 + 医療費控除のため申告 | 10万円も所得に含める |
為替差益を含む所得が20万円を超える給与所得者
たとえば、1か所から給与を受け、給与の全部が源泉徴収の対象となる方に、為替差益12万円と副業所得11万円があったとします。
給与所得・退職所得を除いた所得は合計23万円です。この場合、原則として所得税の確定申告が必要になります。
一方、同じ条件で為替差益が12万円だけなら、所得税について20万円以下の申告不要制度を利用できる場合があります。
ただし、20万円は非課税限度額ではありません。所得税の確定申告をしない場合でも、住民税について自治体への申告が必要になることがあります。
給与収入が2,000万円を超える人
年間給与が2,050万円で、外貨預金の為替差益が3万円だったとします。
給与収入が2,000万円を超える方は年末調整の対象にならず、所得税の確定申告が必要です。そのため、3万円の為替差益も所得として申告します。
給与収入が2,000万円を超える場合は、為替差益が20万円以下かどうかで申告の要否は決まりません。
別の理由で確定申告をする人
年間の為替差益が8万円だけなら、一定の給与所得者は所得税の確定申告をしない場合があります。
しかし、医療費控除を受けるため確定申告書を提出するのであれば、その8万円も所得に含めます。住宅ローン控除の初年度など、別の理由で確定申告する場合も同様です。
20万円以下の申告不要制度は、確定申告自体を行わない場合の取扱いです。
外貨預金の為替差損は税金でどう扱う?
外貨預金で損失が出た場合は、同じ年に生じた総合課税の雑所得を確認します。
たとえば、米ドル預金で30万円の為替差益があり、別の外貨預金で10万円の為替差損が生じた場合です。いずれも総合課税の雑所得に該当するのであれば、差し引いた20万円を雑所得として計算できます。
一方、外貨預金で生じた為替差損を給与所得や不動産所得など他の所得区分から差し引く損益通算は認められていません。また、申告分離課税が適用されるFX(外国為替証拠金取引)とは異なり、総合課税の雑所得である外貨預金の損失には翌年以降3年間の繰越控除の適用がない点にも留意が必要です。
したがって、為替差損が生じた年に他の総合課税の雑所得(暗号資産取引や副業の雑所得等)がなければ、その損失は税務上切り捨て(翌期以降に活用できない)となります。
為替差損が出た年は、その年に生じた他の総合課税の雑所得がないか確認します。
複数の通貨を取引している場合は、通貨ごとの損益だけを見るのではなく、その年の雑所得全体を一覧にすると確認しやすくなります。
外貨預金の税金に関する確定申告の流れ
外貨預金の申告では、申告書を作る前の資料整理が重要です。次の3段階で進めます。
①外貨の取得履歴を確認する
「いつ」「何通貨を」「いくらで取得したか」が分かる資料を集めます。払戻日、他通貨への交換日、有価証券の購入日も確認してください。
②円換算額を計算する
外貨を使用した時点の円換算額と、その外貨に対応する取得額を比べます。買い増しを繰り返している場合は、取得原価の算定も必要です。
③為替差益を所得に反映する
個人の一般的な外貨預金から生じた為替差益は、原則として雑所得として申告します。国内で源泉徴収された預貯金利息は、通常この申告には含めません。
たとえば、10年以上保有していた米ドルの一部をユーロへ交換したものの、円へ交換していなかったため税務上の確認をしていなかったケースです。後から確認したところ、米ドルを取得した当時の資料が見つからず、取得価額を追う作業に時間がかかりました。
古い外貨ほど、取得時の円換算額を確認できる資料を残しておくことが重要です。
外貨預金の税金の相談なら税理士法人ネイチャー
外貨預金を長期間保有している方では、同じ通貨を何度も買い増したり、海外口座との間で資金を動かしたりしていることがあります。取引回数が増えるほど、現在の残高だけを見ても取得価額を把握できません。
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まとめ:国内銀行の外貨預金利息は20.315%・為替差益の税額は所得で変わる
外貨預金にかかる税金は、利息と為替差益を分けると整理しやすくなります。
国内で支払われる預貯金利息は20.315%で源泉徴収され、原則としてそれだけで納税が完了します。一方、一般的な為替差益は雑所得となり、他の所得を含めた課税所得によって負担額が変わります。
また、外貨を円へ戻していなくても、他の通貨への交換や外貨建て有価証券の購入によって為替差損益を認識する場合があります。
確認すべきなのは現在の外貨残高ではなく、外貨を取得してから現在までに行った取引の内容です。
保有期間が長い場合や取引回数が多い場合は、取得価額の確認だけでも時間がかかります。申告の要否や計算方法に迷う場合は、外貨取引と税務の両方を確認できる専門家へ相談してください。税理士法人ネイチャーでも、国際税務や海外資産に関する相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
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