「税金で半分持っていかれるくらいなら、何かに投資して経費にしたい」
経営者なら誰もが一度は考えることです。そこで候補に挙がるのがサーバー節税。数百万から数千万円単位の投資が一瞬で全額経費になり、しかも将来的に収益を生むという触れ込みで人気を集めています。
しかし、税理士として断言します。節税効果だけでサーバーに飛びつくのは、非常に危険な賭けです。最悪の場合、節税どころか元本すら回収できず、キャッシュを失うケースも珍しくありません。
本記事では、金融業界に詳しい税理士が、サーバー節税の魅力的な表の顔と、業者が隠したがる裏のリスクを包み隠さず解説します。決算直前の焦りにつけ込まれないよう、正しい知識で資産を守りましょう。
サーバー節税とは?決算直前に全額経費を作る仕組み
決算期末ギリギリでも間に合う節税策として、なぜサーバーが注目されるのでしょうか。その理由は、国が用意した特例税制との相性の良さにあります。
なぜサーバーが節税になる?中小企業経営強化税制のカラクリ
サーバーを買うだけで節税になるわけではありません。中小企業経営強化税制という国の制度を活用するのです。国は企業のIT化や生産性向上を後押ししたいと考えています。「最新の設備を入れて生産性を上げるなら、税金を優遇しますよ」という制度が存在します。
サーバーはこの生産性を向上させる設備として認められやすい機器の一つです。一定の要件を満たしたサーバーを購入・稼働させることで、これまでは購入費用の全額をその年の経費(損金)として計上することが可能でした。しかし現在は、単なる投資目的とみなされた場合、中小企業経営強化税制の対象外となり、即時償却が否認されるリスクがあります。特に、本業との関連性が薄いマイニング事業などは税務署のチェックが厳しくなっており、安易な導入は禁物です。
最大の魅力は即時償却による利益圧縮効果
通常の減価償却と、この制度を使った即時償却の違いを見てみましょう。例えば、1,000万円のサーバーを購入したとします。
【通常の場合(定率法など)】
初年度に経費にできるのは数百万円程度。残りは翌年以降に持ち越し。
【即時償却の場合】
購入した期に1,000万円全額を経費計上できる。
今期、突発的に1,000万円の利益が出てしまった場合、即時償却を使えば利益をゼロにし、法人税等の支払いを約300〜340万円(実効税率による)減らす効果が見込めます。この即効性こそが、多くの経営者を惹きつける最大の理由と言えるでしょう。
サーバー節税に潜む3つの致命的リスク
「税金が減るなら最高だ」とハンコを押す前に、少し冷静になりましょう。私が顧問先から相談を受けた際、必ずお伝えする見落としがちなリスクがあります。
リスク1:技術の陳腐化が早い(出口戦略の難易度)
節税の基本は税金の繰り延べ(先送り)です。つまり、経費で買ったものを将来売却し、そこで現金化して初めて成功と言えます。しかし、サーバーなどのIT機器は、車や不動産と違って価値が落ちるスピードが異常に早い製品です。
3年も経てば旧型となり、二束三文でしか売れないケースが多々あります。「節税で300万円浮いたが、1,000万円で買ったサーバーが50万円でしか売れなかった」となれば、トータルでは650万円の現金減少となり、大赤字。出口戦略(いつ、いくらで売るか)が描けないサーバー投資は、単なる浪費と同じ結果を招きます。
リスク2:暗号資産(仮想通貨)の暴落と収益性の悪化
多くのサーバー節税商品は、購入したサーバーでマイニング(暗号資産の採掘)を行い、その収益を得るモデルになっています。ここで問題になるのが、暗号資産相場のボラティリティ(変動幅)です。
シミュレーションでは「利回り○%」と書かれていても、コインの価格が暴落すれば、収益は一瞬で吹き飛びます。また、マイニングには莫大な電気代がかかります。電気代が高騰し、コイン価格が下落すると、サーバーを動かせば動かすほど赤字になる逆ザヤ状態に陥るリスクも考慮しなければなりません。
リスク3:実態のない投資詐欺業者の存在
金融業界で最も注意すべき点です。残念ながら、節税ニーズにつけ込む悪質な業者が存在します。「海外にサーバーセンターがある」と説明しておきながら、実際にはサーバーなど存在せず、お金だけ集めて計画倒産する詐欺事件が後を絶ちません。
税務調査が入った際、サーバーの現物や稼働実態を証明できなければ、経費は全額否認されます。追徴課税と重加算税で、当初の税金以上の支払いを命じられかねません。業者の信用調査は、商品選び以上に重要となります。
成功するための必須条件!税制適用を受けるための5つのステップ
リスクを理解した上で、それでも導入する価値があると判断した場合、確実に税制優遇を受けるための手続きが必要です。 サーバーを購入して全額経費にするためには、単に領収書があるだけでは不十分です。以下の5つのステップを確実に踏んでください。
ステップ1:自社が適用対象か確認する
誰でも使える制度ではありません。まずは以下の条件をすべて満たしているか確認してください。
- 青色申告を行っている法人または個人事業主であること。
- 資本金1億円以下の中小企業者等であること。
- 従業員数が1,000人以下であること。
大規模法人の子会社などは対象外になるケースもあるため、購入契約を結ぶ前に、必ず顧問税理士へ確認してください。
ステップ2:申請する類型を選択する
中小企業経営強化税制には、主に2つの申請パターンがあります。自社の状況に合わせて選択しますが、決算まで時間がない場合はA類型が一般的です。
【A類型(生産性向上設備)】
工業会からの証明書が必要。メーカーや販売店経由で取得します。証明書があれば形式上は要件を満たしますが、本業の生産性向上に寄与しているかという実態がなければ否認される可能性があります。「証明書=絶対安全の免罪符」ではありません。
【B類型(収益力強化設備)】
投資計画を作成し、経済産業局の確認を受ける必要があります。手続きが煩雑で時間がかかるため、決算直前では間に合わない可能性が高い申請方法です。
ステップ3:証明書発行とスケジュールの管理
A類型の場合、メーカー等を通じて証明書を手配します。ここで重要なのが証明書発行のタイムリミットです。 「証明書が間に合わなかった」という事態になれば、即時償却は認められません。スケジュール管理は分単位で行うくらいの慎重さが求められます。
ステップ4:決算日までに確実に納品・稼働させる
最も注意すべきポイントです。税制の適用を受けるには、必ず決算日までにサーバーを取得し、事業の用に供する(稼働させる)必要があります。 「納品されたが、箱から出していない」「稼働設定が終わっていない」という状態では経費化できません。
ステップ5:税務調査に備え稼働実態を証明する
税務署は本当に事業に使っているかを厳しくチェックします。特にマイニングなどの場合、以下の証拠を必ず残してください。
- サーバーのシリアルナンバーと設置場所の写真
- 日々の稼働ログ(マイニング実績のレポート)
- 電気代の請求書や支払記録
- 賃貸借契約書(データセンターに置く場合)
これらがないと、単なる投資(金融商品)とみなされ、税制優遇の対象外とされる恐れがあります。
まとめ:サーバー節税は投資としての目利きが必要
サーバー節税は、利益が出過ぎた年度の即効薬として強力な選択肢です。しかし、単に税金を減らすためだけに導入すると、大きな火傷を負うリスクを含んでいます。
- メリット: 即時償却による劇的な法人税圧縮、マイニング等による副収入の可能性。
- デメリット: マシンの陳腐化、暗号資産の暴落リスク、詐欺業者の存在。
節税という言葉に惑わされず、「これは純粋な投資ビジネスとして勝てるか?」という視点を持ってください。大切な会社のお金です。国に税金として払うのが正解か、リスクを取ってサーバーに変えるのが正解か。税理士の視点で簡易チェックすることも可能です。ご不安な点があれば、お気軽にお申し付けください。
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