「毎月の給料から、こんなに税金が引かれているのか…」
年収が上がるにつれて、所得税や住民税の負担が重くなったと感じている高年収サラリーマンの方は少なくないでしょう。特に、給与所得だけでなく、不動産所得など複数の収入源を持つ方は、累進課税制度によってさらに高い税率が適用され、手元に残るお金が思ったより少ないと感じるかもしれません。
そんな状況を打開する手段の1つとして注目されているのが資産管理会社です。
「会社を設立なんて、自分には関係ないのでは?」
そう思われるかもしれませんが、実は高年収のサラリーマンだからこそ、資産管理会社を設立するメリットは大きいのです。この記事では、税理士法人である私たちが、資産管理会社の基本から、具体的なメリット・デメリット、設立する意味があるのかを判断するためのポイントまで、わかりやすく解説します。
そもそも資産管理会社とは?設立するメリットを解説
資産管理会社とは、その名の通り、ご自身が所有する不動産や株式といった資産を管理・運用するために設立する法人のことです。この章では、高年収のサラリーマンの方が資産管理会社を設立することで、どのようなメリットを得られるのかを詳しく解説します。
なぜサラリーマンが資産管理会社を持つのか?
会社という器を1つ持つことで、個人では利用できなかった様々なメリットを享受できるようになります。
特に、高年収のサラリーマンが資産管理会社を設立する最大の目的は、個人と法人で異なる税率を活用した節税です。個人の所得税は最大45%(住民税と合わせると約55%)ですが、法人の実効税率はそれよりも低い場合が多いです。この税率の差を上手に利用することが、資産を効率的に増やす鍵となります。
メリット①:税率を味方につける節税効果
個人にかかる所得税は、収入が増えるほど税率が上がる累進課税です。年収1,500万円を超えると、所得税率は40%、住民税と合わせると約50%近くにもなります。これに対し、法人税は利益に応じて税率が決まりますが、個人の最高税率より低い場合が多く、特に中小企業では税率が優遇されています。
資産管理会社を設立すれば、家賃収入などを会社の収入にすることが可能です。これにより、本来個人にかかる高額な所得税を、より低い法人税に切り替えられるようになります。
メリット②:必要経費の範囲が広がり、手残り資金が増える
個人事業主として活動する場合と比べて、法人では経費として認められる範囲が格段に広がります。
例えば、
- 自宅の一部を事務所として家賃の一部を計上する
- 家族を役員や従業員にして給与を支払う
- 生命保険料を会社の経費にする
など、今まで個人的な支出だったものが経費として認められ、課税所得を圧縮できます。これにより、手元に残る資金を増やすことができます。
【注意点】
不必要な経費を計上すると税務調査で否認されるリスクがあります。事業との関連性を明確に説明できることが重要です。税理士に相談して、適切な経費計上を心がけましょう。
メリット③:家族へのスムーズな資産承継・相続対策
資産管理会社は、単なる節税ツールではありません。大切な資産を次世代にスムーズに引き継ぐための有効な手段でもあります。
例えば、会社の株式を少しずつ家族に贈与することで、将来の相続税評価額を抑えたり、納税資金を確保しやすくなったりします。また、複数の資産(不動産や金融資産など)を会社という1つの器にまとめることで、遺産分割が複雑になるのを防ぐことができるでしょう。
メリット④:資産を安全かつ効率的に管理・運用できる
会社として資産を管理することで、公私混同を防ぎ、より客観的・戦略的に資産を運用できるようになります。また、個人では扱いにくい大口の融資や、特定の金融商品への投資も可能になるなど、選択肢が広がります。
資産管理会社の「落とし穴」!デメリットと注意点
メリットばかりに目を向けてはいけません。資産管理会社を設立・運営するには、デメリットも存在します。
デメリット①:設立・維持にコストと手間がかかる
資産管理会社を設立するには、登録免許税や司法書士への報酬など、約20万〜30万円の初期費用がかかります。また、設立後も税理士への報酬や会社の維持費用、社会保険料など、年間で数十万円のランニングコストが発生します。
デメリット②:赤字でも法人住民税は発生する
個人事業主であれば、赤字の年は所得税がかかりませんが、法人の場合、赤字でも法人住民税の均等割(約7万円)が毎年必ず発生します。会社の利益が少ない場合、この負担が重くのしかかる可能性があります。
デメリット③:手続きや会計処理が複雑になる
個人であれば、確定申告は年に一度で済みますが、法人になると、毎月の経理処理や税務申告など、事務作業が格段に増えます。本業で忙しいサラリーマンにとって、これは大きな負担となるでしょう。そのため、多くの人が税理士に依頼することになります。
デメリット④:税務調査のリスクと不必要な経費計上
法人は個人よりも税務調査の対象となりやすく、特に個人の資産管理会社は税務署のチェックが厳しくなる傾向があります。事業実態のない経費計上や、役員報酬の不適切な設定は、後々の大きなトラブルに繋がります。
【税理士が解説】資産管理会社設立が向いているサラリーマンとは?
これまでに資産管理会社のメリット・デメリットを見てきましたが、具体的にどのような人が設立を検討すべきなのかが一番知りたい点でしょう。
この章では、ご自身が設立に向いているか判断するための簡単なチェックリストと、具体的な節税シミュレーションを通じ、会社を持つべきかの判断基準をわかりやすく解説します。
あなたは資産管理会社を持つべきか?チェックリストで診断!
以下の項目に1つでも当てはまる方は、資産管理会社の設立を検討する価値があります。
- 年収1,000万円以上で、税負担の重さを感じている
- 複数の収益不動産を保有しており、家賃収入がある
- 将来の相続に備え、円滑な資産承継を考えている
- 自分の資産を、より戦略的に管理・運用したい
- 役員報酬や経費計上など、節税の幅を広げたい
具体例で見る!年収1,500万円のサラリーマンの節税シミュレーション
ここでは、年収1,500万円のサラリーマンが不動産所得を資産管理会社に帰属させた場合の一例をご紹介します。
【設立前の状況】
- 年収:1,500万円
- 不動産所得:年間500万円
- 合計所得:2,000万円
- 所得税・住民税:約540万円
【設立後の状況】
- 給与所得:1,500万円
- 法人利益:500万円
- 役員報酬:法人利益から年間200万円を役員報酬として受け取る
- 法人の課税所得:300万円
- 法人税等:約80万円
- 個人の課税所得:1,700万円(給与1,500万円+役員報酬200万円)
- 所得税・住民税:約410万円
- 個人・法人税負担合計:約490万円
上記の例は所得税・住民税の計算を単純化したものです。このケースでは、設立前より個人の所得が圧縮され、全体としての税負担が軽くなりました。しかし、実際に法人から役員報酬を受け取る場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が義務となり、役員報酬額のおおよそ30%(会社と個人で折半)という高額な社会保険料が発生します。
この社会保険料の負担額が所得税・住民税の節税額を上回るケースも少なくありません。資産管理会社の設立を検討する際は、この社会保険料の負担を必ず含めた上で慎重に損益分岐点を試算する必要があります。
資産管理会社設立の手続きと流れ
資産管理会社の設立を決めたら、次は具体的な手続きのステップに進みます。ご自身で手続きを行うことも可能ですが、多くの専門用語や煩雑なプロセスが含まれるため、初めての方には難しく感じるかもしれません。
この章では、会社設立の主な流れ、必要な費用、専門家に依頼すべき理由と最適なタイミングについて解説します。
会社設立の主なステップ
資産管理会社を設立する主なステップは以下の通りです。
- 会社概要の決定:商号(会社名)、事業目的、本店所在地などを決める
- 定款の作成・認証:会社の基本ルールを定めた定款を作成し、公証役場で認証を受ける
- 資本金の払い込み:発起人(設立者)の個人口座に資本金を振り込む
- 設立登記:法務局で登記手続きを行う
設立費用はいくらかかる?
株式会社を設立する場合、登録免許税(最低15万円)や定款認証費用(約5万円)などで、合計20万円以上の費用がかかります。専門家に依頼する場合は、別途報酬も必要になります。
専門家に依頼すべき理由とタイミング
「手続きが煩雑で時間がない」「設立後の税務処理に自信がない」という方は、税理士に依頼するのが賢明です。特に、設立を検討し始めた段階で相談することで、あなたの状況に最適なスキームを提案してもらい、設立後の税務リスクを事前に回避できます。
失敗しないために!税理士法人ネイチャーが提供するサポート
資産管理会社の設立はゴールではなくスタートです。設立後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、設立段階から専門家と伴走し、適切な運営ノウハウを身につけることが不可欠です。
この章では、設立後によくあるお悩みや、税務調査で慌てないためのポイント、そして私たちが提供できるサポートについてご紹介します。
資産管理会社設立後のよくあるご相談事例と解決策
「設立したはいいものの、思ったような節税効果が出ない…」
「役員報酬の金額設定がこれで正しいか不安…」
「税務調査が来たらどうしよう…」
私たちは、こうした設立後のご相談にも多数対応してまいりました。会社設立はゴールではなく、どう活用していくかが最も重要です。税理士法人ネイチャーでは、設立後の経理処理や税務申告はもちろん、会社の成長に合わせた最適な経営・税務アドバイスを提供します。
資産管理会社について、こちらの記事もご参考にしてください。
ファミリーオフィスと資産管理会社の違いを徹底解説|富裕層の賢い資産防衛術
税務調査で慌てないために。ネイチャーの専門家が教えるポイント
税務調査で指摘されやすいのは、事業実態がないとみなされるケースです。特に、役員報酬が不当に高かったり、事業と関係ない個人的な支出を経費にしていたりすると、税務署から厳しく追求されます。
私たちネイチャーの税理士は、お客様が安心して会社を運営できるよう、適正な経費計上の指導や、税務調査対策を事前にしっかり行います。
まずは無料相談から。専門家と一緒に未来を設計しましょう
資産管理会社の設立は、資産状況や家族構成、将来設計によって、最適な形が全く異なります。インターネットの情報だけでは、自身のケースに当てはまるか判断するのは難しいでしょう。
まずは一度、私たち税理士法人ネイチャーにご相談ください。状況を丁寧にヒアリングし、資産管理会社が本当に必要か、どんなメリット・デメリットがあるのかをわかりやすくご説明します。
まとめ:資産管理会社は「税金の味方」であり「未来への投資」
資産管理会社は、高年収サラリーマンが重い税負担から解放され、効率的に資産を増やし、大切な家族に未来の財産を残すための強力なツールです。
しかし、設立には専門的な知識が必要であり、設立後の適切な運用が何よりも重要です。
漠然とした不安を抱えたまま一人で悩むのではなく、ぜひ一度、プロである税理士に相談してみてください。資産の未来を、私たちと一緒に考えていきましょう。
資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。
お客様の保有資産をさらに増やすための最適な提案を数多くの選択肢からご提供します。
豊富な経験と、投資や税務の様々な視点から、お客様にあった税金対策を提案します。

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